クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件   作:スイーツ阿修羅

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八十五発目「呪詛・号哭・それでも」

 ー万波行宗(まんなみゆきむね)視点ー

 

「え……?」

 

 仮面の人物に向かって剣を振りおろそうとした瞬間。

 なぜだか分からないが、身体に悪寒が走り、身体が動かなくなった。

 斬ってはいけない。殺してはいけない。

 自分の身体が、必死にそう訴えかけているようだった。

 

(なんだ……これは?)

 

 マナ騎士団を、躊躇なく殺す覚悟はしてきたハズなのに。

 違和感、既視感……頭のなかにひっかかる何かがあって、

 俺は混乱に陥った。

 

「まさかお前、万波行宗(まんなみゆきむね)か……?」

 

 仮面の男が声を発して、俺は雷を食らったような衝撃を受けた。

 その声色には聞き覚えがあったのだ。

 

「は? なっ、竹田慎吾(たけだしんご)……」

 

 同じクラスの隣の席で、いつも陰キャの俺に優しく話しかけてくれた、サッカー部のモテモテイケメン。

 竹田慎吾(たけだしんご)の声に他ならなかった。

 

「お前生きてたのか! 新崎(にいざき)さんと和奈(かずな)は!? いや、それよりも……」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)は早口でまくし立てた。

 俺は、その明るい声に、心底腹が立ってしかたがなかった。

 

「……なんでっ! お前がっ! 

 マナ騎士団の格好をしてるんだよっ!!」

 

「え……?」

 

「いますぐ攻撃をやめろッ! 獣族たちへの攻撃を止めろっ!」

 

 俺は竹田慎吾(たけだしんご)に掴みかかった。

 突き飛ばして馬乗りになり、仮面を吹き飛ばして、彼の爽やかイケメンな顔面と再会すると、死なない程度に首をギリギリと締め上げた。

 

「いでぇ……くそっ、なんのつもりだよっ……! 行宗(ゆきむね)ぇっ!」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)は恨めしそうに俺を睨み上げる。

 

「ふざけんなよっ! それはこっちのセリフだっての!

 獣族は俺達の恩人なんだよ! なんでお前がマナ騎士団なんだ!?

 お前がクラスメイトじゃなかったら、俺はとっくにお前を殺してるからなぁっ!!」

 

 涙を溢れさせながら、沸き立つ怒りが爆発していた。

 こいつの顔をみるに、どうやら悪気はないらしい。

 ……悪気がない?

 どういうことだよ!?

 これほどの大殺戮を遂行しておいて、悪意が無いっていうのか? ふざけるのも大概にしろよ。

 

「落ち着けっ……ぐぶっ……分かった! 襲撃は中止するっ……! クラスのみんなに今すぐ伝えるっ……!

 落ち着いては話し合おう……だからっ、この手を離してくれっ……!」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)の顔が、青白くなっているのをみて、思わず俺は両手を緩めた。

 慎吾はゴホゴホと咳き込みながら、俺の前でゆっくりと立ち上がる。

 

涼介(りょうすけ)! いますぐ来てくれッ!」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)は、近くにいた仮面に向かって、大声で叫んで呼んでいた。

 しかし、周囲は絶えず、轟音が鳴り響いていて煩い。

 果たして声は届くのか?

 

「なんだぁ?」

 

 どうやら、声は届いたらしい。

 涼介(りょうすけ)という名前の、おそらく俺のクラスメイトが、

 まるで教室で友達に呼びかけられた時みたいな、呑気な声で返事をしながら、駆け寄ってきた。

 

 なんだよそれは、その軽い感じは……

 こんな奴らに……

 覚悟も決意も何もない、頭のなかお花畑で生きているような奴らに……獣族たちは殺戮されたっていうのか?

 

「……どうした? って、え!

 もしかしてお前、行宗(ゆきむね)!?

 なんでこんな場所に!?」

 

 涼介(りょうすけ)という奴は、賢者状態で光り輝く俺を見て、びっくりと目を見開いていた。

 俺はそいつに睨み返した。

 

「今から俺のいう言葉を拡声してくれ、できるな?」

 

 慎吾(しんご)が言う。

 

「おうよ、まかせろ。

同位相・増幅(セイム・アンプ)】……!」

 

 涼介(りょうすけ)慎吾(しんご)の肩に触れて返事すると、

 

「両耳を塞いどいたほうがいいぜ」

 

 爽やかな声で俺にそういう。

 俺は両手で耳を塞いだ。

 

『みんなぁぁぁ!! 作戦中止、作戦中止だぁっ!! 全員今すぐ撤退してくれっ!』

 

 キィィィィンという耳鳴りと共に、

 竹田慎吾(たけだしんご)の声が、人間には不可能な大音量で響き渡った。

 耳を両手で塞いでいるのに、まるで効果がないみたいだ。

 声が貫通して響いてくる。

 

 なるほど、涼介(りょうすけ)という男の特殊スキルは、音量を増幅させる能力らしい。

 

 周囲を駆け回っていた10人程度の生命の気配が、パタリと足を止めるのを感じた。

 あぁ、良かった。

 竹田慎吾(たけだしんご)が、話の分かる奴で良かった。

 

 一歩間違えれば、クラスメイトと殺し合いになる所だった。

 フィリアは無事だろうか?

 アルム村のみんなは、子供たちや老人達は無事だろうか?

 分からない、けれど。

 これでひとまず、クラスメイト達による獣族の殺戮は、止まったようだった。

 

和奈(かずな)……」

 

 俺はふと、彼女のことが心配になっていた。

 

浅尾和奈(あさおかずな)が、俺と一緒に居るんだ」

 

 俺はそう伝えて、和奈(かずな)のほうへ(きびす)を返した。

 

「え、まて。和奈(かずな)は一緒に、って……

 新崎直穂(にいざきなおほ)は? ……新崎(にいざき)さんは一緒じゃねぇのかよ……」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)が、焦った様子で尋ねてくる。

 あぁ、そうか……

 やっぱりか。

 

「お前ら()直穂(なおほ)の行方は知らないんだな……」

 

 俺は、諦念とともに、吐き捨てた。

 

 

 ★★★

 

 

 ー浅尾和奈(あさおかずな)視点ー

 

 ぼぉぉん、ぼぉぉぉんと耳鳴りがする。

 周囲の音はほとんど聞き取ることができなかった。

 

 視界いっぱい真っ黒だった。起きているのか寝ているのか分からないような感覚に陥った。

 私はずっと吐き続けているのだろうか?

 

《………許さない……》

 

 私は、自分の耳を疑った。

 ついに幻聴まで聞こえてきたのだ。

 魂に直接響いてくるような、ドスの聞いた、恐ろしい女性の声がしたのだ。

 

《……よくも、よくもよくもよくもよくもぉぉぉ……!》

 

 ガハァ……

 私は、また酸っぱいものを吐き出してしまう。

 その反動で、少しだけ、まぶたがひらいた。

 

 え……?

 

 それは赤く染まった世界だった。

 地獄のような、昏い赤に染まった空と大地…

 そして目の前には、白い仮面を地面に落とした久那木玲香(くなきれいか)が、苦痛に顔を歪ませていた。

 

「痛い……痛い……和奈(かずな)ぁあっ」

 

 呻くようにほそぼそと声を漏らした。

 玲香(れいか)は瞳からどろどろの血を溢れさせ、口から鼻からも真っ赤な血が、身体の穴という穴から溢れ出していた。

 

 そして、私は鏡うつしのように、それは私自身にも起こっていることなのだと、確信した。

 視界が真っ赤に染まっているのは、幻覚でも何でもない。

 私の目から、血が溢れて止まらないからだ。

 

 何が、起こっているのか?

 身体を内側がら蹂躙されるような痛み、痺れ、狂気……

 

和奈(かずな)……和奈(かずな)ぁ……助けてぇ……」

 

 鮮血塗れの、私にすがりつく玲香(れいか)

 私は少しだけ理性を取り戻した。回復魔法の存在を思い出した。

 私は、玲香(れいか)に手を伸ばし。二人一緒に包み込むように、回復魔法を詠唱した。

 詠唱した。詠唱した。

 あれ……? たしかに、詠唱しているハズなのに……あれ? あれ?

 私の魔法は発動しなかった。

 ただむなしく指先が震えるだけで、魔力が流れていく感覚がない。

 

《……和奈(かずな)和奈(かずな)和奈和奈和奈(かずなかずなかずな)……って

 ……お前は、(めぐみ)じゃなかったのかよ……なぁ!?

 騙したな……騙したなぁぁ!

 よくも騙したな騙したなぁぁッ……!!》

 

 またおぞましい女性の声がして、私の心臓はギュッと潰されるように圧迫された。

 

「……何……何て言ってるの? わっかんない、よ……」

 

 玲香(れいか)が、混乱を極めて発狂するのを聞いて、

 私はようやく、答えにたどり着いた。

 これは、獣族語じゃないか。

 

《死ね……死ね死ね死ね死ね……消えろ消えろ……父さんと母さんを返せ地獄へ堕ちろ……みんな殺してやる許さない許さない許さないぃぃい!!》

 

 アイリス……!

 この脳内に響く、おぞましい魔女のような歪んだ声は、たしかにアイリスの名残があった……!

 落ちていくまぶた、それを抑えて、

 ちらりと目線を、声のする方へと向けた。

 

 そこには、2つの死体の前でうずくまって、地面を壊れたように叩くアイリスが見えた。

 父さんと母さんが無惨に殺された死体を凝視しながら、泣き叫ぶように呪いの歌を詠唱する。

 ドクン、ドクンと、彼女の起こす波動が、私の身体をめちゃくちゃに壊してくるのだ。

 

「ごめ……んな……さい」

 

 私は、絞り出すように泣いた。

 私はアイリスと約束したのに。

 

 絶対に仮面の集団を倒すって、獣族を守るって……

 父さんと母さんは殺させやしないって……

 約束したのに……!

 アイリスの両親が、目の前で殺される瞬間、私の身体は動かなかった。

 動揺とショックで何ひとつできなかったのだ。

 ごめん、ごめんね。ごめんなさい……

 私は、約束、守れなかった。

 

「ギィァアァアアアアアア!!」

 

 今度は何だ?

 鼓膜を切り裂くような男の悲鳴に、私は混乱に陥った。

 脳みそが震える。

 絶叫と発狂が衝突し合って、

 アイリスが私にもたらした呪いの歌声が、少しだけ和らいだ気がしたのだ。

 男の絶叫が響いたお陰で、アイリスの歌の魔力が弱まって、

 今だけなら、回復魔法が使えると確信できた。

 

「【回復(ヒール)】!!」

 

 私は最大出力で回復をした。

 淡緑の光は、私と玲香(れいか)を包みこんだ。

 痛みが消えて、血が止まる。

 私の視界の赤が薄まっていき、空が青さを取り戻していった。

 

「今だっ!」

 

 叫び声とともに、氷魔法が、アイリスの方へと向かっていった。

 しかし、途中で勢いが殺される。アイリスに触れる直前で停止してしまう。

 

 つぎの瞬間、一斉に、

 マナ騎士団の仮面たちが、数人がかりでアイリスに飛びがかった。

 いや……きっとクラスメイトの男子たちだ。

 アイリスへ向かって、剣や槍を片手に、目を血眼にして襲いかかる。

 

 あぁ、だめ。殺しちゃだめだよ……!

 私は、胸の奥にするどい痛みを感じていた。

 

 私はあと少しで、アイリスに殺されるところだった。

 彼女が悲しみにうちひしがれて、私たちに向けた強力な殺意は、歌の力で、呪いのようなかたちで具現化したのだ。

 殺されなければ殺される。

 アイリスは私達を敵だと認定している。

 今この機会を逃せば、今度は私達の命が危うくなるのかもしれないのだ。

 でも……それでも、悪いのは私達なんだ。

 罪を犯したのは、私なんだよ。

 

 アイリスは、心の優しい女の子だ。

 苦しみながら歌を歌って、行宗(ゆきむね)の毒を解毒してくれたのだ。

 人間である私たちに、偏見はあっただろうけど、なんだかんだ手を差し伸べてくれた。

 ……たった1時間前に出会った。短い付き合いだったけれど。

 私はアイリスと、仲良くありたかった。

 だからっ……!

 殺さないでっ……!

 私は痙攣して動かない喉を、必死に動かそうと努力した。

 

「絶対に殺すなっ! 殺したら許さないからなっ!」

 

 私のすぐ後ろから、力強い大声がした。

 私のか弱い声を、かき消すように、

 私が叫びたかったことを、彼が代わりに叫んでくれたのだ。

 

涼太(りょうた)頼むっ! 声を消すだけでいいんだ!」

 

 行宗(ゆきむね)の声が、私の背中を超えて響く。

 私は涙が溢れて止まらなくなった。

 

「【逆位相・減衰(アンチ・アニュア)】!」

 

 私のクラスメイト、たしか吹奏楽部の男子涼太(りょうた)は、そう言ってアイリスの肩に触れて。

 アイリスの歌声は、ぴたりと聞こえなくなってしまった。

 

 はぁ……はぁ…はぁ……

 私の中から、倦怠感や痛みが消えていく。

 意識や五感が鮮明になるのを感じながら、私は玲香(れいか)と身体を寄せ合い、小刻みに身体を震わせていた。

 

和奈(かずな)……! 身体は大丈夫か?」

 

 行宗の声がして、私の背中がポンと叩かれた。

 途端に私は、身体じゅうから力が抜けた。

 疲れた。もう一ミリも体を動かしたくなかった。

 

「だいじょーぶ、だよ……」

 

 私は、最後の力を振り絞って言うと、

 疲労感に襲われて、消えゆく意識にあらがうことができずに、気絶した。

 

 

★★★

 

 

「なんだ……ただ寝てるだけか……」

 

 俺は和奈(かずな)の寝息を確認して、ふぅと安心のため息をついた。

 身体は汗と血に塗れていたけれど、回復魔法をかけたのだろう、外傷自体は見られなかった。

 すぐ隣を見ると、仮面の女の子が一人、和奈に寄り添うように眠っていた。

 おそらく、和奈(かずな)とこの女子が、アイリスの歌の攻撃を最も強く受けたのだろう。

 他のクラスメイト達は、吐く者はいても、出血している様子はなかったからな。

 

 俺は二人の状態を確認すると、アイリスの方に集まった男子達に向かっていった。

 

 アイリスの様子を見ると、嬉しいことに泣き疲れたのか、気絶して地面に突っ伏していた。

 

 涼太(りょうた)という奴の特殊スキル、【振動複製(バイヴコピー)】のお陰で、

 アイリスを傷つけることなく無力化できた。

 振動の重ね合わせで声を大きくすることができるのならば、

 逆に打ち消しあう振動を重ねて声を消すことだってできるハズだ。

 要するに、ノイズキャンセリングの原理である。少し高価なヘッドホンやイヤホンについてるやつな。

 

 すぐにアイリスが気絶してくれたのは、想定外の幸運だった……

 ただの幸運だと、俺は思っているけれど、

 もしかしたら、歌声を消した影響で気絶した可能性もあるか?

 ……わからん。

 

「みんな、一度ここを離れよう。

 事情を聞かせてくれよ。 こんな……仮面を被って、獣族を殺戮しなくちゃならなかった事情をな」

 

 俺が憎悪を込めていうと、

 

「……そうだな。どこへ行こうか……?」

 

 竹田慎吾(たけだしんご)が、気まずそうに返事をした。

 

「その話、オレたちにも聞かせてくれねぇか?」

 

 後ろから、聞き覚えのある声がして、

 俺は思わず振り返った。

 そこにはフィリアが、そしてマナトが、ジルクが、

 険しい顔つきで立っていた。

 

「よぉ。

 あーあ、そんなに警戒すんなよな……

 オレ達に攻撃の意思はねぇよ。

 第一、勝てるわけねぇだろうが……」

 

 フィリアは仮面のクラスメイト達を見渡しながら両手を上げた。

 疲れたような投げやりな声に、オレは戦慄して鳥肌が立った。

 そこそこ長い付き合いだから分かる。

 フィリアは心のなかで、めちゃくちゃに怒っている。

 

「フィリ……ア……」

 

 オレは言葉に詰まりながら、恐る恐る彼女の名を呼んだ。

 

「獣族が、しゃべってる!?」

 

 俺の後ろでは、涼太(りょうた)がバカみたいに驚く声がした。

 

「……ありがとうな。行宗(ゆきむね)和奈(かずな)……」

 

 フィリアは一転、愛しむような声色で、俺の目を見た。

 

「なっ……何を……

 何も、ありがたくないだろ……」

 

 俺は言葉を失った。

 この惨状の、地獄絵図の、いったいどこがありがたいというのか。

 

「……泣くなって、行宗(ゆきむね)が何も悪くないことくらい、オレはよく分かってるからよ」

 

「んな、ことは、ねぇよっ!」

 

「……この戦いを止めてくれたのは、紛れもなくお前達だよ。

 敵も味方も、誰も死なないのが一番良いんだ。そうだろ?」

 

 オレは涙でぐちゃぐちゃになった。

 誠也(せいや)さんに恋をして、人間と獣族との間の葛藤に苦しんできた、フィリアが放った言葉だからこそ、

 その仏様みたいな慈悲の心に、俺は泣かずにはいられなかった。

 

「……オレたち獣族は、お前ら人間と何ひとつ変わらない! 感情や思考や五感を持っているっ!」

 

 フィリアは人間語で、力強く宣言する。

 クラスメイト達の、息が詰まる音が聞こえた。

 

「……オレ名前はフィリアだ!

 獣族と人間が分け隔てなく、対等で仲良く暮らしていける世界を目指してる!

 だから、お願いだ! 行宗(ゆきむね)和奈(かずな)の友達の奴ら!

 どうかオレの話を聞いてほしい。獣族が安全に暮らしていけるように、オレたちに力を貸して欲しいんだ!」

 

 フィリアは深々と頭を下げた。

 俺は信じられない思いだった。

 

 

 フィリアは怪我人の治療をジルク達に任せて、俺たちクラスメイトに着いてきた。

 人気のない。岩山にひっそりと立つ廃墟へと、歩いていく。

 

「……俺たちは、本物のマナ騎士団じゃない」

 

 隣の竹田慎吾(たけだしんご)が、弁明するように俺に言った。

 

「ガロン王国軍の幹部のひとり、ナラクから命令されたんだ。

 マナ騎士団のふりをして、獣族独立自治区を襲撃しろって」

 

「ガロン王国軍の幹部が?」

 

 信じがたい話だった。

 

「俺たちは、クラスメイトのうち数人を、ガロン王国に、人質に取られてる。

 平田大河(ひらたたいが)と、植松(うえまつ)なぎさと、加賀美杏珠(かがみあんじゅ)……あとは松田航洋(まつだこうよう)だ。

 人質を取られて脅されて、俺たちは命令に逆らえなかった、従うしかなかったんだ。本当に、ごめん……」

 

「あぁ、そうか、そうだったのか……」

 

 俺は頭を抱え込んだ。

 

「……お互い、大変だったんだな」

 

 俺は噛み締めるように言った。

 まだ、頭の中はぐちゃぐちゃで、クラスメイト達の殺戮行為を簡単に許せるわけなかったけれど、

 向こうにも、たしかに事情があったのだ。

 

「……それで? ソイツの命令に背いたらどうなるんだ?」

 

 フィリアが後ろから口を挟んだ。

 

「大切なクラスメイトを、一人づつランダムで殺していく、ってさ」

 

 慎吾(しんご)は、恨めしそうな表情で天を仰いだ。

 




 【年末のご挨拶】

 これが、2024年、最後の更新になりそうです。
 今年は、2年生になって大学が忙しくなり、授業期間はほとんど満足に執筆が出来ませんでした。
 今年2024年は、六十発目「白い仮面と赤白マント」から始まり、八十五発目「呪詛・号哭・それでも」まで、
 ifルートを含め二十八話分を更新したことになります。(たぶん……)

 来年は、第二部を書ききって、少なくとも最終章(第三部)に突入できることを目指して、
 精一杯書いていこうと思います!
 それでは、よいお年を!
 2025年もよろしくお願いします!
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