クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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【まえがき】
 40日ぶりの更新です。更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした!
 小説賞のために別作品を集中連載して完結させたり、大学がはじまり課題に追われ、長らく更新できませんでした。
 大学が忙しくて、執筆時間が週一日しか取れないので、しばらく週1話連載になると思います!
【ルート分岐に関して】
 まずは、②アルム村に帰るルートを連載して、5.5膜が終わった後で、①直穂探索ルートも書く予定です!
 以上、前書き終わり! 以下本編です!

★★★★★★★


第5.5膜 帰郷──遺された者達の子守唄(ララバイ)
六十七発目②「獣族独立自治区、アルム村へ」


 

 身体を重ねた次の朝。

 新崎直穂(にいざきなおほ)は居なくなった。

 たった一枚、手紙だけを残して……

 

―――――――――――

 ――万波行宗へ――

 

 私のことは忘れてください。

 私のことは探さないでください。

 あなたが大嫌いです。

 

 さようなら。

 二度と会うことはないでしょう。

 

 浅尾和奈(あさおかずな)を幸せにしてあげてください。

 

 ――新崎直穂(にいざきなおほ)より――

 

――――――――――

 

 なんど読み返しても、意味が分からなかった。

 だって昨日の夜は、あんなにも甘く愛し合っていたのに……

 手紙の言葉が直穂(なおほ)の本心だなんて、俺は信じられなかった。

 

 でも、この字は、見間違えるはずもない。

 達筆だけど可愛げのある、俺の愛する女の子――新崎直穂の筆跡だ。

 

 では、この手紙が本心では無いとして……

 新崎直穂(にいざきなおほ)に何があった?

 直穂は俺に、何を伝えようとしたのだろう?

 

 ……こんな文を書かざるを得ない理由があったのだとしたら……

 ……全身から寒気がした。

 俺の全身の細胞が、考えることを拒否していた。

 ……想像してしまったら、直穂のことを考えてしまったら、

 悪い想像と嫌な予感にさいなまれ、発狂してしまいそうだったから……

 俺の身体は自己防衛本能として、「直穂の身に起こったことを想像するな」と訴えてくる。

 

「……行かなきゃ。俺は……

 直穂(なおほ)を助けに行かないと……」

 

 俺は震え声で、そう言った。

 

「……きっと直穂はいま……どこかで泣いてる……

 ……この世界のどこかで、泣いているはずなんだ……」

 

 俺は泣きながら、ふらふらと歩きだした。

 朝起きてから、何時間も歩き回ってるから、

 頭がぼーっとして痛い。

 

「……おい、行宗っ。大丈夫かよ……」

 

 フィリアが心配そうに、俺の身体を支える。

 

「……俺は……直穂を……

 

 そんな時。

 ふと、直穂の顔が、頭の中に浮かんできた。

 

『私のことは忘れてください。

 私のことは探さないでください。

 あなたが大嫌いです』

 

 そう話す直穂の声は、どこか泣きそうで、

 

 でも、俺に対して笑っていた。

 

 ……あぁ、そうか。

 

 ……この手紙は、偽りなんかじゃなかった。

 

 この手紙は紛れもない、直穂の本心なんだ。

 

『さようなら。

 二度と会うことはないでしょう』

 

 ……直穂が、とても良くない目に遭っている予感があった。

 でも同時に、

 ……もしいま俺が、直穂を探しに行ってしまったら、

 もっと良くないこと(・・・・・・・・・)が起こる予感もしたんだ……

 

 直穂(なおほ)は、たしかに言った。

 

浅尾和奈(あさおかずな)を幸せにしてあげてください』

 

 ……幻覚の新崎直穂は、天使のような微笑みで、泣きそうな顔でそう言ったのだ……

 そうか……分かったよ……

 ……手紙まで書いて、直穂が俺にどうしても伝えたかったこと……

 それは、「絶対に探しに来ないでほしい」……そういうことだろう?

 

 もし俺が直穂を助けに動けば、きっと良くない事が起こるから……

 「助けに来ないで」って、そういう意味なんだろう?

 

 だから、直穂は、わざと嫌われるような文章を書いたのだ……

 「大嫌い」だとか、「さよなら」だとか……

 

 分かってた、頭では理解していた。

 いま、新崎直穂(にいざきなおほ)を探す手がかりが何もないなかで……優先すべきは、治療に一刻を争う浅尾和奈(あさおかずな)だって……

 

「……辛いな……」

 

 つらい……苦しい、こんな決断。

 大好きな彼女(きみ)を見捨てて、友だち(かずな)を助けろと、君は言うのか……?

 分かった、分かったよ……

 

「フィリア……アルム村に帰ろう」

 

 俺は選んだ。

 浅尾さんを助けるために、アルム村に向かうという選択を、

 それはおそらくこの場における最適解であり、直穂の願いでもある。

 そうなんだろう??

 

「……行宗……本当に良いのか? 直穂のことは……?」

 

 フィリアが驚いたような声で、俺の顔を覗き込んだ。

 

「……あぁ……聞こえたんだ……直穂の声が……」

 

 俺は、震え声で彼女に答えた。

 

「……和奈(かずな)を頼むって……言われたからっ……!」

 

 言いながら、俺は泣き崩れた。

 膝をついて、嗚咽して、息のできないほど泣きじゃくった。

 

「…………」

 

 フィリアは何も言わずに、ただ俺の背中をさすってくれた。

 フィリアの胸に額を押し付けるように、俺は泣き続けた。

 

「……でもっ……これが別れだなんて認めないっ……! さよならだなんて信じないっ……!

 直穂…… 待っていてくれ……

 必ず、俺が……お前を見つけ出してやるからっ……

 待っていてくれっ……!」

 

 もう傍にはいない直穂に、涙声で語りかけた。

 そして、自分自身に誓った……

 

「……さぁ、行こう、フィリア……」

 

 俺は、涙を拭って立ち上がった。

 

「……帰ろう、アルム村に…… 君のお父さんと、和奈(かずな)が待ってる……」

 

 浅尾和奈(あさおかずな)が、俺の帰りを待っているから、

 直穂の帰りを待っていたから……

 こんな道半ばで、泣いてる場合じゃないんだ……

 

「あぁ……」

 

 フィリアは短く答えて、俺の手を握った。

 彼女の髪はボサボサで、瞳には涙の跡があった。

 そうだ、フィリアは、誠也(せいや)さんを失ったのだ。

 愛する人、大切な人。

 誠也さんは、その生命を賭して、俺達の命を繋いでくれた。

 

 フィリアは、俺なんかよりずっと辛い筈なんだ。

 ……でも、フィリアは、こんなに小さい身体で、まだ前を向いて歩いている……

 

 俺がしっかりしないといけない。

 必ず、フィリアと、そしてマナトを、獣族独立自治区まで送り届けるんだ。

 

 

 

★★★

 

 

 

 俺とフィリアは、テントの場所まで戻ってきた。

 もう夜明けからしばらく経つ。

 朝露は清々しい快晴に消えて、心地の良いそよ風が、俺達の涙を乾かしてくれた。

 

「…………」

 

 テントのそばに、縛られたマナトがいた。

 マナトは、弱々しい目つきを、俺のほうへと向けていた。

 彼と目があった瞬間、俺は呼吸が止まりそうになった。

 

 そうだ……マナトは、大切な家族を二人も失ったのだ。

 ニーナとヨウコ……

 二人とも、俺がこの手で斬り殺した……

 俺は、マナトの大切な家族を、二人とも殺した。

 

「……ごめん……ごめんなさい……」

 

 全身からめまいがして、寒気がして、俺は膝から崩れ落ちた。

 鮮明に蘇ってくる。

 ニーナを刺し殺した感触、ヨウコを斬り殺した感触……

 ありありと、この手と瞳が覚えている……

 

 ……仕方なかった……

 そんな事は分かっている。

 マルハブシの猛毒を飲んで強化した二人……もう助ける方法はなくて、殺すしか、なかったんだ……

 ……だけどっ……

 

 俺は、湿った地面におでこを擦りつけた。

 

「……ごめんなさい……マナト……俺は……なんてことを……」

 

 マナト達は、人間語を聞き取れるから、

 俺は精一杯を尽くして謝った。

 謝って済む問題じゃないけれど、

 謝るしかなかった。

 

 すると、隣で、膝をつく音がした。

 

「…………――………―――!!」

 

 フィリアだ。

 フィリアが隣で、俺と同じように土下座して、マナトに向かって謝っていた。

 

 

 

―フィリア視点―

 

 

 オレは、行宗の隣で膝をついた。

 

『……ごめんなさいマナトっ……! オレが皆を獣族独立自治区に連れていくなんて言わなければっ! こんなことにはならなかったのにっ!!』

 

 泣きながら、マナトに謝った。

 ……三人は、あの温泉宿で、仲良く隠れて暮らしていたのに、

 オレが連れ出そうだなんて言ったからっ……ニーナもヨウコも殺された……

 オレのせいなんだ……

 お父さんを助けたい、そんな願いに誠也を巻き込んで……

 誠也(せいや)とオレは王国軍に捕まって、拷問を受けさせられて……

 オレをかばって、誠也(せいや)は死んだ……

 

『……仕方ないことだから……謝らないで……フィリアさん……』

 

 マナトの声が返ってきた。

 オレはハッと顔を上げる。

 無気力で昏い瞳のマナトと目があった。

 

『……行宗さんは、俺を助けてくれたから……

 行宗さんの右腕を斬ったもの俺だし、行宗さんを殺しかけたのも俺だから……

 ……行宗さんは右腕を犠牲にしてまで、俺があの毒を飲むのを阻止してくれた。

 俺にとっては、いちおう命の恩人なんです……』

 

 マナトが虚ろな目でそう言った。

 俺は行宗のほうを向いて、再び口を開いた。

 

「……行宗(ゆきむね)は、右腕を犠牲にしてまで、マナトがマルハブシの猛毒を飲むのを食い止めたから……

 だから『行宗はマナトの命の恩人なんだ』って、

 マナトはそう言ってるよ……」

 

 俺はマナトの言葉を、人間語で反芻した。

 すると行宗が、泣きそうな顔でオレを見上げた。

 救いを求めるような表情で……

 でも……

 次の瞬間、マナトは泣き崩れた。

 

『……でもっ……どうして……

 どうして俺なんだよ……!?

 ……こんな弱虫でどうしようもない俺より、ニーナ姉やヨウコ姉ちゃんが生き残るべきだったのにっ!!

 ……なんで俺なんか助けたんですか……?

 ……俺にはもう、生きる意味なんてないのにっ……!

 ……お父さんも、お母さんも! ニーナ姉もヨウコ姉ちゃんもみんな死んだ……!

 どうして……俺なんかが、まだ生きてるんだよっ……?』

 

 マナトは悲痛そうに叫んだ。

 オレは言葉を失って、ただただ震えていた。

 

『……ニーナ姉は、辛いときも苦しいときもいつも笑顔で、俺のことをずっと可愛がってくれて……!

 ヨウコ姉ちゃんは、優しくて心強くて、病に犯されても決して弱音なんて吐かなかったっ!

 いつも俺たちのことを身を挺して庇ってくれたんだっ!

 俺は……ずっと守られてばっかりだったのにっ!

 俺はお姉ちゃん達から貰ってばっかりで、返せたものなんて一つもないのにっ!』

 

 マナトを慰める言葉なんて、オレには思いつかなかった。

 オレでさえ、誠也を失って、正気を保てていないのだから……

 でも、オレにはまだ家族が残っている……

 アルム村に帰れば、父さんに母さんにジルクもいる……

 オレにはまだ、家族も故郷も残っているけれど……

 

 ……一晩で姉を二人も失い、一人ぼっちになったマナトに、かけられる言葉なんてあるはずがない……

 

『……なぁ、行宗さん…… 俺のことも殺してくれよ……

 二人殺すのも三人殺すのも一緒だろ……?

 ……俺はもう、死にたいんだ……

 ……もう、生きる意味なんてない……

 ……早く、お姉ちゃん達やお父さんお母さんと、同じ場所に行きたんだ……

 お願いします……行宗(ゆきむね)さん……』

 

 マナトは絶望に染まった表情で、縋るようにそう言った。

 生きる希望を失った冷たい瞳。

 その瞳には見覚えがあった……

 

 誠也(せいや)と出会ったあの夜、誠也(せいや)の瞳も同じように暗かった。

 獣族を殺した贖罪を求めて、殺してくれとオレにお願いしてきたんだ……

 

 ……そして、そう、オレも……

 今、マナトと同じような目をしている気がした。

 

 分かる……よく分かるよ……

 

 もしオレがマナトの立場なら……誠也だけでなく家族も故郷もすべて失ったとしたら……

 マナトと同じように、もう死にたいと思うだろう……

 

 オレでさえそうなのだ。

 大好きだった誠也(せいや)……

 結婚して……お爺ちゃんお婆ちゃんになるまでラブラブで過ごすんだって……約束したはずの誠也は……

 もう、この世にはいないんだから……

 

 朝起きたとき、身体が鉛のように重たかった。

 昨日のことを思い出すたび、涙が溢れた。

 いくら涙を流しても、胸のなかの重りはなくなってくれなかった……

 

 もう死んでしまいたいと、何度も思った。

 でも、かろうじて布団から出られた理由は、

 まだ、故郷に家族がいるから……

 家族が待っているからだった……

 

 

「……マナトが、もう殺してほしいって……言ってる……」

 

 オレは震え声で、人間語でマナトの言葉を行宗(ゆきむね)につたえた。

 ホントはオレが、止めなくちゃいけない……

 オレは人命を助ける医者だから……死にたいと願うマナトを、なんとか止めるべきはずなのに……

 ……何も言えなかった。

 なにも言葉が……出てこなかった。

 だって……オレだって、マナトと同じ気持ちだから……

 マナトの気持ちが、痛いほど分かってしまうから……

 

「……断る……」

 

 行宗(ゆきむね)はそう言った。

 その言葉に、オレの重たかった心臓が、少し温かたくなった。

 オレは行宗(ゆきむね)の言葉を聞いて、安心していた。

 

「……俺は、絶対にマナトを殺さない……

 殺すものかっ!!」

 

 行宗(ゆきむね)は、拳を強く握りながら声を張った。

 

『……なんで……どうしてだよ……? 俺にはもう、生き続ける意味なんてないのに……』

 

 マナトは悲痛そうにそういった。

 オレも同じような気持ちだった。

 ……誠也(せいや)の居ない世界で、これから生きていく意味が……まったく分からなくなっていた……

 

「……ニーナやヨウコと、約束したからだっ!

 ……マナトのことをよろしくお願いしますって、頼まれたからだっ!!」

 

 行宗(ゆきむね)は声を荒げながらそう言った。

 

『……なんでっ……? お姉ちゃんっ……!!』

 

 マナトも、両目からボロボロと涙を溢れさせた。

 

「ニーナもヨウコも死ぬ間際に、マナトに言い残してくれた……

 ニーナは、「大好きだよ」……って、「ずっと近くで、見守っているからね……」って……

 ……今まで、ありがとう……って……」

 

『……うぅぅ……ニーナ姉っ……!!』

 

 行宗の口から、ニーナ姉の遺言を聞いたマナトは、ぐちゃぐちゃに泣き崩れた。

 

「ヨウコからは、「ニーナ姉のことが大好きだった」「マナトのことが大好きだった」って……伝えられた。

 「……もっと、ずっと三人でっ、一緒に居たかった」

「喧嘩もいっぱいしたし、迷惑もかけたし、嫌なお姉ちゃんだったかもしれないけど……マナトが弟で良かった」って……

「お姉ちゃん二人で、マナトのことをずっと見守ってるから……」

「すごく悲しいと思うけれど……どうかお願い。幸せに生きて」

「きっとこれから先、楽しいことや嬉しいことがたくさんあるから……」

「素敵な出会いがたくさんあるから……」」

 

『ううぅぅぅっ……ヨウコ……姉ちゃん……』

 

 マナトは、自分の身体を抱くように、嗚咽しながらうずくまった。

 俺も行宗(ゆきむね)も、みんな泣いていた。

 三人みんな、苦しくて辛くて痛かった。

 

「……そんな優しい女の子二人を……ニーナとヨウコを……

 俺が殺した……俺が殺したんだ……

 ……二人から頼まれたんだ……マナトのことをよろしく頼みますって……

 だから、マナトは生きなきゃだめだ……

 ニーナもヨウコも、ずっとマナトのことを見守ってくれているから。

 ……二人は、マナトが幸せに生きることを願って、そして死んでいった……」

 

 行宗(ゆきむね)は、自分の左手を見つめて、斬った感触を思い出すようにそう語った。

 

 あぁ……そうだ、思い出した。

 誠也(せいや)も……オレの幸せを願って、死んでいった……

 なんで……忘れていたんだ。

 約束したじゃないか……誠也と、二人きりで……

 ……人間と獣族が仲良く暮らせる世界を作るって……

 ……誠也は自らの命を犠牲にして、オレの命を守ってくれた。

 オレの夢を信じてくれた、オレに願いを託してくれたのに……

 

「……あぁ……オレは……バカかよ……」

 

 オレは、生きなきゃ駄目じゃないか……

 誠也が命がけで繋いでくれた命で、オレは必死に、これからを生きるんだっ……

 

『……無理だよ……ニーナ姉、ヨウコ姉ちゃん……』

 

 マナトは苦しそうに天を仰いだ。

 

『……俺は……幸せになんてなれないっ……!

 ニーナ姉やヨウコ姉ちゃんがそばに居るだけで良かったんだ! 他には何も要らなかったっ……! なのにっ……!!

 みんな、俺をのこして死んでいった……

 俺はひとりになった……

 俺はもう……無理なんだよっ……』

 

 マナトの悲しい言葉を聞いて。

 オレは、いてもたってもいられなくて、

 気づいた時には立ち上がって、歩み寄って、

 マナトの身体を抱きしめていた。

 

『……マナトっ……!

 分かるよっ……辛いよなっ……死にたいよなっ……?

 オレだってそうだっ……!』

 

 オレは、弱々しいマナトをめいいっぱい抱きしめた。

 

『……でもっ……

 オレが、マナトのお姉ちゃんになるよっ……!

 マナトはもう、ひとりぼっちじゃないっ!!

 ……ニーナ姉やヨウコ姉のかわりにはなれないけど、オレが必ず、マナトを幸せにするからっ……!

 今度こそ、約束するよ……

 マナトはオレの弟だ……

 オレがマナトのお姉ちゃんになるからっ……!

 マナトをひとりにはさせない……

 オレ達は家族だっ……』

 

 オレはそう言って、かわいい弟の頭を撫でた。

 

『…………うぅ……』

 

 マナトが弱々しく、俺の胸のなかで啜り泣いた。

 

『フィリア……姉さん………』

 

 マナトは、弱々しく、されどたしかに、オレの背中を握りかえした。

 オレは、ニーナやヨウコの代わりにはなれない。

 だけど、少しでも可哀想なマナトの心の支えになりたいと、そう思ったんだ……

 いや……それだけじゃなくて……

 オレも、心の支えが欲しかったんだ……

 誰かと抱きしめあって……誰かの胸のなかで泣きたかった……

 マナトのぬくもりに触れた瞬間、抱えていた莫大な感情が一気に決壊して、

 オレはまた泣きだしてしまった。

 

『………うぅぅぅ……うわぁぁぁぁっ……』

 

 オレとマナトは、抱き合いながら散々に泣いた。

 いろいろな感情でぐちゃぐちゃになって、心のなかが暴れていく……

 そうして、心ゆくまで泣きつくして……

 オレ達は再び、立ち上がった。

 

 ……アルム村を出発してから、6日目の午前。

 ……経過時間は、まる5日ほど。

 

 浅尾和奈(あさおかずな)さんのタイムリミットまでは、あと1日か2日であった。

 

 もうすぐ昼時となってから、ようやくオレ達は泣き止んで、このキャンプ地を(あと)にした。

 

第4回キャラクター人気投票!!

  • 万波行宗
  • 新崎直穂
  • 浅尾和奈
  • フィリア
  • 誠也
  • ニーナ
  • ヨウコ
  • マナト
  • ギルア
  • リリィ
  • ユリィ
  • 岡野大吾
  • 竹田慎吾
  • シルヴァ
  • ギャベル
  • スイーツ阿修羅
  • 天ぷらうどん
  • ステュム・パーリデス
  • 小桑原啓介
  • 一成さん
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