クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
しばらくして、私の涙が落ち着いた頃、
水の魔法だ。いつ覚えたのだろう。
「……いったん水飲んで、落ち着こう、
優しく差し出されたコップに、私はすがるように口をつけた。
しかし、人の手のひらから出てきた水なんて、衛生上大丈夫なのだろうか?
そんな一抹の疑問が浮かびつつも、私はその水で喉を潤した。
……おいしい。ちゃんと水だった。
全身に染み渡るような冷たさだった。
「……誤解するような言い方をしてごめん。
きっとまだこの世界のどこかで生きてる。……
え……?
どういう、こと?
「
『万波行宗へ、私のことは忘れてください。私のことは探さないでください。あなたが大嫌いです。さようなら。二度と会うことはないでしょう。
……ふふ、もう何度も読みすぎて、覚えちゃったみたいだ」
え? え? 何を言ってるの……?
文章も状況も意味も分からなかった。
大嫌い? 私を幸せにって、どういうつもり……
「……なんで? 喧嘩でもしたの? ふたりとも、あんなに仲が良かったのに……」
私は深刻にならないよう明るい声を意識して尋ねた。
でも、私の作った笑顔はぎこちなかった。
「……仲はずっと良かったよ。
この一週間の冒険で、たくさんキスやハグをして、イチャイチャしてた。
一緒の布団で寝たり、一緒にお風呂に入ったり、結婚の約束だってした。
一昨日の夜は、同意の上でのセッ◯スもした。……
「……ふーん。そっか。……でも、ならどうして……?」
平然を装って相槌をうったが、私の心臓はドクンドクンと暴れまわっていた。
セッ◯ス!? したの!?
生々しい想像をしてしまって、身体中が熱くなっていった。
そりゃ私も、キスまでくらいは経験があるけれど、まだ処女だ。
半年前まで中学生だったのだ。今までの彼氏とは健全なお付き合いをしてきたけれど……
まさかまさかのお突き合いだなんてっ!? 高校生の恋愛ってそうなの!?
「俺にも正解は分からない。……ここから話すのは俺の推測と勘なんだが……
おそらく
一昨日の夜、マナ騎士団のギルアって男に、俺達は襲撃されたんだ。
その戦いで
ギルアの目的は、あの時は見当もつかなかった。
でも一つだけ違和感があったのが、
俺に対しては刀を使い、殺す気で斬りかかってきたのに、
もしかしたら、
俺は、ギルア含むマナ騎士団の目的は、
マナ騎士団って、なんだっけ?
「マナ騎士団って、私達を異世界に召喚した、あの赤白装束の名前だよね? 名前は確か、ギャベルとシルヴァだっけ?」
「うん。あのラスボス【スイーツ阿修羅】を倒すために俺達が現実世界から召喚されたみたいに、奴らは戦う駒を求めているんじゃないかと思うんだ。
近接攻撃のみステータス上昇三倍の"賢者"に対し、
オ◯二ーしないと戦えないデメリットを差し置いても、ぶっ壊れのチートスキルだ。
なるほどね。
しかし……そもそもなんで?
私は、ふと思いうかんだ疑問を口にした。
「あのさ。少し話がそれちゃうんだけど、どうして【
「……うーん、どうなんだろ? ステータスウィンドウを開いても、表記はどっちも【自慰】らしいからな。男女差ってのもあり得る話だ……」
「それにまだ疑問も残ってる。
この推測が本当だとして、奴らが一体どこで
それに俺達はマグダーラ山脈からの帰り道で、王国軍に見つからないように道なき道を歩いてきた。見つけるのは至難なはずだ。……ギルアが俺達を狙っていたとして、どうやって俺達の居場所まで辿り着いたんだ……?」
……………
外で鳥の鳴く声がして、私は視線を車窓へ向けた。
「
本当は今すぐにでも、
私は
私の命を助けてくれたのは心の底から嬉しいけれど、私の存在が
胸の奥が苦しくてたまらなくなる。
「……助けに、行きたいよ。今すぐ
きっと本音で話したほうが、
いま俺の隣にいるのが、
俺も最初は、
………うん。
「本音が聞けて、私は嬉しいよ……」
え……?
どうして私は、また、泣いているのだろう?
「……なら、どうして……そうしなかったの……
どうして
自分の涙の意味が分からなくって、私はひどく混乱していた。
胸が張り裂けそうになりながら、私は声を絞り出した。
「なんでだろうな……?
……
何となくだったのかもしれない。
あの時の正解なんて今でも分からない、ただ……
……俺はいま、
「え……? それは……どうして」
私はぱっと
「
あそこで
いまこうして、ひさしぶりに
少しだけ日常に帰ってこれた気がするんだ。
俺の話を聞いてくれてありがとう。お陰でずいぶん気持ちが楽になったよ。
突然、そんな言葉を向けられて、
心傷気味の私が、泣かないはずがない。
「……っ、ばかっ、ばか
私は表情が見られないように、顔を窓のほうに振り向いた。
くっそ、嬉しい……嬉しい。
この一週間、ずっと苦しかったのが嘘みたいだった。
楽しい、嬉しい……
生きてて良かった。
そんな時……
「……ん、あ……!」
私はとんでもないことに気がついた。
嘘……嘘でしょう? こんな時にっ!!
不味い……尿意が、一気に……
ちょろちょろちょろちょろ……
決壊した。
私は目からは涙を流しながら、布団のなかで、股からおしっこを漏らしてしてしまっていた
(あぁ………あーー……あぁぁ……)
身体が動かせない私は、この一週間、おむつみたいなものを履かせてもらっているけれど。
けど、それが問題なんじゃなくって……
(あぁ、恥ずかしい……
私、
嬉ションしちゃってる……)
穴があったら入りたい。
もう顔中が真っ赤だった。顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
「……これからの予定だけど、
「うん、分かった…… ありがとね。
ちょろちょろちょろちょろ、
布団の下で漏らしながら、平然とした声で返事をする。
微かな水音が
太ももの根本までが湿ってきて生暖かいのが気持ち悪い……
まったく、私が特殊性癖に目覚めたらどうすんだ。
「……ふ、ふぁあぁあっ。 ひと安心したら一気に眠くなったわ。……悪いけど、俺、いったん寝ていいか?
敷布団は持ってきて貰ってて、この部屋で寝るから、何かあれば遠慮なく声で起こしてくれていいから」
フラフラと歩く行宗くんは、確かに凄く疲れて眠そうだった。
あれ? まさか、もしかして、
私の目が覚めるまで、起きてずっと待っていてくれてたの?
「う、うん、もちろんだよっ。
ずっも私の手を握ってくれててありがと……
お疲れ様、おやすみなさい」
「うん、おやすみなさい」
私は布団にもぐる
そしてふと肝心なことを思い出し、付け加えるように彼に尋ねた。
「ねぇ、ジュリアさんやジルクくんは家に居ないの? 今日はやけに一階が静かだけど……」
普段の診療所なら、バタバタと足音がしたり、患者さんの話し声が常に耳に入ってきていた。
「……うん。
フィリアの父さんの
この家のみんなは今、
「……そ、そうだったんだ。そっか……
……フィリアちゃんは結局、好きな人もお父さんも失うことになったんだね……」
あまりにも救われない結末。
全てを救おうとあがいたのに、フィリアちゃんは全てを失ってしまった。
「……今朝あった時、死んだ目をしてたよ。
……かける言葉が見つからなかった……
簡単に立ち直れるはずはないけど……フィリアがまた前を向いて笑えるように、俺もできるかぎりのことをするつもりだ……」
「私も……もちろん手伝うよ。フィリアちゃんは私の命の恩人だしね……」
静かな病室で、はぁと息をついた。
困ったなぁ。
しばらくおむつを変えて貰えない。
このぐしょぐしょのまま、我慢しつづけなければいけないのか?
しばらくして、
その寝顔は、まだ子供っぽくてあなどけない。
「……ふーー」
窓に目を向け、青空を見上げた。
もう日は高く、初夏の暑さに、私の背中はじんわりと汗をかいていた。
天井を見上げながら、いろんなことを考える。
これからどうするのか?
私たちはどうなるのか?
いろんな不安が頭の中に浮かんできては消えていくなかで、不思議と私の心は穏やかだった。
風の匂いが気持ちいい。この世界の全てが気持ちいい。
一週間ぶりに取り戻した視界と嗅覚と聴覚で、私は世界の美しさを存分に堪能した。
私は……生きてる……
寝たきりで身動きの取れない私でも、おっぱいの真ん中ではとくとくと、心臓の鼓動が、確かに時を刻んでいた。