クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

72 / 103
六十九発目「ただいまの夜」

 

―フィリア視点―

 

 オレたちは壁を超えて、馬にまたがり、夜の道を駆け出した。

 虫の音が鳴り、星が綺麗な、静かで幻想的な夜だった。

 でも、オレの頭のなかは父さんのことでいっぱいで、不安と焦燥でおかしくなりそうだった。

 

「なぁ……ジルク、いったい何があったんだ……?」

 

 オレは(おとうと)弟子のジルクに恐る恐る尋ねた。

 父さんが、危篤(きとく)になった。

 聞き間違いじゃないかと疑った。信じたくなかった……

 オレの父さん──小桑原啓介(こくわばらけいすけ)のかかっている難病、避魔(ひま)病。

 体内に魔力が吸収できなくなる奇病である。

 でも、余命まではまだ2ヶ月以上猶予があったはずだった。

 充分間に合うはずだった、オレが手に入れたキルギリスの骨で治療できるはずだった。

 そんな父さんの容態が急変したということは……原因は避魔(ひま)病ではなく……

 

『フィリアたちが村を出てすぐ、獣族独立自治区全体に、感染症が流行ったんだ……』

 

 ジルクの言葉に、私は心臓を突き刺されたような心の痛みを感じた。

 ……やっぱり、か……

 

『どんどんと住人が病に罹って、死人も出て、たくさんの人が診療所に押しかけてきたんだ。

 啓介(けいすけ)さんは、浅尾和奈(あさおかずな)さんの応急処置をしながら、感染症の治療法を見つけ出した。

 俺もジュリアさんも、みんなで必死に朝から晩まで薬を配ったよ……

 やっぱり、啓介さんは凄かった。間違いない、世界最高の医者だ……!』

 

 ジルクの目には、涙が滲んでいた。

 

 ジュリアというのはオレの母親の名前だ。

 父さんが小桑原啓介(こくわばらけいすけ)、母さんがジュリア。

 血は繋がっていないけれど、オレ達は本物の家族だ。

 

『……ナグサバの葉に、解毒魔法を併用する新しい治療法だ……

 啓介さんは魔法が使えなかったから、解毒魔法はジュリアさんが使って、感染症の治療法を確立したんだ……』

 

『はぁ……?』

 

 オレは驚きのあまり声をあげた。

 

『……ナグサバの葉に、解毒魔法を合わせて使う? 何を言ってるんだ?』

 

 オレは耳を疑った。

 ナグサバの葉って、毒草じゃないか!

 体内の病原菌に結びついて、その毒性を大幅に強化する厄介な毒だ。

 

 それに、薬草と解毒魔法は、同時には使えない。

 解毒魔法は、飲み込んだ薬草までもを、毒と判定して排除してしまうからだ。

 

 薬と魔法は両立できない。

 そんなの、医者じゃなくても知ってる常識なのに……

 

『……その感染症は、どういうわけか解毒魔法が全く効かなかったんだ。

 でも、ナグサバの葉の毒は、感染症の病原菌を見つけ出して、結びついてくれたんだ……』

 

 あぁ、あぁ! そういうことか!

 感染症の病原体の単体は、解毒魔法では見つけ出すことができなかったけれど、

 病原体をナグサバの葉と結びつけ、目立たせることで、解毒魔法に検知されて、

 まとめて毒を消し去ることができたということ。

 

『天才かよ……』

 

 オレは父さんの驚くべき治療方法に、感動のあまり全身が震えていた。目からは涙が流れていた。

 

『……だめだ……敵わねぇ……敵わねぇよ。父さんっ……』

 

 オレは父さんのような天才にはなれない。すごい医者にはなれないって、分かってしまった。

 そして、理解してしまった。

 父さんが容態を急変させて、危篤状態になった理由。

 

『父さんは……その感染症に罹ったってことか?』

 

『………』

 

 ジルクは無言で頷いた。

 そして、

 

『つい昨日の夜のことだ……啓介(けいすけ)さんに感染症の症状が現れた……

 診療所にはずっと患者さんが押し寄せてたし、啓介(けいすけ)さんは寝る間も惜しんで治療してたから……

 こうなるんじゃないかって、恐れてたんだ……

 でも、俺には、懸命に患者に向き合う啓介(けいすけ)さんを止められなかったっ……

 「個室に閉じこもって安静にしていてほしい」だなんて、どうしても、俺には言えなかった……

 ごめん……ごめんな……フィリア……』

 

 ジルクが苦しそうに嗚咽した。

 身体の震えが、背中越しに伝わってきた。

 

『……バカかよ……なんでっ……父さんっ……!』

 

 オレは唇を噛みしめた。

 父さんは、感染症に罹ってしまった。

 そして、父さんには、ナグサバの葉と解毒魔法を用いた治療法は通用しない!

 ……父さんの身体は、解毒魔法が効かないからっ!

 

 父さんの罹った病気は、避魔(ひま)病。

 体内に魔力を取り込めなくなるという奇病である。

 

 だから、回復魔法も解毒魔法も効かなくなってしまう!

 

 しだいに体内の魔力が消費されていき、魔力が枯渇して、約半年後に死に至る。

 唯一の治療方法は、マグダーラ山脈に生息する希少モンスター、キルギリスの骨だった。

 

 キルギリスの骨は、大気中の魔力を体内魔力に変換して骨の内部に送り込んでくれる。

 オレが、あの大鳥ステュムパーリデスの巣のなかで、子供鳥の口内から奇跡的に手に入れた、キルギリスの骨。

 せっかくここまで持って帰ってきたのに……!

 

『……なぁ、まだ間に合うか? フィリア……?』

 

 ジルクがぐしゃぐしゃの泣き顔で、オレを振り返った。

 

『お前なら、啓介(けいすけ)さんを助けられるか?

 お願いだ、頼むよフィリア……お前にしか啓介さんは治せないっ!!

 俺たちにはまだ、啓介(けいすけ)さんから学びたいことが、沢山あるだろう??』

 

 ジルクはオレに縋るように、情けない声で言った。

 オレは……

 

『あぁ、あぁ! もちろんだっ!

 オレは、世界一の名医小桑原啓介(こくわばらけいすけ)の娘であり、一番弟子のフィリアだっ!

 父さんは、いつも絶対に諦めない、最後まで足掻き苦しむ医者だからっ!

 オレだって、やってみせるさっ!!」

 

 オレは涙ながらに叫んだ。

 瞬間、森を抜けて視界が開けて、正面に、高い崖が見えた。

 オレの生まれ育った街、アルム村まで、とうとうたどり着いたのだ。

 

 そして崖の中腹に見える、オレの実家の診療所。

 オレは涙で滲んだ瞳で、まっすぐに家の明かりを見つけた。

 

 待ってろ、父さん。

 約束通り、オレは帰ってきたぞ。

 避魔(ひま)病も感染症もまとめて、必ずオレが治してみせる。

 

 坂道を登り、ついにオレ達は診療所に辿りついた。

 オレとジルクは一目散に玄関に飛び込み、靴のまま廊下を一緒に駆けた。

 

啓介(けいすけ)さんっ! フィリアが帰ってきましたよっ!』

 

 ジルクがオレの手を引きながら、大声をあげた。

 オレも大きく息を吸い込んで、震える肺で声を上げる。

 

「父さんっ、オレだ、フィリアだっ!

 ただいま父さん! もう大丈夫だっ!

 父さんはオレが助けるからっ!」

 

 廊下には腐ったような匂いが充満していた。

 患者さんに溢れていた。

 道を開けてくれる患者さんの間を、オレ達は駆け抜けた。

 

 そして、

 

 オレ達は最奥の部屋、治療室に飛び込んだ。

 

 視界に飛び込んだ光景。

 ベットを囲む大人達と、ベットに横たわる父さんの姿。

 

「父さんっ!!」

 

 オレは我を忘れて、ベットへ駆けつけ、身を乗り出した。

 父さんは白い布団にくるまったまま、青白い顔で、ゆっくりと目を開けて、

 薄い目でオレを見つめていた。

 

「フィリア……そうか……やり遂げたんだな……

 おかえり……フィリア……」

 

 父さんは、弱々しい声色で、オレの目を見てそう言った。

 良かった、良かった、

 まだ意識はあるみたいだ。

 

「うんっ……! あぁっ……! うんっ……

 帰ってきたよ……父さん!

 キルギリスの骨も、サルファメルファも……いわれた薬剤全部持って帰ってきたっ……!

 もう大丈夫だ。オレが、治すからっ……!」

 

 少し遅れて、行宗(ゆきむね)とマナトと、馬でオレ達を送り届けてくれた大人たちが、この部屋に飛び込んできた。

 

「……父さんは、オレの命の恩人なんだっ……

 出会った時は、オレの病気を治してくれて、オレに生きる意味を与えてくれて……

 今度はオレが、父さんを助ける番だから……」

 

 オレはそう言いながら、父さんにかかった毛布に手をかけた。

 

「フィリア……」

 

 父さんの目から、涙が溢れているのが見えた。

 

「……オレは、父さんの……」

 

 そう言ってオレは、父さんにかかった布団をめくった。

 

 ………………

 

 …………

 

 ……

 

 え……?

 

 オレの呼吸が、止まっていた。

 目の前の、光景が、信じられなくて、

 信じたくなくて……

 

 布団をめくった瞬間、すさまじい刺激臭と消毒液の匂いが溢れ出して、

 

 父さんの身体は、ところどころ黒色に変色して、虫が湧いていた。

 身体が内側から腐っていた。

 下半身のほうからカビが生えていた。

 

 身体じゅうが、見る影もなく、ボロボロだった。

 

 人目見ただけで、理解ってしまった。

 これは……もう、とっくに……

 いや……まだ……まだ何か……

 ……っつ……

 

 医者として蓄えた知識や経験が、希望の余地を奪っていく。

 ……微かな可能性すらも、オレに与えてはくれなかった。

 

 ……………

 

 ………

 

 ……

 

 オレは、声を失ってしまった。

 ただ静かに、涙を流し続けていた。

 感染症はすでに、父さんの身体中を腐敗させていた。

 今からキルギリスの骨を埋め込んだとしても、もう既に……

 

「フィリア……」

 

 視界がぐわんぐわんと涙で滲み、思考が停止しようとするなかで、

 父さんの声だけは、繊細に聞き取れた。

 ……かすかに残っていた希望や可能性を打ち砕いたのは、他でもない……オレが今まで蓄えてきた、あらゆる医学知識だった。

 

「……いい医者になったな……」

 

 父さんの、安心したような、悟ったような言葉。

 

「……フィリア。お前はもう、一人前の医者だ……」

 

 そう言って、嬉しそうに微笑む父さんに

 オレは、堰がきれたように、叫びだした。

 

「……んなわけ、ねぇだろっ!!

 オレはまだ、父さんの足もとにも及んでないっ……!!」

 

 涙が、嗚咽が、叫びが、止まらない。

 

「……まだオレは半人前だっ! もっと父さんに医学を教わりたいのにっ……!

 ……あぁっ、なんでっ! なんでぇっ!!!」

 

 全身から力が抜けて、オレは膝から崩れ落ちた。

 オレの心を支えていたものが、ポッキリと折れた感覚がした。

 

 誠也(せいや)と死別して、父さんと助けることだけを希望に、やっと家まで辿り着いたのに……

 

「……こんなの……あんまり……だよ……」

 

 オレは、もう立てない……

 頑張れない……

 大切な人すべてを失って、もうオレには、生きる意味なんて……

 

「フィリア……立て。お前は医者だろう?」

 

 父さんの、真剣な口調に、オレは身体をビクリと震わせた。

 これは、父さんが怒ったときの口調だ。

 オレは父さんの声に、何度も厳しく叱られた。

 

『……医者は命を預かる仕事だから、責任がある。絶対に失敗は許されない……』

 

 オレが小さな不注意をするたびに、何度もこの声に叱られた。

 

「……フィリア、浅尾和奈(あさおかずな)さんを治療するんだ。

 彼女はまだ間に合う。

 きっとお前の腕なら助けられるはずだ……」

 

 ……浅尾和奈(あさおかずな)

 行宗(ゆきむね)直穂(なおほ)の友達の名前だ。

 

 もともとオレ達は、父さんと浅尾(あさお)さんを助けるために、マグダーラ山脈を目指したのだった。

 でも、オレは浅尾(あさお)さんと、ほとんど話したことがなくて……

 父さんが助けられなきゃ、オレはっ……

 

「……立て、フィリア、お前は医者だろう?」

 

 もう一度、父さんに諭された。

 医者……医者……

 医者って、一体、なんなんだよ。

 オレは一体、なんのために、医者に……

 

「……お前の憧れた医者は、助けられる患者を目の前にして、膝を抱えてうずくまる医者なのか?」

 

 …………

 ……違うっ……!

 オレは……!

 

 オレは、立ち上がった。

 そして、隣で呆然としていた。行宗のほうに振り向いた。

 

「……行宗(ゆきむね)……安心してくれ……

 浅尾(あさお)さんは、オレが必ず助けるから……」

 

「フィリア……」

 

 行宗(ゆきむね)が苦しそうに、オレの名前を呟いていた。

 

 オレは涙を止められなかったけれど。

 ちゃんと言えただろうか?

 オレは、ちゃんとやれるだろうか?

 

「……フィリア」

 

 背中から、父さんの声が届いてきた。

 

「……頑張れ……お前ならできる……」

 

 弱々しい震え声、背中越しにかけられた父さんの言葉に、オレがどれだけ勇気を貰えたか……

 

 オレは、父さんの方へ振り向いて、

 そして精一杯の笑顔で応えた。

 

「当たり前だ、オレは父さんの弟子だから」

 

 浅尾和奈(あさおかずな)さんの命を助ける。

 浅尾(あさお)さんは感染症から遠ざけるため、2階の奥の部屋に隔離されていているらしい。

 少し遅れて、お母さんが部屋に飛び込んできた。

 ジュリアお母さんは、オレを抱きしめてわんわんと泣いた。

 ジルクも、父さんの布団にしがみついて、泣き続けていた。

 

 オレと行宗(ゆきむね)は、マグダーラ山脈で手に入れた薬とともに、2階へ、浅尾(あさお)さんの病室へ向かった。

 

 ガラガラガラ……と、病室の扉を開ける。

 部屋の中には、卵が腐ったような匂いが蔓延(まんえん)していた。

 

「……っ!」

 

 行宗(ゆきむね)が部屋の奥のベットを見て、顔を顰めるのが見えた。

 ベットに寝転がる浅尾さんは、身体を白く変色させて、茶色のショート髪を汗でぐっしょりと濡らし、下半身は溶けたように変形していた……

 お腹が妊娠したみたいに、爆発しそうなほど大きく膨れていた。

 

 ヴァルファルキア大洞窟の深層モンスター、【天ぷらうどん】に寄生された、浅尾(あさお)さんの身体。

 使えそうな薬剤は、マグダーラ山脈から全てかき集めてきたけれど、

 今のオレに、治せるだろうか?

 

「……和奈(かずな)……おい、大丈夫なのか……?」

 

 行宗がフラフラとした足取りで、ベッドの元まで近づいた。

 そして、目を瞑って汗まみれで、弱々しい呼吸を続ける浅尾さんの頬っぺたに手をやった。

 

「……ただいま、帰ってきたよ、和奈(かずな)……

 遅くなって、ごめん…… たくさん苦しめて……ごめん……」

 

 行宗(ゆきむね)は肩を震わせて、ひたすらに謝罪の言葉を並べていた。

 

 っっ……

 

 目を瞑っている浅尾(あさお)さんの目尻から、涙がじんわりと溢れ始めていた。

 唇が、ピクピクと震えて……

 細く、瞼を……開いた……

 

「……ゆき……むね……くん……

 ……これ……夢じゃ……ないよね………」

 

 乾いた唇を震わせて、浅尾さんが言葉を発した。

 

「……あぁ、夢じゃない。俺たちは帰ってきたっ!

 ……和奈(かずな)の病気は必ず治るから、もう何も心配いらないっ……!」

 

 浅尾(あさお)さんの手を握りながら、行宗(ゆきむね)は大声で語りかける……

 

「……う、うぅ……うぅ……」

 

 浅尾(あさお)さんは、顔をくしゃくしゃに歪めて泣きじゃくっていた。

 

「……ありがとぅ……もう……どこにも……行かないでっ……

 ……ずっと……そばに居てぇっ……」

 

 弱々しく、安堵と安心の涙を流す浅尾(あさお)さん。

 そんな浅尾(あさお)さんの頭に、行宗は片方になった手のひらを乗せた。

 

「……あぁ、もう、ひとりぼっちにはさせない……

 ()がずっと、和奈(かずな)のそばにいるから……」

 

 行宗(ゆきむね)はそう言って、浅尾(あさお)さんの頭を撫でた。

 

「……ねぇ、直穂(なおほ)は?

 直穂ちゃんは……どうしたの……?」

 

 ふと、浅尾さんの不安そうな声に、行宗は身体を硬直させた。

 

 でも、行宗(ゆきむね)はすぐに浅尾(あさお)さんに顔を近づけて、安心させるように笑いかけた。

 

「……直穂(なおほ)はいま、クタクタに疲れて、下の部屋でぐっすり眠ってるよ……」

 

 すると浅尾(あさお)さんは、少し口角をあげて、

 

「……そっか、ふふふ……よかった。

 ……寝込みを、襲っちゃ、ダメからね……」

 

 浅尾(あさお)さんは、冗談を口にした。

 

「……さぁて、どうしようかなぁ?」

 

 行宗(ゆきむね)が意地悪そうな笑みを返していた。

 

 オレは、いよいよ覚悟を決めた。

 

「……浅尾(あさお)さん、行宗(ゆきむね)、今から治療をはじめようと思う……

 血も出ることになるし、お腹を切ることになると思うけど……

 浅尾(あさお)さんは、行宗に見られても、平気か?」

 

 オレの問いかけに、和奈(かずな)は……

 

「……そばにいて、ほしい……

 今だけで、いいから……

 手を……握ってて、欲しい……」

 

 涙目ですがるような視線で、行宗(ゆきむね)を見あげる浅尾さん。

 

「……もちろんだ。和奈(かずな)……

 もう和奈(かずな)は一人じゃない。俺と……直穂(なおほ)が、そばにいるから……」

 

「うん……うんっ……」

 

 浅尾(あさお)さんは、幸せを噛みしめるように、涙を溢した。

 

「……じゃあ、麻酔をするぞ……」

 

 オレは注射器に、サルファ・メルファの脳髄液を流し込んだ。

 これで浅尾(あさお)さんの身体を、冬眠に近い状態にしてから、腹を切って胎内の【天ぷらうどん】を取り除く。

 

 プスリと、二の腕に注射を打ち込んで、

 しばらくして浅尾(あさお)さんは意識を手放した。

 ここからはオレの戦いだ。

 オレの医者としての戦いだ。

 

 浅尾和奈(あさおかずな)さんだけは……必ずオレが、助けてみせる。

 

 父さん、母さん、ジルク、誠也(せいや)行宗(ゆきむね)、マナト、ヨウコ、ニーナ、蘭馬(らんま)

 マグダーラ山脈の、鳥の親子……

 そして、浅尾和奈さん……

 

 ……そうだ、どうして忘れていたんだ。

 王国軍に捕まっていたオレを、まっさきに助けに飛び出してくれたのは、いま目の前にいる、浅尾和奈(あさおかずな)さんじゃないかっ!

 

 それから、リリィさんに、ユリィさんも、

 みんな……オレを助けてくれた……

 

 たくさんの人たちのお陰で、今のオレがあるのだから……

 

 オレも、手の届く範囲の命を、なんとしても助けるんだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。