超昂大戦SS 届け、最後のバレンタインチョコ! ~魔女と女神と戦士の愛を込めて~ 作:環 藍河
「…あのね、リーマちゃん…。
これから言うこと、絶対に内緒にしてくれる…?」
「はい、何でしょう?」
「…チョコレートの、美味しい作り方…。
教えてほしいんだけど…いいかな?」
「え? もちろんOKですよ?
それじゃあ、土曜日の…11日の夜はどうですか?」
「あ…ありがとう! じゃ…よろしくね!」
上気し、頬を赤らめたまま、そそくさと駆け出すアカリ。
(…アカリさん…どうしたんだろう?
チョコレートを作るだけで、あんなに恥ずかしそうに…?)
依頼を快諾したのは、参戦間もない魔女の少女、リーマ・スハルト。『山の幸』の魔力因子を持ち、ジークフリート派では『美食ハンター』の通り名を持つ。
そして、ダイビートに来るまで欧州NAUで生活してきたリーマには、アカリがチョコ作りの手ほどきを何故恥ずかしがるのか、このとき理由が分からなかった。
…
……
ぴろろん、ぴろろ〜ん。
「いらっしゃいませー。」
(うふふっ、リーマもすっかり、ハニマの常連さんなのです…!)
コンビニに入るだけで心ときめくリーマは、新商品や変わり種を探して店内を見渡すのが、すっかり日課に。新作スナックハンターのクラリスとエンカウントすることも多いようだ。
(これはもう…リーマは完ぺきな都会派魔女さん! 自負して良いですよね!?
…あれ?)
リーマが目を留めたのは、レジ前やスイーツコーナーに並ぶ、真っ赤な宣伝POP。
(先週までは、恵方巻のキャンペーンだらけだったのに…。コンビニって、季節を感じる場所でもあるんですね…!)
それは…来たるその日を最高の1日にしようと祈る女子に、勇気を授ける言葉。
欧州では、殉教者を悼み、また結婚を司る愛の女神の生誕祭として、家族と静かに祈りを捧げて過ごす祝日。
だが、日本での意味と…アカリの相談の真意を、リーマはこのとき知る。
(日本では…聖バレンタインデーに、チョコレートを贈るのですか…!)
…
……
土曜の夜、夕食の片付けも終わり、すっかり静まり返った食堂のキッチンで、2人はチョコレートを作る。
材料を丁寧に量り、心を込めて練り、注意深く温度管理しながらテンパリングを施していく。
「あの…アカリさん…。」
「ん? どうしたの?」
「このチョコ…絶対に美味しく仕上がります。
トキサダお兄さん、きっと喜びますよ。」
どきいーーーーーんっっ!!
「えっ…えええっっ!
違っ、あの、えっと、違わない、けど…。
そ…そう、エスカチーム代表でねっ、日頃のお礼なのっ!
私だけじゃなくてっ、今年はエリーちゃんもヒビキちゃんもうららちゃんもいないから! 4人分なの!」
確かに。
エリーは箱船トップの仕事で、ヨーロッパのオフィスで軟禁同然に忙殺されている。
ヒビキは対ノロイの総力戦に向け、想破の里で過去の文献漁りと、自分の修行でやはり缶詰。
うららは現在…ハルヒーナ。
…まあ、実際には結構ひょいひょいダイビートに戻ってくるのだが、新プチピュアの8K録画と感動のフィナーレ間近のスーパー戦隊、劇場版ロイダーのティザームービーをダビングしたらサクッと戻ってしまう。
「…長官への、日頃の感謝の印だから…。
だから、リーマちゃんに習って美味しく作って、長官が喜んでくれればなあ、って思ったんだ…。」
耳まで真っ赤、完成間近のチョコが再び溶けてしまいそうなくらいに上気したアカリ。
「…アカリさん、知っていますか?」
くるんと振り返り、リーマがシスターのように語る。
「バレンタインデーは…戦士の愛を応援する日なんですよ。」
「えっ…、戦士…の…?!」
「1800年前、当時のローマ皇帝は…故郷の家族や恋人に未練を残さないよう、兵士の結婚を禁止してしまったんです。
でも、それに逆らって、皇帝に内緒で兵士の結婚式を続けたのが、聖バレンタイン神父なんです。
そして…彼は皇帝に逆らった罪で、2月14日に処刑されてしまうんです。」
「そんな…!」
「今となっては、バレンタイン神父の本意はわかりません。でも…!」
リーマは強い意志を秘めた眼差しで。
「戦士だって、大切な人を想っていい。
その想いで熱く戦う戦士が、いたっていい。
愛の女神様は…きっと、そんな戦士たちを祝福してくださるはずだって…!
…そう考えたんじゃないかな、って、わたしは思うんです!」
「リーマちゃん…!」
「だから、いつも私たちに力をくれるお兄さんに、最高のチョコレートを贈りましょう!
味はわたしが保証します! アカリさん、ふぁいと!」
こうして、超昂戦士の思いの丈を込めた特製チョコレートが完成した。
だが…このチョコをトキサダに渡すまでの道のりが、長く険しく苦しいものになることを、このときアカリもリーマも知らなかったのである。
…
……
「クックックッ…まずは実験フェーズ1、大成功だ。まさかエスカ・ルビーにまで効くとはなあ!」
「実験…だと!?」
「おうよ、さらに精度を上げて、次は諸君たちダイビートを…そして閂市の市民どもを、さらなる恐怖に墜としてくれよう。その時まで震えて待つがよい!」
「ま…待てえっ!!」
コマンダーは改造型と思われるクレイド軍団と共に、スポットへ消えて行った…。
日増しに激しくなる、ダイビートとノロイの戦い。
そして、この日の戦闘で幻魔の精神攻撃を被弾し、救急搬送されたルビーとノノノは…
いつもの元気と勇気を喪っていた。
「…私、もう…頑張らなくて、いいよね…?」
「ルビーさん!」
「我も…もう、全てがどうでもいいのじゃ…。」
「ノノノちゃん!」
筆者の環藍河です。ご無沙汰しております。
2023年版バレンタインイベントを来週に控えながら、勇敢(無謀)にも二次創作バレンタインSSをお届けの運びとなりました。
前作「ルビーVSアメイズ」のようにストックが無いので、もしかしたら毎日投稿とは行かないかもしれませんが、気長にのんびりお立ち寄りいただければ幸いです。
現在は5章構成で計画していますが、いつもの見切り発車ですので延びたらごめんなさいです。