クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 作:スイーツ阿修羅
「
後ろから声がして、か弱く肩を叩かれる。
振り返ると、私の親友だった二人がいた。
ー
「
二人は、マナ騎士団の姿で獣族を殺戮し、私が呆然とする目の前で、アイリスちゃんの両親を殺したのだ。
「……分かってる。誰も悪くないって。頭では理解してる。大丈夫」
私は、目を逸らして、感情を押し殺すように言った。
正直、二人の顔を見たくない。
思い出してしまう。
ショックのあまり動けないなか、目の前で親友が人を殺す瞬間を。
謝ろうが、何をしようが、人を殺した事実は変わらない。
死んだ命は、二度と戻ってこないのだ。神様の力でも使わない限り。
「……あと、もう一つ謝らないと……
「
それを聞いて、私は、ふっと身体が軽くなった。
申し訳なさそうに、濡れた子犬みたいに小さくなった二人を、ちゃんと両目で見ることができた。
「たしかに、最低だった。
でも、ちゃんと謝って、分かってくれたから……許すよ」
「ほんとに?」
「うん、許した。
二人は、私と同じように、不安そうに足元を見つめながら震えていたのだ。
唇を噛みながら、恐る恐る、二人が私を見上げた瞬間。
私は一歩を踏み出して、二人の身体を抱きしめた。
「会いたかった。寂しかったよ。……
ぽんぽんと二人の背中を叩きながら、私は吹っ切れた声で叫んだ。
声に出せば、それが本当になる。
許した。と口に出してから。玲香やくるみに対する猜疑心やモヤモヤは弾け飛んで、
ただのクラスメイト、私の可愛い親友の二人として、見ることができた。
「うっ……ぁあっ、
運動神経抜群のソフトボール部、黒髪ショートでクール系な玲香は、笑うときも泣くときも控えめな印象があったけれど。
可愛い。
咳き込みながら号泣する
「……うぇぇぇぇっ、ごめんねぇ、ごめんねぇぇ……」
一方、成瀬くるみが泣くのは、何度も見慣れてる。
くるみはは何かある度に、冗談で泣いたりガチで泣いたり、とにかくよく泣いていた。
私は二人の頭をさすりながら、おかしくて、たまらずクスリと笑ってしまう。
「せっかくの再会なのに、あんまり泣かないでよ……
私が言うと。
「無茶言うなよぉっ……くふっ」
「あははははっ、
それを見たくるみが噴き出した。
「っ……くるみおいっ……!」
「あははっ」
「ふふっ」
あぁ、楽しい、懐かしい。
私も笑いながら、いつのまにか目から涙を流していた。
泣いて笑って、泣き止んだあとで。
「これは
ガロン王国の地下には、私達が元の世界に帰るための、【
慎吾が、【
「え? 【
「うん。最初のボス戦のとき、
本来は、大ダンジョンのラスボス討伐でしか手に入らないらしいんだけど。
どういう訳か、ガロン王国の地下で同じものを見たんだって……あのときと違って一個だけだけど」
「なるほど……」
「……私達の目標は、ガロン王国の命令に従いながら、隙を見て【
……同時に、天空の大ダンジョンの攻略も進めてる。まぁこっちは念の為、ガロン王国からの命令だしね。攻略には相当時間がかかるだろうし」
たしか
しかしヴァルファルキア大洞窟だけは例外で。
たった30年で攻略に導いた人物が、「六人目の英雄バーンブラッド」の功績であるという。
攻略には相当の時間がかかるのだ。
「だけどね。もし
「え?」
「
「何を言ってるの? 元の世界に帰る以上に大切なことなんて、あるわけないでしょ?」
私も、
クラスの皆で元の世界に帰るためだけに、
一生懸命やっているのに。
「仮定の話だよ」
「私の話はこれで終わり。ほら、
私たちの話が終わるのを待っているようだった。
「そっか、またしばらく、お別れだね」
「気をつけてね。またね……
私は二人と握手した。
そして名残惜しいながら、再び別れを告げるのだった。
「そうだ和奈。これ、もっていって」
成瀬くるみが、ポケットから小さな袋を取り出した。
「なに、これ?」
手のひらに乗せられた袋を見て、私は首を傾げた。
「避妊具、コンドームだよ。あと媚薬と精力剤」
「ファッ!?」
「
この世界ではね、
「しないよ! 使わないよっ!!」
私は真っ赤な顔で、必死に猛抗議した。
「だって、だって
「まぁまぁ、四の五の言わず、もらっておきなよ。
「念の為に、ね。お守りだと思って」
耳元で、生ぬるい吐息を吹きかけられて、私は頷くしかなかった。
「……分かった。持っていけばいいんでしょう」
汗の滲んだ手で、私はそれをポケットにしまった。
「じゃあ。またね」
私は、なんでもないふうに、
「
行宗も涼しげな顔で訊いてくる。
今の会話は、聞かれていただろうか?
いや、大声を上げた部分は、聞かれていたはずだ。
「大丈夫。待っててくれて、ありがと」
私も、何気ない顔で返事した。
★★★
そして、私と
砂利道をさくさくと踏みしめながら、アルム村へと歩いていく。
時刻は、もう昼下がり。
空を飛び、戦い、気絶して、作戦会議をしていたから、かなり時間が経ったらしい。
「なぁ、
一ヶ月という猶予があるのに、どうしてそこまで急いでいるのだろう? と一瞬疑問に思ったけれど。
考えれば当然のことだ。
人間の襲撃で、獣族が大量殺戮された今。
獣族独立自治区に、人間である私達の居場所はない。
「そうだね。アルム村の人たちも、そうとう怒っているだろうから……」
フィリアが避難誘導をしたお陰で、アルム村の住人は、ほとんど無事だったみたいだけど。
村がことごとく破壊されたのだ。冷静でいられるハズがない。
ただ、一つだけ、私には心残りがあった。
「でも、一つだけ。フィリアにお願いしてもいい?
アイリスちゃんのこと、見てあげてほしい」
「アイリス……アルム村で暴れてたジャイガの娘だろう?」
「うん。アイリスちゃんは、歌の特殊スキルの力で、私と行宗の命を助けてくれたの。
でも、私はアイリスの両親を守れなかった。目の前で、動けば助けられたのに。
マナ騎士団がクラスメイトだったショックで、私の身体は固まって、全く動かなかった」
「なるほどそれで、アイリスの歌の力が、暴走状態になったってことか」
「もともと、何かの病気だって言ってた。歌を歌うと、血を吐いて苦しんでいたから」
「へぇ」
フィリアの目つきが、真剣なものに変わった。
「……私はもう、謝れない。仲直りなんてできないけど。
アイリスちゃんは、優しくて強い女の子だから。
「まかせろ」
フィリアは、私の肩をがしりと掴んだ。
「アイリスのことも、獣族独立自治区のことも、オレ達がなんとかする。
だから、外のことは頼んだぜ、お前ら」
フィリアの言葉に、応えるように。
「まかせて。私達二人で、世界を救ってみせるから!」
大げさなセリフで、胸を叩いた。
★★★
アルム村の、崖上にて、ジルクが荷物を揃えて待機していた。
2人分の大きなリュックだ。
中には保存食や着替え、武器や地図、ガロン金貨、図鑑や薬などが詰まっている。
もともと、天空の大ダンジョンの攻略までを想定した荷物だ。
ガロン王国の王都までなら、十分すぎる用意だろう。
「あった」
私は弾んだ声で、草むらからボール拾い上げる。
今朝、北の街ぜピアに向かって飛んだとき、ここに置きっぱなしにしていたようだ。
「……持って行くのか?」
「もちろんだよ。わたしにとっての、大切なお守りだから」
私は、サッカーボールをぎゅっと抱きしめてから、リュックの中へと押し込んだ。
★★★
「悪かったな。ちゃんと見送りできなくて。オレも早く診療所に戻らねぇと」
フィリアが、寂しげな表情で言った。
「俺達もすぐに出発するよ。獣族とトラブルにならないうちに」
「じゃあな。
フィリアは、私たちに背中を向けて、ゆっくりと歩き出した。
ジルクも名残惜しそうに、それに倣う。
あっけない。
私は、心臓がギュッと締め付けられるようだった。
今まで、3ヶ月間。家族同然の生活をしてきた。
私はフィリアちゃんに、命を救われた。
今は焼け跡となった、このアルム村で、私は……
「今までありがとう。またねっ!」
私は叫んだ。
「元気でな。フィリアっ! ジルク! ……マナトやジュリアさんにもよろしくな」
「おう!」
遠くから、フィリアの声が聞こえて。
それが私たちの別れになった。
ふぅ、
と、息を吐いく。
雨の少ない独立自治区に、まばらに生えた木々の葉をみれば、かすかに赤みを帯びはじめている。
紅葉の気配を感じる、初秋。
「よし、行くか」
「うん」
私と
ときどき後ろを振り返りながらも、前に向かって歩き出した。
最初の目的地は、南。
ガロン王国、ギラギース地区の街である。
最終目的地のガロン王国首都とは反対方向であるが、
ギラギース地区には大きな河があり、船で北の上流へと登っていくのだ。
それが一番早いらしい。
そのときはメンバーに獣族のフィリアが居たから、大河を渡るために、空を飛んだり地下トンネルに潜ったり、苦労したみたいだけど。
今回は、私も