クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
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星が綺麗な夜だった。
俺は、右腕を失ったまま、寝袋の中で、ぼーっと星空を眺めていた。
「おまたせ……」
そう言って、
星空を背景に透き通るような黒髪が、俺の頬をくすぐった。
「二人は?」
「フィリアちゃんはもう寝てるよ。マナトくんも眠ったまま……マントに包んで手足を縛っておいた。
もし目が覚めても、私たちに攻撃してこないためにね……」
「そ、そうか……」
直穂の口調はどこか冷たかった。
マナトを縛っておく。たしかにそれは正解だろう。
マナトの二人の姉、ニーナとヨウコを直接殺したのは、この俺なのだから……
マナトはきっと俺を恨んでいる。
復讐しにくるかもしれない……
「ねぇ……
直穂の声は、壊れたみたいに震えていた。
星空の光の逆光で、直穂の表情はうまく読み取れない。
「私、人を殺しちゃった……」
直穂の言葉に、息を飲んだ。
そうだ。直穂は、ギルアを殺した。
俺も同じだ。ニーナとヨウコを殺した。
……俺達は、紛れもない、人殺しなんだ。
「直穂……」
俺はただ、残った左腕を、直穂に伸ばすことしかできない。
右腕を失った俺では、直穂を抱きしめることすらできないのだ。
「……ねぇ行宗、約束したよね?」
直穂は震え声で、すがるように、俺に跨って問いかける。
「……あの戦いが終わったらさ、私とセックスしてくれるって、約束したよね……」
「うん……」
冷たい直穂のほっぺたに、左手の指先をそっと添えた。
「……ねぇ、こんな私でも、抱いてくれるっ……?」
「……え?」
「こんな、人殺しで、手を血で染めた私でも……行宗は愛してくれるの??」
雲一つない夜空から、ぽたぽたと雨がふる。
それは俺の顔面に降り注いで、顔中を濡らして、彼女の体温を届けてくれる。
「……直穂、愛してる……」
俺は、まっすぐに彼女に伝える。
「直穂は、優しくて、思いやりがあって、頑張りやさんで、可愛くて、
素敵な女の子だよ……
……直穂に、そんな悲しい顔を、させたくなかった。
辛い思いを、させたくなかった……」
「ひぐぅっ………!」
直穂は、静かに泣いていた。
「……直穂、いつも俺の
俺を信じてくれてありがとう。
俺と同じものを見てくれてありがとう。
俺と一緒に苦しみを背負ってくれて、ありがとう……」
「う……うんっ……うえぇぇぇっ!!」
柔らかく頭を撫でてやると、直穂の身体は意外と小さくて、
あぁ、女の子なんだなぁって、思った。
「……脱ぐっ!」
「え?」
直穂は突然そう言うと、ばっと服の裾に手をかけて、シャツと上着をまとめて思いっきりめくり上げた。
そして、上はブラジャーだけになって、真っ白くて汗ばんだ肌が、優しい月明かりに照らされた。
そして直穂は立ち上がると、ズボンを足元までずり降ろした。
それから間髪入れずに、パンツも、そしてブラジャーも、全てを脱ぎ捨てて、
一糸まとわぬ姿になった。
「………行宗は、自分で脱げる??」
思わず美しい裸体に見とれていると、直穂が頬を染めて尋ねてきた。
「……いや……片手しかないから、難しいかもしれない」
「分かった。脱がしてあげる」
そういって直穂は息をつく暇もなく、俺のズボンへと手をかけた。
「………っ!」
夜が、溶けていく。
甘くて、しょっぱくて、少し苦い。
はじめて同士。
女の子の味。
罪悪感も、後悔も、悲しみも、
すべて二人で絡め合って、ぐちゃぐちゃになって、
残ったのは、繋がっている幸せと、空っぽな感情。
これは悪い酒、一夜の現実逃避なのかもしれない。
互いに慰めあい、傷を舐めあい。
泥沼の底まで堕ちていくだけなのかもしれない。
でも、それでも俺達は、幸せだった。
ずっとこのままでいたい。離れたくない繋がっていたい。
このときだけは、心と身体の一番深いところで、
確信はない。
気のせいや幻覚かもしれない。
でも、俺は強く信じてたい。
今この瞬間、俺達が、この世界の誰よりも幸せなんだって……
「……しちゃったね」
「うん」
「……あーあ。
「普通に言えばいいだろ?」
「ナマでシたなんて言ったら、きっと怒られちゃうよ」
「しかたないだろ。持ってないんだから。
それに、もしできたとしても、ちゃんと一生面倒見る覚悟だからな。俺は」
「そうだね…… うん、楽しみだなぁ……」
「ん………」
二人で並んで、夜空を見上げて、
心地よい疲労感とともに、おだやかな眠気にいざなわれる。
「……おやすみ、行宗」
「……おやすみ、直穂」
二人して、仲良く目を閉じた。
今日という日が、終わっていく。
明日は、どんな1日になるだろうか?
まだ見ぬ明日を約束して、
俺は、俺達は、
ゆっくりと意識を手放していく。
ぽつ、ぽつ
ぽつぽつぽつ……
――なんだ……これ……
――雨??
ちゅん、ちゅん、ちちちちち……
目を開けると、鳥が鳴いていた。
眩しい日差しに思わず顔をしかめる。
直穂は?
と、隣を見たが居なかった。
どうやら寝袋から出たあとのようだ。
「んん……」
寝袋のなかで大きく伸びをする。
まだ朝早く。日の出直後らしい。
ひんやりとした冷気に包まれて、白い霧が空を散歩していた。
「とりあえず、服を着るか……」
そして俺は、寝袋のそばに脱ぎ捨てた服へと手を伸ばした。
「ん?」
そして気づく。
俺の服は綺麗に畳まれていた。
直穂が畳んでくれたのだろうか?
俺はまず、一番上のパンツを手に取った。
すると、ヒラリ、と白いかけらが宙を舞った。
「え?」
どうやら、1枚の紙切れだった。
パンツの下に挟んであったのか?
俺はその紙へと手を伸ばし、掴み、手にとった。
何かの書き置きだろうか?
なんとはなしに、その紙に目を通して……
俺は、呼吸が止まった。
―――――――――――
――万波行宗へ――
私のことは忘れてください。
私のことは探さないでください。
あなたが大嫌いです。
さようなら。
二度と会うことはないでしょう。
――
――――――――――
は??
はぁぁぁぁ??
読み返す、読み返す。
しかし何度読んでも意味が分からない。
意味が分からないけれど、涙だけが、ぽたぽたと地面に溢れ出した。
紙を持つ手が、ガタガタと震える。
「そんな……悪い冗談だよな? なぁ、ドッキリだよな!?」
俺はすぐさま立ち上がり、あたりを見渡した。
ギラギラと照りつける太陽。
野ざらしの寝袋で、すやすやと眠り続けるフィリア。
縛られたまま眠るマナト。
直穂?
直穂??
近くにはいない。
森に入る。
やっぱり居ない。
足跡も見つからず。直穂のバッグは俺の寝袋のそばに残ったままだった。
ただ、
最後の手紙だけを残して……
かすかな朝露と、事後の残り香だけを残して……
足跡もわからない。
探しても、森、森、森。
日が昇り、体から汗が噴き出した。
いつの間にか、涙も出なくなって。
俺は屍のように、フラフラした足で、直穂の
「
目覚めたフィリアが、俺を探しにきたようだ。
「……あぁ、この手紙だけ残して、居なくなった……」
俺はフィリアに手紙を見せた。
フィリアは手紙を手に取ると、やはり目を見開いた。
「……フィリアなら、匂いで分からないか?
「……いや……すまねぇ、オレの鼻はそんなに万能じゃねぇよ。
もし空を飛ばれたなら見つける手はねぇ」
っ!!
俺はイライラして、思わずフィリアの襟首を掴んだ。
「それでもっ! 探さないといけないっ!
誰かの仕業かもしれないっ! 直穂が危険な目に遭っているかもしれないんだぞっ!?
なにか策はないか!?
「そんなこと、言われてもっ……!
……オレ達はまず、アルム村に帰らなくちゃいけないだろう。
「道草だとっ!?」
俺は声を荒げた。
「じゃあ何か? 直穂をおいて行くってことか!!?」
俺が強くフィリアの襟を握り上げて、フィリアの首が締め上げられる。
フィリアの目から、ぽろりと涙が溢れた。
「……誠也と約束したんだよっ……
……
だから、今は、帰らなきゃいけないっ!!」
フィリアの力強いセリフに、俺も動揺した。
そうだな。確かに、
今まさに、アルム村では、
死にかけの身体で、俺たちが薬を届けてくれることを信じて……
でもっ……それでもっ!!
直穂は俺の彼女だ。
俺は、フィリアの手から手紙を再び受け取り、
直穂の文面をもう一度読み返した。
―――――――――――
――
私のことは忘れてください。
私のことは探さないでください。
あなたが大嫌いです。
さようなら。
二度と会うことはないでしょう。
――
――――――――――
な、なんだよ? これ……
どういうつもりなんだ?
昨日のアレは全部嘘だってか??
…………
”浅尾和奈を幸せにしてあげてください”
……って、どういう意味だよっ……
……こんな言葉じゃ、何も分からないよっ。
俺は……俺は、どうするべきだ……?
誰かっ……教えてくれ……
どうして、こんなことに……
直穂……いったい君は……どこに行ったんだ??
「どうしても
アルム村には、マナトとオレの二人で行くから。
フィリアは、そう言った。
さぁ、俺は、どうする。
俺はッ、俺は……
◆◆◆
※以下、二つにルート分岐します。
①フィリアと別れて、
②フィリアと一緒に、
―――――
【第五膜 零れた朝露、蜜の残り香編 完】
【次章へ続く】
【あとがき】告知!!
ハーメルンにて、「【R-18版】クラス転移した俺のスキルが、【マスター〇ーション】だった件」を投稿しました。
「六十六発目「零れた朝露、蜜の残り香」【裏】
ギルアとの死闘を終えて、第五膜のラスト。
本編ではカットした、
18歳未満の読者は、残念ですが読めません!
直接リンクは貼れないので、読みたい方は、私の活動報告の告知ページから飛んでください! ♥️が目印です!!
第4回キャラクター人気投票!!
-
万波行宗
-
新崎直穂
-
浅尾和奈
-
フィリア
-
誠也
-
ニーナ
-
ヨウコ
-
マナト
-
ギルア
-
リリィ
-
ユリィ
-
岡野大吾
-
竹田慎吾
-
シルヴァ
-
ギャベル
-
スイーツ阿修羅
-
天ぷらうどん
-
ステュム・パーリデス
-
小桑原啓介
-
一成さん