真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
ちょっと短めです。
横浜某所、非合法レルム。
2度に渡るセプテントリオンの襲来と海外との関係途絶。
それに伴う衰退と人口の流出によって寂れ、過疎化していた所を利用した経済特区。
しかしその実態はヤクザ系列のカバー企業が多くを占める、彼らの影響が強い縄張りだ。
現に密かに調達した資金に資材、様々な“商品”がこの場所に流れ込んでいる。
無論他にも似たような場所はあり、此処は氷山の一角でしかない。
無くなった所でそこまで大きなダメージを与える事は難しいだろう。
だがそれでも。尻尾を出したのならば容赦する理由も無かった。
このレルムにおいても使われる事無く、埃をかぶっていたはずの倉庫区画。
特に大型の物がある場所に、人や物資の出入りが激しくなっている事を情報担当が掴んだのだ。
おそらく回復したアストラル・シンドローム患者の抑えや機材の運び出しによるもの。
安楽死法案の廃案により予定が狂った事でボロが出たのだろう。
ひょっとすると河岸を変えるつもりなのかもしれない。
だがそんな夜逃げまがいの行動を見逃すはずも、許すはずもなかった。
ここまで来れば法や建前による追及の阻止も意味を成さない。
秘密裏に根回しは完了し、政治的な影響が出る可能性は極小だ。
であれば――――。
『ターゲットを確認、想定より数は少ないです』
『あくまで集積拠点の1つだからだろう。
この調子ならそこまで高レベルも居ない可能性がある。
ただサーヴァントの存在には気を付けろ、あれはそう簡単に死なない』
『なら死ぬまでぶった斬ればいいと。了解了解』
『正面からの陽動は任せて。
派手に挑発かけるから。この剣バカもいるし』
『死なない程度には頑張ってくれ。
……監視カメラのハッキング、ドローン制圧準備完了
タイムリミットは5分に設定、何時でも行けるぞ』
雲一つない満月の月明かりが照らす夜空の下。
武装した集団―――ヤタガラス及びキリギリス、有志の協力者たちの通信が飛び交う。
ヤクザの拠点、そこへの強襲の為の最終段階。
目的は構成員たちの殺害か無力化、囚われているだろう人間たちの救出だ。
規模としては大した事もなく、各地で並行して行われている作戦の一つに過ぎない。
油断は禁物だが、今回集められた戦闘員なら問題なく対処出来る筈。
後詰めも用意されている以上、失敗はそうそうあり得ないだろう。
だというのに。
(……何だろこれ?)
黄色みがかった白色の髪を揺らしながら襲撃チームの1人、千束は銃を強く握り締めた。
もう十数秒後には作戦が開始される。
自分たちの役割は
浮足立った相手の足元を狩り、一気に制圧するのが仕事だ。
こういった事は今まで何度もこなしている。
いやな慣れもあって、今更怖気付くような感性などとうの昔に忘れてしまった。
それなのに―――妙に心がざわつくのだ。
(嫌な予感っていうのとは違うなぁー、変な感覚だ)
他の面子―――例えば勘の鋭い美野里など―――が何も言わない以上、感じているのは己のみ。
気のせい、勘違いと言えれば良いのだが、無視するのは難しい大きさだ。
しかしそんな根拠もない違和感を口にする訳にもいかず、
「……千束?」
そんな内心の自問自答を感じ取ったのか。
共に裏面からの強襲を行う相棒、たきなが声を掛けて来た。
最近はかなり心配症である故か、視線が何処と無く鋭い。
ついこの間も安静にしていろと言われたばかりだ。
「だいじょーぶだって、ちょっと月が綺麗だなーって思っただけ」
インカムのマイクを切りながら微笑んで誤魔化す。
下手をすれば無理矢理にでも任務から外しそうとしかねない。
実際、この仕事を受ける時もやるやらないでかなり揉めたのが脳裏を過る。
ここに来てやっぱり降ります、は迷惑などというレベルではない。
そもそも、自分もここで止まるつもりなど毛頭無かった。
例えレベル限界に到達していたとしても。
例え人工心臓がもう付いて行けなくとも。
例え装備や技量で誤魔化せなくなっても。
まだ自分は戦わなくてはならないのだから。
違和感の一つや二つ、乗り越えなくては話にならない。
『各員時計合わせ―――開始』
決意を固め直すと同時に作戦が始まった。
反対側、つまり正面から派手な爆音と衝撃が生じるのを合図に駆け出す。
自分の感覚が間違っていなかった事を知るのは、すぐ後の事だった。
・
・
・
「てめぇらどこから―――がっ!?」
「こっちからも来てるぞ人集めげぁっ!!」
突然の急襲を受けたヤクザ、その下っ端である外道たち。
レベルは平均して15~20程度。
突き抜けた戦力は存在せず、数だけが頼みの雑魚集団。
―――その程度であるのなら、彼岸花の少女たちを止める事は叶わない。
「クリア―――!」
\カカカッ/
| ガンスリンガー | 井ノ上たきな | Lv45 | 相性:??? |
サイレンサー付きの拳銃で次々と敵を無力化していくたきな。
先日起きたヤクザたちによる病院襲撃事件。
そこでサーヴァントたちを倒し続けた事で、彼女のレベルは現在【45】にまで至っている。
足切りライン―――レベル【50】にはまだ遠いが、この程度の者たちであれば十分だ。
瞳に静かな闘志を燃やしながら、圧倒的な速さで制圧を続けて行く。
撃たれる前に撃つ、殴る、蹴る。時には学生鞄に偽装した盾で攻撃を防ぐ。
まさしく鬼神の如き活躍。
しかしそれは前のめりに過ぎるという事でもあり―――。
「死ねやぁああああ!!!!」
「ッ―――!」
\カカカッ/
| 外道 | タトゥーマン | Lv40 | 相性:呪殺無効 |
倉庫に置かれていた資材の影で息を潜めていたヤクザからの奇襲を受ける。
振りかぶった
即死はせずとも状況を逆転させかねない一撃だ。
回避は間に合わない、防御するには位置が悪い。
たきなの顔には焦りが、ヤクザの顔には嗜虐の笑みが浮かび――――。
「あっぶないなーもう」
すかさずフォローに入った千束によって
転がるようにして倒れた敵をワイヤーで手早く拘束。
そのまま背中を合わせるようにしてたきなと並ぶ。
「私に無理させたくないからって自分がピンチになってちゃ意味ないでしょ。
相手がやっさん並みの腕だったら首転がってたって。
分かったかね、たーきなくーん?」
「……すみません、突出し過ぎました」
軽快にいつもの調子でからかう千束に対し、苦虫を噛み潰したような表情のたきな。
無理をすると倒れてしまう相棒への心配故の行動が、自身のピンチを招いてしまった。
しかもそこを助けられてしまったのだから己への怒りが沸き上がる。
「いつも通り一緒に行くよ……行ける?」
「当たり前です!!」
頭は冷静に、心は熱く―――ほんの数秒の休憩をおいて戦闘を再開。
倉庫の奥から集まってきた増援を前にして、今度は千束が飛び出した。
「よいしょっと―――!!」
| 《アリ・ダンス》*2 | 自動効果 | 自分に向けられる命中率を半減する。 |
| 《回避強化》*3 | 自動効果 | 自分の物理・魔法の回避率を5%上昇する。 最大まで強化済み。 |
あえて目立つような振舞いで自身に視線を固定。
当然のように殺到する銃弾、魔法、時には遠距離攻撃スキルの数々。
それら全てをまるで踊るかのようなステップと踏み込みで回避する。
被害は精々髪の毛数本が舞った程度―――常軌を逸した光景に全員の目が驚愕の色に染まる。
「そんなに見られると照れるってば」
\カカカッ/
| ガンスリンガー | 錦木千束 | Lv49 | 相性:??? |
微笑と共に
神経弾、魔力の弾、閃光弾、ハッピーショット。
マガジンに装填された無視相性の弾丸が次々とヤクザたちを行動不能へと追い込んでいく。
「ちくしょう……テメェは一体何なんだよぉおおお!?」
半ば半狂乱になりながら攻撃を続けるものの、1撃とて当たりはせず逆に数を減らすだけ。
その理不尽に、もはや逃げるなどという思考さえ奪われてしまっていた。
こうなればもう勝負は決まった様なもの。
これこそが錦木千束の真骨頂にして最大の武器。
スキルにまで昇華された観察力と反射神経による超絶回避能力。
生半可な者では指一本振れる事さえ許されない。
仮に、心臓に先天性の欠陥さえなければ。
かつて所属していた京都ヤタガラスにもっと現代医学の知識さえあれば。
もっと上の領域へと行けたであろう彼岸花。
―――救■主になれなかった、ヒーローを目指す少女である。
「なに千束を視姦してるんですかお前ら―――!!!!」
最後は激怒したたきなの追撃により、この場にいたヤクザたちは全員地に倒れ伏すのだった。
・
・
・
「それにしても、随分と脆い連中でしたね。
いくら拠点に居るからって不用心に過ぎます」
周囲のチェックを終えた後、たきなの口からそんな言葉が漏れた。
連中、つまりは動かなくなったヤクザたち。
うめき声を上げてはいるものの死者は1人もいない。
不殺を旨とする彼女達からすれば珍しい光景ではないが、そう言われると千束も納得がいった。
なにせ―――。
一番警戒してたサーヴァントも全然だし、此処って予想以上に大した拠点じゃなかったのかも」
吸血鬼の血で強化されたヤクザ―――サーヴァントが1体も居なかった。
お手軽に強化できる事もあって、それこそダース単位での戦闘も覚悟していたのにだ。
だが、蓋を開けてみれば驚くほど質の低い者たちばかり。
しかも構成員の誰も彼もがまともな防具さえ装備していなかかったというオマケ付き。
たきなの言う通り、このご時世にしてはあり得ないほどの不用心さである。
あからさま過ぎるほどに使い捨て要員としか思えない。
もちろん正面側に戦力が偏っていた可能性も十分考えられるが、それにしても杜撰に過ぎる管理体制だ。
(まるで……)
そうまるで―――
「…………いやいやまさか」
脳髄を疾る電流と共に、燻っていた違和感が一気に膨れ上がるのを感じた。
頸を何度も横に振る。この閃きは常識的に考えればあり得ない。
何故なら理由もやる価値も欠片も無いからだ。
(あり得ない……あり得ないのに!!)
平時であればラノベの読み過ぎだろうと笑ってしまう与太話。
ミカもクルミもたきなも呆れるか笑うだろう。
しかし今、違和感は確信となって千束に警報を鳴らしている。
もし本当にこれが確認ならば―――次はどうするか?
「たきな――――」
振り返り相棒へと警戒を呼び掛けると共に、インカムのマイクにスイッチを入れようとして。
| 《早射ち》*6 | 射撃攻撃 | ホルスターに入れた銃器をいきなり抜いて、相手より早く射撃する。 判定成功時、他のキャラクターとは別に1番最初に射撃ができる。 |
| 「魔力の弾」*7 | 無視相性の弾丸。敵1体にCHARMを与える。 |
| 「強化魅了の札」*8 | CHARM状態を簡単に解かれないための札。 |
轟音が1つ、遅れて何かが弾ける音と倒れる音。
弾けたのは千束が手に持っていたインカム。
マイクの部分だけが綺麗に吹き飛ばされ無用に長物と化した。
そして倒れたのは、
「――――ッ!!」
仰向けとなったまま動かない相棒の姿を眼に捉える。
自分に比べて薄い胸は上下に動いている、死んではいない。
だが決して無事と呼べる状態でもないのも確かだ。
何故なら着弾したであろう胸元―――そこに怪しげに光る札が存在したからだ。
「
しばらくは動けないままだが*9死にはしないさ」
声の源は倉庫の出入り口付近。その陰から1人の人間がゆっくりと歩きながら姿を現す。
外見は金髪碧眼、長身に赤いコートを羽織った20代そこそこの白人男性。
美形と評せるその容貌は天井の採光窓から差す月明かりに照らされて、見る者によっては神秘的な印象を与えるかもしれない。
―――
この男の本質はそんな外見からかけ離れていると直感した。
例えるならそう、獲物を求める飢えた猛獣と表現すべきだろうか。
その瞳の奥に、身を焦がすほどの熱量が秘められているのを千束は理解する。
「仲間撃った奴の言葉信じる?」
気付けば手が動いて銃口を向けていた。
それを見て男はくつくつと、何処か楽し気に笑い声を漏らす。
直接見て分かる―――相手のレベルは自分とそう変わらないだろう。
少なくとも以前出会った
自分であっても問題なく対処出来るはずの相手だ。
―――
相手は無手だ。先程の轟音―――銃声を聞く限り得物は自分たちと同じ拳銃の類。
しかし今は構えていないどころか手に持ってさえいないのだ。
こちらが有利な状況にあるのは間違いないはず。
それでも本能がブレーキをかける。
反射とか装備とかそういうものを警戒した話ではない。
もっと根源的な理由だ―――
「もっともな意見だね……やはりキミは変わっていない。
少なくともここでは一緒だ」
「? お前みたいなのと会ったことあるかなぁ。
絶っ対忘れられないと思うんだけど」
何やら知り合いと話すような口調だが、こんな相手とは会った覚えは無かった。
リコリスの仕事人としても、リコリコの看板娘にしてもだ。
記憶力には自信があるし、そもそも忘れられるような淡い印象ではない。
「……ああ。それじゃ改めて自己紹介といこう。
久しぶり、そして初めましてだ」
\カカカッ/
| ガンスリンガー | タスラム | Lv50 | 相性:破魔無効 |
掲示板では様々な説が流れているが、詳しい事は知らないし、知るべきではない事なのだろう。
ただ、新しく出来た友人たちのように協力的な者から、敵対勢力に拾われ暴れる者がいる事は知っていた。
状況から察するに男は後者なのだろうが、どこか毛並みが違う気もする。
とりあえず思ったのは―――。
「……人の知らない人間関係持ってこられても困るかな。
はっきり言って超迷惑なんだけど」
「そこは許してくれ、オレにとっては最優先事項なんだ。
一から十まで全てエゴでしかない事もね。
――――時間も押している。いきなりで悪いが始めよう」
瞬間、
投降を促すという考えは微塵も残さず吹き飛んだ。
これはもう、力づくで動かなくするようにするしか手は無い。
「いやなモテ方するなー私!」
「 Come On My Hero. Let's Danse Macabre―――!!」
月明かりの下、銃声と共に2人だけの死の舞踏会が幕を開ける。
後篇もなるべく早めに投稿したいと思います。