何故か筆が乗りました
「シド、あなたは剣術大会でユーハバッハと戦いなさい」
学園から帰宅したと同時にアルファがいきなり窓から部屋に入ってきたと思ったら開口一番にソレが飛び出してきた。ヒョロが勝手に僕の参加登録をしていた事をどこで知ったのやら
「友人だし初戦で当たるのは気が楽だけど、当たるかどうかのそういうのは時の運でしょ?そもそもユーハバッハは出場しないって言ってたけど」
「それについては問題ないわ。裏で対戦カードを調整しておいたから初戦で当たる手筈になっているし、ユーハバッハの出場登録もあなた名義で出しておいたから、問題なく彼の実力を確かめられるわ。…それに私もだけど、あなたも彼に対してどこか引っかかっているのでしょ?」
アルファが言うように、僕自身も彼のことが気になっていたことからアルファにユーハバッハの事をそれとなく伝えてから、彼女はユーハバッハの事を調べたらしい
そして調べた結果、どうやら驚くほど何もなかったとのこと…ユーハバッハのことをストーキングとかしてないよな?僕の知らないところで彼に迷惑をかけてしまったかもしれないことに心の中で合掌した
アルファ曰く、見えざる帝国の『陛下』の正体を考えるなら実力から見てもむしろユーハバッハの兄であるレイの可能性が高いとなった。しかし兄であるレイがシャドウガーデンの七陰として考えても規格外の天才であるのに、その弟が優秀ではあるがそれだけというのは考えづらく、何か裏があるのではないかと睨んでいるとのこと。ほとんど勘だな
「それで剣術大会ね…でも僕はあまり目立つことはしたくないよ?」
「結果は負けでもいいけど、ある程度の負荷はかけてもらいたいわ。…そうね、十秒ほど彼に本気の一端でも見せてみたらどう?」
「いやいや、彼は優秀だけど僕の本気の一端じゃ十秒も保たないよ。…あぁなるほど、それで本気の一端か」
「そう…もしコレでシドの攻撃を防げるならユーハバッハは本当の実力を隠していることになる」
なるほど確かに考えたな。コレで僕に負けるようならアルファ達が警戒している設定の『陛下』というのがユーハバッハであろうとなかろうと警戒に値しないことになる。でもハッシュヴァルトの特殊能力かアーティファクトの『ザ・バランス』を考えるなら警戒するのはむしろハッシュヴァルトになりそうなものだが、それでも警戒しておいた方がいいよってことか。ハッシュヴァルトは一戦交えたけど、『陛下』とはまだ戦ったことないからね。幹部を倒さないとボスに辿り着けないのはゲームの定石だし
◆◆◆
剣術大会の観客席にて、端の目立たない位置に座り大会を見届けている女生徒達がいた。そのもの達は大会の熱気に当てられることはなく、酷く冷静に物事を俯瞰していた
「ユーハバッハさんがブシン祭に出るなんて意外ですわね。あの方は出ないものだと思っていたのですが…そのことについて皆さんはご存知で?」
そう口にしたのはショートカットの金髪をおかっぱにカットした女性
『
ユーハバッハにて悪魔憑きから救われ見えざる帝国の一員として、ドリスコールが記憶の改ざんを行い用意した家の養子として学園に通っている
「わらわは何も聞いておらぬ、その手の情報はドールちゃんが詳しいであろう?」
ベレニケに応えたのは古風な喋り方が目立ち、左目の泣きぼくろが特徴的な黒髪のロングストレートの女性
『
彼女もドリスコール、ベレニケと同じく貴族の仮初の養子として学園に通っており、彼女の役割は主に諜報能力に特化したドリスコール、ベレニケの護衛役として行動を共にしている
「私だって聞いてませんよ、ユウくんは確かに出ないって」
ツァンの言葉に応えたドリスコールだが、ドリスコールの言葉の中にツァン、ベレニケ共に聞き捨てならない言葉が出てきた
「"ユウくん"って…おぬしまさか…」
「あーっ!ごめんなさい、私としたことが
「…ベレニケちゃん、ドールちゃんにアレを使うのじゃ!」
「了解ですわッ!」
「アレ?…ッ!待って!待って!!」
ドリスコールは手を振って静止を呼びかけるが、ベレニケは止まらず能力を発動する
「異議ありですわ…貴女とユーハバッハさんとのご関係をお教えくださいな?」
ベレニケは満面の笑みで首を傾げながらドリスコールに聞く。しかし言葉尻には目のハイライトを消し、聞く人からすると肝を冷やすかのような声色に変わっていた
「〈ユウくんとは本当に何もないよ、呼び方だって指摘されなかったから私が勝手に言ってるだけ〉ね?能力は使わないで?こんなことに使っちゃダメだよ?」
ドリスコールはベレニケに聞かれた事を一通り喋り終えた後に、まるで
ベレニケの能力『
彼女の前では誰も隠し事は出来ず、ユーハバッハですら例外ではない
これは余談だが、彼女が手作りのクッキーをユーハバッハに贈ったところ、「美味しい」と答えたユーハバッハにこの能力を使った過去があり、その結果塩と砂糖を間違えて作ってしまった事を知り、優しい嘘を暴いた苦い経験があったりする
「まぁ…今回は大目に見てもいいかのう」
「そうですわね…わたくしも能力まで使うほど切羽詰まっておりませんので」
「そう?本当に使ってない?私本当に言ってない?」
能力を使ったことすら対象には分からないので、能力を知っているものが使われた場合疑心暗鬼になるが、マウントを取ろうとした自業自得である
「これよりブシン祭選抜大会第一試合を執り行う!」
「ほら、試合が始まりますわよ」
試合が始まると言われると黙るしかなくなるのでドリスコールはややいじけながら口を紡ぐ
「ユーハバッハ・クロスフローリー対シド・カゲノー!試合開始ッ!」
ユーハバッハとシドが向かい合い、魔力による身体強化で加速したシドはユーハバッハに斬りかかろうとする
それに対してユーハバッハはその場から動かず振られる剣に対して鍔迫り合いで応戦する。しかし次の瞬間、火花を垂らしながらユーハバッハの構えている剣にヒビが入り、真っ二つに折れると剣に力をかけていたシドが一歩、二歩とたたらを踏む
「しょ、勝者シド・カゲノー!!」
数秒の沈黙の後、審判が判定を下す
「何………だと…?」
沈黙する会場の中で勝者が一番疑問を持っていた
◆◆◆
『
私の『
そして彼に剣を突き刺そうとする私の光景だった。私はともかくとして、他の団員が傷つくのは耐えられん_故に未来を変えさせてもらった
カゲノーくんと二合ほど斬り合った後、十秒ほどその速度と力を急激に上げて仕掛けにくる。その『十秒』がおそらく分岐点だったのだろう
「だろう」というのも私自身、全知全能の能力を使いっぱなしというわけにはいかないからだ。あの能力はただ使用しただけでも現実なのか、能力で見ている幻のなのかわからなくなってしまう。しかも戦いの中という条件付きなのだから大まかな部分と結果しか見れていない
しかしそれがわかっているなら、こちらは魔力による身体強化の一切をせずにいれば魔力による身体強化が当たり前の戦いでは必ず負けることができる。…奇しくも私が剣を折られる立場とは感慨深いな
しかしどうしてカゲノーくんとの試合が未来の分岐点であったのか…。まさかこの会場にシャドウガーデンの誰かがいるのか?
あり得るな…。ブシン祭といえば国を挙げての祭りでありオリンピックのようなもの、偵察には人数を割く場合もあるだろう。そこで私は何かヘマをして能力がバレたのかもしれない…。やはりまだまだ危うい立場だな
「勝利おめでとう、カゲノーくん」
「どうしてわざと負けたんだ?」
カゲノーくんはキレてる訳ではないな、ただ混乱してて困惑が見える
「そう見られても仕方がないな…実のところ魔力なしの剣技でどこまで行けるか試してみたかったんだ。兄さんにこれ以上離されると私自身、自分が許せなくなるからな…」
最もらしいことがよく口から出てくるな。その場で考えた出任せなのに
「しかし現実はそこまで甘くないようだ…。次の相手は_ローズ会長だがお前ならいける、頑張れよ」
困惑しているカゲノーくんに有無を言わさず会場から去る
おっと、会場の一番端にドリスコール、ツァン、ベレニケが並んで観戦に来ていたのか。私自身いつのまにか出ることが決定してほとんど当日に知ったことだし、所詮はお遊びと思っていたので彼女達に大会に出ることは伝えていなかったが、伝えた方が良かったかもしれないな
ただ彼女達だけではなく、この若ユーハバッハイケメンフェイスと兄の名前が売れてることもあって私自身そこそこな人気があったりするので、この後他の女生徒に詰め寄られることを考えると説明するにしても見えざる帝国の中だな
お疲れ様でした
この作品のユーハバッハくんは塩試合になりやすいので扱いが結構難しいです
現在使える全知全能の能力としてわかりやすく未来予知となっています。おそらくハッシュヴァルトが陛下から一時的に譲り受けた時のような効果になってるはずです。まだ未来の改変は出来ませんね…
実は学園に通ってる星十字騎士団の三人娘のノリはBLEACHのギャグパート感あって書いてて面白いんですよね
そして何気にツァン・トゥの能力が『ジ・アイアン』から『ジ・アイス』になってるという。やっぱりツァンは氷輪丸奪ったところが印象深いですからね、仕方がないね