ブシン祭の選抜大会が終わり寮の部屋に帰宅するとまたしても窓からアルファが侵入していた。彼女はドアから部屋に入ろうと言う気概がないのだろうか
「シド…あなた、ユーハバッハにすぐ勝っちゃうってどういうことよ」
「いやーこれは仕方がないよ、あいつ剣にも体にも魔力強化してなかったんだ。まるでこっちの出方がわかってるみたいにね」
正直、割と負けず嫌いなところがあるユーハバッハがわざと負けようと考えなければ、僕というモブ相手に手を抜いた状態で負けることはないとあいつの性格を考えると自ずと答えが出てくる。絶対三位入賞くらい狙ってあとは面倒だから手を抜くとか考えただろうし、そもそもあいつは兄に対しての劣等感を持つような奴ではないからな
「出方が分かってるって…でもあなたが言うのなら本当にそうなのかも。私が…一歩及ばずなところで引き分けたハッシュヴァルトとか言う人物もアーティファクトか不思議な力を使っていたし」
盛大な記憶の捏造を見た気がする。
「…ボロ負けじゃなかった?」
「おかしなことを言うのね、どこかで頭でも打った?病院で診てもらった方がいいわよ」
「ソウデスネー」
しかし不思議な力か…一定範囲の魔力を吸収するアーティファクトもあるにはあるみたいだけど、ハッシュヴァルトの聖文字は本当に別の世界の力と考えた方がしっくりくるからな。ハッシュヴァルトがそうならユーハバッハだって"アレ"を本当に持ってる可能性もあるからな。
「もしかしてユーハバッハは未来を視ていたり」
「あなたってジョークを言うこともあるのね。面白いわよ…笑えないことを除けばね」
やっぱりアルファは優秀だな、ユーハバッハが未来を視ることができることもしっかり選択肢の候補に入っている。僕の場合は一応前例ありきでそうかもって当たりをつけただけだけど
でも実際に手合わせした僕の感想と、アルファ自身の可能性が合致しちゃったからなまじ笑い事じゃなくなってるんだよね。
「でも未来が視えたところで完全に対応することは無理そうだよ。考えてもみてよ、未来なんてものは無数にあるものだよ?それを今から起こるであろうことを瞬時に判断して行動に移すとして、確実な精度で出来ると思う?」
「そうね、普通に考えたら出来ないと思うわ、でも_」
アルファが言葉を繋げようとしたが、僕がその言葉を遮る。
「そう、でももしもがあった時の為に、瞬時に未来に起こる出来事に対応ができることを計算に入れなければいけない…僕たちシャドウガーデンならね」
「はぁ…そんな眉唾物の話も考慮しないといけないって頭の痛い話ね」
もしユーハバッハが未来を視ることができたとしても、おそらく未来の改変まではできないだろう。もし仮にできたとしたらそれこそ世界征服なんてあっという間にできてしまう
そういう気がなくてもどこかに王国の一つや二つは作ってもおかしくはないだろうからね。アルファから聞いた話だと、王国周辺でも聖都リンドブルム方面からもそれらしき動きがない以上、出来たとしても未来の予知がせいぜいだろうしね
しかし、アルファ達はどうしていきなり能力バトル物みたいな設定まで組み込んできたのだろうか?相手も上手い具合に合わせてきてるし…ごっこ遊びにしては出来すぎてる………考えすぎか
◆◆◆
カゲノーくんがシャドウガーデンのシャドウだと分かったが、正面からの衝突はまだまだ出来ないな。無理に正面衝突をした結果が双方痛み分けのぶつかり合いだろうからな
しかしアズギアロの聖文字の能力でシャドウガーデンの構成員が分かってきたが、多すぎてこちらが把握しきれないレベルとは思ってもみなかった。末端の末端でもかなりの数があるとはいくら個の力で凌駕している我々だろうと戦力差は歴然だ、層が厚すぎる
これでは迂闊に手出しができない…しかしあの組織力なら吸収できたほうが得ではある。どうにかトップのカゲノーくんをドリスコールの
こうして元々高校生の一般人である私が今後のことについて学校の席に着いて思考していると、体の中の魔力が吸われるような少しの気怠さを体感した。いや本当にこれ魔力吸われてるな?
「全員動くな!我々はシャドウガーデンだ」
学校に黒ずくめのテロリストが侵入してきた。突拍子もないな、学校にテロリストが襲撃してくるって厨二病患者の頭の中かな?
明らかに前に見たシャドウガーデンの構成員の質より数段劣るから、コイツらは偽物だとしても緊急事態ではあるので、見えざる帝国に召集後私の近くに影を通して出動するように知らせる。グレミィの能力があったからここまで自由の効く指示がボタン一つで完了する。グレミィ様様だな
それにいい機会だ。テロリストを根こそぎ捉えて
「ここがどこだか分かってないようね、ここは魔剣士学園よ?正気の沙汰とは思えませんね」
そういえば生徒会の説明でローズ会長が教室に来ていたか…テロリストと険悪な雰囲気を出していてこのままでは見せしめでやられるような展開だが、見たところ力量的にローズ会長の方がテロリストより強いだろうから心配ないだろう。最悪、我が星十字騎士団のシャズがなんとかする
ローズ会長がテロリストと対峙していたが、魔力を上手く練られない一瞬を突かれて斬られると言ったところにカゲノーくんが身代わりになった
攻略対象が目の前で死んだんだが…いや生きてるか、ハッシュヴァルトの話ではカゲノーくんはいくら斬られても傷が治っていたようだし、最悪シャズがなんとかしてくれる
◆◆◆
「陛下からの知らせで緊急性はないらしい召集だが…今集まれる全員来たのか」
銀架城広間に1番早く着いたジェロームが口を開く。そこには遠征で遠出をしているハッシュヴァルトとバンビーズとバズビー以外の星十字騎士団が集まっていた。
「それは当然でしょ、陛下からの直々の召集よ?ここのみんなは陛下から集まれって言われて集まらない人はいないわ」
そして最後に着いたエス・ノトが皆の言葉を代弁して話し、その言葉にうんうんと頷く
それからは各自のタイミングでユーハバッハのいる学園に影を通して侵攻する
「おや?魔力が吸われている」
そう口にするのは白いフードを深く被った猫っ毛が特徴的なグレミィである
グレミィが影から出てきたのは、全生徒がシャドウガーデンを名乗るテロリストの要求で大講堂に一箇所に集められた後のもぬけの殻となった校舎の中だった
「おいおい嬢ちゃん、困るよ。俺たちシャドウガーデンの要求には従ってもらわないと…じゃないと学校のお友達は全員殺されちゃうからね〜」
誰もいない校舎を散策していたグレミィだったが、後ろからシャドウガーデンを名乗るテロリスト二人組に捕捉され、男達はグレミィを見てニタニタと笑う
「おじさん達シャドウガーデン?
「何言ってるか知らないが、一人くらいつまみ食いしてもいいよな、どうせ殺すんだろ?」
「一人ぐらい別にいいだろ、たっぷり可愛がってやろうぜ」
「殺すなよ〜」と忠告を受けたテロリストの片方はグレミィに剣を振り上げながら走って近づく
「おじさん達面白いな〜、僕に勝つと思ってるの?想像してごらんよ、おじさんの手に持ってる剣すごく重そうだよ。自分の腕の骨が飴細工だったらそんな剣持てないね」
瞬間グレミィに近づいていた男の腕がポキポキと音を立てて重力に負けるように地面に向かって落ちていく
「は?腕、腕が!俺の腕がおかしいぞ!!!」
「何遊んでんだよ、さっさとしろよ〜」
「遊んでんじゃないだよ!俺の腕がおかしいんだって!コイツ…コイツが何かしたんだ!!」
両腕の骨がボロボロになって皮だけのようになってしまった男にグレミィは近づく
「僕は
◆◆◆
「はぁ…自分のやってることが無駄だってわからないんですか?…分からないから止めないのでしょうけどね」
学園の中庭に出たのは陶器のような白すぎる肌と、真っ白な長い髪が特徴的な女性、グエナリエ・リー。彼女は四方をテロリストから袋叩きにあっているが、彼女から半径1mほどの距離に見えない壁でもあるかのように男達は彼女に近づけないようになっていた
「なんで、近づけられねぇんだ!」
「おかしいだろ!なんかのアーティファクトか!?」
「絶対何かカラクリがあるはずだろ!探せよ!」
「探せって言われても!」
男達のやり取りを見ていたグエナリエは「はぁ…」ため息を吐き目の前の男に向けてデコピンの要領で人差し指を曲げ弾くと、男は背中に位置していた校舎の壁に激突してぐったりとし、校舎の壁がパラパラと地面に落ちる音がこの空間を支配した
「この世界にはベクトルと言われる力の向きが必ず存在する…あぁ、これは世界の法則の話です。そのベクトルの向きを自由に変えられるこの私、"V"『
お疲れ様です。
魔力吸われてるのに聖文字の力は普通に使えるんだ?って思ったそこの貴方、それは次辺りにわかると思います
この作品のグレミィ、グエナリエ、シャズは多分親衛隊くらい強い