レオナさんの弟さん   作:星1頭ドードー

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第48話 出会いと別れ、時々正座

「おーほしさーまーなんちゃらー」

 赤とんぼの近くで毛布に包まりながら、上空に見える満天の星空を眺めていた。

 空には月と呼ばれているものがあり、相も変わらずタヌキにしか見えない模様を写し出している。

 

 一人でポツンと野宿をするのは初めてだが、寂しいといえば寂しくもあるのだが、不思議と不安感はないのは、すべきことが明確に決まっているからだろうか。

 今頃、エンマはどんな顔をしているだろうと考える。

 

 困り顔でルームメイトと相談しているのかもしれないし、明日の為に早々に寝ているのかもしれない。

 

「(どちらにせよ、早めに目を瞑ったほうが良さそうだ)」

 

 大きな欠伸をした僕は、毛布を深く被って眠りにつくことにした。

 

 ◇◇◇◇

 次の日。

 身体が揺さぶられる感覚と共に、心地よい声が耳に入ってくる。

 

「起きて下さいまし、リエト。朝になりましてよ」

 

 ゆっくりと瞼を開けると、エンマの顔が目の前にあった。

 彼女の瞳は僕を捉えており、僕が起きるまで待っていたことが分かる。

 

「おはようございます。昨晩はよく眠れまして?」

「うん、ぐっすりと。ところで、この状況は何?」

 

 横になっていた僕を覆いかぶさるような体勢で顔を覗き込むエンマに問いかける。

 エンマは僕が起きたことに満足したようで、僕から離れると笑顔を見せた。

 

「お寝坊さんの貴方を起こす為ですわ。とても可愛らしい寝顔でしたもので、つい」

「その部分に触れられると恥ずかしいからスルーするけど。ごめん、寝過ごしちゃった?」

「そんな事はありませんわ。わたくしが我慢出来なくてここまで来ただけですし、まだ朝食の時間には早いくらいの時間ですもの。それよりも」

 

 エンマは立ち上がり膝についた埃を払うと、こちらに手を差し出した。

 

「折角の時間が勿体無いでしょう? ラハマへはわたくしが操縦いたしますから、リエトは後部座席に座っていてくださいませ」

「仰せのままに」

 

 差し出された手を握り立ち上がると、後部座席の空間を整理し、僕の座れるスペースを確保しておく。

 

「あら、ステキな物を持っていらしたのね。ゴミ虫どもの足元に狙いをつけて踊らせる道具かしら?」

「建前としては、不時着した際に原生生物と対峙した時に使うためのものなんだけど」

「なら認識は間違っておりませんわ。どちらも生活を脅かす害獣に他なりませんもの」

「ソウデスネー」

 

 朝からフルスロットルなエンマの毒舌をなんとか受け流して飛行準備を進め、僕たちは一路ラハマへと向かう。

 その道中で、今回の件について『オウニ商会』の手助けを得られたことなどを伝えていく。

 

「なるほど、そういう経緯がありましたのね。リエト、ラハマに着きましたら覚悟なさいませ?」

「やっぱり怒ってます?」

「当たり前です! これはわたくしの家庭の問題に他ならないというのに、これまで以上に貴方の人生までも巻き込んでしまったのですから!」

「でも、『オウニ商会』で既に雇われて働き始めていたし、雇用契約が数年間固定に変更されて、クビにならなかったと考えればいいかなーって」

「何故そこまで楽観的に考えられるのですか! こんな無茶をして良い理由にはならないですわ! この件が片付いたら責任を持って依頼料はわたくしが支払いますから、リエトは何も気にする必要はございません!」

「とりあえず、前を向いて操縦して欲しいなー」

「……改めて言い直させていただきますわ。貴方はわたくしのせいで、このような無茶をしてしまったのですよ? 本当に、リエトはいつも無茶ばかりして……。わたくしの気持ちも考えて下さらないと困りますわ」

「うん。心配かけてごめん。マダムからも叱られて、多分お姉ちゃんにもバレてるから……うん、怒られる」

「もう……」

 

 エンマが呆れたように溜息をつく。

 

「とにかく、無事にラハマに着いてから、わたくしからもお説教はたっぷりといたしますから、今は大人しくしていてください」

「はい、ごめんなさい」

 

 まさにマダムから言われたとおりの状況になってしまい、思わず謝ってしまう。

 

「リエト、念のために伝えておきます」

「はい」

「貴方に対して怒りを覚えていることは確かですが、同じぐらい……いえ、それ以上に嬉しく思っている自分がいることもまた事実です。ですから、お礼を言わせて下さい。ありがとう、リエト。そして、これからもよろしくお願いいたしますわ」

「はい、こちらこそ。これかも迷惑かけると思うけど、よろしくね」

「全く、貴方は本当に変わりませんわね」

「それはお互いさまじゃない?」

「ふふっ、そうかもしれませんわね」

 

 青空を飛びながら、二人で笑い合う日常が、きっとこの先も続いていくに違いない。

 

「さぁ、そろそろラハマが……」

「ん、どうしたの?」

「あれは……何かしら?」

 

 エンマの言葉に釣られて視線を前方に向けると、そこには機影が一つ。

 その後ろには……。

 

「あれ? あの隼一型、レオナお姉ちゃんとザラさんのだ」

「と、いうことは……」

「前を飛んでいる零戦二一型を追いかけて……」

 

 僕の言葉を聞き終わる前に、エンマは機体を加速させる。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「リエト! 今すぐ無線で状況確認をなさい!!」

 

 慌てて無線機を手に取り、周波数に合わせる。

 すると、すぐにお姉ちゃんの声が聞こえてきた。

 

『リエトか! 丁度良かった! そちらから前方の零戦を足止めすることは出来ないか? 一度でいいから直進以外の行動を起こさせれば、あとはこちらで対処できる!』

 

 お姉ちゃんからの通信を聞いていると、エンマは機体を急旋回させる。

 

「エンマぁ!? どうするつもりなの!」

「この位置からでしたら、横っ面から交差する形が取れますわ! リエト! 例の物を用意なさい!!」

 

 エンマの指示に従い、後部座席に収納されているおっかない物を設置し、準備を整える。

 

『リエト、何を始めるつもりだ!?』

 

 お姉ちゃんも異変に気付いたのか、少し焦った様子を見せる。

 

「相手は武装の無い赤とんぼと舐め腐りきっておりますわ! そこへ交差をする際に、横転で侵入して一撃ブチ込んでやりますのよ!!」

『この声は操縦者か! 幸運や根性で試そうとしていないだろうな!?』

「エンマ、大丈夫なの?」

「えぇ、問題ありませんわ! わたくしを信じてくださいませ!」

「信じる! お姉ちゃん! エンマの言う方法で足止めをしてみせるから、そっちもお願い!」

『了解した!! 無理だけはしてくれるな!!』

 

 お姉ちゃんとの交信を終えると、僕は設置した機銃の制御に集中する。

 

「エンマ、準備は出来たよ!」

「それでは、参りましょうか。お手並み拝見ですわ!」

「あはは、お手柔らかにね」

 

 エンマの言うとおり、この角度と速度のまま進めば、相手機と衝突してしまう。

 だが、エンマは躊躇うことなく機体を操作し、赤とんぼをギリギリまで相手機まで引きつける。

 そして、世界が回転を始めた。

 

「リエト!!」

「…………っ!!」

 

 時計周りで赤とんぼが横転を始め、すれ違う瞬間に僕は引き金を引いた。

 放たれた銃撃の一部は主翼や胴体に直撃するが、致命打には至らない……けど、目的は達成できた。

 

「後はお願い!!」

『任せろ! ザラ!!』

 

 零戦が回避行動を始め、失速しながら高度を下げていくが、それを阻むのは先に低空で待ち構えていたザラさんの援護射撃である。

 

『はいはーい。こちらは通行止めよ~』

 

 相手の機体は蛇行を繰り返しながら、なんとか体勢を立て直すが、今度はレオナお姉ちゃんが仕掛ける。

 

『逃がさない!!』

 

 上空から仕掛けてきたお姉ちゃんは、相手の頭上を取るとそのまま急降下して銃弾を浴びせて離脱していく。

 煙を吐く相手を眺めていると、ザラさんは零戦に対して着陸するように促す。

 

『さぁ、降りてきなさい。抵抗するなら撃墜するまでだけど、無駄な血を流す必要は無いわよね?』

 

 相手が諦めたのか、ゆっくりと降下していき、不時着。

 それに続いた二人が相手を拘束し、レオナお姉ちゃんから指示が届き、僕らも地上へ着陸することとなった。

 

「ふぅ……緊張したぁ。エンマ、お疲れ様」

「お疲れ様ですわ。あの一瞬で命中させるだなんて、やはり貴方は凄いですわね。わたくしは信じておりましたわ」

「いや、流石にアレはまぐれだよ。エンマの合図がなかったら引き金を引けたかさえ怪しいし。でも、上手くいってよかった」

 

 そんなことを話していると、レオナお姉ちゃんがこちらへやってきた。

 

「二人とも、よくやった。アイツが今回の主犯格だったんだが、途中で空賊と合流されてな。面倒なことになっていたんだよ」

「……へぇ、あのダニがわたくしの両親を……大切な人の名を騙る不届き者は!!」

「ちょ!? エンマ! 手を出しちゃ駄目だから!」

 

 エンマは今にも飛び出していきそうな勢いだったので、慌てて引き止める。

 

「離しなさい! この手で制裁を加えなければ気が済みませんのよ!!」

「気持ちは分かるけど、まずは落ち着いて。まだ敵はいるかもしれないし、援軍でもやってきたら大変なことになるから、ね?」

「…………」

 

 苦渋に満ちた表情を浮かべながらも、エンマは大人しく従ってくれた。

 

「……分かりました。リエトがそこまで仰られるのであれば、今は堪えておきますわ」

「うん、ありがとう。それでこそエンマだ。レオナお姉ちゃん、これからどうすればいいかな?」

「そうだな……。自己紹介をしたいところだが、リエトの言うとおり敵の増援が来ると厄介だ。ひとまず街に戻ろう」

「分かった。じゃあ、拘束した人は赤とんぼに乗せて、操縦は僕がやるよ。エンマをお願いしてもいい?」

「了解した。エンマ、私の後ろですまないが少しだけ我慢してくれ」

「えぇ、構いませんわ。よろしくお願いしますわ、レオナお姉様」

「お、お姉様? 私のことはレオナで構わないぞ?」

「そういうわけにはいきませんわ。リエトのお姉様であれば、わたくしにとっても……」

「はいはい、続きはラハマに戻ってからね?」

 

 ザラさんが呆れ気味にそう言いつつ、僕たちはラハマへと帰還することにした。

 

 ◇◇◇◇

 ラハマに到着し、赤とんぼに乗せていた詐欺師のことなどは、レオナお姉ちゃんにお任せしてエンマのご両親の元へ。

 と、考えていたのだが、エンマ自身が先にマダムに会いに行くと言い出した。

 

「エンマ、僕も一緒に行くよ」

「いえ、一人で行かせてくださいまし。わたくしの口から伝えねばなりませんので。リエトは先に向かってくださいませ。すぐに追いつきますわ」

 

 エンマは強い意志を宿した瞳を僕に向けてきた。

 きっと、これは彼女にとって必要なことなんだろう。

 

「そっか。それなら、僕は先に行って待ってるよ」

「えぇ、よろしくお願い致しますわ」

 

 エンマは一度振り返ると、笑顔を見せて走り去っていった。

 その背中を見送り、僕は彼女の実家を目指してラハマの街中を歩く。

 特徴的な建物とソメイヨシノが視線に映ると、前方に人影が見えた。

 

「あれ……リリコさん?」

 

 相手も気が付いたのだろう、僕の方に視線が向けられた。

 

「あら、お帰りなさい。リエト」

「ただいま戻りました。リリコさんはどうしてここに?」

「護衛、みたいなものかしら。先ほどまで乱闘騒ぎがあったのよ」

「だっ、大丈夫だったんですか?」

「問題ないわ。それなりの数がいたけれど……」

 

 そこで何かを考え込むように、リリコさんは顎に手を当てた。

 

「どうかしましたか?」

「ねぇ、リエト。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、良いかしら?」

「はい、僕に答えられることでしたら」

「ラハマに座敷童がいるって噂を聞いたことある?」

「ざしきわらし……ですか? 聞いたことありませんけど……」

 

 リリコさんの問いに対し、僕は首を傾げることしかできなかった。

 

「まぁ、普通に考えたらそうよね。近年、こういう騒ぎが起こると突然現れて解決してくれるらしいのよ。そしてお礼を伝える暇もなく消えてしまうとか」

「はぁ、なんだか不思議な話ですね。そもそも、そんな人が実在するかどうかすら疑わしいですよね?」

「証言を聞き集めても統一性がないのよ。目撃者によっては髪の色も違うし、男性という人もいれば女性だという人もいる。中には人じゃないと答える者もいたわ」

「…………」

「でもね、私としては、ラハマには本当にいるんじゃないかと思っているのよ」

「それはまた何故?」

 

 リリコさんは探るような目線をこちらに向けると、小さく息を吐いた後に口を開いた。

 

「だって、その方が面白いじゃない? もし、そんな迷信みたいな存在がいるのだとしたら、会ってみたいわ」

 

 リリコさんは悪戯っぽい笑みを浮かべながら言った。

 これは……明らかに分かっていながら聞いてきている。

 エンマのご両親を守ろうと、ラハマで大立ち回りをしていた僕たちを面白がっているに違いない。

 

 こちらまでつい溜息が出そうになるが、リリコさんは楽しげに僕を見つめてくる。

 

「何をどうすれば、座敷童なんていうものが出てくるんですかね」

「さぁ? 人伝なんてそんなものでしょう? 私はただ、自分の目にしたものを信じているだけだから」

「な、なるほど……」

 

 リリコさんの言葉に、僕は思わず納得してしまった。

 確かに、人の話は主観によって変わるものだ。

 ましてや、複数の人物が同じ話をしているのであれば尚更のことだろう。

 

 つい悩みこんでいると、リリコさんはクスッと笑い、「じゃあ私は仕事に戻るわね」と言って去って行く。

 

「ありがとうございました! リリコさん!」

 

 去りゆく彼女に声を掛けるが、手をひらりと振っただけで歩みを止めることはなかった。

 ひとまず、エンマのご両親と顔を合わせよう。

 

 ◇◇◇◇

 人の姿を見て、鬼か悪魔などと称するような機会は早々無いはずだ。

 しかし、目の前にいる人物が纏う雰囲気は、まさにそれに近しいものがあった。

 鋭い眼光を湛えた眼差しは、まるで獲物を狙う猛禽類を彷彿させる。

 

 加えて、背筋が凍りつくほどの威圧感を醸し出している。

 彼女の美貌も相まって、睨まれた者は蛇に睨まれた蛙のような気分になるかもしれない。

 

「あの……エンマ……?」

「…………」

 

 エンマはご両親を正座させたまま立ち尽くし、無言を貫き通していた。

 もう一つ、僕の立ち位置はご両親側である。

 彼女が戻られた際にご両親の傍に居た為なのか、必然的にご両親側に並び正座させられてしまったのだ。

 

 移動を試そうものなら即座にエンマの視線がこちらに向けられる。

 彼女に怒られるようなことが……それなりにあった僕としては逆らい難いものがある。

 そして……あまり知りたくない何かが自分の中に潜んでいて、それが表に出て来ようとしている。

 

「(凄く怖いのに……目が離せない……)」

 

 この感覚をなんと言えばいいのだろうか。

 好奇心とも、恐怖心とも言える何かが、自分の中で膨らんできているのを感じる。

 ……ダメだ。これ以上考えてはいけない。

 

 そう自分に言い聞かせて、僕は思考を打ち切った。

 

 ◇◇◇◇

 長い一日が終わり、朝の訪れと共に、僕たちはラハマの駐機場に集まる。

 エンマは再び、『お嬢様学校』へと戻る。

 ……退学届けを提出する為に。

 

「エンマ……」

「そんな悲しい顔をしないでくださいまし。これは、わたくし自身が決めたことです。本来であれば入学することすら叶わない可能性もあったのです。貴方とキリエには感謝致します」

 

 エンマは穏やかな表情で語り掛けてきた。

 

「……エンマはこれからどうするつもりなの?」

「まだ決めていませんわ。ただ……わたくしが今まで学んできたことを活かし、誰かの力になれるのならば、それを行いたいと思います。幸い、考える時間だけはたっぷりとありますから」

「そっか……」

「二人とも、ちょっといいか?」

 

 僕たちに声を駆けて来たのは、レオナお姉ちゃんの姿。

 彼女はいつも通り、凛とした佇まいで僕らの前に立った。

 

「レオナお姉様?」

「そ、その呼び方はやめてくれ。なんだか背中がむず痒くなる」

「あら、ごめんなさい。では、レオナと呼ばせていただきますわ。それで、どうかなさいましたの?」

「今後のことについてだ。二人の会話を盗み聞きするような形になってしまい申し訳ないのだが……」

 

 エンマにそう伝えながらも、レオナお姉ちゃんは何かを取り出す。

 それは綺麗に折り畳まれていた、藍色の布であった。

 

「私たち『コトブキ飛行隊』は、現在隊員を集めている。エンマ、昨日の空では見事だった。君には誰かの力になれるものを持ち合わせていると確信したよ。よければ、私たちにその力を貸してくれないか?」

 

 エンマは驚きの表情を隠せなかった。

 それもそうだ。僕も驚いた。まさか、いきなり彼女を勧誘するなんて。

 

「…………」

 

 エンマは黙したまま、お姉ちゃんが差し出している布をじっと見つめている。

 何かを察したのか、ザラさんは微笑みながら言葉を発した。

 

「そんなに固く考えなくて大丈夫よ。確かに飛行隊をする上では規則があるけれど、それ以外のことはお互いさまだから」

「君は、きっと良いパイロットになれる。だから、私たちと一緒に空を飛ばないか?」

 

 彼女は、一度目を伏せると、改めて二人の顔を見る。

 お姉ちゃんとザラさんの瞳は、真っ直ぐにエンマを捉えている。

 彼女は、静かに息を吐き出すと、ゆっくりとした動作でお姉ちゃんから布を受け取った。

 

 それを確認したレオナお姉ちゃんは、満足げに笑顔を浮かばせる。

 

「決まりだな。よろしく頼む、エンマ」

「はい。不束者ですが、宜しくお願い致しますわ」

 

 エンマは深く頭を下げた後、お姉ちゃんから受け取った藍色の布を胸に抱いたのだった。

 

「それと……リエト」

「どしたの、お姉ちゃん?」

「この後、話がある。覚悟しておけ」

「……えっ?」

「惚けても無駄だ。全てマダムとエンマから話を聞いている。……お説教だぞ?」

「ひぃっ!?」

 

 お姉ちゃんの言葉に、僕は思わず悲鳴を上げてしまう。

 

「それでは、ごきげんよう。またお会い致しましょう」

「ちょ! エンマ! 待っ……!」

 

 エンマは優雅に挨拶をすると、颯爽と去って行った。

 お別れを言う暇もなく、僕の叫びは虚空に消えていく。

 

「さて、リエト? どういうことか説明してもらおうか?」

「いや、その、お、お手柔らかに……」

「ほう……。随分と余裕があるじゃないか」

 

 レオナお姉ちゃんは僕に詰め寄ると、腕を組みながら指先を下に向けてくる。

 二日連続の正座は勘弁してほしいと思うが……無理ですよね、はい。




週末が。
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