クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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四十一発目「二人でとけあう夜」

 

 その後、直穂(なおほ)に続いて、俺もフィリアに水魔法を教えて貰った。

 

 人生初の水魔法は、確かに、賢者になるときの感覚に似ていた。

 具体的に言うと、オ〇ニーのフィニッシュの飛び出す感覚に似ているのだが……

 ……これ以上はやめておこう。

 

 何度か練習してみたけど、俺は直穂(なおほ)のように、スムーズにはいかなくて、

 まだ、水を出すのに多くの集中力と時間がかかってしまう。

 フィリアいわく、こんな俺でも修得速度は速いほうらしい。

 直穂(なおほ)の修得速度は異常だそうだ。

 

 

 

 そして俺達は、夕ご飯の調達をした。

 野草をササッと集めて、小型のモンスターを倒した。

 俺と直穂(なおほ)誠也(せいや)さんの三人で、一匹づつモンスターを倒した。

 

 もちろん【自慰(マスター〇ーション)】スキルに頼る事なく、

 俺達はみんな、剣の一振りで、モンスター達の息の根を止めた。

 

 今までの戦闘では、苦戦が多かった俺達だが、相手が悪かっただけなのだろう。

 俺や直穂(なおほ)は賢者や天使にならなくても、そこそこ強いと思う。

 

 そして日が暮れて。

 誠也(せいや)さんの作った地下室の中で、女性陣の料理がはじまった。

 

 俺はまったく料理なんてしたことがないし。ましてや今晩は、森の中でのサバイバル料理である。

 

 しかし、任せっきりも申し訳ないなと思った俺は、

 「なにか手伝おうか?」 

 と直穂(なおほ)に申し出てみた。

 しかし、

 

「ゆっくりしてて。 私が行宗(ゆきむね)に作りたいの」  

 と、言われて、断られてしまった。

 

 いっぽう誠也(せいや)さんも、フィリアさんに、何か手伝おうかと聞いていただが。

 

「オレの料理の方が美味いだろう? おとなしく任せとけ」

 と断られていた。

 

 ということで結局、俺と誠也(せいや)さんは、二人きりでじっと座り、料理の完成を待っていた。

 

 女性陣の方を見ると、土魔法と火魔法で作った土鍋の前で、フィリアさんが直穂(なおほ)に、火の魔法を教えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ行宗(ゆきむね)くん」

 

「……はい」

 

 楽しそうに会話を弾ませる女子達をぼーっと見ていると、誠也(せいや)さんの男らしく優しい声がした。

 

「あらためて、お礼を言わせてくれ。

 私達を助けてくれて、ありがとう。

 王国軍に捕まっていたとき、私は…… こんな未来が待っているなんて夢にも思わなかった……」

 

 誠也(せいや)さんはそう言って、深く深く頭を下げた。

 大人の人に頭を下げられて、感謝を告げられた。 

 俺の心はふわっと舞い上がるように軽くなり、嬉しい気持ちになった。

 

「俺も、誠也(せいや)さんやフィリアさんと出会えて良かったです。 浅尾(あさお)さんの治療を手伝ってくれて、ありがとうございます……」

 

 そんな感謝を言いながら、ふと浅尾(あさお)さんに思いを馳せる。

 今頃どうしているだろうか? 不安な夜を過ごしていないだろうか?

 別れの時には元気な顔で、待っているねと言っていたけど、

 浅尾(あさお)さんは強がりな所があるからな……

 

「それにしても、なかなかの剣さばきだったぞ。どこかで剣を習ったのか?」

 

 誠也(せいや)さんは意外な事を口にした。

 俺の、剣技を褒められた?

 俺は今まで、剣道なんて無縁の生活を送ってきたのだが。

 

「いえ、習ってません。上手いですかね?」

 

「あぁ。特に横振りのキレがある。オレは少し前まで、王国軍で剣術指南をしていたのだが、お前は鍛えがいがありそうだ」

 

 誠也(せいや)さんはそう言って、ニッと笑った。

 俺は、心の底から嬉しかった。

 こんな風に褒められたのは、何時ぶりだろうか?

 

 俺の人生を振り返ってみても、思い出されるのは、負けたり失敗した記憶ばかりだ。

 俺もクラスの陽キャみたいになりたいと思って、必死に元気なフリをして、厳しい部活や学級委員になって、食らいつこうとしたけれど。

 やっぱり本物には敵わなくて、ずっと敗北感にさいなまれていた。

 そして、頑張ることを諦めて、二次元に逃げ込んだんだ。

 中学二年生の頃、直穂(なおほ)に失恋した事が引き金だった。

 

 

「あの誠也(せいや)さん、俺はもっと強くなれますか?」

 

 気づいたら俺の口から、そんな言葉が出ていた。

 俺は、久しぶりに頑張りたいと思い立ったのだ。

 それは昔みたいに、人から凄いと思われたいみたいな自己中心的な理由ではなくて、

 ただ、直穂(なおほ)浅尾(あさお)さん、周りの大切な人達を守り、現実世界に連れて帰る為であった。

 

「俺は無力です、リリィさんや直穂(なおほ)に助けて貰わないと、何一つ出来ない男です」

 

「それは当然だ。一人でなんでも出来る人間なんていない、人と人とが助け合う事、それが一番強いんだ。最近はそう思ってる……」

 

「そうですね。その通りだと思います。 でも……俺は少しでも強くなりたいんです……」

 

 誠也(せいや)さんは、また俺の目を見て、またニヤリと笑った。

 

「お前は強くなれる。単純な強さだけではなく、技術的にもな。

 時間がある時に鍛えてやる。ただし、妥協はしないからな? 厳しい事も言うかもしれん」

 

「そうですか! ありがとうございます!」

 

 俺はそう言って、頭を下げた。

 もう、大切な人を危険な目に遭わせないために、俺は強くなりたかった。

 強くなれるなら、大切な人を守れるなら、俺はどんな辛い修行にだって耐え抜いてみせる。

 まあ、なるべく楽な修行がいいけどな、辛いのは嫌だ。

 

 でも、大切な人を失うことの方が、もっとずっと辛いのだから。

 

 という事で、俺に剣術の先生ができた。

 

 

 

 

 そんなやりとりをしている間に、鍋のほうから、美味しそうな匂いと湯気が漂ってきた。

 

「そうだな、まずは行宗(ゆきむね)くんの長所を言っていくぞ。

 剣の振りの鋭い所が良い。手だけでなく、股関節を使って上手く振れている」

 

 誠也(せいや)さんは立ち上がり、両手を振りながら説明を始めた。

 股関節の連動か、懐かしいな。

 中学での野球部時代に、監督に口酸っぱく注意されたな。

 

「そりゃあ行宗(ゆきむね)は、中学では野球部だったからねー。

 棒を振るのは得意でしょ? 下の棒の扱いは知らないけどね」

 

 と、下ネタと共に会話に割り込んできたのは、鍋を抱えた直穂(なおほ)であった。

 

「できたよ、(なべ)。夏だけど我慢してね。味付けは自信あるから」

 

 と言って、熱湯でいっぱいの鍋を、両手で抱えていた。

 

「すまん俺が持とうか?。重いだろ?」

 

 俺は思わず口をついてそう言った。

 直穂(なおほ)は、既に鍋を持って来ているので、いまさら交代する必要はなかったのだが。

 

「ぜーんぜん平気。ここは異世界だよ。私のレベルもそこそこ高いから、腕力もあるの」

 

 直穂(なおほ)は、得意げに笑って、ドカッと音を立てて、 

 俺と誠也(せいや)さんの中間に、湯気だった大きな鍋を置いた。

 

「へぇ、こりゃあ美味そうだなぁ!」

 

 誠也(せいや)さんが目の色を変えて、歓喜の声を上げる。

 そしてフィリアが、4人分の土づくりの皿と箸をもって、鍋を囲むように座り込んだ。

 

「だろ!? さあ頂きますだ! 食べながら話し合おうぜ。「川越え会議」!」

 

 フィリアはそう言って、アツアツの鍋の中に箸を突っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だから、空を飛ぶんだ」

 

 フィリアはそう言った。

 

「正気か?」

 

 と、誠也(せいや)さんが眉をひそめる。

 

「まぁ、その方法(・・・・)が一番だよね。私は構わないよ」

 

 直穂(なおほ)の言葉に続き、俺も口を開いた。

 

「俺も構わない。 でも、問題なのは発光だ。 

 夜に明るいものが飛んでいれば、地上から気づかれないか? 流れ星と呼ぶには明るすぎるし」

 

「それに関しては、一か八かの案がある」

 

 フィリアはそう言って、とんでもない作戦内容を口にした。

 

「……正気か?」

 

 それ(・・)を聞いた誠也(せいや)さんは、また唖然としていた。

 俺も驚いた。

 物理的というか、ごり押しというか。

 でも理にかなった解決策だった。

 

「それで光は抑えられるだろ? 川と関所と街を一気に越えて、人の少ない場所までいくには、この方法が一番早い」

 

 フィリアは、真剣な目つきでそう言った。

 誠也(せいや)さんは、ゴクリ、と唾を飲み込んで息をつくと、

 

「……無茶苦茶な作戦だが、私も賛成だ。だが一つ心配なのは、フィリアお前、高所恐怖症じゃなかったか?」

 

 と、フィリアに尋ねた。

 

「……っ!! まぁ、そうだな……。

 でも怖がっている場合じゃないだろ?

 …………できればオレが眠っている間に、かかえて飛んでくれると助かるんだが……」 

 

 フィリアは顔をひきつらせて、半分泣きそうな顔で、直穂(なおほ)と俺へ交互に視線を泳がせた。

 

「分かったフィリアちゃん。なるべく起こさないように運んでみる」

 

「ありがとう、直穂(なおほ)ぉ……」

 

「ふふっ……」

 

 直穂(なおほ)が、上品にクスリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦が決まり。誠也(せいや)さんが土魔法で、食器や鍋を、地下室の地面に埋めた。

 そして、誠也(せいや)さんの大きなバッグから、二つの大きな寝袋を取り出した。

 作戦開始の時刻まで、オレ達四人は仮眠をとるのである。

 

「なあ行宗(ゆきむね)。お前は直穂(なおほ)と一緒に寝るよな? オレは誠也(せいや)と寝るってコトでいいか?」

 

 フィリアが少し眉をひそめて、声を上擦らせながら、全員に聞こえる声量で()いてきた。

 俺も、直穂(なおほ)の耳に入るように答える。

 

「あぁ、俺は直穂(なおほ)と一緒に寝たい。直穂(なおほ)はどうだ?」

 

「うん、一緒に寝よ」

 

 直穂(なおほ)は、はぐらかす事なく、赤く染まった頬で近づいてきて、俺の手を引いた。

 そしてフィリアの方に、チラリと目を向けた。

 

「やっぱり夜は好きな人と寝たいからね。 だよね? フィリアちゃん?」

 

「そ、そだな」

 

 フィリアは、さっと視線を泳がせて、小さな声で返事した。

 

 そして、俺と直穂(なおほ)は、タオルケットみたいな夏用の寝袋の中に入った。

 狭い寝袋の中で、互いの肌を密着させる。

 一方フィリアと誠也(せいや)さんは、俺達と少し離れた場所で、一緒に寝袋に入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寝袋の中は、せま苦しくて、互いの肩や太ももが密着していた。

 

「狭いな、こりゃ」

「うん、寝返りも出来ないね」

 

 並び合う俺と直穂(なおほ)は、同じタイミングで互いの方を向いて、至近距離で顔を見合わせた。

 

「うっ!」

「ふっ!?」

 

 思わず声が漏れる。

 暗闇の中でも、直穂(なおほ)の瞳はにぶく光っていて、

 彼女の控えめなおっぱいが、俺の胸へと重なっていた。

 

 俺たちは恥ずかしさと興奮に酔いしれながら、熱のこもったおでこ同士をぶつけ合った。

 そして、我慢できなくなり、唾液まみれと舌で絡み合った。

 

 ちゅっ……ちゅっ………じゅるる……

 

 れろ……れろ……

 

 湿った深いキスを交わしたら、二人の口から糸がひいた。

 

 

 

「……ふふ、これは、なかなか寝られそうにないね……」

「そうだな、気を抜いたら襲ってしまいそうだ……」

「そうなれば、私は逃げられないね。狭くて身動きとれないから、抵抗できないよ……」

 

 直穂(なおほ)の甘ったるい挑発的なセリフに、思わず下半身が固くなる。

 男性としての本能が逆撫でされて、直穂(なおほ)の事が好きで可愛くてたまらなくなって、

 理性を失ってしまいそうになる。

 でも……

 

浅尾(あさお)さんが恐怖で苦しんでる夜に、そんな事は出来ないよ。

 だが、覚悟しとけよ(・・・・・・)

 いつか全部が解決して、クラスメイトみんなで、現実世界に帰った日の夜には、

 直穂(なおほ)のこと、心も体もぐちゃぐちゃに愛してやるからな?

 いま我慢してる分とこれから我慢する分、まとめて一夜で受け止めてもらうからな??」

 

 俺の言葉に、直穂(なおほ)は幸せそうな笑顔を見せた。

 そして、目を瞑り、俺の胸板へと頭を当てる。

 

「うん……楽しみにしてる(・・・・・・・)……すっごく……」

 

 嬉しそうで、でもちょっと寂しそうに、

 直穂(なおほ)は小さく呟いた。

 

「おやすみ直穂(なおほ)

「おやすみ、行宗(ゆきむね)

 

 と、言葉を交わして、俺たちは天井へと向き直り、

 目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、起きてる?」

 

 直穂(なおほ)が、耳もとで囁いてきた。

 

「……ああ、起きてるよ」

 

 俺も、なかなか眠れなかった。

 この世界に来てから、三日目の夜。

 考えても考えても、頭の整理がつかなかった。

 クラスメイトの事とか浅尾(あさお)さんの事とか、不安な事がどんどんと溢れてきて。

 

「……中学の頃の話を、してもいいかな?」

 

 直穂(なおほ)は、ちょっと不安そうに尋ねてきた。

 

「いいよ……」

 

 と俺は答える。

 中学生の頃の俺か……

 俺が一番辛かった時代だ。

 

 あの頃の俺は、スクールカーストばっかり気にしていた。

 みんなに気に入られたくて、部活も学級委員も、全力投球していた。

 でも、頑張ったから一番になれる訳でもなく、人気者になれる訳でもなく。

 それでも頑張り続けていた時期だった。

 

「私ね、中学の頃、行宗(ゆきむね)くんに救われたんだ」

 

「え……?」

 

 救われた、って?

 直穂(なおほ)が俺に?

 

「あの頃の私、学校でも家でも辛かったんだよね。

 学校には親友はいなくて、家に帰っても両親に勉強を迫られて、何も楽しい事がなにもなかったの……

 ずっと真面目な良い子を演じ続けてて、それで皆からは嫌われなかったけれど、

 本当の私(・・・・)を好きになって貰えることもなくて……

 その本当の私(・・・・)さえ、自分でもよく分からなくなって、いつも自己嫌悪に陥ってた……

 でもね……

 行宗(ゆきむね)くんと出会えて、一緒に学級委員になれて、私は変われたんだ」

 

 直穂(なおほ)は、俺の肩に頭を寄せて、天井を見ながら言葉を繋いだ。

 

行宗(ゆきむね)くんは、本当の私(・・・・)を見つけてくれたの。 

 本当の私は、わがままな女の子で、実はアニメが好きで、そして恋する乙女だった。

 私ね、あの時

 行宗(ゆきむね)くんの事が好きだったんだ……」

 

「え……?」

 

 俺は耳を疑った。

 直穂(なおほ)が俺を、好きだった??

 そんな、訳がないだろう。

 だって直穂(なおほ)は、中二の頃に、

 違う男と、恋人になったじゃないか。

 俺は、両思いだと思ってたのに、すごく裏切られた気持ちになって……

 ダメ元で、彼氏持ちの直穂(なおほ)に告白したけれど、悲しそうな顔で「友達でいましょう」と言われて……

 

 俺は、人間不信になって、

 女性恐怖症になったんだ……

 

「じゃあ、なんでアイツと付き合って……?」

 

 俺は動揺しながら、直穂(なおほ)に尋ねた。

 

「告白されたの。凄く真剣な顔で、私の事が好きって言われて……

 私はあの頃、行宗(ゆきむね)くんの事が好きだった。

 でも同時に、行宗(ゆきむね)くんなんかと付き合える訳がないって、最初から諦めてたんだ。

 大人しくて臆病でつまらない私なんかに、カッコいい行宗(ゆきむね)くんが振り向いてくれる訳がないって、そう思ってた。

 だから私は、行宗(ゆきむね)くんの事は諦めて、

 あの人の真剣な告白を、受け入れる事にしたの」

 

 俺は何も言えなかった。

 衝撃の事実に、身動き一つとれなかった。

 つまり、その告白してきた男で妥協したという事だ。

 本当に好きだった俺の事は諦めて。

 

「あの人と付き合って、私は楽しかった。

 話もうまくて気がきいて、本当の私(・・・・)を好きになってくれた。

 でも行宗(ゆきむね)くんの事がずっと、頭の中に引っかかっていて。

 そんな時に、私は、あなたに告白された」

 

 そうだ。

 俺は、彼氏がいるにも関わらず、どうしても直穂(なおほ)の事が忘れられなくて、

 俺はダメだと分かっていながら、自分の気持ちだけは伝えようと思ったんだ。

 

「どうしていいのか分からなかった。

 行宗(ゆきむね)くんも彼氏も、同じぐらい大切で、選べなかった。悲しむ顔を見たくなかった。

 だから私は逃げたんだ。

 彼氏と付き合ったままで、行宗(ゆきむね)くんと、仲良くしたかった。 どっちが好きかなんて、選べなかったから……

 ごめんね……

 ……ほんとに私は、ひどい女だ……」

 

 直穂(なおほ)の声は、震えていた。

 泣いているのだろうか。

 でも俺は、直穂(なおほ)のほうを振り向く気にはならなかった。

 

 俺は2年前の、俺の告白に対する直穂(なおほ)の返事を思い出していた。

 

『嬉しい、凄く嬉しいよ、万波行宗(まんなみゆきむね)くん。あなたは私の大切な友達です。その想いには応えられないけれど、これからも、私と仲良しでいて欲しいです」

 

 そんな言葉で、俺はフラれた。

 一言一句思い出せる、俺のトラウマだった言葉。

 俺が人間不信、女性恐怖症になったキッカケである。

 あの時は、「直穂(なおほ)に拒絶された」と、思ったけれど。

 今の直穂(なおほ)が話してくれた、あの時の直穂の本心は、俺の認識とは全く違っていた。

 

 あの時の直穂(なおほ)は、俺の事が好きだったのだ。

 俺は、嫌われてなんていなかった。

 

「でも、あの日から行宗(ゆきむね)くんは、私にほとんど話しかけてくれなくなった。

 私たちは友達のままではいれなかった。

 あのとき、あぁ私は嫌われちゃったんだ、って思ったんだ」

 

「それは、違う…… あれは俺が、勝手に気まずくなって、

 直穂(なおほ)に嫌われたんだと思って、話しかけづらくなったんだ」

 

 俺は思わず口を挟んだ。

 そうかあの時、俺たちは互いに好きで、

 でも互いに.、嫌われたと思っていたんだ。

 

「そうだよね。今なら分かるよ……

 ごめんね行宗(ゆきむね)……私が悪かったの……

 真剣に選ぶ勇気がなかったから、行宗(ゆきむね)くんの本気の気持ちに向き合わなかった。 

 自分が傷つきたくなくて、中途半端な選択であなたを傷つけた……

 ごめん……なさい……」

 

 直穂(なおほ)は嗚咽しながら、俺の肩で泣いていた。

 

「……ごめん……ごめん行宗(ゆきむね)ぇっ……」

 

 直穂(なおほ)の泣き声が、あまりに弱々しくて、

 俺は、肩に泣きついた直穂(なおほ)の方へと顔を向けた。

 

「嬉しいよ……あの時も、俺の事を、好きでいてくれたんだな。

 ずっと、片思いだったと思ってたから、安心したよ。

 話してくれてありがとう。

 あの時の直穂(なおほ)の、本当の気持ちを教えてくれて、ありがとう……」

 

 俺はそう言って、直穂(なおほ)の背中を強めにさすって慰めた。

 直穂(なおほ)は、ビクッと身体を震わせて、涙でぐちゃぐちゃの顔を上げた。

 

「ううっ……行宗(ゆきむね)ぇぇっ……ごめんなさいっ……

 ……あのっ、私ねっ、嬉しかったんだよ??

 2日くらい前、この世界に来てすぐ、狭い洞窟の中で、行宗(ゆきむね)が、私をオ○ズにしてるのを見た時。

 行宗(ゆきむね)くんが、まだ私の事を好きだって知って、嬉しかったの……

 それから行宗(ゆきむね)くんと付き合えて、今は本当に幸せなのっ……」

 

 え??

 

「ブハッ!!」

 

 俺は思わずふき出してしまった。

 だって、可笑しすぎるだろう。

 真剣顔の直穂(なおほ)がおかしくて、思わず笑ってしまった。

 懐かしい。

 そんな事もあったな。

 俺達がまだこの世界に来てばかり、地獄のボス戦前の、異世界にワクワクして浮かれていた束の間の時間。

 俺は直穂(なおほ)に、オ◯ニーしてる所を見つかってしまったのだ。

 

「変態かよ」

「なっ! 私は、っっ……」

 

 直穂(なおほ)は怒った声色になり、涙をピタリと止めて早口で捲し立てた。

 

直穂(なおほ)は変態だよ。俺も変態だ。なんたって【自慰(マスター○ーション)】カップルなんだからな」

「な、なんかヤダよ」

「ふふふっ」

「あははっ」

 

 そして俺たちは、笑い合った。

 しばらくケラケラと笑いあって、落ち着いたところで、

 

「……気が抜けたら眠くなってきたわ、今度こそおやすみしようぜ、好きだよ直穂(なおほ)

「うん。私も好きです……おやすみなさい……」

 

 俺たちは、今度こそ目を瞑った。

 直穂(なおほ)と二人で、深く繋がっている気がして幸せで、

 この時だけは、いろんな不安を、ぜんぶ忘れることができた。

 俺たちは、あたたかい安心感の中で、ゆっくりと意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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