クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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四十三発目「怒涛(どとう)のバードストライク」

 

 ー万浪行宗(まんなみゆきむね)視点ー

 

 俺達の冒険の二日目は、空の旅から始まった。

 

 俺と直穂(なおほ)は、賢者と天使となり、それぞれ誠也(せいや)さんとフィリアを抱えて、

 寝袋に隠れて、空へと飛びあがった。

 

 俺は誠也(せいや)さんを両腕で抱えながら、誠也(せいや)さんの指示に従い、空中を移動していく。

 

「15度ほど右へ、真っすぐ飛んでくれ」 

 

 誠也(せいや)さんは寝袋から顔を出して、眩しくて何も見えない俺に指示を出してくれる。

 寝袋の中は、賢者の放つ光が眩しくて何も見えない。

 賢者の俺に分かるのは、およその方向感覚と、

 俺達の後ろをついて来る、直穂(なおほ)とフィリアの生命の気配だけだ。

 

「ここから森を抜けて、大きな川に差し掛かる。

 川の向こうはガロン王国ギラギース地区だ。

 さかえた町で人も多い。深夜だから人は少ないだろうが、見つからないように上昇してくれ」

 

 誠也(せいや)さんの指示で、俺は空へと上昇していく。

 どんどんと登っていく。

 周囲の気圧が下がっていき、耳がキーンと鳴った。

 

 賢者の放つ光が寝袋の中に閉じ込められて、眩しくて何も見えない。

 目が見えずに進み続けるというのは、想像以上に怖かった。

 もちろん、周囲の"生命の気配"は俺たち4人だけなので、次の瞬間に、空飛ぶモンスターに襲われる心配はないのだが……

 

 全てを見通す"賢者の目"も、対象を目で見ないと使えないからな。

 

 どういう訳か、クラスメイトと戦った【スイーツ阿修羅】戦の時は、視界に入れなくてもが全て見えたのだが。

 マルハブシの猛毒のバフがない今は、賢者の能力も弱体化しているのだろうか?

 

 

 目の見えないユリィは、これほどの恐怖の中で生活し続けているのだろうか?

 よく水泳なんかできたな。

 

 と、俺は感心していた。

 

「……まて、なにかおかしい。街が燃えている……」

 

 誠也(せいや)さんが、低く深刻な声でそう言った。

 

 

「え……燃えてるって、火事ですか……?」

 

「……町全体が火の海だ。戦争か……? 獣族反乱軍かもしれん…… 酷いありさまだ……」

 

 誠也(せいや)さんは、怒り、いや諦めのこもった。やるせない声を上げた。

 俺は下の方へ、意識を集中させていく。

 でも、なにも見えない。

 俺達が高い場所を飛んでいるから、地上と距離が離れすぎて、生命の気配が感知できないのだ。

 

「……何千人と死ぬな。こりゃ……」

 

誠也(せいや)さん。どうしますか? 引き返しますか?」

 

「いや……むしろ好都合だろう。街が混乱に陥っているから、安全に空を飛べる。

 今の私にとっては国民の命よりも、フィリアの願いの方が大切だからな……」

 

 誠也(せいや)さんは、迷いや葛藤のこもった声をしていた。

 俺には状況がよく分からないが、いま俺たちの足元では、町が火の海に包まれているのだろう。

 そこでは、沢山の命が散っているそうだ。

 誠也さんは、この状況でも、王国の国民の命を助けようと思っているのだ。

 

誠也(せいや)さん、その町の人を、助けたいんですか?」

 

 俺は尋ねた。

 俺は言葉を続ける。

 

「俺と直穂(なおほ)のスキルなら……もしかしたら、その惨状を止められるかもしれません」

 

 誠也(せいや)さんは、少し黙った。

 そして……

 

「下の街には友人がいるからな………

 まあ心配するな、王国軍は強い。

 きっと自力で、この街を守ってくれるはずだ……」

 

「……わかりました」

 

 誠也(せいや)さんは暗い声だったが、俺は納得した。

 今は人助けをしている余裕なんて、俺たちにはないのだ。

 あと6日が経つ前に、浅尾(あさお)さんの元へ、治療薬を届けるのだ。

 

「なあ行宗(ゆきむね)くん、賢者の時間は残り何分だ?」

 

「あと8分と少しです」

 

「そうか順調だ。このまま真っすぐ………  んっ!?」

 

 誠也(せいや)さんの声が、驚いた様子で裏返った。

 

「なんだアレは…… デカい…… 鳥じゃねぇ…… まさか竜か?」

 

 誠也(せいや)さんの声が、緊迫感に包まれていく。

 次の瞬間。

 

 俺は全身に鳥肌が立った。

 "生命の気配"が、凄まじい勢いで突っ込んでくる。

 右下から俺の方へと真っすぐに、凄まじい勢いで。

 もうすぐ接近する。

 

誠也(せいや)さんっ! 右下から何か来ますっ!!」

 

「あれは、黒竜か!? まさか誰かが竜の逆鱗に触れて、この街まで……」

 

 誠也(せいや)さんが言い終わらない内に、すぐそばまで気配は迫っていた。

 

「とにかく()けろっ!! 絶対に殺すなっ!!」

 

「はいっ!!」

 

 俺は急いで速度を上げて、黒竜というモンスターの突進を回避しようとした。

 その時だった。

 

 キィィィィイ!!!! 

 

 と、凄まじい音が鳴って。爆風が巻き起こる。

 俺たちは風に揺られて、バランスを崩した。

 そしていつの間にか、黒竜の"生命の気配"が消えていた。

 

 見なくても状況は分かった。

 直穂(なおほ)の魔法である。

 直穂(なおほ)の天使の閃光が、近づくモンスターを一撃で消滅させたのだ。

 

「マズイことになった」

 

 と、誠也(せいや)さんが言う。

 

「すぐに群れが集まってくる。

 この街を戦火に包んだのは、黒竜の群れが原因だ。

 黒竜は別名、復讐竜という。

 仲間を殺した生き物(・・・)の匂いを追いかけて、かたき討ちをする習性があるんだ」

 

 言い終わらない内に、下の方から、10匹、いや20匹……

 凄まじい勢いで、無数の"生命の気配"が迫ってきた。

 

 そんな中、直穂(なおほ)とフィリアの生命の気配が、俺の寝袋左側へと近づいてきた。

 

誠也(せいや)さんっ!! モンスターが集まってきます!! どうすればいいですか!?」

 

 直穂(なおほ)の叫び声が、左の外から届いてくる。

 誠也(せいや)さんは、すぐに決断した。

 

「作戦変更だ。ターゲットが直穂(なおほ)さんに向いた。

 マズイ状況だが、一匹ずつはそこまで強くない。

 弱いモンスターほど、よく群れるからな。

 近づく奴らを全て蹴散らして、全速力で街を越えて、山奥へ向かう。

 ……もう寝袋に隠れる意味はないな」

 

 誠也(せいや)さんは、バッと寝袋を取り払った。

 

 俺は寝袋から解放されて、大空へと飛び出した。

 俺は賢者として、夜空の中で白く輝いた。

 

 見上げれば、満点の星と漆黒の宇宙。

 見下げれば、栄えた街を覆い尽くす、真っ赤な火の海だった。

 

 地上の方から、闇に紛れた竜が迫ってくる。

 まあ賢者の俺にとっては、"生命の気配"とHPバーの両方で、モンスターを感知できるので、位置はバレバレなのだが。

 

 

 俺の左どなりには、星のように輝く直穂(なおほ)がいた。

 その姿はまさに、夜空に浮かんだ天女のすがた。

 あまりに美しくて、一瞬、我を忘れて見惚れてしまった。

 

 直穂(なおほ)は両手で、気を失って泡をふいたフィリアを抱えていた。

 "生命の気配"は感じるので、意識はないが生きている。

 

「【流星群(メテオシャワー)】!!」

  

 直穂(なおほ)は、両手を重ねて地面へと振りかざして、アニメ仕込みの魔法を詠唱した。

 手のひらから、無数の光が飛び出して、10匹以上竜を全て撃ち抜いていく。

 一対多戦闘では、俺より直穂(なおほ)の方が強い。

 

 黒竜は直穂(なおほ)の魔法で、一撃で爆ぜて空に散る。

 黒竜には個体差があるが、だいたい50から70レベルである。

 

 

 直穂(なおほ)は純白の光で、遠距離攻撃ができるのだ。

 対して俺は、近接戦闘専門である。

 

直穂(なおほ)っ! フィリアを俺に渡してくれ、俺が二人を運ぶから、直穂(なおほ)は戦闘に集中してほしいっ!」

 

「分かった!!」

 

 直穂(なおほ)はオレに近づいて、気絶したフィリアを手渡してくる。

 俺は誠也(せいや)さんを背中に背負って、フィリアを身体の前で抱えこんだ。

 そして両手で、不要となった寝袋を握りしめる。

 

行宗(ゆきむね)くんっ! 絶対にフィリアを落とすなよ??」

 

「死んでも落としません!!」

 

 誠也(せいや)さんに返事をしてから、俺は直穂(なおほ)を見た。

 

直穂(なおほ)。まっすぐに飛びながら、迫ってくる竜を倒すんだ」

 

「了解っ! (さき)をお願い! 私は後ろからついて行くからっ!」

 

 直穂(なおほ)は俺の背中側にまわり込み、追いかけてくる黒竜を、光のビームで撃ち落としていく。

 俺は前へ、前へ突き進む。

 のこり時間はあと8分。

 王国軍どころか、地上の人達に、俺たちの存在は見つかってしまったけれど、

 だったら追い付かれないほど、遠くにいけば良いだけだ。

 

 直穂(なおほ)のレベルは48。

 これが3倍になるから、直穂(なおほ)のレベルは144である。

 これだけのレベル差があれば、流石に一撃で……

 

「んん??」

 

 と、俺はここで、違和感に気づいた。

 直穂(なおほ)のレベルがおかしい。

 

 俺の現在のレベルは、ステータスを開いて確認すると。

 52レベルを3倍して、156レベルであった。

 つまり現時点で、俺の方が直穂(なおほ)よりもレベルが高いはずだ。

 

 でも俺の"賢者の目"には、直穂(なおほ)のレベルが見えなかった(・・・・・・)

 測定不能。

 つまり直穂(なおほ)のレベルは、俺以上ということだ。

 

「なぁ直穂(なおほ)っ!? 今のお前はレベルいくつだ??」

 

「ん? ちょっと待ってね」

 

 直穂(なおほ)は、攻撃の手を緩める事なく、ステータスオープンと呟いた。

 

「192レベルだよ。 もともとのレベル48が、天使の効果で4倍になるからっ」

 

 そんな答えが返ってきた。

 

「え……4倍だと?」

 

 俺は絶句していた。

 直穂(なおほ)の【自慰(マスター○ーション)】スキル、

 天使の力は、レベルの倍率が4倍なのか!?

 

 俺の賢者の力は3倍なのにっ……

 

「なるほどな。直穂(なおほ)が強い理由が分かった。

 【自慰(マスター○ーション)】スキルは、賢者より天使の方が強いのか?

 賢者のステータス上昇は、天使と違って3倍だからっ」

 

「そうなのっ!?」

 

 直穂(なおほ)が素っ頓狂な声をあげた。

 どうして今まで気づかなかったのだろう? 

 あぁそうか。

 今まで直穂(なおほ)が天使の時は、俺は賢者じゃなかったから。

 賢者の目で直穂(なおほ)の天使を見たのは、今回がはじめてなのだ。

 

直穂(なおほ)っ! 今度は前から来るっ!」

 

「あいよっ! 【流星群(メテオシャワー)】」

 

 直穂(なおほ)は止まる事なく、前方から上昇してくる"生命の気配"に、閃光を放っていった。

 

 ドドドドド……!!

 

 と、光の雨が降り注いで、"生命の気配"が消えていく。

 のこり時間は7分を切っていた。

 地上波の着陸時間を1分とすると、移動に使える時間は残り6分程度。

 

 下を見れば、進行方向に、街の大火に照らされてうっすらと見える、小さな山の集まりが見えてきた。

 あと6分で、あそこまでいく。

 時間に余裕はなさそうだ。

 黒竜に手間取って、ペースが遅れてしまったのだ。

 スピードを上げる必要がある。

 

直穂(なおほ)っ! 加速するぞ! はやくあの山までっ……!!」

 

 俺は、違和感に気づいた。

 生命の気配が消えていなかったのだ。

 直穂(なおほ)の魔法を喰らってなお、生き残った"生命の気配"が一つあった。

 ソイツは、禍々しい威圧感を放ちながら。

 翼をバサリとはためかせ、俺たちの方へと突進してきた。

 

「あ……あいつは、まずいぞ……」

 

 誠也(せいや)さんが、俺の背中で呟いた。

 俺は目を凝らして、その馬鹿でかいドラゴンを視認した。

 

 HPバーに刻まれたモンスター名は、【black great dragon】であった。

 ブラックグレートドラゴンか。

 さっきまで倒していた小さな竜が、ブラックドラゴンという表記だったから。

 こいつはグレートだ。縮尺が7倍くらいデカい。

 羽を広げれば、学校の体育館を覆い尽くすほどに大きかった。

 

 コイツのレベルは、俺の"賢者の目"でも見えなかった。

 少なくとも俺のレベルを超えている。

 レベル156以上という事だ。

 

直穂(なおほ)っ! 気をつけろっ! あいつめちゃくちゃ強いっ!!」

 

「分かってるっ!!」

 

 直穂(なおほ)は食い気味に答えて、両手の中に光の球を作り、

 風船みたいに、光の玉を膨らませていった。

 エネルギーを(たくわ)えているのだろう。

 

 ギィィィィィ……

 

 と、前方からも耳障りな音がした。

 前を見れば、ブラックグレートドラゴンさんが、俺たちに向かって口を開き。

 口の中に真っ白な光を蓄えながら、突っ込んでくる。

 これはドラゴンお決まりの必殺技。

 口から火を吐く的な何かだろうか?

 

 とにかく、射線から逃げたほうが良さそうだ。

 俺は直穂(なおほ)から距離を取った。

 

 そして直穂(なおほ)の手のひらと、巨大な黒竜の口が、距離をとって向かい合う。

 俺は直穂(なおほ)の事が心配だったが、レベルが低くて二人を抱えた俺は、足手まといにしかならないだろう。

 信じるしかないのだ。

 目の前の強力な敵を、直穂(なおほ)が倒してくれることを……

 はずだった。

 

 しかし黒竜は、その大きな口を、ターゲットである直穂(なおほ)ではなく

 俺のほう(・・・・)へと向けてきた。

 なぜ??

 黒竜は復讐竜なんだろ?

 仲間を殺した対象、つまり直穂(なおほ)を狙って、攻撃するんじゃなかったのか!?

 

 ドォォォォォォォ!!

 

 そしてドラゴンが、炎を吹きだした。

 目の灼けるような真っ赤な炎が、誠也(せいや)とフィリアを抱えたオレに襲いかかってくる。

 オレは、両手が塞がっていた。

 二人を抱えた状態で、うまく動けない。

 

「【閃光弾(ライトニング・ブロー)】ッ!!」

 

 光輝く天使が、ギリギリのタイミングで、俺の前に飛び込んできた。

 直穂(なおほ)は、俺たちを守るように、

 迫りくる炎に立ち向かい、光輝く魔法を放った。

 

 炎と閃光が対峙して、激しく衝突……

 ……しなかった。

 

 二つの魔法は、ぶつかることなく

 互いに透過したのだ。

 

 直穂(なおほ)の閃光は、炎をすり抜けて。

 デカい竜の吐いた炎は、直穂(なおほ)の光を通り抜けた。

 光じゃ炎は止まらない。

 炎はいまだに、俺たちの方へと向かってくる。

 

「【水素(アクア)】っ!!!」

 

 直穂(なおほ)が慌てて、水魔法を詠唱した。

 本気の水魔法である。

 そうか水なら、炎に触れられる。

 

 しかし……

 

 直穂(なおほ)の手のひらから、水魔法が発動しなかった。

 次の瞬間。俺たちは灼熱に飲み込まれた。

 

「【水素(アクア)】っ!! 【水素(アクア)】っ!!」

 

 俺や誠也(せいや)、そして直穂(なおほ)は、必死に水魔法を叫んだ。

 

 誠也(せいや)さんと俺の手から出た水魔法は、微々たるもので、

 焼け石に水だった。

 

 熱い、熱い、とにかく熱い……

 

 レベルの高い俺でも、死ぬほど痛いのだ。

 誠也(せいや)さんやフィリアはもっと辛いだろう。

 守らなきゃ、守らなきゃ……

 

 永遠とも思える、灼熱地獄の中で焼かれて……

 意識が飛びそうだった。

 

 ………………

 

 …………

 

 ………

 

 気づくと、辺りは無音だった。

 耳が聞こえなくなったのか、辺りが静かになったのか、判別できなかった。

 ただ、分かる事がある。

 俺は生きている。

 フィリアの命の気配も、誠也さんの命の気配も、俺のそばにある。

 

 俺はゆっくりと目を開けた。

 目の前には……大きな黒いドラゴンがいた。

 直穂(なおほ)の魔法が効いたのだろう。

 空中で動きを止めて、身体中から血が噴き出していた。

 しかし生命の気配は、消えてはいなかった。

 まだ生きている。

 

 そんななかで、俺は恐ろしいことに気づいてしまった。

 

 直穂(なおほ)の気配が、ない……

 姿も見えない。

 

「え……直穂(なおほ)??」

 

 俺は心臓が凍りそうなほどにショックを受けて、辺りをキョロキョロと見渡した。

 そして、最後に、真下へと視線を降ろした。

 

 そこには、落ちていく一つの陰があった。

 直穂(なおほ)がいた。

 炎に包まれ火の海に吸い込まれるように、ものずごい勢いで落下していた。

 

直穂(なおほ)っ!!!」

 

 俺は、凄い勢いで急降下した。

 自由落下よりも早く。先に落ちた直穂(なおほ)に追い付くために、ぐんぐんと加速していく。

 誠也さんとフィリアを両手に抱えながら、世界最恐のジェットコースターみたいに……

 下へ下へと、落ちていく直穂に手を伸ばす。

 

 どんどんと距離が近づいていく。

 そして……

 直穂(なおほ)が、"生命の気配"の感知可能距離に入った。

 直穂(なおほ)の心臓から、"生命の気配"の輝きが見えるようになる。

 

 良かった、良かった,

 生きてる……

 俺は、泣きだしそうだった。

 とりあえず、死んではない。

 直穂(なおほ)は身体を張って、ドラゴンの炎から俺を守ってくれたのだ。

 そして炎の直撃を受けて、気絶したのだろう。

 ホントに、無茶しやがって。

 

直穂(なおほ)っ!!」

 

 俺は直穂(なおほ)に追い付いて、気絶したフィリアと誠也(せいや)さんを掴みながら、

 直穂(なおほ)の身体を抱きしめた。

 そして減速に切り替えて、直穂(なおほ)の顔を覗き込んだ。

 

 直穂(なおほ)は気絶していて、身体中が真っ赤に腫れていた。

 出血や火傷まみれだった。

 可愛い顔が痣だらけで、これが直穂(なおほ)の顔だなんて信じられなかった。

 恐ろしいほど、身体が熱い……

 

 俺の水魔法で直穂(なおほ)の顔を洗うと、ジュゥゥゥゥ、という焼けるような音がした。

 嘘だろ? どんな状態だよっ……

 早く、いますぐ、回復魔法をかけないといけない。

 

 地上は目の前だった。

 勢いをつけすぎたせいで、必死に減速しているのだが……

 このままでは、地面に激突してしまう。

 俺は火の海と化した地上の中に、降りられる場所を必死に探した。

 

 真っ赤な地上の中に、炎が広がっていない黒い線があった。

 

 街中を横断する。川である。

 あそこだ!

 あそこに飛び込んで、衝突の衝撃を殺すしかない。

 俺は、うまく川へ落ちるように、必死で位置を調節して。

 ぐんぐんと水面に吸い込まれていき……

 

 バッシャァァン!!! 

 

 と、水の轟音と共に、4人は川の水面に叩きつけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 ブハァ、 

 と俺は、3人を抱えて水面から顔を出した。

 "生命の気配"は4つ分ある。

 なんとか4人とも生きている。

 俺以外は意識不明の重体だが。

 

 あたりを見渡して、一番近い川の岸を探した。

 生命の気配を失った死体や家屋が崩れた瓦礫が、川に浮かんでいた。

 

 岸の上を見上げると、炎に包まれた街中は、悲鳴や絶叫がこだましていた。

 "生命の気配"があたふたとうごめき、今ひとつ、消滅した。

 

 早く3人を、岸に上げなければ。

 俺は賢者の力を振り絞って、水を泳いで移動した。

 

 

  

 

 岸に上がって、

 まず俺は誠也(せいや)さんとフィリアを、寝袋(ねぶくろ)の中へと隠した。

 

 フィリアは獣族だから、王国の人に見つかる訳にはいかない。

 誠也(せいや)さんも、一昨日まで、ガロン王国軍に捕まっていたのだから、見つかる訳にはいかないだろう。

 

 直穂(なおほ)が竜の炎の大部分を受け止めてくれたので、フィリアを誠也(せいや)さんは、目立った傷はなかった。

 スヤスヤと呼吸も落ち着いているので、寝袋の中に隠しても問題ないだろう。

 二つの寝袋は、草むらの影に隠した。

 

 心配なのは、直穂(なおほ)である。

 直穂(なおほ)は天使状態のまま、気絶していた。

 顔には大火傷を負っていて、見るに耐えない。

 

直穂(なおほ)っ……直穂(なおほ)っ……目を覚ましてくれっ!!」

 

 俺は、気を失った直穂(なおほ)の身体をゆする。

 

「なぁ直穂(なおほ)っ……現実世界に帰るんだろう? そして二人で幸せになるんだろう…………」

 

 生命の気配は、確かに残っている……

 だけど、死んでしまわないかって不安になる。

 

「目を、覚ましてよ……浅尾(あさお)さんも、待ってるから……」

 

 俺はぐったりとした彼女を抱えて、泣きながら語りかけた。

 

「………え??」

 

 俺は、直穂(なおほ)の青ざめた顔を見て、戦慄した。

 慌てて口元に手を当ててみる……

 

 直穂(なおほ)の呼吸は、止まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《賢者タイムは、のこり4分》

 




 あとがき。
 タイトル通り、怒涛の展開となりました!

 今回も、オススメの作品を紹介していきます!
 それはズバリ! 現在放送中! 話題沸騰中のドラマ!!
 「VIVANT」です!!
 私はまだ4話までしか見ていませんが、凄まじい面白さです!
 こんな面白いドラマは見た事がありません。
 個人的に、ストーリーの完成度が、進撃の巨人に匹敵してます。
 衝撃展開の連続! 是非見てくださいっ!!
 
 
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