クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
暗い……
痛い、痛い……
助けて、助けて、助けて……
必死を呼ぼうにも、声がでない。
身体が動かなくて、逃げられない。
死にたい、楽になりたい、
殺してほしい……
でも私は、死になくても死なないの。
地獄の苦痛のなかで、生き続けなければいけない存在……
本当の限界まで、絶え間ない苦楽の奔流の中で……
助けて、痛いよっ……
もうやだ……殺してっ……
お願い……
……私を、殺して……
声が近づいてくる……
私の名前を叫んでいる。
あぁ、やっぱりダメだよ。
コッチに来ちゃだめ……
来ないで、
そんな無茶したら、
お願い。
殺さないで……
私のことは忘れて……
……私の気持ちなんて、知らない君は、
私の「助けて」を手がかりに、
死にかけの身体で、私の前へとたどり着く……
あぁ……やっと終わった。
やっと楽になれる……
そして彼が目覚め……
すべて、終わ……
世界が、壊れ……
★★★
はぁ………はぁ、はぁ………
悪夢から、現実へと引き戻される。
どくどくどくどくどくどく……
心臓の音が、ドンドンと
冷たい外気にあてられて、私の背中に滲んだ汗が凍るように冷えていた。
夢……悪夢か……
よかった……
仰向けて天を向いて倒れた
―
「どうした? 怖い夢か!?」
目を開けると。
私の彼氏の
安心して、涙が出そうになる。
男の子らしい太ももの上で私は、スー、ハーと呼吸を整えて、
身体の力を抜いていく。
さわ……さわ……さわ……と、優しく撫でてくれた。
私は、ゆっくり、口を開く。
「うん……すごく痛くて、悲しい夢を見てた……」
「そっか…… 辛いな。もう大丈夫だ…… だいじょうぶ……」
躊躇いながらも優しい手つきで撫でてくれた……
私は心臓の奥が、キュンとせつなくなって、
私は彼の
「ねぇ、抱きしめて……」
私のお願いに、
私の背中に両腕を回し、寝ている私の上体を起こし、
正面から男らしく、ギュウッと私を抱きしめてくれた。
あったかい……熱い、大好き、安心する……
心臓と心臓が重なる、
胸と胸が密着して、互いの首筋が重なり合う。
目を開いて、辺りを見渡すと。
空はまだ星空だった。
夜だけど周囲は明るかった。
メラメラと炎が燃え盛る音がしていた。
私は街中の川の河原で、
河原には小石が敷き詰められていて、かかとがちょっと痛かった。
「
「俺たちは、ガロン王国軍の
二人とも正体がバレないままで、なんとか牛車に乗せてもらうつもりだ」
「え……?」
あまりの衝撃の事実に、声を漏らした。
そうだ。
そう言えば私達、地上に落下したんだっけ。
王国軍って、二日前の夜に戦った人たちだよね?
フィリアちゃんを捕まえて、酷い仕打ちをした人たちだよね?
「さらに深刻な事がある。
俺たち一年一組のクラスメイトが、”指名手配”されているらしい。
だから本名は隠した方がいい。捕まる可能性もあるからな」
「えぇ!?」
私は再び、落雷に当たったみたいな衝撃を受けた。
嘘っ……なんで? 意味が分からない。
クラスの皆が”指名手配”? なんでそんな事に……
「クラスの皆は、生きてるの? 今はどこに……」
「何も分からない……でも……
今の俺達は、
……クラスの皆は、きっと無事だよ……」
「おぉ!! 起きたか!! もう一人の英雄!!」
突然に、私の後ろから、陽気な男性の声がした。
振り返ると、ガタイの良いおじさんが、ニッと歯を見せて笑っていた。
男は私の方を見て。
「この街を守ってくれた英雄よ!! 心より尊敬し、感謝する!
さて英雄よ! 貴様の名は何という!?」
この街を救ってくれた?
ああ、黒竜を倒したことか?
そうだ私は……
あの後どうなったんだっけ?
巨大黒竜の"生命の気配"が、消滅するのを目にしたあと……
……その先の記憶がない。
もしかして、そのタイミングで気絶したのだろうか?
「名乗るほどの者ではありませんよ」
私は
「ガッハッハッハ!! そうかお前も名無しの英雄か!
いいだろう! ワシがお前たちをマグダーラ山脈まで案内してやる!!
ちょうど牛車も届いたところだ!
私の名前は
「あ……ありがとうございます」
やはりこの人が、行宗の言っていた
王国軍の幹部には見えない。短パンに白シャツのラフな格好だった。
しかしよくみると、二の腕とかふくらはぎとか、鍛え抜かれて洗練されている。
私は、
「礼には及ばん! 黒竜の群れの襲来で、この街は壊滅する運命にあった。
その運命を、お前たちが変えてくれたのだ。
ワシらはお前らに、感謝してもしきれんのだ」
ガタガタガタ……と、
川に沿った砂利道から、牛車の音が聞こえてきた。
先頭には二頭の黒い牛が繋がれていて、どちらも体長は4メートルほど。
その巨体には迫力があった。
後ろには運転席と、その後ろには布に覆われた荷台があった。
「牛車っ!! 持ってきました!!」
運転席から、女の子が息切れながら大声で叫んでいた。
「ご苦労! 見知らぬ女軍人よ! 次は救助のほうに手を回してくれ!!」
ガロン王国軍幹部の
「はいっ!!」
女の子の影は牛車から降りて、町の中へ、まだ消えない炎の方へと走っていった。
逆光でよく見えなかったが、おそらく着ていた服は軍服だ。
遠くから、子供の泣き叫ぶ声、悲鳴が聞こえてくる。
炎と煙が立ちのぼる。
まるで地獄絵図。
黒竜のが消えてもなお、その被害は止まることなく、
ギラギース地区の都市を焼き続けていた。
私の水魔法なら、町を消火できるかもしれない。
そう思い立った瞬間、行宗に強く手を握られた。
「
そうだ。優先順位を考えなければいけない。
それに、
最優先は、
クラスメイトの事は、その後でも遅くない、はず……
「すぐに出発できるか?」
「ちょっと待ってください、荷物があるんです」
牛車に向かおうとする
そして
草むらの中に隠れていた、二つの大きな寝袋と私達のカバンを、一人で背負って戻ってきた。
「それは……人間か?」
「はい。旅の途中で死んでいった、二人の仲間の死体です。
せめて目的地のマグダーラ山脈までは、一緒に連れて行きたいんです……」
あの二つの寝袋の中にいるのは、
「……さぞつらい旅だったんだな。持ち物はそれだけか?」
「はい」
「女英雄のお前にも聞く、出発して構わないか?」
「はい」
「よし! では出発じゃあ! 荷物は荷台に積んでくれ!」
私達とその荷物を牛車へと乗せてくれた。
まず私達の荷物は、牛車の荷台に乗せられる。
二つの死体…… と思わせておいて、中には生きた
私と行宗は、運転手の
そして、ガタガタガタ……と、牛車は走り出した。
牛って早いのかな? と疑っていた私だったが。
なるほどそこそこ早い。
自転車ぐらいのスピードで、壊滅した夜の街を、牛たちに引かれて
かなり揺れるな。
砂利道を進んでいくたびに、牛車が激しく振動し、お尻がガンガンと叩かれてしまう。
座っている私でさえ、すぐに車酔いしてしまいそうだ。
荷台に乗ったフィリアと
―
ガタガタガタ……と、
牛車の荷台が揺れるたびに、ガンガンガンと床で頭を打つ。
それにしても……
まさか
西宮家の屋敷が襲撃を受けて、獣族反乱軍の捕虜となった私を、助け出してくれた人だ。
さらに私の王国軍として生きる道を示し、
私に
数年前、軍の幹部まで昇格したという噂は聞いていたが、
まさかギラギース地区にいたとはな。
私は、王国軍に22年従事した古参兵である。
よって、ガロン王国各地に知り合いも多い。
まあなんにせよ、清水流るる美しき都ギラギースが、
黒竜の復讐を受けてもなお半壊で
この牛車の運転手、
二十年ぶりに会った彼は、寝袋の中だから姿は見えなかったが、声は渋くなっていた。
でも懐かしいな、小さな頃はこうやって、ギュウギュウに人が詰め込まれた牛車の中で、
「なあ
フィリアの小さな声が、寝袋がガザガザと動く音とともに聞こえてきた。
フィリアは私のすぐ隣で、私と同様に寝袋の中らしい。
牛車の音がうるさいので、フィリアの声は、そばにいる私だけが聞き取れる。
「……まっくらで何も見えないし、蒸し暑い…… 床もガタガタ揺れて、眠れない……」
フィリアは、疲れた声でため息をついた。
「なぁ
「おそらく、5時間ぐらいだ」
「5時間?? 意外と短い……けど……」
キラギース地区のすぐ先は、山地になっているのだ。
隠れつつ徒歩で進むなら、丸一日かかるが、
牛車で進むなら、軍が管理するトンネルを通ればよい。
「しかし…… この体勢のまま、身動きとらずに五時間か……しんどいな……」
フィリアは出発早々、車疲れした様子だった。
「私としては慣れたものだ。
王国軍での戦時は、ゲリラ部隊のリーダーだったからな。
農作物の袋に紛れて敵のアジトに潜入した時は、まる二日
「へぇ、それ面白いなぁ……」
フィリアは、少し声を明るくして、感心のため息をついた。
そして会話が途切れた。
無言の時間が続く。
しばらくして、またフィリアが口を開いた。
「…………なあ
もっと聞かせてくれないか?
子供が親に絵本の読み聞かせをねだるように、フィリアは弾んだトーンで
フィリアの楽しそうな声に、私も心があたたまった。
でも……
「聞かない方がいい。……私の話なんてみんな、獣族を嬉々として殺戮した物語だ……お前を傷つけてしまう……」
私は自嘲するように、吐き捨てるようにそう言った。
そうだ。
忘れてはいけない私の
フィリアと出会うまでの私は、獣族を憎み殺戮してきた。
本来なら私は、フィリアの傍にいる資格のない人間……
「構わない。お願いだ。聞かせてくれないか……?
オレは
オレはっ…… オレにとって誠也は…… 大切な人だから……
どんな事を聞いても、オレは傷つかないし、
いつになく真剣な声色のフィリアに、私も真剣に考えた。
そして、話すことに決めた。
目的地に着くまでの暇つぶしに、今まで誰にも話したことのない。私の人生のすべてを打ち明けることにしたのだ。
「恥ずかしい話になるんだが……いいか?
私は10才の頃の話だ。
私は西宮家という、ガロン王国フェロー地区にあった貴族の屋敷で、使用人として働いていたんだが……
「はぁ!? ちょっとまて、その女について詳しく聞かせろ」
フィリアはなにか焦った様子で、早口で口を挟んできた。
「
外遊びが好きな女の子で。本を読んでいる私の手を掴んでは、毎日
「ふ、ふーん。そういう女の子が好きなのか?」
「あぁ、好きだった……。でも……
私は獣族反乱軍の捕虜となって、酷い仕打ちと拷問を受けた……」
「なっ……そんなっ……!」
フィリアは悲痛な声を上げた。
私は昔を懐かしみながら、今の幸せを噛みしめていた。
今まで自分の過去は隠してきた。
軍の親しい友人にさえ、打ち明けたことはなかった。
でも、今初めてフィリアに過去を語っていくと、昔の自分が救われていく気がした。
「その後私は、王国軍に助けられたんだ。
助けてくれた人は、
私の王国軍人としての先生でもある。
そして……
……いま私達が乗っている、牛車の運転手でもある」
「え……? は、はぁ!? なんだって!?
衝撃展開すぎるだろっ!!
ちょっとまて!
女の子のところからもっかい! ゆっくり詳しく話してくれっ!」
すっかり元気なフィリアの声に、
私は寝袋の中で、クスクスと声を殺して笑った。
あぁ、すごく楽しい。
やはり私は、フィリアのことが大好きだ。
彼女のためなら、私はなんだってできる。
フィリアの笑顔が、今の私の生きる意味なのだから……
ー
牛車は街を抜けて山道へと入った。
空の色が明るくなっていき、しばらくして日の出が差し込んできた。
夜明けである。
街を抜けるとそこは山々が連なっていた。
牛車で送って貰えて良かった。
この山を幾つも歩いて越えていくとなると、相当骨が折れそうだからな。
道路の左右には鉄柵が張っていた。
道路内へのモンスターの侵入を防いでいるのだろうか?
俺の左隣の
コトコトコト……と、牛車は結構激しめに揺れている。
「可愛い彼女さんだな……」
「あげませんよ?」
「とらねぇよ、ワシが何歳に見える? もうすぐ孫が産まれる歳だぞ?」
そう言う
「
「今年で38才だ」
それは、かなり若くないか?
一成さんもその子供も、20才ぐらいで子供を作っているという事だ。
「あの、いつ結婚されたんですか?」
「いつだっけか…… あぁそうだ17才の頃、
今から、えっと……21年前か……
獣族反乱軍との戦争が始まって、すぐの頃に、命を救った女の子に言い寄られて、結婚したんだ……」
「17才って、俺と同い年じゃないですか!」
そうか、この世界は日本じゃない。
結婚は18才以上からなんてルールはないから、若くても結婚できるのか?
「へぇ! お前17歳かぁ。 懐かしいなぁ……,
あの頃は地獄の日々だったが、ギラギラ輝いていたなぁ……
……そうだ名無しの英雄よ。お前はその彼女と、結婚しないのか?」
「故郷に帰るまでは……結婚はしません」
考えた答えが、それだった。
まあ日本に帰ったとして、俺たちはまだ17才だから、すぐに結婚なんでできないけどな。
「そうか…………
故郷には、いつぐらいに帰れるんだ??」
いつ、になるんだろうか?
現実世界に帰る方法なんて、今のところ、まったく分からない。
まずは浅尾さんの病気を治して、
それから公国で待っている、リリィさんに会いにいって……
でも、「クラスの皆が指名手配されている」って、
あの青年軍人に言われたんだよな……
「まだ分からないです。今は、目の前の事に精一杯で……」
「………………」
一成さんは黙った。
しばらく無言の時間が続く。
ガタガタガタと、牛車の車輪が軋みながら、景色のいい山道を登っていく。
「まぁ、年上のワシから、一つお前に忠告できるとすれば……」
一成さんが、ポツリと口を開いた。
真剣なその表情から、俺も身構えて姿勢を正した。
「……人生は、何が起こるか分からないということだ。
大切な仲間が毎日死んでいく日常を経験した、ワシだから言えるが、
人はいつ死ぬか分からない……」
確かに、その通りだ。
実際に今、
「まあ分かりやすく言えば、好き同士なら、早く
チンタラしてると、別の男に心移りしちまうぞ」
「……それは怖いですね、肝に命じておきます」
そしてまた、会話が途絶えた。
「あの……
俺は意を決して、訊いてみる事にした。
「俺たちは最近ずっと山の中で、事情を知らないのですが、
ヴァルファルキア大洞窟が攻略されたって、本当なんですか?」
俺はリスクを承知で、尋ねた。
あくまで部外者として、俺も召喚勇者であることは隠しながら……
「知らないのか!?
あぁ、本当だ。
ヴァルファルキア大洞窟は攻略された。
攻略期間30年にして、あと一歩で世界に真理に迫れるって時に、
異世界から来た召喚勇者達に先を越されて、全てが水の泡になったんだ……」
「っ!!」
"30年"という数字に、思わず声が飛び出そうになった。
ダンジョンの攻略って、そんなに時間がかかるのか!?
たしかに、"92層"とか言ってたし、
"大洞窟"っていうぐらいだから、大きいんだろうけど……
という事は、あのラスボス【スイーツ
「あの六人目の英雄"バーンブラッド"の功績も、全て無駄になった。
本来100年以上を要する大ダンジョンの攻略期間を、70年も短縮したのは、アイツの功績が大きいからな……
ワシは世界の真理になんか興味ねぇが、死んでいったアイツの事を想うと残念だ……」
本来は、100年以上かかるのか?
俺は唖然としていた。
つまり、人間の寿命以上の攻略期間。
大ダンジョンって、どれだけ規模が大きいんだよ……
「その…… "召喚勇者"たちが指名手配されているって事は、
今も召喚勇者たちは、この世界のどこかに隠れてるってコトですよね?
それは……正直、怖いです。
なにか彼らに、特徴とはないんですか?
その、年齢とか、服装とか……
名前とか……」
俺は
俺たちの情報がどこまでバレているか、探る必要があった。
「……見ろ。昨日夜に届いた、"アキバハラ新聞"の号外だ。
"召喚勇者"全員の顔と名前、【特殊スキル】まで判明してる。
確保済みは7人。逃亡中が30人。
おそらく公国裁判かけられて死罪になり、
アキバハラ公国にて、公開処刑されるはずだ」
俺は、息が詰まりそうだった。
心臓が止まりそうだった。
新聞には
「号外! 緊急指名手配!」
という見出しに。
おそらくクラスメイト全員顔写真と、
人名にスキル名がびっしりと並んでいた。
その写真は、地上の砂漠地帯のような場所で、撮影されており。
逃げ惑う顔、悲鳴をあげた顔、涙を流した顔ばかりで、地獄絵図だった。
クラスメイトが7人が捕まったのか?
公開処刑って、嘘ろっ!?
それに、アキバハラ新聞って!
"使命手配"を出してるのは、アキバハラ公国なのか!?
リリィさんの祖国じゃないか!?
捕まっているのは7人……
知っている名前も多かった。
俺と犬猿の仲の野球部、
他の皆より大きく貼られていて、"首謀者"と書かれていた。
次に使命手配中のクラスメイトは、30人。
俺の親友、
「ん??」
俺はおかしな二つの点に気づいて、声を漏らした。
一つ目、俺と
二つ目、
よく見ると、他の人の名前や【特殊スキル】も、ところどころ間違っていた。
顔写真だけは本人であったが、そこには偽名が載っていたのだ。
理由は分からない。
「この新聞、もらってもいいですか?」
俺は、手をわなわなと震わせながら、
「もちろんだ。
本来は10ガロン払って貰う所だが、お前は街を救った英雄だ」
「ありがとうございます……」
俺はその新聞を、ギュッと丸めて握りしめた。
動揺を隠せているのか、自分でも分からなかった。
飛び出そうになる心臓を、必死に抑えつけて呼吸を整える。
大丈夫、だいじょうぶ。
必死に頑張れば、きっと何とかなるはずだ。
クラスメイトを信じろ、自分を信じろ。
俺と
ガタガタと、牛車は進んでいく。
朝日に照らされて煌々と輝く山景色をみながら、俺は一息ついて、背もたれに寄りかかった。
「まだ道のりは長い。今のうちに寝ておけ。
山のふもとに着いたら、マグダーラ山脈を登るのだろう?
疲れはとっておいた方がいい」
今日は朝3時に起きて、動きっぱなしだったからな。
「そうですね……」
俺は、左肩に寄りかかって眠っている、
安心しきった童顔で、俺に身をあずけてくれる
さらけだしたうなじ、柔らかそうな耳たぶ、ぷっくり膨らんだ頬っぺたとくちびる。
美しさを際立たせる長い睫毛に、シャツのはだけた胸元から見える、なめらかな谷間の入り口。
骨ばった鎖骨に、華奢な肩、しっかりとしたお尻と太もも……
サラサラと美しい黒髪ショートに、前髪右半分を
眠っている可愛い彼女を見ていると、俺も眼福だった。
見ているだけで、疲労と心労が癒されていき……
入れ替わるように、眠気が襲ってきた。
「俺も、寝ます……」
俺は