クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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七十七発目「世界の新生とこれからの事」

 

 悪神タナトス討伐後。世界の歴史は「先史」から「新生」へと移り変わった。

 

 悪神タナトスがこのナロー世界にもたらした被害は凄まじかった。

 世界人口の約八割が死に絶えたという。

 悪神タナトスを食い止めるため対峙したマナ王国マナ騎士団及び、千にも及ぶ召喚勇者たちは、多くがその命を戦場に散らしていった。

 

 戦後に残ったのは、臆病者がほとんどだった。

 

 

 新生元年、(今から1778年前)

 

 

 大地は痩せこけて、600年栄えたマナ王国のインフラは破壊され、継承されてきた多くの技術を失い。

 世界の文明レベルは一気に原始時代へと振り戻された。

 魔族による被害や貧困、盗賊団の出現。農作物の不作や働き手不足、権力争いやクーデターにより、世界の治安は悪化しつづけていた。

 

 そんなとき、世界中に支援の輪を広げたのが【特殊スキル】を持った召喚勇者たちの連合。その名も「アキバハラ組合」であった。

 それぞれの【特殊スキル】を活かし、水を引いたり治安を維持したり、魔族を討伐したりと世界の復興に大きく貢献した。

 

 しだいにアキバハラ組合は多くの民衆から感謝され、人望を集め、勢力を拡大していった。

 それをよく思わないのが、マナ王国であった。

 

 マナ王国の生き残った貴族たちや、貴族の避難を先導していた「剣聖」含むマナ騎士団は、その権力を持って、マナ王国の国土から召喚勇者たちを追い出す命令を下した。

 

 しかし、国外追放された召喚勇者たちに付き従うように、少なくない国民が国外へと逃げていき、

 召喚勇者たちはマナ王国の北東に新国家「アキバハラ公国」を築き上げた。

 

 

 

 新生40年、(今から約1700年前)。

 

 

 マナ王国がアキバハラ公国へと攻撃を仕掛け、人類史史上最大規模の戦争が火蓋を切った。

 差し違い覚悟で捨て身の特攻をするマナ王国勢力に、アキバハラ公国は少なくない被害を被ったが。

 

 結果として、マナ王国は滅亡した。

 マナ騎士団も、滅亡したと記述されていた。

 

 辺境に小さな勢力は存在したものの、世界は「アキバハラ公国」の一強となったそうだ。

 

 

 

 新生400年、(今から約1300年前)。

 

 

 500年の時を経て、世界の最初の大ダンジョン「魔の大ダンジョン」が、二人の英雄の尽力で攻略された。

 それが五代英雄伝の四人目と五人目。カーマイルとヴェザリアであった。

 最央部のラスボス「マジック阿修羅」との死闘を生き残った二人は、三つの【願いを叶える石(ネザーストーン)】を用いて幾つかの願いを叶えたらしい。

 その内の一つの願いにより、魔の大ダンジョンは大きく形を変えて、今のアキバハラ公国首都の原型となったそうだ。

 

 10数年後、アキバハラ公国は、魔の大ダンジョン跡地へと遷都した。

 そこは魔力資源が豊富な天然の要塞であり、今もなお続くアキバハラ公国の首都アキバハラであった。

 

 

 

 新生600年、(今から約1100年前)。

 

 

 世界は完全に復興し、人口増加と生活領域の拡大に伴い。世界には小国が次々と誕生していった。

 人間が勢力を拡大させるなかで、今まで共生関係を気付いてきたエルフや獣族たちの生活領域が脅かされ、

 先史の時代に当時のマナ騎士団の剣聖一位エリカによって建国されて以来800年続いたエルフの大国「エマールデン」は、周囲の小国と戦闘状態に突入。

 「エマールデン」は世界樹によって魔力濃度の高い土地であり、周囲の国の植民地として奪い合われて、なすすべもなく制圧された。

 

 

 

 新生800年、(今から約900年前)。

 

 世界に二つ目の大ダンジョンが誕生した。

 "魔石の大ダンジョン"と呼ばれたそれは、現在ではガロン王国東部の砂漠にジーグダルダ遺跡として一部残っている。

 この大ダンジョンの攻略にも、300年間の期間が費やされた。

 

 

 

 新生1100年(今から約600年前)。

 

 

 "魔石の大ダンジョン"の攻略後まもなくして、世界に三つ目の大ダンジョンが誕生した。

 "海の大ダンジョン"と呼ばれたそれは、旧マナ王国王都から南下した海岸の沖に"海底神殿アトラテイズ"として出現した。

 

 

 

 新生1400年(今から約300年前)。

 

 

 "海の大ダンジョン"が攻略されてまもなく、四つ目の大ダンジョンが出現した。

 "薬の大ダンジョン"、通称マグダーラ山脈と呼ばれるそれは、アキバハラ公国の南東に位置する。

 

 

 

 新生1500年(今から約200年前)。

 

 

 アキバハラ公国の北東で、ガロン王国という新生国家が急速に勢力を拡大していった。

 建国者はネクサス・ガロン。

 おそらくは召喚勇者であると言われており、【統率(リード)】と呼ばれる特殊スキルで軍事国家を築きあげて、小国に戦争をふっかけ領土を勝ち取り、エルフの村を根絶やしにして絶滅させるなど、無茶苦茶な男だったらしい。

 アキバハラ公国との戦争中に、内部からのクーデターにより命を落とし、

 アキバハラ公国とガロン王国は停戦という形で戦闘を取りやめた。

 

 

 新生1747年(今から約31年前)。

 

 薬の大ダンジョン、マグダーラ山脈が攻略される。

 まもなくして、アキバハラ公国の西の砂漠地帯に五つ目の大ダンジョン「ヴァルファルキア大洞窟」が出現。

 "六人目の英雄"バーンブラッドの奮闘により、この大ダンジョンはたった30年間で攻略されることになる。

 

 同時期。

 ガロン王国が獣族たちの奴隷化計画を発表。

 森の中に集落を築いて暮らしていた獣族たちが襲われ、奴隷として取引され、

 反発した"獣族反乱軍"は、ガロン王国フェロー地区の大貴族「西宮邸」を強襲し、逆に人間を捕虜とした。

 この西宮事件を火蓋として、獣族反乱戦役が勃発。

 戦闘状態は20年続いたが、新生1756年、ガロン王国国王ガルマーン・ガロンが獣族奴隷を禁止とし、獣族独立自治区を認め、戦争は形式上終戦した。

 

 

 

※新生1771年(今から7年前)※

 

小桑原啓介(こくわばらけいすけ)さんが妻のジュリアと娘のフィリアを連れて、獣族独立自治区へとたどり着く。※

 

 

 

 新生1777年(今から1年前)

 

 六人目の英雄バーンブラッドが、ヴァルファルキア大洞窟深層モンスター【天ぷらうどん】により死亡。攻略隊も全滅。

 新人の天才戦士候補生ザザンによって攻略隊が再組織される。

 

 

 

 新生1778年(現在)

 

 謎の召喚勇者集団(俺達クラスメイト)により、ダンジョンのラストボス【スイーツ阿修羅】が討伐される。

 【願いを叶える石(ネザーストーン)】を無駄遣いした罪を問われて、岡野大吾(おかのだいご)が全責任を取り拷問ののち、処刑、、

 

 

 ★★★

 

 

 俺は憂鬱な気持ちで最後の一文を書き終えた。

 世界の歴史を紙にまとめていく作業がやっと終わりを迎えた。

 岡野大吾(おかのだいご)が処刑されたという一ヶ月前の新聞を読んだのは、つい数日前のことである。

 

 フィリアから、写真は見るなと念を押され、見出しだけを読ませてもらった。

 

『最悪の大罪人「岡野大吾(おかのだいご)」拷問ののち処刑』

 

 その一文を読んで、俺は頭のなかが真っ白になった。

 

「そんなっ……!」

 

 その文面を読んだだけで、岡野大吾(おかのだいご)が他のクラスメイトを庇ったのだとおおよそ推測できた。

 

「……っっ……」

 

 気づけば俺は泣いていた。

 もう一ヶ月も前のことだ。

 マグダーラ山脈で薬を必死に探している頃、岡野大吾はひどい拷問を受けて、殺されたのだ。

 

 やはり俺は、選択を間違えたのか。

 あの時やっぱり、浅尾和奈(あさおかずな)新崎直穂(にいざきなおほ)、どちらかの命を見捨ててでも現実世界に期間すべきじゃなかったんじゃないかって……

 なんて、とてもじゃないけど思える訳なくて……

 

 二人と仲良くなった今、どちらかを見捨てるなんて、俺にはできない……

 だからと言って、岡野大吾(おかのだいご)の命が軽いと思っている訳でもない、だけどっ……!

 

「俺は、どうすればよかったんだ……」

 

 俺は絶望して頭を抱え込んだ。

 これからどうするか?

 何を目標にして生きていくのか。

 問題は山積みで、考えれば考えるほど調べれば調べるほど分からなくなっていく。

 

「もういっそ、このまま和奈(かずな)や獣族たちみんなと、ここで一緒に暮らすのもいいかもしれない……」

 

 なんて考えが、頭の中に浮かびあがる。

 和奈(かずな)の回復を待つ間。俺たちには平和な日常が続いていた。

 やることが忙しくても、ゆったりとした時間が進んでいた。

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 転生してから、三ヶ月が過ぎた。

 新生1778年9月。

 

 ガロン王国北部の山地に、六つ目の大ダンジョン。「(仮名)浮遊の大ダンジョン」が出現しという新聞記事が流れてきた。

 写真を見ると、逆ピラミッド型の天空城が空に浮かんでいるような形をしていた。

 

 

 

『毎日毎日ありがとうねぇ』

 

『はい、アジルさんもお大事にしてください!』

 

 

 毎朝アルム村を回りながら獣族語で挨拶して薬を配達するのが俺の日課になっていた。

 三ヶ月が経ち、俺は簡単な獣族語は聞き分けて発話できるようになっていた。

 微妙な発音の違いもフィリアが分かりやすく教えてくれた。

 

 

 

 浅尾和奈(あさおかずな)の状態は、車椅子に座って室内を移動できるまで回復していた。

 車椅子は村の大工に特注で作ってもらったものだ。

 獣族は手先が器用で手工業が得意な種族だった。獣族の八割近くが魔法を扱うことができないので、物理的な工作技術が発展したのだという。

 

 

 浅尾和奈(あさおかずな)の体内機能はほとんど再生したので、あとは体力を取り戻すためのリハビリを行うだけらしい。

 退院も間近ということで、俺は和奈への退院祝いにあるものをあげたくて、良い作り方がないかどうかフィリアに相談を持ちかけた。

 和奈(かずな)にはサプライズで渡したいから、毎日の日課のついでに素材をコツコツと集めている。

 

「ただいまー」

 

 と声を張り、ガラガラと玄関扉を開けて帰宅した。季節は秋に差し掛かり、ずいぶんと散歩しやすい気温になった。

 

「おかえり行宗(ゆきむね)、朝ごはんできてるよー」

 

 廊下の奥から浅尾和奈(あさおかずな)の明るい声が届いてきた。

 

「うん、いま行くー」

 

 僕は草作りの靴を脱ぎ揃え、廊下をパタパタと歩いていった。

 

 食卓にはほかほかと湯立つ朝ごはんが並び、妊娠三ヶ月でお腹の膨らんだフィリアに、ジルク、マナト、ジュリアおばさん。

 そして車椅子に座ったエプロン姿の浅尾和奈(あさおかずな)がいた。

 

「「「いただきます!」」」

 

 みんなで手を合わせて朝ごはんにありつく。 

 まるで日本の小学校の給食だった。

 

「美味しい……これ本当にお前が作ったのか? 和奈(かずずな)?」

 

「ふふん、そうでしょう! ジルクくんが丁寧に教えてくれたから、ね!」

 

「……は、はいっ! でもそれも和奈(かずな)さんの料理センスが抜群だからですよ!」

 

 和奈(かずな)に話を振られたジルクは目をそらしながらまくしたてた。

 

「ふふ、ありがと」

 

 満更でもなさそうに鼻を鳴らす和奈(かずな)へと、恥ずかしげに視線を向けるジルク。

 

 そう、ジルクは現在、浅尾和奈(あさおかずな)に惚れているのである。

 

 俺やフィリアがマグダーラ山脈にいる間に、ジルクの想い人はフィリアから和奈(かずな)へと移り変わっていたのだ。

 

 この三ヶ月、俺とマナトとジルクはよく三人で風呂に入るのだが、その時に相談という形でジルクから聞かされたのだった。

 

行宗(ゆきむね)さんの好きな人は、新崎直穂(にいざきなおほ)さんだけ、なんですよね?」

 

 というジルクからの不思議な質問を受けて、俺が肯定すると。

 ジルクは俺に恋愛相談を持ちかけてきたのだ。

 

 ジルクは俺がマグダーラ山脈に薬を取りに行っている間、和奈(かずな)の身の回りの世話をしていたらしい。

 つまり、和奈(かずな)の下の世話もするし裸も見ることになる。

 

「俺は下心ばっかりだったのにっ、和奈(かずな)さんは嫌な顔一つせず辛そうな時も笑顔で俺にありがとうって言ってくれて……そんなのもう好きになるしかないじゃないですかっ!」

 

 お風呂のなか、男同士の裸の付き合い。

 赤裸々に想いを告白したジルクの気持ちは、俺だって良く分かる。

 俺も直穂(なおほ)という特別な存在がいなければ、和奈(かずな)の魅力に籠絡されてしまっていたかもしれない。

 

 浅尾和奈(あさおかずな)は。クラスのエロい女子ランキングで堂々の一番人気であった。

 制服のシャツのボタンが弾け飛びそうなほどの健康的な巨乳に、サッカーをやりこんだ引き締まった綺麗な太もも。綺麗な身体の曲線、かすかに割れた腹筋とくびれ。

 性格も太陽みたいに明るいし、根っこから優しいし、飾らないし、

 うん……文句のつけどころのないほど良い女の子だ。

 

「どうすれば和奈(かずな)さんと両思いになれるでしょうか?」

 

 というジルクの問いに、俺は頭を悩ませた。

 それは和奈に籠絡させられたクラスの男子達をことごとく悩ませてきた難問であったから。

 

「さぁ……まずは下心を見せずに自然体で振る舞うことじゃないか? ……あとは、できる限り多くの時間を一緒に過ごす、とかか?」

 

 俺が言えたのは歯切れの悪い当たり前のアドバイスだけだった。

 

 

 

 ★★★

 

 

 

「……もうすぐ退院だね。私」

 

「…………」

 

 和奈(かずな)がそう言うと、みんな箸を止めて和奈のほうへ目線を向けた。

 

「……いまのうちに、一度ちゃんと伝えておこうと思います。三ヶ月間、私の面倒をみてくださった皆さん、ありがとうございました」

 

 和奈(かずな)はかしこまると深々と頭を下げた。

 ジルクは今にも泣き出しそうな表情になっていた。

 

「オレたちこそ、楽しかったよ。和奈(かずな)

 オレがしんどい時に相談に乗ってくれてありがとう。お陰でオレは今日まで頑張れてるから」

 

 フィリアが少し寂しそうに和奈に言った。

 

「うん、フィリア。出産に立ち会えなくてごめんね。私の命を助けてくれてありがとうございます」

 

「あぁ、オレたちこそ、今までお世話になりました」

 

「まだお別れじゃないよ。もう少しだけ、一緒に居られるから」

 

 和奈(かずな)が優しい瞳でそう言った。

 そこで食卓に、しばしの沈黙が訪れた。

 この日常にも、終わりの影が近づいていた。

 いつまでもこのままじゃいられないから。

 俺は口を開いて沈黙を破った。

 

和奈(かずな)が退院したら、俺たちはここを出て、新崎直穂(にいざきなおほ)やはぐれた仲間たちを探しに行くつもりだ。

 とりあえずの目的地は、第六の大ダンジョン「浮遊の大ダンジョン」。

 世界中の冒険者が集まるその場所で、情報や仲間を探そうと思う」

 

 リリィさんと約束したアキバハラ公国に行くことも考えたが、クラスメイトの岡野大吾はアキバハラ公国で処刑されているのだ。

 いの一番にクラスメイトを殺した国に向かうのは、どうしても不安が拭えなかった。

 

「……それで、和奈(かずな)はあとどれくらいで退院出来るんだ?」

 

 俺はふと気になった疑問を口に出した。

 

「一週間って所だな。もし直穂(なおほ)の【超回復(ハイパヒール)】が使えれば今日にでも退院可能だが……通常の回復スキルではどうしても時間がかかってしまう」

 

 フィリアが答えてくれた。

 あと一週間。

 それが過ぎたら、俺たちはまた新たな冒険を始めるのだ。

 

 ちなみに【回復(ヒール)】というスキルは応用スキルに分類されて、単純な組成ながら習得難易度は最高難易度らしい。

 

 【回復(ヒール)】は、四つの基礎スキル【火素(フレイム)】【水素(アクア)】【土素(アース)】【風素(ウィンド)】を正方形上に等量配置して混合することで詠唱できる。

 と、説明は簡単だが実現させるのは難しい。

 四つの基礎スキルの同時発動でさえ困難なのに、それを等量、対称的に配置して微調整をし続けなければいけない。

 フィリアも習得するまでに五年間かかったそうだ。

 もちろん俺に扱えるはずもない。

 

 だがしかし、浅尾和奈(あさおかずな)に関しては、この三ヶ月間で【回復(ヒール)】を含む幾つかの高難度の応用スキルまで身につけてしまっていた。

 さすが多才な浅尾和奈(あさおかずな)。魔法に関しても異様に飲み込みが早かった。

 

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