クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
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それは静かな夜だった。
浮かれた熱が冷めなくて、お腹のなかがあったかくて、眠りにつけない夜だった。
どうしてだろう? 身体はもうヘトヘトなのに。
生死をかけた死闘の後の、愛する彼とのはじめての交尾。
私の〇内に〇子を注いでくれた彼は、よほど疲れていたのか、横になってすぐ、泥のように眠りに落ちた。
今も私の隣で、あなどけない顔で寝息を漏らしていた。
(………行宗の寝顔って、幼くて可愛らしいのよね……)
私は彼の顔を眺めながら、普段とのギャップに萌えていた。
まったく、好きな人の寝顔というものは、どうしていくら眺めても飽きないのだろうか?
眺めているだけで私は、胸のなかいっぱいに温かい幸福感で満たされていた。
(………あぁ、私、すごく幸せだなぁ……)
ついさっきまで◯かれていた、お腹のなかの感触を確かめながら、私は満足感を覚えていた。
正直、少し気持ち悪い。
処◯を失ったばかりで、まだ異物感というか、なにかが入っている違和感には慣れないけれど……
でも、そういう感覚も含めて、すごく嬉しいのだ。
これから、こんな日がずっと続くのだろうか?
行宗と朝のキスをして、行宗とセッ◯スをして、一緒にご飯を食べて、一緒に出かけて、一緒にお風呂に入って、
またセッ◯スして、一緒に寝る……
(幸せすぎかよ……)
私は口をニヤけさせて、悶えていた。
これからの未来のこと、いろんな幸せな想像が、頭のなかを駆け巡る。
あぁ、こんなことしてたら、一向に寝られないや……
私は妄想を自重して、頭のなかを空っぽにすることを試みた。
でも……
……できないよ……
完全に深夜テンションの脳みそだった。
さきほどの情事の思い出が、これから先のピンク色の妄想が、次から次へととどまることをしらない。
……今は、何時だろうか?
温泉を出発したのが午前0時、その直後にギルアと戦い、ここまで逃げて、セッ◯スして……
少なくとも、3時間以上くらいは経っている……
今が6月、現実世界と同様に夜が短いことを考慮すると、もう夜明けは近いのではないか?
……あ、おしっこしたくなっちゃった……
長く布団に入っていたからだろうか、私は尿意を感じはじめていた。
……トイレ……は無いから、せめて草むらで……
私は寝袋から静かに出ると、そこは静かな初夏の夜だった。
肌に滲んだ汗が、夜の冷気に冷やされて、私は思わず身震いをした。
……さすがに下着くらいは着ようかな?
脱ぎ捨てていた下着を、軽く風魔法で乾かして、太ももを通して身につける。
あぁ、やっぱり服を着ると落ち着くな……
興奮しっぱなしで眠れなかった理由は、素っ裸だったからなのかも……
服を着たほうが眠れるだろうか?
でも行宗が裸で寝ている隣で、私だけ着衣というのも申し訳ない……
……とりあえず、おしっこしてから考えよう。
私はそう判断して、草むらのほうへ、一歩を踏み出した。
その直後だった。
…………!?
すぐ近くで、気配がした。
「誰……??」
全身に鳥肌が立った。
身体じゅうの細胞が、危険信号を訴えていた。
私は意識は一瞬のうちに覚醒して、瞬時に腰を落とし、
着替えと共に置いてあった小型ナイフを手に取った。
そして次に……行宗を起こ……!
「…………動くな。喋るな」
私は行宗のほうを振り向いて、視界に入った光景に絶句していた。
「……変な真似をすれば、大好きな彼氏の首が飛ぶぜ?」
寝息を立てる行宗の首筋にナイフを当てながら、ソイツは歪んだ笑みを私に向けていた。
見覚えのあるソイツの姿に、私は目を疑った。
………なんで…………? どうやってっ!?
……そもそも、どうやって私たちの場所を知ったのよ?
混乱と恐怖で発狂しそうになるなかで、私は必死で頭を使った。
……今、一番大切なことは何か?
こいつの目的は何なのか?
私はどうするべきなのか?
……………
私は覚悟を決めて、右手でナイフを強く握り、
自分の首筋に、ナイフあてがった。
………………
……………
……
★★★
「お前こそ動くな。行宗に手を出したら、私も自分の首を切る」
「……へぇ、どういうつもりだァ?」
私が自害を仄めかして脅すと、ソイツは気色悪い笑みを浮かべながら私の方へと目を向けた。
その冷たい視線に思わず寒気がして全身に鳥肌が立った。
まるで私の心の中が覗かれているような、人間のモノとは思えない目つき。
でも、私はギュッとナイフを握りしめる。
私の彼氏が殺されそうになっているのだ。怖がっている場合じゃないだろう。
「私の男に手を出すな。……お前の目的は私なんだろ? ……ギルア?」
私がそう言うと、ギルアの表情が少し揺らいだのが分かった。
ギルア……お前は死んだはずじゃないのか? 私が天使の力で跡形もなく消し飛ばしたはずだ。
「ククク、どうしてそう思う??」
ギルアは口角を釣り上げながら私の瞳を覗き込んでくる。
そこで私は、ギルアの姿の違和感に気づいた。
何かが違う。こいつはあのギルアじゃない……似ているようで別人のような気がする。身体も一回り大きい気がするし、皮膚は垢まみれでくすんでいた。
「ギルア…… お前は、私に対する攻撃だけは手加減してた。
他の皆には剣で斬りかかって殺すつもりで攻撃してたけど、
私に対しては剣を使わずにニーナに素手で攻撃させていたでしょう?
私だけは殺してはいけない事情があったんじゃないの?
お前の目的は私達の皆殺しなんかじゃなくて、私の存在……そうなんでしょ?」
戦いの最中から、ずっと違和感があったんだ。でも今、全てが繋がった。
「…………」
ギルアは何も言わない。
私はギルアと対峙しながら、息をすることも忘れて警戒し続けていた。
コイツのことだ。いつどんな卑怯な手を使ってくるか分かったもんじゃない。
「ふぅ…… ったく勘の良い奴め。 ……降参だァ。お前に死なれちゃ敵わねぇ」
ギルアは大きなため息を吐くと、リラックスした様子で行宗の寝顔の隣にリラックスした様子で腰を降ろした。
「っ………」
私は歯を噛み締めた。
いつでも自分の首を斬れる準備と覚悟を決めながら、じっとギルアを警戒し続けた。
「………それで、この硬直状態をどうするかって話だが……」
「行宗から離れろ。私たちの前から消えろ」
「……ククク、そうは行かねぇよ。こっちも任務で来てるんだァ。”柱”候補の
「…………」
息をつくのもままならない状況が続いていた。
私は無理やりゴクリと唾液を飲み込み、暴れまわる心臓を抑えて、なんとか平静を保とうとしていた。
「……なぁ直穂。ここは一つ、取引をしないか?」
「私の名前を呼ぶな。クズ……」
「くくく、いい表情だァ……可愛いぜぇ直穂ぉ……」
「死ね」
身体の中が怒りのあまり熱くなるのを感じた。
怒りが爆発して我を忘れそうになるたびに、私は無理やり息を吸い込んで何とか気持ちを落ち着けていた。
「……お前の言う通り、俺の目的は新崎直穂、お前の身体に他ならない。……俺はお前を誘拐しなくちゃいけない。……俺に大人しく誘拐されろ、直穂。
そうすれば彼氏は殺さないでおいてやる」
「何……言ってんの……?」
私は全く訳が分からず、無意識のうちに呟いていた。
「お前の選べる選択肢は二つだ。……ここで彼氏と一緒に死ぬか、俺に誘拐されて彼氏を守るか? ……十秒考える時間をやるよ」
「は? そんなのっ……」
どっちみち、行宗とは二度と、会えないってことじゃないか……
嫌だ。嫌だっ、ふざけんなっ…… 死ねクソ野郎っ。
私は行宗と幸せになるんだ。結婚して子供を作って、お爺ちゃんお婆ちゃんになるまで幸せに暮らすんだっ!
「十、九、八、七……」
ギルアはゆっくりとカウントを刻み始めた。
泣いても駄々を捏ねても、時間の進みは止まってくれない。
「六、五、四……」
「ま、まってっ」
私は泣きながら縋った。
「三、にーい……」
「まってっ。一つだけ質問させてっ……」
「……なんだァ?」
私の必死の懇願に、ギルアは数えるのをやめて私を見上げた。
「おまえが行宗を殺さないっていう証明が欲しいの……! だから教えて。どうやってこの場所が分かったの……? 私は追手を巻くように逃げてきたのに、どうやってここまで辿り着いたっていうの?」
「なぁんだそんな事かよ。ほら、現実世界で言う所の何だったっけな…… ジーピーエス? 発信機って奴だ。
安心しろ。貴重なもんだから回収する予定だ。目印はお前だしな。……彼氏クンにはついてねぇよ。逃げられたら場所なんて分からねぇ」
「そうか……だから私達の場所が分かったんだ」
「あ、彼氏クンを殺さねぇって言っても、彼氏クンからマナ騎士団に
彼氏クンが俺達の邪魔をするなら、約束を反故にして殺さざるを得ない」
まぁそうか。いくら行宗を殺さないと約束しても、行宗がマナ騎士団を攻撃するなら交戦せざるを得ないということ。
「でも……行宗は、きっと私が居なくなったら、私を助けるために全力を尽くしてくれる。
私を助けるためならどんな危険にも飛び込む……私は愛されてるのよ……」
私はすやすやと眠る行宗の寝顔を眺めて、大粒のなみだを零していた。
「……だから、私に彼への手紙を書かせて欲しい。『あなたが大嫌いです』って、『絶対に助けに来ないでください』って……」
「……ぷくく、あははぁ、そりゃ傑作だなぁ! 惚れてる女からそんな手紙残されたら号泣もんだぜ? 俺なら生きる希望を失っちゃうぜェ。それ彼氏クンが自殺しようが、俺にとっちゃ知ったこっちゃねぇからなァ?
いいぜ? 性悪女の最低の離婚状をつきつけてやれよ」
「っ……」
この手紙を読んだ行宗の顔を想像して、私は胸に張り裂けそうな痛みを感じた。
ごめん……ごめん……ごめんね行宗……
あなたを酷く傷つけてしまって、本当にごめんなさい。
だから私は、せめて、あなたの幸せを願うよ……
あなたがこれから、私がいなくても、幸せに生きていけますようにって。
手紙に込めるよ。
「それで、質問は全てか?」
ギルアが私に尋ねてくる。
「……じゃあ、お言葉に甘えて。……どうしてあなたは生きてるの? 私が殺したはずなのに」
目の前の男は、人格そのものはギルアに違いないように思える。
でも、姿はどこか違う気がする。違和感がある。
似ているようで、何か汚くて、どうしても同一人物だとは思えないのだ。
「……簡単な話だ。彼氏クンの賢者の目では見えなかったようだが、俺はもう一つの特殊スキル【
憑依先の身体が死ねば、魂は憑依前の本体に戻ってくる。
さっきお前らが戦った身体が三男。で、今のこれが長男だったか? よく覚えてないが、今ここにいる身体と先ほど死んだ身体は別モンって事だァ、中身は同じだがな」
「…………」
「……さぁ、もう少し談笑といきたい所だが、そろそろ決断の時間だァ?
選べ。二人で死ぬか、お前が彼氏を助けるのか?」
「……………」
私は、諦めたように、首元のナイフを地面に落とした。
「……分かった。大人しく誘拐される」
「敬語」
「……分かりました。大人しく誘拐されます」
「そういう事じゃねぇよ。人にものを頼むときは態度ってものがあるだろう?」
「……お願いします。どうか私を誘拐してください。その代わり私の彼氏には手を出さないでください」
私は誠心誠意頭を下げた。
もうプライドなんてどうでもいい。
望まれるなら靴だってチ◯◯だったア◯◯だって舐める。
私は地面に膝をついた。そのまま両手を前について、深々と頭を下げる。
土下座だ。
「……あぁ安心しろ。俺は約束を守る男だ。彼氏くんがこちらに大きな危害を加えない限り、俺達マナ騎士団はもうこの男には手を出さねえ。あの獣族たちにも興味がねぇしな」
「……ありがとう、ございます……」
目尻から勝手に涙がぼろぼろと溢れていった。
あれ、おかしいな。
もう人間としての尊厳を捨てる覚悟は決めたはずなのに。
「いいか直穂。お前にもう人権はない。死ねと言われたら笑顔で死ね。明らかな抵抗の意思を示した場合。彼氏クンの命の保障はねぇからなぁ?」
「……はい、もちろんです……」
私の答えに、ギルアがクックックと噛み殺したように笑うのが聞こえた。
「立て直穂、最初の調教だ。まだお前の中に残ってる高いプライドや尊厳を丁寧に砕いていってやる」
私は恐怖で全身をガタガタと震わせながら、殺したい男の前で無防備に立ち上がった。
ギルアの足元には、行宗がいた。
私の大好きな彼氏。ついさっき身体の関係になって、将来を誓いあった私の旦那。
ごめんね……行宗……
どうか、幸せに……
「服を脱げ、笑え」
そんな命令に私は、ぎこちなく引き攣った表情筋を持ち上げながら、大人しく指示に従うのだった。
…………………
……………
……
事後、私は行宗に、手紙だけを残していった。
どうすれば行宗は私の事が嫌いになるだろう? どう書けば行宗くんは、私に幻滅するだろう?
必死に頭を回転させて、最低な言葉の羅列を書いては消してを繰り返した。
彼を傷つけて私を忘れさせるためだけの文章を一生懸命考えるのは凄く苦しくて、何度も涙で紙をダメにした。
最後くらいは、愛の言葉を残したかった。
愛してるって、行宗に言い遺したかった。
でも、そんな言葉は許されない。
助けに来てよだなんて死んでも言えない。
まだ手の届く距離で、行宗はすやすやと眠っているのに。
ごめんね、ごめんね……
止まらない私の涙が、行宗のあなどけない顔のほっぺたをぽつぽつと叩いていた。
そして私は、最低な手紙を完成させた。
―――――――――――
――万波行宗へ――
私のことは忘れてください。
私のことは探さないでください。
あなたが大嫌いです。
さようなら。
二度と会うことはないでしょう。
――
――――――――――
その手紙の紙切れを、行宗のパンツの中に忍び込ませる。
「んじゃ。別れの時間だ。直穂」
頭の上から、ご主人様の声がした。
「はい、ギルア様……」
プライドも尊厳も、何もいらない。
でも心までは上書きされたりしない。
ただあなたに、万波行宗に、幸せに生きて欲しいのだ。
ただあなたの幸せを願って。
中学二年生の頃、行宗くんと出会って、私の人生は大きく変わった。
引っ込み思案で自分をよく見せようとまじめに振る舞っていた私は、学級委員で一緒になった行宗くんのお陰で、少しづつ友達も増やせるようになって、友達も増えていったのだ。
彼氏も出来た。行宗くんにも告白された。二人の男の子に恋愛感情を抱いて混乱していた自分がいた。
高校生になった。また学級委員に挑戦した。花園カレンちゃんという親友ができた。
そして6月、異世界に召喚された私は、行宗くんと恋に落ちて、愛し合って。
行宗とセックスをした。
楽しかったなぁ……凄く楽しかった。
この世界に来てからの一週間は、毎日が楽しくって充実してて、わくわくとドキドキの連続だった。
ねぇ、行宗。私を好きになってくれてありがとう。私を愛してくれてありがとう。
私もね。行宗の事が大好きだよ。それはこれからもいつまでも変わらないから。
あなたの幸せを願っています。
一緒に居られなくてごめんね。約束守れなくてごめん。
さよなら。
【作者よりあとがき】
どこで切るか迷いましたが、やはりここでひと区切りとしようと思います。
この第C膜は、第六膜に入る前に知ってもらいたかった「世界の歴史」や「行宗以外の視点の物語」を詰め込んだような章になりましたが……楽しんで貰えたでしょうか?
次話から第六膜という事で、物語は新たな展開へと向かいます!
最近はシリアス成分多すぎたので、なるべく和んで笑える要素が増えるように頑張ろうと思います!
ここまで読んでくれた読者さんへ、本当にありがとうございます!
私が初めて書いたオリジナル小説であり、読みづらい部分も多かったかと思いますが、ここまでついてきてくれてありがとうございます!
私はこの作品を、世界一面白い小説にするために、妥協せず完結まで必ず書きます!
これからも楽しんでいただけると嬉しいです!
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