クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
「それじゃ、いくぞ」
「うんっ」
「作戦、開始ッ!」
ダンッと強く地面を蹴り上げ、
体長15メートル強のサソリ型モンスター。
4つに分かれた硬いしっぽがそり返り、先っぽには大きな毒針がついている。
モンスターは、雪の壁を掘り進めていた。
積雪に埋もれた上半身には、四本の大きなハサミ腕がついているハズだ。
「【
空へ飛びあがった天使――
天使の纏う光の円環は無数の光の矢となり、
光の豪雨が【サルファ・メルファ】へと、襲い掛かる。
バキィ、ゴキィ、ジュゥゥ!!
サソリの甲殻が火花を散らしながら、バキバキと破壊音を立てる。
モンスターの周囲の豪雪が、みるみるうちに蒸発していく。
激しい閃光に、俺は思わず目を細めた。
雪の大地はジュワァァと溶けて、あたりは霧に包まれた温泉のようになった。
白い霧に包まれて視界が悪い。
だがしかし、俺には見えている。
ジタバタと動きながら、濃霧のなかで、淡く光っている【サルファ・メルファ】の生命の気配が。
頭上のHPバーが、少しばかり減っているのが見えた。
っと!
濃霧を切り裂くように、2本の尻尾が襲いかかってきた。
サソリの太い尻尾が、毒針を向けて突っ込んでくる。
俺は後ろに飛んで回避した。
どうやら向こうも、濃霧の中で俺の位置を把握しているらしい。
まあ当然か。
今の俺は賢者状態、全身が白く光ってるんだから。
「
「了解!!」
頭上から
湯気の霧が少しずつ晴れていく。
あたりの雪が蒸発して、
体長15メートルのモンスター、【サルファ・メルファ】が姿をあらわした。
夕日に照らされた霧は、綺麗な虹を
「でかいな……
……それに、あんまり効いてない」
俺は息を漏らした。
【サルファ・メルファ】の身体は、甲殻がボコボコと凹んでいるものの、血は流れていなかった。
このモンスターは、遠距離の魔法に耐性があるらしいが、
「
フィリアが後方、安全な場所から声を張り上げる。
「分かってる!」
俺は返事して、空を飛び。
【サルファ・メルファ】の頭を目指した。
4本のサソリの腕をかいくぐる。
フィリアから採血した、"獣族の血"の瓶を取り出して、
賢者の白い大剣で、バチィィィと叩き割った。
"獣族の血"
獣族の血は匂いが強く、多くのモンスターの大好物で、
匂いでモンスターを呼び寄せる力を持っている。
俺達とフィリアが出会った時も、ガロン王国軍はフィリアの血を使って、【神獣マルハブシ】をおびき寄せていたそうだ。
しかし獣族の血は、モンスターを集める以外に、別の使い道もある。
フィリアの濃い血を、モンスターの鼻先でぶちまけると、
あまりに強すぎる匂いに、モンスターは
効果は
【サルファ・メルファ】はグラリと身体のバランスを崩し、明らかに動きを鈍らせた。
「勝ったな」
思わず口から笑みが溢れた。
俺は間髪入れずに、サソリの頭部を白い大剣で、切って切って切り刻む。
甲殻を貫通するたびに、面白いぐらいにHPが減っていく。
脳を剣でめった刺しにされて、【サルファ・メルファ】は弱々しく
「
フィリアが不安そうな声で叫ぶ。
あたり前だ。油断なんかできるか。下手したら死ぬんだぞ。
【サルファ・メルファ】は回復力、耐久力、毒の分解能力に優れているらしい。
回復する暇を与えず、一気に倒しきる!
「尻尾はちゃんと見張ってるから、
「助かる!」
俺はグリグリと、サソリの脳みそを大剣でかき回している。
1分も経たずに、HPは半分を切った。
作戦は順調だ。
順調なハズだった。
ーフィリア視点ー
オレは離れた岩陰から、
「
オレは、二人に向けて叫んだ。
作戦は上手くいき、オレの血の匂いでモンスターの動きが鈍くなった。
賢者と天使になった二人は最強だ。
オレや
二人に出会えてよかった。
みんなを信じて、ここまで来て良かった。
オレは二人をみて、胸を熱くしていた。
父さんが病気になって、一人で村を飛び出して、迷ったあげくに
その後、ガロン王国軍に
オレ一人じゃ辿り着けなかった場所に、いま、オレはいる。
みんなのお陰だ。ありがとう。
今のオレには共に戦う仲間がいて、
それが嬉しくて、ちょっと泣きそうになった。
しかし、
そんな涙は、次の瞬間に、弾け飛ぶ事になる。
「フィリア!!?」
「え??」
オレがハッと足元を見ると、すぐ足元には地面が無くて。
オレの身体は、宙を浮いていた。
「ええぇ??」
オレはぐんぐん、地面から離れて、
空へと吸い上げられていたのだ。
なんで!?
バサッ! バサッ!!
という、翼が空を叩く音を聞いて、
オレはようやく理解した。
オレは腰を大きな鳥に捕まえられて、空へと連れ去られていたのだ。
「あ……ぁあ……」
大きな鳥に腰をガッチリと掴まれて、身動きが取れない。
魔法で抵抗しようと考えても、恐怖のあまり何も出来なかった。
キェェェェェ!!
大きな白い羽毛の鳥は、甲高い声で鳴きながら、夕方の寒空をのぼっていった。
ぐんぐんと高く。
壮大な雪原に、オレンジの夕日がギラギラと照りつける。
視界の端には、大きくて立派なくちばしが見えた。
地面からどんどんと遠ざかる。
突風がびゅうびゅうと鳴り響く。
怖い、怖い……
オレは、高い所は苦手なんだ。
死ぬ……死ぬっ……
恐怖のあまり、声が出なかった。
は、はやく終わってくれ!
オレを楽にしてくれ!
夢なら、さめてくれぇ!
「フィリアちゃんっ……」
オレは大きな鳥に連れ去られながら、空の上で意識を手ばなした。
ー
「まずいっ!!」
叫んだ時には遅かった。
大きな鳥が、生命の気配の索敵範囲内に、
一瞬のうちに、フィリアを大空へと連れ去った。
フィリアを掴んだ鳥は、ぐんぐんと空へあがっていく。
ここはマグダーラ山脈。
フィリアを見失えば、再び見つかる可能性は少ない。
それにフィリアには、戦闘能力がない。
ここでフィリアを連れ去られれば、フィリアはきっと、あの大きな鳥の胃袋のなかだ。
「フィリアちゃん!!」
すぐに両手を下ろした。
遠距離攻撃は、フィリアを巻き込んでしまうため使えない。
そのため、接近戦に持ち込むのだろう。
俺は息を呑みながら、ただ空を見上げていた。
そんな時だ。
止まっていた【サルファ・メルファ】が、動き出したのだ。
背中側から俺に向かって、毒針の尻尾が三本、凄い勢いで伸びてきた。
うっかりしていた。
フィリアに、さんざん注意されていたではないか。
「フィリアの血を嗅がせた後は、攻撃の手を止めてはいけない」
と……
【サルファ・メルファ】は、回復力も毒の分解能力も高いモンスターだから、
攻撃の手を緩めると、フィリアの血はすぐに、分解されてしまうのだ。
フィリアの誘拐に動揺し、俺の手は止まってしまった。
その
【サルファ・メルファ】は一瞬で、
動きも
素早い3本の毒針が、俺の命を狙ってくる。
危ねぇ!
俺は咄嗟の判断で、後方に飛んで回避した。
その判断が間違いだった。
ブスッ!
と、背中から、割れるような激痛が襲いかかった。
刺されたのだ、
もう一つの毒針に。
4本目の毒針が俺の背中から回りこむように、忍び寄っていたのだ。
俺はまんまと背中を向けて、そこに飛び込んでしまった。
ドクン!!
心臓が揺れ、視界が歪む。
間髪入れず、前方から、3本の毒針が襲いかかってくる。
(まずい……毒だっ。 次に毒を喰らえば、俺は確実に死ぬ……)
心臓の凍るような恐怖が、背筋を襲う。
時間の進みが、スローモーションに見えた。
走馬灯だろうか。
心臓の音がいやにうるさい。
外の音が聞こえない。
逃げなきゃ……
早く、毒の解毒を……
気持ちばかりが焦って、身体は金縛りにあったように動かない。
ポケットの中の解毒薬へ、手を伸ばさなきゃいけない……
早く、飲まなきゃ、死ぬ……
3本の毒針を、うまく
だめだ、だめだ、時間が止まったみたいに動けないっ。
「ゆきむねっ!?
やめろぉぉぉ!!」
次の瞬間。
目の前が、まばゆい
キィィィィィィィィン!!!
バギィ! ゴキィ!! ビキビキィ!!
世界が震撼した。
俺は猛毒で
………………
…………
……
ゆきむね……
ゆきむね……ゆきむね……起きてよっ
(寒い……)
(寒い……寒い……)
目の前が真っ暗だ。
背中には温かさを感じる。
でも身体の中は、凍えるように寒い。
「
泣いているのか?
誰だよ
可愛い
いや
いったいどうしたってんだ。
「嫌だよ……死んじゃヤダ……私はあなたが居ないと、なにも出来ない……」
くそ! ……なに心配かけてるんだ、俺。
早く起きないと……
なおほ……
だめだ、声が出ない。
目を開けろ。そうだ、頑張れ。
視界が開けた。
空には土の天井が見えた。
まだぼやける視界のなか、
俺の胸に顔を埋めて、肩を震わせ泣いているのが見えた。
なおほ……起きたぞ。
……もう大丈夫だ。
だめだ、上手く声が出ない。
喉のなかに
そうか俺は、サルファ・メルファの毒を喰らって……その後……
声が出ないなら、手は動かせないだろうか?
俺は左手の指を握った。
うん、大丈夫だ。ちゃんと握れる。
俺は、重い左手をなんとか持ち上げて、俺の胸で泣いている
「えっ……?」
俺がいつもみたく、優しく頭を撫でてやると。
俺は精一杯の笑顔で、震える唇を開いて、声を漏らした。
「おは……よう」
「うわぁぁあああっ!!
痛いぐらいに、ギュウと抱きしめられて、ちょっと息が止まりそうになった。
ありがとう……
「よがったぁぁ…… ごめんっ、
そうか……
俺は
それに、違う……
毒針に刺されたのは、俺のせいじゃないか。
俺のドジのせいで、フィリアを助けに行った
全部……俺のせいじゃないか……
俺の目尻からも、涙が出てきた。
二人で一緒に抱き合って、わんわんと泣いていた。
少しずつ、視界が鮮明になっていく。
サルファ・メルファの毒が、抜けていくのが分かる。
「……
俺はやっと口を開いて、まともな言葉を離した。
「うん…… そこにいるよ。でも……」
あたりを見渡すと、ここはお馴染み、
「山場は越えたようだな。
……では私は、フィリアを探しにいってくる」
「ダメですっ!! こんな吹雪のなかじゃ、遭難するだけですよ! フィリアさんの連れさられた方向すら、まったく分からないんですよっ!?」
吹雪?
俺は不思議に思って耳を澄ますと、確かに地下室の外から、ごうごうと激しく雪が吹き荒れる音がした。
「フィリアを見捨てろというのか!? 私は約束通り、
こんな猛吹雪だからこそ、早くいかねばフィリアが死んでしまう!」
息は荒くて、鋭い目は涙の痕で真っ赤だった。
「そんな分かってますよ! でも真っ暗な極寒の夜に、猛吹雪のなか、どうやって探すつもりですか?」
「気合いで探せばどうにかなる!
この【ステュムパーリデス】とかいう鳥型モンスターの巣を探せばいいんだろう?」
「この悪天候と
「ふざけるなっ! そんなに待てるかっ!
フィリアは今も、どこかで私たちの助けを待ってるんだぞっ!
なあ知ってるか!?
アイツは、あいつは、絶対にあきらめないんだっ!
王国軍に捕まって、どんな酷い事をされても、アイツの目は死ななかったっ!
ずっとっ、未来を見てたんだよっ!」
「すまないフィリア。……いつも私のせいなんだっ。
私がクソ鳥の接近に気づいていれば、私がフィリアを守れたハズなのにっ……!
一番そばにいたのは私なのに、また守れなかった。
王国軍に捕まった時と同じだっ……
私は、お前たちのように強くない……
愛する女ひとり守れないっ……!」
膝をついて泣き崩れる
いたい、いたい。
心が重たい。
深刻な事態に
この雪山で、フィリアと
猛吹雪のなか、真っ暗な極寒の夜。
大きな鳥に捕まえられたフィリアは、どこかに連れていかれて……
死んでしまっただろうか?
バカか!
そんなはずはないだろう!
死んでるわけがない!
だって、フィリアと約束したじゃないか!
四人で薬を持ち帰って、
なあフィリア?
これぐらいでくたばるお前じゃないよな?
「
俺が毒を喰らったせいで、フィリアさんを助けられなくて、本当にごめんなさい……」
俺は自分の失態を後悔し、深く謝罪した。
「でも大丈夫です。フィリアは生きています。
そして絶対に、また再会できます」
続けて俺は、強くそう言った。
「なぜ……そう断言できる? もしかしたらフィリアはもう……」
「フィリアは絶対に生きています。
だから俺達も諦めません。
それは…… フィリアを助けにいくという
「なんだと!?」
「フィリアは、
フィリアはきっと、たとえ自分が死んだとしても、
違いますか?」
「……っ ……ああ。 まぁ……そう……だな……」
「俺達も、自分の命は大事にいきます。
吹雪が止むのを待ってから、全力でフィリアを探します。
それでいいですか?」
「いや……分かった。
確かに私は、自暴自棄になっていた。
……すまんな」
俺は
なあ神様。
この世界の神様は「白菊ともか」って言うんだっけか?
なぜか俺の最推しVtuberと同性同名なのだか、このさいそんなことどうでもいい。
神様どうか教えてくれ。
俺たちの進む先に、ハッピーエンドはありますか?
地下室の外で、ゴウゴウと吹雪の音が激しさを増していた。
狭い地下室の中、
俺たちは静かに作戦を練りながら、吹雪が弱まるのをただ待っていた。
ちなみに、俺が気絶した後、【サルファ・メルファ】は、
半狂乱になった
【あとがき】
もしも!
この作品が書籍化またはアニメ化されたときは、
作品名の省略形は、
「クラ
にしようと思います!
ここから第四膜もクライマックスです!
楽しんでいきましょう!!
(そんなテンションじゃないかも)