超昂大戦SS 届け、最後のバレンタインチョコ! ~魔女と女神と戦士の愛を込めて~ 作:環 藍河
「私…ひとりで空回りして…
でも…みんなの気持ちが…見えなくて…
だから…何のために頑張るか…
わからなくなっちゃった…」
「うう…みんな我の話など一笑に付すばかり…。
クリスマスや大晦日には、異教の神仏は調子良く崇めるくせに…。
我など、お御籤だけ書いておればよいのじゃ…!」
虚ろな瞳、ぽかんと開いた口元。
放心状態のルビーは、わけもなくこぼれる涙を拭おうともせず、ただ天を仰ぎ…。
ノノノは膝を抱えて部屋の隅でうずくまる。
「…そんな…!」
「ルビーさあん! ノノノちゃあん!」
この日、コマンダーが引き連れた幻魔・クレイドの精神攻撃を受け、エスカ・ルビーとビートアミュレット・ノノノは喪失感に囚われていた。
「わ…わたしの、せいで…!」
肩を震わせるリーマ。
「狙われたのは、わたしなんです…。それを、ルビーさんとノノノちゃんがかばって…!」
「大丈夫だぞ! 群れの仲間をかばうのは当たり前なんだからな!」
「リーマちゃん…元気を出すのです…!」
「ダイビートの医療は最先端です! だから、リーマちゃんはみんなを信じて、心を強く持つのです! ふんす!」
由雅・イーイー・クルル…旧ジークフリート派の仲間たちが、しょげるリーマを支える。
…しかし、その希望に暗雲が立ち込める。
「…ダメ。これは…ただの無気力じゃない…。」
幻ノ川双葉と三ツ葉が、祝福器・魂の天秤でアカリたちの沈んだ心の均衡を戻そうと試みるが…。
「私たちの天秤は、辛い思いや不幸に沈む心を軽くすることはできます。でも、お二人のはそうじゃない…。」
「アカリさんも、のののちゃんも、人を大切に思う気持ちを封じられてるんだよ! だから、自分が頑張る意味を見いだせなくなってるの!」
「この心は…私たちの天秤では治せない…!」
いつだって、みんなを護るために、自分のすべてを賭けて戦う。…そんなアカリにとって、封じられてしまった心は、まさに戦う原動力であった。
「…それなら…!」
双葉と三ツ葉の見立てに、医務室のセラフィールが思い当たり、愛と縁を司る神騎を招集する。
「…あかん。アカリはんも、のののちゃんも、ワイが撃ち抜いたみたいになっとる…!」
「そうね…。ディスリンで縁を切られた人間に出る症状と、ほとんど同じ…。」
神騎リゲルは、アカリが保管する神武・ディスリンを回収し、2人を観察する。
「じゃあ、ラブリンさんで射抜けば…?!」
「それは違います。ラブリンもディスリンも、あくまで人が元から結わえる縁を、繋いだり切ったりするだけですから。
今のお二人は…恋心、親愛や友情、家族愛…そういった他の人との縁を、全て喪っています。
だから…私の矢は効きません…。
セラフィール様…お役に立てず、申し訳ございません…!」
「そんな…!」
…
……
「…奴らの実験は…明日がフェーズ2だろうな。何をするつもりかは解らないが…!」
司令室でトキサダとユーノが、敵の出方を推し量る。
「ええ。そして本番が明後日…みんなの大切な日を台無しにされたら、市民の動揺は計り知れないわ…。」
「そして幻魔は、大きな接幻力を得る、か…!」
コマンダーの口ぶりからは、狙いは超昂戦士に留まらないだろう。
今日の成果をもとに、一般市民にターゲットを拡げるなら、その心理的効果が最大になるのは明後日、バレンタインデー…!
「現状で、対抗策は無し。市民の避難と、戦士に回避を注意喚起するぐらいか…!」
…
……
その頃、リーマは自分の身代わりとなったルビーとノノノへの自責の念を振り切ろうと、自問自答していた。
(…諦めない…! だって、アカリさんは…!)
リーマとアカリ、2人だけの秘密。
その解禁日は、間もなくだったのに…!
(私にできる…2人を助ける方法…!)
リーマは決意し、トキサダのもとへ。
…
……
医務室では、セラフィールとユユエルが苦渋の決断をさやかに迫っていた。
「このまま抑うつが続くと…お二人の体と心が保たないんです…。」
「さやかちゃん…アカリちゃんとのののちゃんの記憶操作を、お願いしたいの…。」
「…やりたく、ないなあ…。」
ぷしゅうううっ。
「待ってくださいっ!
わたし、特効薬に思い当たりがありますっ!
材料採取に2日ください!」
割って入るリーマが、決心と覚悟を込めて3人を説得する。
「…えっ?」「特効薬? 2日?」
「はい! トキサダお兄さんの許可は取りました! 説明はお兄さんから聞いてください!」
「…わかった。何とか2日、保たせてみせる。」
その迫力に気圧された3人の答えを聞くやいなや。
「ありがとうございます!」
NAU開発の無人輸送機・ノストロモ2は、夕陽に向かって飛び立つ。
秘薬を求めて飛び乗ったリーマの手には、パスポートが握られていた。
筆者です。第2話、お届けいたします。
なるべく毎日投稿、を目指しておりますが、予定通りなら明日の第3話まではめどが立っています。土日の第4話・第5話は…少し難産かも、です。
原作の3年目バレンタインイベントも間近で楽しみですが、当SSがささやかな賑やかしになりましたら幸いです。ではまた第3話にて。