見えざる帝国を築きたくて   作:山吹乙女

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 お疲れ様です。影の実力者になりたくてを見た結果面白くて、語録が良い事全振りの衝動的に書いた作品です。かなりにわか知識丸出しですので何卒温かい目で見ていただけたらと思います


聖帝頌歌

 もし来世があるなら…いや未来の話はやめよう。私は予言者ではない、「今」の話をしている。

 青信号の横断歩道に差し込むトラックのライト、気を失い顔をうつ伏せにしたトラック運転手が、スローモーションのように動くこの世界でハッキリと見える

 

 走馬灯のように繰り返されるのは一般家庭の生まれだった自分の特筆すべき点がない人生、唯一語るところがあるとするなら中学の時よく連んでいた陰の実力者に憧れていた友達の影野くんは今も元気でやっているだろうか…両親の蒸発でいきなり田舎の親戚に引き取られて別れの挨拶すらまともにできなかった事を思い出すくらいには、未練があった

 

 でもそうだな、やはり来世があるなら…そう考えていた私の体はトラックにすり潰された

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 気がついたら異世界に転生していた。何かの催眠実験だとか、トラックにすり潰されたことや赤ん坊の体になっていることもただの夢だったとかそんなちゃちなことじゃあ断じてない、もっと恐ろしいものの片鱗を味わった

 

 没落貴族の元に生まれた私はユーハバッハ・クロスフローリーと名付けられ、クロスフローリー家の次男として育てられた。元々若い時のユーハバッハおじさんに似ていると言われていたが、まさか名前すら同じモノになるとは思わなかった

 ほんの少しここはBLEACHの世界かとも思ったが、蒸気機関車や馬車が主な移動手段な上に、霊子などではない魔法というファンタジー要素もあり、技術が中途半端に進んでいたことから異世界であると思われる

 

 クロスフローリー家は代々銃を扱う一族とされたが、魔剣士の台頭により地位は下がり没落貴族の烙印を押され、されど特別貧しいと言うわけでも無く、豪邸もメイドもいないがこの世界の一般家庭のような立ち位置となっていた。

 代々銃を扱う一族だが、新たな取り組みとして魔剣士のように剣を扱う事を私の世代から取り入れようとし、現在に広く普及している魔剣士に銃と言う遠距離戦法も取り入れ家の再帰も考えているらしく、幼少期から銃の扱いに加え、剣術の指導も入ることとなった

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

「…甘いな」

 

 兄との剣の稽古をしているが、私の上段の振り下ろしを易々耐え、受け流すように剣を滑らされ倒れたところにマスケット銃を突きつけられる。もちろん弾は入っていないがこれが実戦なら私は死んでいたと言うことになる

 

「兄さんは強いな、私では到底勝てそうにない」

 

「ユーハバッハも筋はいいんだ、後は筋力と経験だろう」

 

 兄のスタイルは右手に剣を持ち左手にマスケット銃を持つ遠近両立のクロスフローリー流として完成しつつあった

 

 とまぁ、他人から見ると優秀な兄と平凡な弟という構図になっているが、裏では………

 

 

 

「我が名はユーハバッハ、お前の全てを奪うものだ」

 

「ハハッ、ただのガキじゃねぇか!殺せ!殺せ!」

 

 家から少し離れたところで野盗狩りをしていた。今日は大量にいるな

 

大聖弓(ザンクト・ボーゲン)

 

 空中に魔力で固めた刀剣状の矢を十五ほど形作り、野盗に向かって発射する。するとあら不思議、矢が野盗の頭や心臓に全て刺さるじゃありませんか

 

「恐ろしいか?」

 

「ひいっ…」

 

 野盗の仲間の死体で付近は死屍累々となったが、構わず大聖弓を射出する

 特に目的とかはないが、せっかくこの名前で転生したのだから『見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)』を作ることにする。それに運良くこの世界の魔法は滅却師(クインシー)の扱う霊子のようにかなり自由に扱える

 

「おらっ!!」

 

 死角から野盗の一人に斬りかかられ、首筋にその剣を受けるがガキーンと鉄を切りつけたかのような音が響く

 

「は?なんで斬れねぇんだよ!それにこの硬さは一体ッ!」

 

静血装(ブルート・ヴェーネ)、死に行く貴様には名前だけでも教えておく」

 

 魔力を体内の血管に流し、防御力を格段に上げる滅却師の基本技能のようなモノだ。今は使う必要はないが、コレを攻撃用に切り替える動血装(ブルート・アルテリエ)も存在する

 首筋に斬りかかってきた野盗を手持ちの大聖弓で斬り捨てると辺りが静かになった。こういうヤバい魔法とか技術練習は野盗に限る

 

 さて、全部片付いたのなら野盗のお宝を根こそぎ奪っておくか…ふむふむなになに、金塊に高そうな調度品に…げっ悪魔憑きが入った檻か

 でもそうだな、ここは実験として自分の魂のカケラでも仕込んでみるか

 転生者故か自分の魂を他者に分け与える事が可能となっている。その気になれば無差別に魂を分け与え、聖別(アウスヴェーレン)で力の一部を奪うこともできたりする

 膨張した蠢く肉塊は悪魔憑きと呼ばれているが、その者に自分の魂を分け与えるとなんとビックリ、それは金髪全裸の美少女に変わっているではありませんか

 

 いやこの感じはアレだな、この悪魔憑きと言うのは対象の体内で制御しきれなかった魔力が暴走し膨張した結果肉体が原型と留められずに起こった症状のようなモノだな。それを魂を分け与えたことにより魔力のパスが私と彼女の間に出来、暴走した魔力が私に流れ込み正常なモノとなった…と言った感じか

 

「うっ…ここは、私は戻ったのか?」

 

 おや、気がついたようだな、夜の野盗の野営地だからだろうキョロキョロと周りを見ている

 

「おはよう、体は大丈夫のようだな」

 

「貴方が、私を救ってくれたのですか?」

 

「いかにも、私が自らの魂を分け与えお前を救ったのだ」

 

 いかんな、陛下ムーブのようになる。この金髪の美少女の顔が若干ハッシュヴァルトに似ているというのも助長しているな、男装させたら完全にハッシュヴァルトになりそうだ

 

「見ず知らずの私に…なんとお礼をしたら」

 

「ならば私の部下となれ、私は帝国を築く、お前をその最初の部下としてな…してお前の名前はなんと言うのだ?」

 

「今の私に名前などありません、願わくば名前を授けていただけると幸いです。陛下…」

 

 なるほどそうくるか…それなら最初から決まっていたりする

 

「ふむ…ならば今後お前はハッシュヴァルト…ユーグラム・ハッシュヴァルトと名乗ると良い」

 

「ありがたき幸せです。陛下」

 

 こうして私に部下が出来た

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 ハッシュヴァルトの働きにより着々と悪魔憑きの情報が入り、その都度魂を分け与え部下としていく事を繰り返していると、かなりの大世帯になってきた。なのでせっかくだから星十字騎士団(シュテルンリッター)と名付けた

 別に頼んでいたわけではないが、ハッシュヴァルトがどんどん見つけてくる。多分自分と同じ境遇にいた人を救いたい気持ち全振りで動いているのだろう。そう言うこともありこれ以上増えてもいいように本拠地を作ることにした。その場所というのが王都の影だ。そこに魔法で空間を創り、帝国を造る。そのままの見えざる帝国だ

 魔法の万能性様々だな。というか色々応用が利く魔法がもっぱら身体強化ばかりに注目されて、このように影の中に空間を作れることも発見されていない

 

 しかし王都丸々一個分の大きさを影の中に造る作業がかなり過酷で何度も魔力切れになったが、空間そのものは九年の歳月をかけてようやく完成させた。建物とかはまるで作れてないがこれからだな

 ちなみに見えざる帝国に入る方法も簡単で、私の魂を分け与えた存在なら王都の影を媒介としてどこからでも入る事ができる。影に魔法で入り口を作るという事を知る必要はあるがな

 

 言い忘れていたが、ハッシュヴァルトが部下となってからクロスフローリー家は兄の影響もあり少し持ち直したようで、辺境にあった住居は王都に移動した。私が見せている実力ですら並の魔剣士よりは上のようで、少しは貢献できたのではないかと思う

 

「それでは行ってまいります。父上、母上」

 

「うむ、頑張ってくるのだぞ」

 

「気をつけて行ってきてね」

 

 割と忙しかった九年を終えると私も十五歳となり、ミドガル魔剣士学園への入学義務のため学園に入学することとなった。第二の人生でも学園に通わなければいけないというのは億劫な気持ちがあるが、それはそれとして楽しみというのもある

 

 学園からはそこそこ離れていることもあり列車を使うのだが、その駅も少し離れていることもあって歩かねばならない。通学途中に対面からいかにもな男装令嬢がこちらに歩いてくると、私の耳元でボソリと呟いた

 

「陛下、一つお耳に入れたい情報が」

 

「うむ、わかった。学園の終わりに見えざる帝国に赴こう」

 

 ハッシュヴァルトだな。一度男装を褒めた事があった翌日から男装の割合が増えた、多分私のせいだろう。星十字騎士団からの評判はいいようなので問題ないはずだ

 

「おはようカゲノーくん」

 

「ああ、おはようユーハバッハ」

 

 学園に通って数ヶ月ほど経ったが、その中でも特に仲がいいのがこのカゲノーくんだ。なんというか前世の影野くんと名前も見た目も似ていて、どこか懐かしさを感じるんだ…絶対前世の影野くんとは関係ないとは思うが

 

「それでテストの罰ゲームで王女殿下に告白するって聞いたぞ、アレって本当なのか?」

 

「本当だよ、かなり憂鬱なんだ」

 

 アレクシア王女は同じくミドガル魔剣士学園に通う高嶺の花のような存在だ。彼女は何人もの男を振って撃墜させていってる。振られる事が約束されたようなモノだな、哀れとは思わないが…コレも青春の一つと思っていいだろう

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 僕には友人がいる。ユーハバッハ・クロスフローリーと言う。元々は没落貴族だったが、新しい剣術の開発に伴い多少の持ち直しをした家だ

 

 彼の名前に前世の漫画の登場キャラが頭をよぎり、なんとなく重要人物っぽい気がして普通のモブAを演じる僕としては関わるべきではないと思っていたが、なんとなく会話の波長が合って今でも連んでいる。ちょっと昔の離れて行った友人に見た目が似ているのもあるだろう、馬場くんは今も元気で生きているだろうか

 

 それはそうと罰ゲームでアレクシア王女殿下に告白したらOKされ、今日一日は大変な目にあった。しかし緊急連絡があるのでシャドウガーデンのシャドウとしてこの憂鬱な気持ちを引っ張るわけにはいかないな、しかし緊急連絡とは珍しい、どうしたのだろう

 

「緊急連絡よ、シド」

 

「はいはい、緊急の知らせとはなにかあったの?」

 

 報告に来たのはアルファだな、普段忙しい彼女が来るとはかなりの大事かもしれない

 

「そうよ、我々シャドウガーデンは悪魔憑きの回収に尽力していましたけど、敵であるディアボロス教団とはまた別の新たな組織の存在が発覚し、その者らと交戦した後、悪魔憑きを奪われる形となったわ。死者が出ていないのが救いだけど」

 

 えぇ…僕たちの他に悪魔憑きを狙ってる組織がディアボロス教団以外に他にもいて、僕たちが出し抜かれちゃったの?…よくできたストーリーだな、新しい組織の追加とかまるでバトル漫画だ

 

「ふむ…それは大変だな、その者達の情報は?」

 

「その者らはヴァンデンライヒから来たシュテルンリッターと名乗り、聞いた話だけだけど、その者達の魔力操作は常識の範疇から逸脱しているものだったから報告に来たわ」

 

「なるほど…待て、ヴァンデンライヒにシュテルンリッター?」

 

 ちょっと待て、見えざる帝国に星十字騎士団ってもうそれBLEACHの名称じゃないか…偶然にしてはあまりに出来過ぎている。まさかユーハバッハがその者達の長なのではないのか?まさか…僕が言うのもなんだが、彼はギリギリネームドキャラかもしれないってくらいの立ち位置のはず…もしや僕と同じく実力を隠して…ありえるな

 

「まさか心当たりが?」

 

「無い…わけではないけど、確証が持てない以上、情報収集に徹する他ないね」

 

「貴方はまた、秘密主義ってやつ?…まぁいいわ、それでは報告は以上よ」

 

 ユーハバッハか…明日からは彼に探りを入れてみるか




 お疲れ様でした
 もうこの世界の魔法は霊子のように自由にできるってことを考えてもらえると助かります
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