仮面ライダームラサメ外伝 銀腕に愛をこめて 作:大ちゃんネオ
アメリカ合衆国。
イリノイ州スプリングフィールド。
花の都と呼ばれるこの都市の片隅にある廃墟となったビルの中。
冷たいコンクリートで固められた闇の中をくぐり抜けると、ぼんやりとした光が灯る部屋にたどり着く。
ランプの優しい光……なんて想像する暇はなく、室内で行われている残虐を目に焼き付けさせられた。
肉が打ち付けられる音、男の怒号、男の絶叫が耳をいたぶる。
床に広がる無数の血だまりから流れる血が、私の足先に辿り着く。
部屋の中央、古い木製の椅子に座らされた男がひたすらに殴り続けられていた。
「おらさっさと吐けよ! ここで何してたかよぉ!!!」
黒人の巨漢が自白を促しながら、私の握り拳二個分はあろうかという拳で男を殴りつける。
殴られている男は色白であるが白人ではなくアジア系。中国人か日本人。
顔は殴り続けられて傷や腫れだらけで、見ていられない。
「あいつはこの辺りをうろついてやがったからこうなってんだぜキャロルちゃん」
私をここに連れてきた青白い不健康そうな男が耳許で囁く。
彼を、見せしめにしているつもり……?
「だから知らねえっつってんだろ!!! あとてめえの英語聞き取りづれぇんだよ! もっと滑舌良く喋れねえのか!!!」
男は英語が堪能なようで巨漢に言い返した。
しかしそんな言葉は巨漢を逆上させるに必要十分過ぎるなんてこと、私でも分かる。
これまでで一番力強い殴打を喰らい、黙った男に向かって巨漢は語り始めた。
「なんだお前、まだそんな喋れる余裕があんのか? いいぜ……」
巨漢は錆び付いたガンロッカーの中から銀色のベルトを取り出して身に付けると、ニタニタとした笑みを浮かべながら男の髪を掴み上げた。
「俺に殴られ続けてもまだ元気なお前には特別にこいつを使ってやるよ。身に付けるだけで力が何倍にもなるんだ。こいつで殴られたらどうなるか……」
息を飲む。
そんな、ベルトを巻いただけで力が何倍にもなるなんてことは普通はあり得ない。
けれど、何故か巨漢の言葉には真実味があった。
「はい、キャロルちゃんが見れるのはここまで。流石に人気アイドルを拷問しようだなんてことはしないよ。けど、まあ……僕らに捕まったならねぇ?」
また青白い男が気色悪く耳許で囁く。
その言葉の先は容易に想像出来た。
下衆な男の、考えそうなこと。
「さあ、キャロルちゃんこっちだよ。大丈夫この部屋とは違って綺麗だしベッドもある部屋だからさ……」
青白い男が私の肩を抱いて部屋を出ようとする。
これから起こることの、私自身の心配をすべきなのに、何故かあのアジア人が気になって仕方ない。
殺されて、しまうの……?
「なんだい? あのアジア人が殺されるところが見たいの? そういう趣味がおありかな?」
運良くなのか悪いのか、男が立ち止まってくれた。
しかし、それでどうなる。
まざまざとあのアジア人が殺されるところを見るだけではないか。
私に彼を救う力はない。
ただ、見ているだけ。
そもそも私も彼と同じここの男達に捕らえられてしまった被害者で、カートゥーンのヒーローではないのだ。
「ほらほらどうしたさっきまでの威勢は? 聞いただけでビビっちまったかぁ?」
先程までと打って変わり黙り込んだアジア人を巨漢が煽る。
アジア人は俯いたままで……。
「ふへっ……」
誰かが、笑った。
もちろん私ではない。
気色の悪い青白い男ではない。
「あ? 笑ったのか、お前?」
巨漢がアジア人の男にそう訊ねたことから今の笑い声はアジア人のものだと確定した。
この状況で笑うだなんて、いよいよ気が狂ってしまったのだろうか。
「ふへっ、ふへへっ……あひゃひゃ! あひゃひゃひゃひゃぁ!!!」
気味の悪い笑い声がコンクリートに反響する。
暴力に酔いしれていた男も、この不気味さに飲まれていた。
「な、なんなんだよお前は……!?」
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」
アジア人の笑い声が最高潮に達する。
不気味さもここに極まる……が、突然その笑い声は止んだ。
床を見ていた男の顔が巨漢を向くと、汗と血で濡れた前髪の隙間から鋭い視線が放たれる。
「─────出してくれたな、そいつを」
次の瞬間、アジア人が足に力を籠めて椅子を一瞬、ほんの少し浮かす。そして思い切り椅子を叩きつけ粉砕。拘束が解け、床に胡座をかいたアジア人は血の混じった唾を吐き捨てゆらりと立ち上がった。想像以上に背は高く、その立ち姿には先程まで拷問を受けていたとは思えぬ力強さを感じる。
「野郎!」
巨漢が殴り掛かる。
全パワーを籠めて放たれたであろう拳に対し、アジア人は動じず。何故避けないと脳で叫ぶが、避けるなど必要ない動作だったようだ。
「な、なんで……!?」
巨漢の拳は、アジア人の右手に受け止められていた。
完全にパワーは巨漢の方があるだろうに、アジア人は容易く受け止めてみせた。
「おいおい力は何倍にでもなるんじゃなかったのか? カッコいいベルトを巻いて、変身!って具合によぉ」
「ぐがぁぁぁぁ!?!? 右手、右手がぁ!? つ、潰れるぅ!!!」
「ハズレ掴まされたんだよ、お前。大体お前程度のごろつきに本物はもちろん、レプリカでも上物が渡されるとでも思ったのかぁ?」
立場が、完全に逆転していた。
信じられない。
目の前の光景が、信じられない。
まるで、ヒーローのような……。
「こいつッ!」
私と同じように目の前の光景に呆然としていた青白い男が現実に引き戻されるとジャケットの内側から拳銃を取り出し、アジア人に銃口を向けて────。
轟く、銃声。
硝煙が立ち上る。アジア人の持つ、銃から。
青白い男は手をおさえて呻いている。
何が起きたのか、また理解出来なかった。
「手荷物検査をしっかりやらないからこうなるんだぜ? おかげで当便はハイジャックだ。あー我々の要求は、身代金をたんまり頂戴することである~。あ、スイス銀行に振り込みヨロシク」
鋭い笑みを浮かべながら硝煙の香りを巨漢に嗅がせるアジア人。
脅しには、十分過ぎた。
巨漢の拳が手放されると、巨漢はその場に膝から崩れて戦意喪失。
銀色のベルトをアジア人に剥ぎ取られている時も自己を忘れ去ったままであった。
ベルトが巨漢から剥ぎ取られると、男は巨漢の首を手刀で叩き意識を奪う。殺すまではしないらしい。
「ふいー。回収完了っと。さて、帰んべ」
アジア人はベルトを肩に掛けると何事もなかったかのように立ち去ろうとして────。
「ちょっと、待ちなさい!」
「あ? なに。残業ならしない主義なんですけどー」
「残業って……て、それより私も連れてって! 置いてく気!?」
普通、こんなところに女を一人置いて帰るような真似はしない。
普通、ならば。
「いやー俺の業務に入ってないし」
ニッコリといい笑顔でそう言うと再び踵を返し歩き出した。
そうか、業務に入ってないなら仕方な……。
「ふざけないでよ!」
あまりにいい笑顔なので思わず納得しかけたがあり得ない。
本当になんなんだこの男はと思いながら後を追う。
「普通、女の子がこんなとこいたら助けるもんでしょ!」
「悪いけどー、その普通は弊社では採用しておりませーん」
暗い通路に私達の声が反響する。
それにしてもこの男、迷わず進んでいく。
暗闇で、変な作りをしているこの廃ビルの中を。
「普通ならー、こんなとこ近付かないんじゃないんですかー?」
男は依然としてこちらを振り向くことなどせずに会話を続ける、が。
痛いところを突かれた。
変な奴のクセに。
「それは……その……たまたまよ」
「あ! 干からびたカエル!」
「ちょっと話聞いてた!?」
あーもうペースが乱される!
この男……マジに変!
……顔はいいのに。
「たまたまねぇ……。たまたまでも普通は近付かないぜ、こんなとこ。なんか目的あったんじゃねぇのー?」
「本当にたまたまなんだって! ……ライブ会場が近くて」
「あん? ライブ? ……そういえば、オタクの顔、なんか見覚えあんなぁ」
……まさか、こんな奴に知られていたとは。
有名になったことをこんなに悔やんだことはない。
「私はキャロル。キャロル・ホワイト。アイドルやってるわ」
「……あー!!! 思い出した!!!」
本当に有名になったんだなと実感する。
こんな変人に知られるレベルになったのだ、絶賛ブレイク中の身は辛い。
「あれだろ、あれ! ホワイト議員の娘で」
「うんうん」
「ネットで『猫被ってそう』『性格悪そう』って書かれまくってるwww」
「なんでそれなのよ!!! もっとあるでしょ普通!!!」
いや、こいつに普通なんて通用しないんだった。
こめかみをおさえて、こいつのことを出来る限り考えないようにする。
ストレスの種でしかない、こいつは。
「……ん。来たか」
男が呟く。
来たって、何が。
そう訊ねようとしたらザッザッザッといった無数の足音が耳についた。
「なに……? まさかさっきの奴等の仲間なんじゃ!?」
「違うぜ。世界を守る秘密結社の皆様方だ」
「秘密、結社……?」
そんな漫画のようなものがいるわけ……と思ったがどうやら本当のようだ。
眩しい、白い光が向けられる。
私達の目の前に黒い軍服を着た集団が現れた。
銃口こそ向けられていないが、警戒はされている気がする。
「いい。彼女は保護対象だ」
兵の海をかき分けて、この集団の指揮官だろうという人物が現れた。
凛とした、これまたアジア系の女性。
すらりとした佇まい、きりっとした瞳、肩にかからないぐらいできっちりと切り揃えられた髪。
軍人っぽいというのが第一印象でタイトスカートがよく似合っている。
いかにも、仕事が出来そうだ。
「よおアリサ。遅かったな」
「お前はまた……。どこから情報を仕入れた?」
「ブツは回収した。使ってた奴等は向こうでのびてるぜ」
男はアリサという女性の質問には答えず、あの巨漢から取り上げたベルトを女性に投げ渡した。それを当然のように女性は冷静にキャッチする。
そして女性は傍らの兵になにか指示すると兵達は私達を通りすぎて建物の奥へと進んでいった。男達を捕まえに行ったのだろう。
「……ひとまず、ご苦労だった。その怪我、早く手当てを……」
「いらねー。もう治ってきてるしな」
「……少しは休んだらどうだ」
「休むなんてホワイト企業の働き方してらんねーの分かってるだろ。そいつの回収分、振り込んどけよな。あと、これの保護も頼む。絶賛ブレイク中のアイドル、キャロル・ホワイト様だ」
背中を押され、女性の方に押し付けられる。
抗議する暇もなく、男はいつの間にかいなくなっており、私は女性……紅アリサに保護されることとなった。
車中、アリサさんから色々な説明を受けた。
要約すると神話のアイテム(のレプリカ)を悪用する輩を捕らえているとのこと。
アリサさんの組織は公にはされていないので今日のことは他言しないことを約束された。
話し終わるとアリサさんは口を閉じ、窓の外に目を向けたまま。
公にされていない組織のためか、あまり人目につかないような道を走っており外の景色はつまらないものだった。
つまらないので、アリサさんにあの男のことを訊ねてみることにした。どうやら彼とはそれなりに関わりがあるようだし、色々と奴のことは知っているだろう。
あと、沈黙に耐えられないタイプなのだ。
「……あの」
「なんだ」
「あの、彼は、一体……?」
「……ああ、優輝か。まったく今回も女と関わって……」
途中から日本語だったので意味は分からなかったがとにかくイラついているということは分かった。
言葉は違えど感情は察することが出来る。
「あいつはユウキ・シロガネ。振り回されて大変だったろう」
「ええ、まあ。彼も、貴女達の組織に所属しているの? 全然そんな感じしないんだけど」
およそ組織だとか社会だとかといったものに適合する人間ではない。
それがあの短い時間で感じたこと。
それほどに、彼のキャラは強烈だった。
「……かつては、組織に所属していた。科学者としてな。それに、あれでも昔はムードメーカーでリーダーシップもある奴だったんだ」
アリサさんの言ったことが信じられなかった。
ムードメーカーはともかくリーダーシップは嘘だ。
彼とどうやっても結び付かない言葉だ。
仮にそれが本当だったとして……。
「それじゃあ、どうして彼は……」
口を開いた瞬間、車は急ブレーキ。話している場合ではなくなった。
「なんだ!」
アリサさんが運転手に問いかける。
「前方にバイクの集団が……」
道路は我が物と言わんばかりに横一列にならんだバイクのライトが灯される。
光は七つ。
搭乗者は全員黒ずくめでフルフェイスヘルメットを被っており顔は分からない。
アメリカ人なのかはたまた多国籍な連中なのか、男なのか女なのか、若いのか年老いているのかも分からなかった。
後ろを走っていたトラックから兵士達が降りてバイクの集団に相対する。
当然、こんなことをしている奴等なのだからヤバい奴等なのだろう。
「メギンギョルズを取り返しに来たのか……?」
「メギンギョルズ……?」
取り返す、とはつまりさっきのベルトを?
メギンギョルズとはそのベルトの名前?
緊迫した状況、黒いライダー達との戦闘が始まろうとし……。
一台の大型バイクが、私達が乗る車を横切っていった。
もし普通のライダーだったら危険過ぎる。
そう思ったが、アリサさんの口から漏れた名前を聞いて不安は消し飛んだ。
いや、逆に別の不安が出てきた。
一触即発のど真ん中にそれは停まった。
ライダー集団と同じ全身黒ずくめではあるが、そのライダーはヘルメットを取ると黒いライダー集団に向かって呼び掛けた。
「あーオタクらなに? みんなして格好揃えちゃって。通行の邪魔でしょ~。お兄さん達、そこ通るからちょっと退いてもらってもいい? 記念撮影かジャケ写撮影か分からんけど俺達がいなくなってからやってくれよ」
ライダー集団から返答は来ず。
ノリ悪いなとユウキはぼやきながら頭を掻いた。
「……お前達の目的は?」
今度は睨み付けながら問いかける。
すると、真ん中のライダーが答えた。
「────正義」
たった一単語。
それが彼等の返答であり総意。
「……あひゃひゃ! お前らマジで言ってんのそれ? 待ってくれよだとしたら俺もう背中痒くてたまんねぇんだけど。ねえ、お兄ちゃん達いくちゅでちゅかぁ?」
ライダー達を小馬鹿にし、笑いながら煽るユウキだがライダー達はそれに怒りもしないでバイクに跨がったまま。
静寂が、不気味であった。
「ったく、反応ぐらいしてくれよ馬鹿みたいだろ俺が。あとてめーらの正義は道路を塞ぐことなのか? ええ?」
今度は苛立ちを含んだ声で話した。
再び中央のライダーが返答するが、それはユウキの問い掛けの答えではなかった。
「ユウキ・シロガネ。紅アリサに手を出そうとすれば現れるという話は本当のようだな」
「なに……?」
ライダー達はジャケットのファスナーを一斉に下げた。
黒いシャツが覗くが、なによりも車のライトの光を反射する下腹部の装備が目を引く。
銀色のベルト、メギンギョルズである。
「……おいおいマジか。お前達は……」
「仮面ライダー」
《オーク!》
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
「変身」
黒ずくめのライダー集団がメギンギョルズにモンスリキッドを嵌め込み変身し、全身くすんだ緑色の戦士となる。
仮面ライダー。
本来であれば戯我と戦うLOTに所属する戦士の名であるが、彼等は違う。LOTのライダーシステムとは異なるライダーの登場にアリサは思わず車から降りてしまった。
「優輝!」
「馬鹿! 早く車に乗ってどっか行きやがれ! お前らは上司守ってなッ!」
襲いかかるライダーを躱しながら優輝は叫ぶ。
兵は後退しアリサもすぐさま車に乗り込み、この場から離れるように指示を出す。
「ねえ! あいつは大丈夫なの!?」
キャロルは一人残され、七人のライダーから集中攻撃を受ける優輝が大丈夫なのかと悲鳴にも似た声でアリサに訊ねた。
そしてアリサも苦く、辛い表情を浮かべながらもこう答えた。
「大丈夫だと信じたい……。あいつも、仮面ライダーだからな」
「仮面、ライダー……?」
ライダーの集団が優輝に迫る。
バイクに跨がっている場合ではないと降車し、ライダー達を迎え撃とうと構える。
ライダー達の恐ろしく連携の取れた攻撃に、優輝は濁流に飲まれたようだと感じていた。
「しっかり訓練されてなきゃ出来ない動き……。噂に聞いた人間兵器ってやつか? まあ、なんでもいいが」
棍棒の一撃を、優輝は右腕で受け止めた。
普通ならば骨が折れるだろうという威力であるが、優輝は痛みなどないと言わんばかりの挑発的な笑みを浮かべライダーを挑発する。
あり得ないという思考に支配されたライダーに出来た一瞬の隙を優輝は見逃さず、思い切り蹴り飛ばした。
「さて、熱くなってきやがった」
黒いロングコートを脱ぎ去り、投げ捨てる。
ロングコートの下はライダースーツであるが、右腕のみ袖がない。
右手のグローブも取り、その右腕の全貌が明かされる。
くすんだ、銀色。
機械的な右腕であった。
「こんな腕だからさぁ、さっきの痛くも痒くもねえんだわ。あと、言っとくが……こっちで殴られたら、痛えぞ」
《シルバー!》
モンストリキッドを作動させた優輝を見てライダー達が一斉に襲いかかる。
次々と拳、脚、棍棒が襲来する。
それらを回避し、最後の一人が振るった棍棒を再び右腕で受ける優輝。
だが、今度は受けるだけではなく弾き飛ばした。
それと同時に棍棒が直撃した前腕部のカバーが上がり、そこへモンストリキッドを装填しカバーを閉じる。
瞬間、眩い光が周囲を包み込む。
ライダー達はその輝きに思わず動きが止まる。
光は、優輝の右腕が放っていた。
「銀腕……アガートラム!」
ライダーの一人がその遺物の名を呟いた。
ケルト神話の主神ヌァザの義手。
アガートラムから銀色の液体が滲み出ると優輝の身体を這っていく。
液体はそれぞれの定位置へ着くと固形化しアーマーとなる。
優輝の目の前には銀色の仮面が精製され、完成した仮面を優輝は手に取り、纏う。
最後に口元を隠すクラッシャーを嵌め込むと双眼が赤く闇夜に灯り、変身を終える。
輝く銀色の戦士が、暗い世界に現れた。
右腕は先程とは違い光沢のある美しい銀の色。
ライダー達も思わずその輝きに目を奪われた。
「アガートラム……レプリカだけどな!」
舗装された道路を砕き、跳び立つ銀の戦士はライダーの一人の顔面を殴りつける。
吹き飛び、地面を転げるライダーは立ち上がることはなかった。
銀の腕の一撃は、それだけ重い。
「もうへばったのか? だらしねぇな。それでも仮面ライダーかぁ?」
仲間の仇……だとかは微塵も考えていないライダー達の猛攻。
殴りかかられればその腕を掴み投げ飛ばし、蹴りが飛んでくれば回避し攻撃後の隙をついて胴に脚を叩き込んだ。
棍棒を叩きつけようとする者があれば、その手首を掴み上げ棍棒を奪い取り逆に棍棒でライダーを叩きふせた。
「痛くっても泣くなよ! らぁッ!!!」
棍棒を投げ捨てた銀の腕が、ライダーの仮面を殴り抜けた。
ひび割れた仮面。変身者の男は意識を失い、糸が切れた人形のように倒れる。
「どうしたその程度か! STAND UPしてこいよ!」
煽る優輝。倒れたライダーは当然返答などしないのだが。
ライダー達の攻撃は続く。
だが、銀の戦士は怯まない。
続き迫るライダー達を殴り飛ばし、蹴り飛ばし。
そうして四人のライダーが意識を失い倒れた。
「部隊壊滅。撤退する」
健在である三人はバイクに跨がり、倒された四人は見捨てて急ターンで逃走する。
「おいおい逃がさねえよ。自慢じゃないが、俺はしつこい男なんだ」
本当に自慢にならないことを言い、優輝はバイクのアクセルを吹かして追跡を開始。
右手に、白銀のソードオフショットガンのような武器を持って。
「俺特製だ。味わいな」
銃爪が引かれると、銀の弾丸が夜を切り裂く。
弾丸はバイクの駆動部に命中し爆破。
大きな炎が立ち上がり、ライダーは吹き飛んだ。
「ヒュー! ハリウッドみてえだ」
その様子の感想を呟きながら銃、シルバーバレットの銃身を折る。
弾、リキッドバレットはモンストリキッドのエネルギーを抽出し注ぎ込まれた特別製。
シルバー、銀とは古来より聖なるものの象徴とされてきた。
銀の弾丸、シルバーバレットは魔を撃ち貫く────。
「2!」
2発目も同じくバイクの駆動部に。
噴き上がった爆炎を通りすぎ、最後の一人に狙いをつける。
蛇行し狙いをつけさせまいとするが。
「無駄だ」
銃身を回すと銃口が広がり、トリガーが引かれる。
放たれた弾丸は拡散。
銀の雨がライダーを襲い、バイクは転倒。
勢いそのままに、火花を咲かせながら道路を流れていく。
「はい、終了っと。さーて、事情聴取しちゃおうか。カツ丼は出さねえけどよーーー」
転倒したライダーの近くにバイクを停め、歩み寄る優輝。
殺しはしないように戦っていたのには理由がある。
このライダー達からあれこれ聞くつもりでいたのだ。
しかし……。
「あっ、あぁ……」
「あん? ……やば」
力なく地面に伏したライダーは爆発。
いち早く察した優輝は飛び退いて爆発を回避する。
「……口封じ、機密保持。くそ、そう容易くやらせてはくれねえか……」
この調子では他の六人も同じくだろうと優輝はため息をつく。
仮面を外し、燃え盛るライダーだった者を見下ろして優輝はある人物を連想していた。
このライダー達を造ったもの。
自身の身体をこのようにしたもの。
「親父……。兄貴……」
燃え盛る炎に憎しみを映す。
だが、すぐに「やめだ、やめ」と炎に背を向ける。
変身を解き、アリサへと連絡。
このライダー達の回収を依頼して、青い夜を駆け抜けていった。