クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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四十四発目「漆黒(しっこく)の巨大竜」

 

 直穂(なおほ)は、息をしていなかった。

 

直穂(なおほ)っ……直穂(なおほ)っ!!?」

 

 俺は愕然として、必死で直穂(なおほ)の肩を揺すった。

 しかし直穂(なおほ)は、首をプラプラと揺すられるだけで、起きる気配がなかった。

 

 くそっ、どうする?

 人工呼吸、胸骨圧迫……

 いや、誰かに回復魔法をかけてもらうか?

 

 医者のフィリアを起こせば、治療してくれるだろうか?

 

 しかしここには人が多い。

 "生命の気配"もすぐ近くに居るじゃないか、フィリアが獣族だと知られてしまう。

 んん??

 

 俺は、今更気が付いた。

 直穂に夢中で視野狭窄(しやきょうさく)になっていたが、

 俺たちの前には、女の子が立っていた。

 灰緑色の迷彩服。

 この服には見覚えがあった。

 ガロン王国の軍服である。

 俺の前では、女軍人が少し距離を取りながら、俺と直穂(なおほ)を交互に窺っていた。

 

「あの……大丈夫ですか?」

 

 女軍人が、声をかけてきた。

 丁寧なその口調は、俺と直穂(なおほ)を不審がりながらも、心配の籠った声だった。

 まあ気持ちはわかる。発光する人間がいれば、警戒するのも無理はない。

 

「俺の彼女がっ! 息をしてないんですっ!! 助けて貰えますかっ!?」

 

 俺はもう、(わら)にもすがる思いで助けを求めた。

 俺の力じゃ、どうする事も出来ない。

 こんなことになるなら、回復魔法の一つくらい、フィリアに教わっておくべきだった。

 

「わ、わかりましたっ! とりあえず回復魔法をかけますねっ!!」

 

 軍服の女の子は慌てた様子で、直穂(なおほ)の身体に手を伸ばして、

 

「【回復(ヒール)】」

 

 と、呪文を唱えた。

 天使の白い光を放つ直穂に、緑色の回復魔法が混ざって、綺麗なエメラルドに輝いた。

 女軍人は、すぐに手を離して、また俺たちから距離を取った。

 

「ど、どうですか?」

 

 俺は直穂(なおほ)の口に手をかざした……

 

「だ、だめです……まだ息をしてません」

 

 俺は震えながら答えた。

 

「そうですか…… ちょっと待っててくださいっ!!」

 

 女軍人はそう言って、腰を上げると、慌てた様子で川の土手を上がっていった。

 何をするのか? と見ていると。

 女軍人は、別の生命の気配の元へ走って行き、 

 その生命の気配を連れてきたのだ。

 

 闇の中からうっすらと、駆け寄ってくる女軍人と、身体のスラっとした青年兵が見えてきた。

 

「……光っている二人です。空から降ってきました! 女の子が息をしてないようで、【回復(ヒール)】も効かずっ!!」

 

 女軍人が走りながら、隣を走る青年軍人に状況説明していた。

 俺も必死に、彼に向かって声を上げる。

 

「お願いしますっ!! 俺の彼女を助けてくださいっ!! 身体を張って俺の身を守ってくれたんですっ!」

 

 叫んだら、涙がどっと溢れ出した。

 青年兵は、恐ろしいほどに無表情で、直穂(なおほ)の前にしゃがみ込んだ。

 そして俺を、ギロリと睨んできた。

 

「え……?」

 

 俺が、身の毛が逆立って戦慄すると、その男は何事もなかったように、直穂(なおほ)に視線を落として、

 

「【超回復(ハイパヒール)】」

 

 とぶっきらぼうな声で、直穂(なおほ)の得意な回復魔法を放った。

 直穂(なおほ)の全身が、淡い緑に包まれる……

 

「……んんっ……ごほっ………」

 

 直穂(なおほ)の口から、赤い血が飛び出した。

 

「ごほっ……ぐふっ……あぁ……」

 

 直穂(なおほ)のやけどが感知していく……

 彼女は眉を顰めながら、ゆっくりと目を開いていった。

 

直穂(なおほ)おぉぉっ!!」

 

 俺は直穂(なおほ)を抱きしめた。

 強く強く、彼女の身体を抱きしめた。

 

「行宗っ……私はっ……どうなって……」

 

「ここは地上だっ!! 直穂(なおほ)は俺をかばってっ!! 竜の炎を直撃で受けたんだよっ!!!」

 

「そっ……かぁ……良かったっ……行宗(ゆきむね)の役に立ててっ……」

 

「よくっ……もう少しで、死にそうだったんだぞ?」

 

「そっか……行宗(ゆきむね)が助けてくれたの……?」

 

「違う…俺じゃなくて王国軍の……」

 

「王国軍?」

 

 俺は、近くにいる青年軍人と女軍人の方を見上げて、直穂(なおほ)に紹介しようとしたのだが……

 二人とも同じ格好で、茫然と空を見上げていた。

 

 俺は二人の視線を追いかけた。

 

 上空には、オレンジに染まった光の玉があった。

 見覚えがあった。

 ついさっき見た光景だ。

 

 炎で直穂(なおほ)を撃墜したモンスター。【ブラックグレートドラゴン】が、

 大きな口を開けて、真っ赤な炎を蓄えていたのだ。

 

 標的は、俺か直穂(なおほ)だろう。

 グレートな復讐竜は、俺たちの頭上から、火を吐く魔法で俺たちを狙っていた。

 

 そばにいた青年軍人が、しゃがんで見上げる俺の方を、振り返って無表情で見下ろしてきた。

 

「お前ら、アレを()められるか?」

 

 と、()いてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 賢者タイムは、残り一分と少し。

 俺は最後の力を振り絞って、大空へと地面を蹴った。

 俺が、倒すしかない。

 直穂(なおほ)は天使状態だが、空を飛べる状態ではなかった。

 俺が戦うしかないのだ。

 地上にいる直穂(なおほ)誠也(せいや)さんにフィリアさん。

 そしてこの国にくらす人のためにも、俺は戦うのだ。

 

 グレートドラゴンは凄まじい勢いで地上へと急降下しながら、口内の炎を蓄えていく。

 いつ発射するか分からない恐怖のなかで、俺はドラゴンを、生命の気配感知範囲に入れた。

 もう目の前だ。一瞬で勝負がつく。

 

 ブラックグレートドラゴンには、他の黒竜と違って知性がある。 

 無闇に復讐対象に突っ込んだりしないのだ。

 さきほど空中で、仲間を殺戮した直穂(なおほ)ではなく、俺の方に炎の標準を合わせた理由は、ヤツに知性があるからだろう。

 

 でもだからこそ、俺に勝機がある。

 グレートドラゴンには知性がある。

 だったら、グレートドラゴンより百倍優秀な俺の賢者の思考力で、ドラゴンの思考を誘導して、俺の思い通りに動かすことが出来る。

 

 俺はまず、ドラゴンの背中ではなく、お腹の方へと飛行軌道を逸らした。

 ドラゴンが何も考えないバカなら、俺の事は無視して、地上の直穂(なおほ)に突撃するはずだが……

 きっと奴は、首を丸めるはずだ。

 

 予想どおり。

 ドラゴンはすれ違いざまに俺の方に顔を向けて、俺を追いかけるように、空に向かって首を曲げていく。

 

 観察と読みが的中した。

 さきほど空中で、ドラゴンが魔法を放った直後。 

 炎の向こうで、ドラゴンが頭を丸めておじぎしているのが見えた。

 首を丸めるのは、きっと弱点を隠すためだろう。

 ドラゴンの弱点は首元、(のど)だ。

 そこが一番"生命の気配"が強い上に、

 ドラゴンのお腹の側には、背中を覆っている硬いウロコが、ついていないのである。

 つまり防御が薄いのだ。

 

 俺はドラゴンの巨体を追い越して、首を狙うフリをしながら、ドラゴンを追い越し天へと昇る。

 動きを止めて下を見ると、

 ドラゴンは背中を下。お腹を上にして。ひっくり返っており、ダンゴムシのように身体を丸めていた。

 

 その状態でも飛べるのかよ、と突っ込みたくなるが。

 俺は今度こそ、ひっくり返ったドラゴンの首元へと、一直線に飛び込んでいった。

 ここで決める。

 残り時間は30秒。

 もう時間に余裕はなかった。

 真下のドラゴンを目掛けて、重力にも助けられながら、加速しながら落ちていく。

 

 しかし……

 ドラゴンは、巨大な羽で大気を叩いた。

 グルリンッ!! と風圧で、身体をドリルのように半回転させて、

 フライパンの上のパンケーキのように、上下さかさまに裏返った。

 いや、元通り、背中が上になったというべきか、

 上空からの俺の攻撃は、ドラゴンの背中の硬いウロコに防御されてしまった。

 くそっ、なんて動きだ。

 デカいくせに動きが早い。

 これでは俺の攻撃は、竜の喉には届かない。

 

 だが……

 作戦通りだ。

 ドラゴンは横に避けたら間に合わないから、身体をその場で反転させるしかなかったのだ。

 反転によって、上からの俺の攻撃は防がれた。

 だが、下からの攻撃は?

 

 そう、お腹の面が弱点の、このドラゴンの倒し方は、

 天空と地上、真反対の二方向から、同時に攻撃する事だ!

 

直穂(なおほ)っ!!」

 

 俺はギリギリで、直穂(なおほ)の射程範囲から、横に回避した。

 

 入れ替わるように、地上から焼け付く太陽の光の如き直穂(なおほ)の閃光が、空へ向かって駆け上がり……

 

 光は、グレートドラゴンをお腹の側から飲み込んだ。

 すさまじい光量と威力で、ドラゴンの身体を焼き尽くしていく。

 直穂(なおほ)の魔法は、夜の大空に向かって、大きな光の柱をつくった。

 

 ビリビリと空気が震撼する。

 目の前が眩しさのあまり真っ白になる。

 

 そして……

 俺の賢者タイムが終わりを告げた。

 

 え……?

 

 空中に取り残された生身の俺は……

 

 落下、落下、落下……

 

 死の恐怖で声も出ないまま……

 

 落ちる、落ちる、おち………

 

 意識が途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……おい……起きろ……」

 

 精悍な男の声に呼ばれて、俺は目を覚ました。

 ぼんやりと目を開くと、俺の身体はずぶ濡れで、先ほどの不愛想な青年軍人に抱えられていた。

 

「ドラゴンは……? 直穂(なおほ)はどうなりましたか?」

 

 俺はぐったりとした身体で、口を必死に開いた。

 かすれ声しか出なかった。

 

「お前の彼女は、魔法を放った途端に気絶した。まあ心配ない、外傷もないし、疲労で寝ているだけだ。巨大な黒竜も絶命(ぜつめい)した」

 

 青年軍人は、ぐったりとした俺の身体を起こしてくれた。

 俺の隣では直穂(なおほ)がぐったりとしていて、同じように女軍人に抱きかかえられていた。

 

 ここは、俺が飛び立った川のほとりであった。

 町の中は依然として燃えていて、悲鳴や救助の声が飛び交っていた。

 

「そうか……落下する俺を、あなたが助けてくれたんですね。ありがとうございます……」

 

「礼には及ばん。お前はこの街を守ってくれた。その事には感謝している」

 

 軍人さんは、俺を抱えながらそう呟いた。

 そして無表情の瞳を、俺の方へと寄こした。

 

「だがな……いくつか気になることがある。 俺の質問に答えてくれ」

 

 青年軍人は、俺を怪しむような、疑うような顔で俺を見下ろしてきた。

 

「まず一つ聞く、この黒竜の大群は、お前たちが原因か?」

 

 黒竜の大群の原因。

 とんでもない容疑をかけられて、俺は背筋を凍らせた。

 

「違いますっ! 俺達はたまたま通りかかっただけで……」

 

「たまたま? 本当か? お前達が黒竜の群れを連れてきたわけではないのだな?」

 

「もちろんですっ!!」

 

「そうか……」

 

 目の前の青年軍人は、依然として険しい表情を崩さない。

 女軍人は、気絶した直穂(なおほ)を胸に抱えたまま、不安げに俺のほうを見ていた。

 

「まあいい、では二つ目の質問だ。

 お前の彼女の直穂(なおほ)とかいう女の、【白い光の特殊スキル】は、

 一昨日(おととい)の夜。フェロー地区で起きた、捕獲対象モンスター殺害および獣族罪人逃亡事件で、 "謎の金髪少女"が使用した技と特徴が似ているようだが、心あたりはあるか?」

 

 獣族罪人の解放?

 二日前ってことは。やっぱり俺たちの事だよな?

 【神獣マルハブシ】と戦い、王国軍から誠也さんとフィリアを救出した時の話だろう。

 謎の金髪少女は、リリィさんの事か。

 魔法を使ったのは、リリィさんではなくユリィなのだが、報告に手違いが起きているらしい。

 でも確かに、直穂とユリィの白い光の魔法は、似ている気がする。

 唯一の違いは、ユリィの魔法は、一瞬で発動して一瞬で効果が切れるという点だ。

 俺は必死に、言い訳を考えた。

 

「知りません。一昨日(おととい)は友達が急病にかかって、大変だったんです。医者に見せても、薬が不足してるみたいで……」

 

 俺は平然と嘘をついた。

 青年軍人は、すこし眉をヒクつかせた。

 

「急病? その友達はどうなったんだ」

 

「まだ生きているはずです。俺は一刻も早く、マグダーラ山脈に行かなければなりません」

 

「なるほど……マグダーラ山脈に。たった二人でか?」

 

「……はい」

 

 そう、たった二人で。

 誠也(せいや)さんとフィリアの存在は、隠し通さねばならない。

 

「じゃあ、最後に質問だ……」

 

 青年軍人は、じっと俺の目を見つめて、距離を詰めてきた。

 気まずさのあまり、俺がさっと目を逸らすと、

 彼は俺のあごを掴んで、むりやりに目を合わせてきた。

 

 俺は、至近距離でイケメン軍人と見つめあう。

 少し近づけば、唇が触れ合う距離。

 ゼロ距離で視線が交差する。 

 くそっ、何をする気だ。 

 まるでキスする勢いじゃないか?

 俺は男は守備範囲外だし。

 直穂(なおほ)という恋人がいるんだぞ?

 

「……ちゃんと俺の目を見て、そして答えろ」

 

 青年が、イケメン顔に似つかわしくないドスの効いた声で、

 俺を睨みつけてきた。 

 

「ちょっと、何してるんですかっ!?」

 

 女軍人さんが、慌てた様子で口を挟んできた。

 彼女は顔を赤く染めて、両手で表情を隠していた。

 

 そして、目の前の彼は、息のかかる距離で口を開いた。

 

「……お前、岡野大吾(おかのだいご)という名に、聞き覚えはあるか……?」

 

「え……?」

 

 俺は、動揺を隠せなかった。

 岡野大吾(おかのだいご)。だと? 

 聞き間違えじゃないよな?

 なぜコイツ(・・・)が、ボス部屋ではぐれたはずの俺のクラスメイト、岡野大吾(おかのだいご)の名前を知っている?

 

 青年軍人の顔が、途端に険しくなった。

 

「何か…… 知っているのか?」

 

「知りませんよっ……」

 

 俺は向けられた殺気に恐怖して、必死に首を左右に振ったが、

 彼を誤魔化すことはできなかった。

 

「やはり貴様、指名手配中の"召喚勇者"の一味(いちみ)か?」

 

 彼は、俺の胸ぐらを掴みながら、そう言った。

 

「指名手配……?」

 

「そうだ……ヴァルファルキア大洞窟のラスボス攻略を抜け駆けし、

 神の秘宝と言われる【ネザーストーン(願いを叶える石)】を、全て浪費した大罪人どもだ」

 

 俺は、頭の中が真っ白になっていた。

 ラスボス攻略、ヴァルファルキア大洞窟、

 そして【ネザーストーン(願いを叶える石)】。

 俺も良く知ったワードだった。

 攻略を抜け駆け?

 【ネザーストーン(願いを叶える石)】を浪費?

 確かに、俺たちはスイーツ阿修羅を倒して、【ネザーストーン(願いを叶える石)】を使って願いを叶えた。

 岡野大吾は、マルハブシの猛毒の解毒を願い。

 俺は、新崎直穂(にいざきなおほ)浅尾和奈(あさおかずな)の蘇生を願った。

 

「俺の判断で……貴様を拘束させてもらう。身体が発光してない間は、強力な魔法も発揮できないようだしな」

 

 目の前の青年は、俺を睨みながら、ポケットから手錠をとりだした。

 俺は焦って、思考が空回りする中で、必死に頭を回転させた。

 

 とにかく、王国軍に捕まる訳にはいかない。

 召喚された俺のクラスメイトは、どうやら指名手配されているらしいのだが、

 どうなってるんだ!?

 

 もしかしたらリリィさんは、こうなる事を見越して、

 「俺たちが別世界から来た人間だという事は、秘密にした方がいい」

 と忠告してくれたのだろうか?

 

 俺は疲れた身体に力を込めて、必死で青年から逃げようとした。

 すぐそばの草むらには、誠也(せいや)さんとフィリアを隠しているのだ。

 浅尾(あさお)さんも、独立自治区で帰りを待っている。

 ここで捕まる訳には、いかないのだ!!

 

「くそっ! なんの話かさっぱり分からねぇよっ!! 俺は何もしていないっ!! この街をドラゴンから救ってやったのにっ! なんで疑われなくちゃいけないんだっ!!」  

 

 周囲には、人が集まっていた。

 俺は一か八か、大声をあげて、彼らの善意に訴えかけた。

 

「おい小僧……お前なにしてやがる……」

 

 すると、近くにいた中年男が反応して、こちらに近づいてきた。

 

「え……?」

 

 と、青年が後ろを振り返る。

 

「街を救った恩人に……何してくれとんじゃぁぁ!!」

 

 中年男は、青年を思い切り殴り飛ばした。

 

 青年は勢いよく空を舞い。川の中へとドボォォンと吹っ飛ばされた。

 川の方を見て驚いた。

 川の中には、川幅を全て覆い尽くすほどの黒くて大きな塊が、

 ブラックグレートドラゴンの死体が横たわっていた。

 

「きやぁぁぁ!! ザマルさん!!」

 

 女軍人は甲高い悲鳴を上げて、青年軍人を追いかけるように、水の中へと飛び込んだ。

 

 中年男は、それを見届けてから、俺の前にしゃがみこんで、両肩をがっしりと掴んできた。

 眼光は鋭く、髭はボサボサで、荒くれ者のような格好の中年男は、

 俺の目を見て、瞳をキラキラと輝かせて、酒臭い口を開いた。

 

「なぁ。街を救った英雄よ。お前の名は何という?」

 

 そんな言葉に、俺は動揺しながらも。

 

「名乗るほどの者じゃ、ありません」

 

 と、誤魔化した。

 本名を言うべきでないと思ったのだ。

 青年軍人は、岡野大吾(おかのだいご)の名前を知っていた。

 もしかしたら万波行宗(まんなみゆきむね)の名前も、広まっているかもしれない。

 

「そうか……ハハッ!! 名無しの英雄よ。ワシの大切なこの街を守ってくれてありがとう……どうかこの私に、恩返しをさせてくれ。

 ワシはこう見えても、ガロン王国軍の幹部でな。 名前は一成(カズナリ)だ。

 何か困りごとはないか? ワシに出来ることなら、何でも力になりたい」

 

 ガロン王国軍の幹部となのる。私服の一成(カズナリ)という男性は、俺の肩をポンポンと叩いて、そう言った。

 俺は、頭の中が混乱したままだったが。

 目の前の彼は、俺に感謝して、恩返しがしたいと言ってくれている。

 

「それでは……俺たちを、マグダーラ山脈の近くまで、連れていってくれませんか?」

 

 俺は、恐る恐るそう言った。

 

「あぁ、ワシに任せろ! 宇宙の彼方までだって運んでやるぜ!」

 

 一成(かずなり)さんは目を輝かせて、また俺の両方をポンと叩いた。

 

「いつ出発したい?」

 

「なるべく、早い方が良いです」

 

「分かった。ならば今すぐ行こう。 おいそこの娘、牛車をここまで持ってこい。大量の食料と水を付けてな!」

 

 そこの娘と呼ばれた女軍人さんは、気絶した青年軍人をおんぶして、水びっしょりの軍服で疲れた顔をしていた。

 

「しょ、承知しました……」

 

 女軍人さんは、嫌そうな表情を浮かべながら、

 青年軍人さんを背負ったまま、川の土手を駆け上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 あとがき
★作品タイトル変更しました!
 流石に「マスター◯ーション」はまずいと思い、  
 「"賢者タイム"で無双する?」に変更しました。 
 我ながら、良いタイトル変更ができたと思っています!
 示す内容は同じですが、"賢者タイム"からは生々しさを感じない。
 上品な下ネタだったんです!!


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