真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
それではどうぞ。
「今更だけどさ、なんで氷川の下に着いてたの?」
夕暮れに染まる黄昏時。
屋上に吹く風に、黄色みがかった白色の髪をなびかせながら少女が口を開く。
そこに込められている感情は純粋な疑問の色のみ。
眼前の、もうそれなりの付き合いになる相手へと向けるにはあまりに今更過ぎるもの。
だがそうした問いかけが必要な関係である事も事実だ。
なにせ接するのは大抵が敵対か共闘する時。戦場以外で会った回数など片手で足りる。
いずれも相手の内心を聞く余裕になど恵まれなかったし、そもそも聞く気も無かった。
考えていたのは何時だって、何度も絡んでくるこの相手を牢屋にぶち込む方法のみ。
それでも今この時に聞いたのは、これが最後の戦いになると理解しているからだろう。
相手の主―――サイバース社長にしてガイア教団幹部、氷川はここにはいなかった。
自分達のチームが掴まされたのは欺瞞情報の方。
おそらくは氷川が目的を達成する為、そして因縁深い女性を誘い出すために撒いたデコイ。
まんまと騙された形になるが、こちらにはもうどうする事も出来ない。
長きに渡る組織間の決着は彼女たちに任せるしかなかった。
「ん……そうだね、最初は何となくだった」
相手―――氷川の右腕でありながら囮にされた金髪の男は、微笑みながら答える。
口調には一切の怒りや絶望も無く、あるのはただ喜色のみ。
それも当然だ、何故ならこの状況こそ彼が望んでいたものなのだから。
「オレが元々メシアンのクラリックだったことは調べがついているだろう?
どちらかと言えば悪魔退治じゃなくて人を撃つ方が多かったがね」
「そしてある日、同僚と
理由までは分かんなかったけど、汚れ仕事が嫌になった?」
口にしておいてなんだが、少女はその予測を自分でも信じていなかった。
目の前の相手はどう考えてもそんなタマではない。
現に苦笑しながら男も首を横に振って否定する。妙に様になった仕草でイラっと来た。
「別に好きじゃなかったが嫌いでもなかった。
そもそもオレはね……生まれてこの方まともに“感情”ってやつがまともに働いた覚えがない。
あったのはただ享楽だけ―――それだけを追求して生きて来た」
男は語る、自身の欠落とこれまでの人生を。
ただの一般家庭に生まれ、感情の欠損を疎まれ教会に放り込まれた事。
銃の才能を見込まれ徹底的な洗脳教育を受けたが、ついぞ信仰心など欠片も芽生えなかった事。
ただ面白そうと思ったから、それだけで氷川の誘いに乗りガイア教団へと走った事。
「最初は
静寂の世界だとか? 最愛の女性と共に生きるだとか? 欠片も興味がなかったしね。
―――だけどあの日、オレはキミと出会った」
大仰に両手を広げ、今でも鮮明に思い出せる記憶を掘り起こしていく。
共に任務で初めて出会った日、初めて銃火を交えた時。
神も奇跡も信じぬ男の言葉に次第に熱が籠り始める。
「オレの弾丸は1発も当たらず、逆にありったけの弾丸を叩き込まれた。
衝撃と痛みと共に、“屈辱”と“怒り”と“恐怖”の感情もね。
―――あの時、オレはキミに殺されて生まれ変わったのさ」
不感の世界に生きて来た男を少女は変えた、変えてしまった。
彼女が、殺し屋として育てられながら不殺の信念を貫くヒーローであった故か。
―――自分を変えた、救い出した彼女と決着をつけたい。
だから彼女に執着し続けてきた、それが己の全てとなっていた。
その一念だけが、彼女の敵である氷川側へ着いていた最大の理由だった。
「えぇぇ……つまり私のせいってこと?
いやぁモテる女はつらいですなー、自分の魅力が超怖い。
っていうか要は質の悪いストーカーじゃん!」
「
キミがそれだけ素敵だったという事で納得してくれ」
少女は呆れ交じりに、男は心底楽しそうに笑う。
途端、視界の端。遥か遠方で爆発が起こる。
場所は都内最大の電波塔、その最上階付近。
響く音に何が起きたのかが分からないほど、2人は鈍くなかった。
「……予想通り、あの少女は
となれば世界の命運を賭けた戦いが今まさに始まった訳だ。
勝って全てを手に入れるか、負けて全てを失うか……気にならない訳じゃないが」
「こっちもそろそろ始めよっか。
いい加減決着つけたいのは同じだし。
これ以上の
少女はホルスターから拳銃を取り出し
男の奇襲によって1階へと叩き落された相棒も、他の仲間もここへ上がってくる気配はない。
十中八九、何らかの妨害工作をされているのだろう。
「ご明察。最後の奉公って事で病院内を異界化する仕込みをして貰った。
彼らが辿り着く頃には終わっているだろう。
キミの方こそ、
男は無手のまま構えない、それこそが構えである故に。
魔弾の射手である彼にとって、その程度はまるで問題にはならないから。
「誰かさんのせいで新品に取り換えたばっかだっつーの。
……ああ、そうだ。最後に提案があるんだけど」
少女―――錦木千束は不敵に笑って告げる。
「この戦い、負けた方が相手の言う事なんでも聞くっていうのはどう?
そっちの方が盛り上がるでしょ」
男―――タスラムも笑い返しながら言う。
「女の子さんがそんな事言うもんじゃない……が、良いだろう乗った。
後で後悔しても知らないぜ」
再度の爆発音―――それが決戦の合図となった。
・
・
・
結論を言おう、
戦いの最中、電波塔から生じた謎の発光現象が彼らを襲ったのだ。
おそらく創世の要とされる量子コンピューター「アヌビス」の暴走。
気が付いた時、タスラムは廃墟と化した建物の屋上で呆然と立ち尽くしていた
原因は分からない。創世が行われるにはいくらなんでも早過ぎた。
少なくとも開発者である氷川には何の落ち度もなかったはず。
考えられるとすれば裏で暗躍していた〈ガイア再生機構〉だろうが今はどうでもいい。
重要なのは戦いの決着が付かなかった事。
この世界に転移したのが己一人である事。
そしてこの世界でも彼女は変わらない事。
ならばやる事には変わりがない。
社会の敵と手を組みながらも条件は整えた。
今こそあの時の続きをするのみ。
――――それがタスラムという男の全てなのだから。
・
・
・
「ッ―――!」
本能による制止を意志力で捻じ伏せて引き金を引く。
装弾されているのは無視相性の弾丸。
敵対者―――タスラムの対応を伺う事も兼ねた弾丸は、
「―――オレもキミほどじゃないが、避けるのが上手いんだ」
千束は見る、いつの間にかタスラムの手に握られている拳銃を。
大口径かつ異形の形をした
その銃口から一筋の煙がなびいている。
だが驚愕すべきはそこではない。
そんな物よりもっと恐るべき事象を目の当たりにしたのだから。
(弾を、弾で撃ち落した?
銃も構えてなかったのに―――!?)
| 《回避強化》*1 | 自動効果 | 自分の物理・魔法の回避率を5%上昇する。 最大まで強化済み。 |
| 《クィック・ロードⅢ》*2 | 即時効果 | 即座に銃弾を装填、弾倉の交換が可能。 銃器を装備していなくとも、即座に準備できる。 射撃後に銃器をしまい、別の武器を構えてもよい。 |
言葉にすればそれだけ。特殊なスキルもアイテムも使ってなどいない。
一体どれほどの技量があればそのような事が可能なのか。
―――戦慄はまだ止まらない。
「呆けてるならそのまま眠るといい―――レスト・イン・ピース」
| 《イレイザー》*3 | 射撃攻撃 | 驚異的な集中力でより多くの射撃を繰り出す特技。 1度の詠唱で6発分の装填を行い、敵1体に対して、 射撃攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 通常弾を使用。3分割行動(マルチ・アクション)*4 |
鋼の咢から吐き出される怒涛の咆哮。
拳銃という武器の限界を鼻で笑う、神業を超えた魔の所業。
「マジか―――っ!!?」
声を吐き出すと共に全てを半ば無意識に任せて回避。
何発か体に掠らせながらも近くの物陰へと飛び込む。
冷たい汗が背中を伝うのを感じながら、気配のみでタスラムの様子をうかがう。
「ハハハ、流石。
やはりこんな
外したというのにもの凄く嬉しそうだった。というか笑っている。
ふざけんなよ、と千束は思った。
自分以外ならハチの巣になる所だ。
正面に回っている剣士の彼であっても全て捌き切れたかどうか。
(物反鏡……駄目だ嫌な予感しかしない。
何して来るか分かんないけどそれはやっちゃダメ)
狙いを外れた弾丸が倉庫内を跳ね回る音を聞きながら思考を回す。
相手は
反射対策の一つや二つは持っているだろうし読まれる。
であれば下手な策を弄しても意味が無い。
むしろその隙を突かれて状況が悪化する可能性が高い。
そもそも―――自分に出来る事など元より一つだ。
「……いよっしゃっ!」
緊褌一番。腹を括ってから千束は物陰から飛び出す。
目に入るのは銃口を向けながら微笑むタスラム。
彼我の距離は約20メートルほど。
ここからでは自分の弾丸は全て弾かれる。
なら必要なのは超至近距離からの射撃。
全ての魔弾を避け切って、こちらの弾丸を叩き込む。
無限にも思えるこの
足のバネを使ってコンクリートの床を力強く蹴った。
一瞬でトップスピードに入るもののまだ遠い。
牽制、時間稼ぎも兼ねて連射する。
「ハハハハハ!! それでこそだ!!!!」
先程と同じく弾丸を弾きながら、歓声を哄笑へと変貌させて再び
マシンガンを凌駕する連射速度―――しかしいずれも千束に当たる軌道ではない。
「ッ!?」
| 《跳弾》*5 | 射撃攻撃 | 銃弾が跳ねるのを計算に入れて射つ技。 敵側の回避に-20%する。 |
訝しんだのは一瞬。答えが
最初に撃った弾丸、そして今撃った弾丸が壁を、天井を、床を、機材を、時には弾丸同士でぶつかり合い、幾何学的な模様を描きつつ千束へと殺到したのだ。
1人の射手による多角攻撃という理不尽を前に、流石の彼女も万事休す―――。
「――――!」
| 《行動予知》*6 | 即時効果 | 自身の回避率を1度だけ上昇させる。 |
| 《アリ・ダンス》*7 | 自動効果 | 自分に向けられる命中率を半減する。 |
軽やかなステップを踏み、弾雨の中を千束は軽やかに舞う。
腕に、足に、頬に、髪に掠りはするがせいぜいそれだけ。
一発たりとも命を削るには届かない。
―――彼岸花が死の舞踏を踊り切る。
ヒュウ、とその姿にタスラムは口笛を吹いて称賛した。
反射神経と観察力だけで成せる事ではない。
跳弾である以上、タスラムの動きを見るだけであそこまで完璧に見切るのは困難だ。
だからこちらの狙いを、“意”を読んで精度を上げたのだろう。
死地へと踏み込んだことで極限まで高まった集中力。
そして天性の才能が彼女を更なるステージへと押し上げたのだと理解する。
「いいね。そうこなくちゃ」
残り10メートル。
千束は撃たない、この距離でもまだ確実に当てられない。
牽制の弾さえ相手に利用される事を考慮して回避に専念*8。
ひたすらに距離を詰め、タスラムの一挙手一投足へ全神経を集中させる。
| 《ターゲッティングⅢ》*9 | 補助 | 射撃する対象を1体指定する。 使用者が次に行う、指定した対象への射撃攻撃1回の判定値に +[ランク×20]%の修正を与え、威力を2倍とする。 |
それに対し彼が行うのはやはり
今度はタスラムを中心にして護るかのように跳ね回る。
言うならば鉛が織りなすハリケーン。
その台風の目でゆるやかに、まるで祈りを込めるようにして。
「―――さあ、勝負しようか」
| 《早射ち》*10 | 射撃攻撃 | ホルスターに入れた銃器をいきなり抜いて、相手より早く射撃する。 判定成功時、他のキャラクターとは別に1番最初に射撃ができる。 |
| 《クイック&デッド》*11 | 射撃攻撃 | ガン相性。敵全体に銃器による攻撃を行う。 対象となる敵の数だけ弾数を消費する。 |
刹那、跳ね散っていた弾丸が一点に集束。
そこへ轟音と共に新たな一撃が加えられた。
結果として何が起こるか……
視界一面に広がる魔弾の壁―――今度は避けられない、避けるスペース自体が潰された。
どれだけ高い回避能力を誇ろうが、面で制圧されればどうしようもない。
「っあぁああああ!!」
| 《盾防御(物理)》*12 | 防御 | 格闘威力に等しい物理防御点、 「剣・ガンに強い」の防御相性を得る。 |
ここに来て温存していた切り札―――学生鞄に偽装したエアバッグ型の防弾盾を展開。
連続する衝撃が全身を叩くが風穴は空いていない、動きにも支障は無し。
(ここっ!!)
距離は詰め切った、相手も大技を使った直後。
千載一遇にして最後のチャンス―――盾を放り捨て眼前のタスラムへと引鉄を引いた。
・
・
・
―――それはふと過った記憶。数日前に友人たちと談笑した時の事。
「俺でも斬れない銃撃?
そりゃいくらでもあるって」
「アホほど火力が高いとこちが力負けするし、
技量が高い相手ならこっちの見切りを潜り抜けて当てて来るからな」
「後は攻撃した後の反撃とかも厳しいのがある。
死に体になってると流石にどうしようもねーわ」
「あー……でも、もっと単純な話もあったか」
「―――攻撃の直前に
歯ぁ食いしばって堪えるか、死んでから息吹き返すしかないな」
「常識で語りなさいよ剣バカ。
千束、たぶん真に受けなくていい……と言うか参考にならないからこれ」
・
・
・
「
発砲音は
1つは千束が撃った事によるもの。
狙いは過たずタスラムの胴体を穿つ。
そしてもう1つは―――。
「……あ」
| 《神業の早射ち》*13 | 割込/射撃攻撃 | 相手の攻撃に割り込んで射つ恐るべき神業。 相手が攻撃を宣言した時、判定に成功すれば命中する。 失敗すれば次のアクションまで回避・防御は不可能。 ガン相性。必中するものとする。 |
1センチ弱の銃創から赤い雫がとめどなく零れ落ちる。
あらゆる者に触れさせなかった少女を、高嶺に咲き誇る彼岸花を魔弾が撃ち抜いた確かな証。
「~~~~~~まだまだっ!!」
しかし致命傷ではない。筋肉を締め上げて出血を抑える。
重傷ではあれど逆を言えばその程度。
愚者ならともなく、超人である彼女の動きを止めるほどではない。
痛みでのたうち回るような真似も京都時代に卒業している。
そしてそれはタスラムにも言える事。
絶叫と共に奥歯に仕込んだ気付け薬をかみ砕く。
薬効成分が特殊弾による状態異常を中和―――ギリギリで意識を保つことに成功。
互いに手傷を負いながらも、戦いは振出しへと戻る。
(避けて撃つ!)
残り5メートル。
拳銃本来の有効射程距離。あらゆる小細工は意味を成さない。
回避であれば千束が、早射ち勝負であるのならタスラムが有利。
「ぐ……っ」
しかし、如何なタスラムであってもここまで重ねた無茶な銃撃のツケが足を引っ張る。
銃口を向ける手が遅い、まるで深海の底にいるかのような感覚。
これでは照準するのは千束の方が早い。
おそらくコンマ数秒の差で彼女の弾丸が勝負を決するだろう。
そう―――錦木千束の心臓が、人工物でさえなかったのなら。
ビキリと、千束は体内から響く音を聞いた。
同時に視界が狭まる。脳に酸素が回らない、血液が全身に行き渡らない。
これまで何度も経験した感覚―――人工心臓が限界を迎えた事を伝えていた。
(こんな、時に……っ!?)
戦闘が始まってから1分程度しか経過していない。
だがその1分は心臓が使い物にならなくなるほど高密度なものだったのだ。
気力を振り絞るものの、意識を保つので精一杯―――
「
そのチャンスを魔弾の射手が見逃すはずもない。
己に残された最後の切り札にして奥の手―――魔銃の開放へと踏み切った。
グチャリと異音が迸る。グリップに埋め込まれた奇妙な石、《マガタマ》が肉を食い破った音。
そして血を媒介に生命力、体力、気力、精神力、持ち主のあらゆるエネルギーを啜り出す。
やがて銃口に集束するのは、それら全てを練り合わせて精製された輝く光球。
動けない人間一人を吹き飛ばすには十分過ぎる火力があるのは誰が見ても明らかだ。
《シュミット》*15―――タスラムの世界においてとある悪魔合体師が考案した超技術。
マガタマを人体に埋め込まず、
かつての主が本懐を果たさんとする彼へと餞別代わりに授けた力である。
「これで、決着だ
―――レェェエエスト・イン・ピィィイイイス!!!! 」
| 《至高の魔弾》*16 | 万能物理 | 直線上の敵全員を対象とする。 LVと、力~運の能力値を最大で合計1000まで加味し、 装備している武器の攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 錦木千束に対してのみ、仕様変更(TRPG200X⇒IMAGINE) |
魂からの咆哮と共に放たれる至高の一撃。
万物を撃ち抜く、文字通り彼の全てを込めた渾身の魔弾。
これにて決着、いつかの世界から始まった物語は最先端の世界にて終焉を迎える。
この場にもう一輪の彼岸花が存在しなければ。
| 《カバー》*17 | 割込行動 | 集団スポーツで他者のカバーに入る臨機応変の能力を示す。 他人が失敗したときに、何らかのカバーとなる能力。 判定に成功時、他のPCの行動に割り込んで自分の行動を行える。 代わりにダメージを受けるのも可能。 この場合、回避は出来ないが防御は可能。 最近店に通う剣士からコツを教わった。 |
| 《盾防御》*18 | 防御 | 格闘威力に等しい物理防御点、盾の防御相性を得る。 |
気合いと根性、執念で
目を剥くタスラムを無視して、恐れる事なく魔弾を学生鞄で受け止める。
「あ、ぐうぅうあああああああああ!!!!!」
当然、そんなものでこの魔弾を防ぎ切れるはずもない。
盾ごと肉が千切れ骨は潰れ血が一瞬で蒸発する。
だがそれでも―――魂だけは決して折れない。
「千束ぉおおおおお!!!!」
食いしばったたきなは友の名を叫ぶ。
今の一発を防いだことで全身見るも無残な有様だ。
特に両腕はかろうじて原型を留めている程度。
これでは銃を撃つどころか殴る掛かる事さえ難しい。
だからこそ信じて託すのだ、最も信頼する相棒へと。
「……声おっきいぞ~、たーきな」
| 《特定絆アクション:絆の回復》*19 | 即時 | 絆レベル7以上を持つ対象がBSに陥り、 回復判定が可能であればPCは自分の手番を 消費してそのPCへ回復安定のチャンスを与える。 この際、+20%ボーナスを与える。 |
友からの声援を受け、意志に満ちた声と共に千束が立ち上がった。
顔色は真っ青を通り越して白。意識を保っている事すら奇跡的なレベル。
それでも銃を再び構える―――最後の一発を撃つために。
「…………そうか、そういう事だったか」
タスラムは動かない、否、動けない。
この一撃で文字通り全てのリソースを使い果たした。
今の彼には指一本動かす力も残されてはいない。
しかし、胸にあったのは悔しさよりも納得の感情だった。
きっと
であれば、かつての世界での戦いの結末も同様に違いないから―――。
「たとえ
とびっきりの苦笑をすると共に胸へと走る衝撃と痛み。
そのままタスラムの意識は深い闇の底へと沈んでいくのだった。
・
・
・
「千束! こんな拘束甘すぎます!! 最低でも手足の5、6本潰しておかないと!!!!」
「いやバイオレンス過ぎるから。ほらほらマジでやろうとしない!
落ち着きなよたきなー。両腕の傷開くよもう」
意識を取り戻すと空に浮かぶ満月が映ると同時に、少女の物騒な意見が耳に入る。
人間の手足は4本しかないのに、と思ったが口にはしない。火に油を注ぎかねないからだ。
なんとなしに軽く体を動かそうとするが、まるで力が入らなかった。
(……ワイヤーで拘束された上で、異能者用の筋弛緩剤を投与して地面に転がされてるか)
感覚から自身の状態を素早く把握する。おそらくさほど時間は経っていない。
だがそろそろ、他の強襲メンバーも集まって来るはずだ。
決着がついた以上、別に何かをする気も無いのだが相手からすれば知った事ではないだろう。
―――これからどうなるか。
一時的とはいえ反社会勢力に手を貸していたのだ。
それも脅されたとか仕方なく、ではなく己の意思で。
吐ける情報―――ほとんど無いが―――を吐かされた後はロクな扱いを受けまい。
とはいえ、正直な話。タスラムからすれば先の話など心底どうでも良かった。
彼女と決着をつける事が自分の全て。
そして終わった以上、己がどうなっても構わない。
仮に自分が勝っていれば、その場で頭を撃ち抜くつもりだったくらいなのだから。
「んあっ、起きたんだ。
思ったよりも早かったじゃん」
すると意識を取り戻した事に気付いたのか。
千束が駆け寄ってタスラムの顔を覗き込む。
顔色はだいぶ良くなっているようだった。
「……やあ、
「今のところ平気かな。
後でk先生に診て貰わなきゃだけど」
互いに先程まで殺し合っていたとは思えないほどの気軽に言葉を交わす。
後方でたきなが言葉にならない叫びを上げているが意識から外している。
「そっちの事情は全然分かんない。知らない事だらけだし。
でも、とりあえずは落ち着いた?」
「ああ……もうやり残した事は無いよ。
今ここで、死んでもいいくらいにね」
その本心からの言葉に千束が顔をしかめる。
せっかく誰も死なずに済んだのに、そんな事を言われると腹が立ったのだ。
「あのさー、私のこと知ってるなら“命大事に”ってのも知ってるでしょ。
こっちは敵も味方も誰だろうとそうそう死んでほしくないんだからさ。
そんな簡単に死ぬ死ぬ言うなよな~お前、頼むから」
「―――、……それは、お願いかな?」
愚痴るような言葉に対しふと漏れた質問。何故か無意識に飛び出した言葉。
それは確かに彼女の耳に届き、
「え? ……うん、まぁそうなるかなー」
いつかの約束を思い出す。
“負けた方が相手の言う事をなんでも聞く”。
この彼女は知らない、タスラムの知る彼女と交わしたもの。
なら態々守る必要などないが―――生憎とそんなつもりにもなれなかった。
「キミは、オレに死んでほしくないと」
「だからそうだって言ってるじゃん。
あとレスト・イン・ピースとか言うの止めてラブアンドピースに変えなよ。
そっちの方が絶対いいから」
「決め台詞なんだがな―――OK My Hero.
その要望に従おう。なにせオレは負けたからね」
どうやらまだ、死ぬ訳にはいかなくなったようだった。
これからどうなるか、自分に何が出来るか分からない。
しかし……命を粗末に扱う事だけは二度とすまい。
静かに笑うタスラムに、千束は疑問符を浮かべながら首をかしげるのだった。
◎登場人物紹介
・タスラム <ガンスリンガー> Lv50
シリーズポジション:長谷部(TRPG版真Ⅲリプレイ『再会』)
過去周回から流れ着いた漂流者。分類上は独立型。
元メシアンだったがガイア教団へと鞍替えした過去を持つ。
生まれながらにして感情の欠落した男だったが、錦木千束との出会いと戦いが彼を人間へと変えた。
それ以降は彼女に執着し、決着をつける事を望んで敵対と共闘を繰り返す。
最終的に決着をつける前に創世の失敗、あるいは何者かの干渉による影響でこの世界へと飛ばされてしまった。
千束との戦いの後、色々と尋問されたが動機とか諸々を聞いてドン引きされてしまった。
レベルはともかく、ガンスリンガーとしては人類最高峰。
魔法も特殊なスキルも無く、人間の成せる技を異能の領域で行使する。(割と例外は存在するが)
実は千束との戦いでは耐性防具の類を一切付けていなかった。
これは手加減などではなく、情報量で差があるから条件をなるべく公平にしたかった故。
フェアプレイ精神、あるいは騎士道精神とも。
・錦木千束&井ノ上たきな
知らない過去と因縁が追い付いて来た。
厄介なストーカーだったがとりあえず解決? したのだろうか。
・八瀬宗吾&若槻美野里
画面外で大活躍。
リコリコ2人組に意外と影響を与えているのかもしれない。
・tips 氷川について
200Xリプレイ「退魔生徒会シリーズ」においてJK(PCの1人)に貢いだ果てに
プロポーズまでしている。
つまりは公式です(
望んだ静寂の世界も要約すると「君と2人きりの世界で過ごす!」
一人の少女に執着するという点ではタスラムと同じだったかもしれない。
―――――――――
次回は久々に掲示板回にチャレンジ予定です。