真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
続きもなるべく早く書きます。
「うわわ、また血が出た!?
先生これって本当に大丈夫!!?」
「さっきからペースが速くなってませんかこれ!!」
「落ち着いてください。一見すれば派手ですが傷自体は深くありません。
この程度なら回復魔法と輸血で十分対処可能です。
2人は予備の輸血パックを準備しておいてください」
都内某所に存在する異能者御用達しの診療所。
そこの主、魔界医師ファウストは背後で慌てる少女2人を宥めながら的確に確断を下す。
身に纏う白衣はすでに夥しい量の血で染まっていた。
それは治療によるものでも、ましてや戦闘によるものでもない。
目の前で横たわる患者の身体が、
今の所大きな傷は無いものの、塵も積もれば山となるという言葉もある。
止血と並行して輸血も行わなければ、流石の超人と言えども死に至るのは避けられない。
明らかな異常事態だ。本来であれば遠距離から呪詛を受けているのかと疑うもの。
だが違う。この意識不明の患者―――八瀬宗吾を襲っている現象はそのような物ではない。
確かに最初は《草人呪詛》*1などの遠隔呪殺攻撃を考えた。
しかし、呪殺対策のアクセサリーを付けても効果がない。
《テトラジャ》などの結界を試しても効果は同じだった。
そもそもの話、自分の目を以てしても何一つとして前兆が見られない。
――――であれば答えは1つ。
正確に言えば
常識的に―――業界の中ではと付くが―――考えればあり得ない事である。
夢魔などの悪魔に取りつかれた場合などでもそうだが、基本的に精神ダメージは肉体に直接的な影響を及ぼさない。
廃人化する、肉体が悪魔へと変質する、などといった現象は副次的なものに過ぎないのだ。
だが今、目の前でそのあり得ないはずの例外現象が起きている。
運び込まれた直後の
そこから推測に推測を重ね、無理矢理にでも仮説を立てるとするならば。
「極端なプラシーボ効果―――
肉体と精神のリンクが常人より密接かつ複雑であるが故、実際に傷を負ってしまっている。
……我ながら随分と寝ぼけた事を言うものです」
剣士に限らず、極まった武人という人種は己の無意識さえ意識下に置くという。
そうする事であらゆる隙を無くす、あるいは隠せる云々。
矛盾を孕んだ言葉、心理学という学問に真正面から唾を吐く理論。
少なくとも学者肌であるファウストには欠片も理解出来ない概念だ。
確かに思い込みだけで火傷を負った例は現実として存在するが、幾らなんでも限度がある。
しかし、そうとでも考えなければ説明がつかないのもまた事実で、同時に今の状況では対処療法しか出来ない事も分かってしまう。
何故なら己の中の悪魔と戦っているだろう
あくまで優れた魔界医師でしかない自分では手助けする術を持たないから。
心の中での戦いは、彼の手が届く領域ではないのだ。
正直な話、単に悪魔に憑依されていた方が対処法がある分何十倍もマシだっただろう。
無論、だからと言って手をこまねく気もない。
まず思いついたのはとある“魔剣”を持つ封剣士の少女を呼ぶこと。
その力を以ってすれば精神への介入は余裕で可能だっただろう。
幸い、宗吾とも面識はあるらしく協力が付けやすい相手であったのだが―――どうやら別件があったようで連絡がつかなかった。
仮に今すぐ話が通ったとして、向こうが間に合うかどうかも不明だ。
ならば次善手、不確定な切り札に頼るよりも今ある手札で勝負するしかない。
「――――美野里さん、貴女は大丈夫ですか?」
「めっちゃ体の中熱いし頭痛と吐き気もするけどまだいける……!!」
目の前にいるもう一人の人間。
宗吾の頭を抱えるようにして目を閉じる
自分と同じく全身を宗吾の血で汚しながら、しかし彼女は気に留めた様子も無い。
正確に言えばそんな余裕が存在しないと言った方が正しいだろうか。
その端正な顔に玉のような汗が幾つも浮かんでは流れ落ちるのを繰り返している。
誰がどう見ても、大丈夫などとは口にできる状態ではなかった。
「……先生、追加で、もう一本アンプル頂戴。
“繋がる”には、まだ……出力足りてないの」
「“ブースター”*2はこれで4本目です。
如何に超人といえどもこれ以上の服薬はお勧めできません。
何らかの後遺症、あるいは“シャーマニック・ハイ”*3に陥る可能性も―――」
「そんなの……出てから、考えればいいわよ!」
ファウストの警告に対し、歯を食いしばりながら美野里は途中でぶった切る。
なるほど、確かにその意見は正しい。
《サイコ・ダイブ》の精度を上げる為とはいえ、既に劇薬を4本も飲み込んだのだ。
現時点で既に
その証拠と言わんばかりに尋常ではないほどの発熱と頭痛が自分を襲っている。
これ以上の服用は自殺行為で、だが、それでも――――。
「
分かるのよ、勘とかじゃなくて、もっと深い所で。
それに、ここでイモ引いたら―――絶対自分を許せない!! 」
閉じていた両瞼が開かれる。
そこにあったのは強い覚悟に燃える女の瞳だった。
ファウストだけではなく、輸血パックを抱えて戻ってきた友人2人も思わず言葉を呑む。
「だから、お願い……やらせて……っ!!」
少女の願いに、魔界医師は小さくため息をつく。
―――止められない。そう悟ってしまった。
こういう目をした人間を止める言葉は存在しないと経験で知っていた。
「―――――千束さん、たきなさん。
申し訳ありませんが彼女が暴走した場合は対処をお願いします。
私だけでは正直自信がありませんので」
出来るとすれば相手の決断を支える事くらいだ。
万が一に備え、戦闘力の高い少女たちに声を掛けながら5本目のアンプルを懐から取り出す。
これはもう、あとで特別料金を請求せねばならないだろう。
「あーもう! 美野里、これ以上の無茶は絶対ダメだかんね!!」
「暴れたら速攻で新技ぶち込みますから覚悟しててください!」
赤と青、2輪の彼岸花はそれぞれの銃へ特殊弾の入った弾倉を装填する。
異常があればすぐさま撃ち抜く覚悟だ。
出来ればそうなってほしくない事を祈りながら、銃口を静かに向けた。
「……ありがと」
ほんの少し微笑を浮かべながら返事をして、
「――――――!!!!」
劇薬を勢いよく飲み込み――――美野里の意識は暗転した。
・
・
・
世界各地の伝承にあるように、悪魔と呼ばれる存在の大半は人間に化ける事が可能だ。
いたずら好きの妖精として知られる“ジャック・フロスト”や“ジャック・ランタン”でさえ、その気になれば小さな子供の姿を取る事が出来る。*4
だが、常日頃から人間の姿を取り続ける悪魔というのは実のところそれほど多くない。
単純に変身しなくても人間と然程変わらない容姿の悪魔。
変身しようとする知性や意識そのものが存在しない悪魔。
己の姿に誇りを持つ故に、人の姿を取ろうとしない悪魔。
例を挙げるなら他に幾らでも出て来るだろう。
人間と同等、あるいはそれ以上に千差万別の存在なのだから当然と言えるかもしれない。
それでも、彼らには根本的な所で共通する理由が一つ存在する。
力を重視する悪魔にとって最大の
―――――――つまり。
「ヅッ―――!」
| 《ガード》*7 | 防御態勢を取って敵から受けるダメージを半減する。 クリティカル、状態異常を防ぐ。 |
雑に振るわれた、しかし軌跡を追うのがやっとの一撃を受け止めた。
ガードに用いた両腕から発する嫌な音が骨を伝わって耳へと届く。
脳へと走る肉を齧られたような激痛の信号から状態を逆算――――ギリギリで折れていない。
おそらく数センチでも受けた位置がズレてたら、両腕が肩から捥げていただろう。
本来の力を引き出せない、人間形態の一撃でこれほどの威力があるという証明。
その馬鹿げた事実に、これまで出会ってきた
(だから)
本当にこれで弱体化しているのか疑わしくなるほどの戦闘力だった。
こちらが意に先んじて行動するよりも速く動くという出鱈目である。
まともに攻撃を受ければどうなるか、想像しなくとも結果は明白だ。
(どうしたって話だ―――ッ!!)
―――かと言って、この剣鬼に“諦め”や“降参”の文字が存在するはずもない。
受け止めた運動エネルギーを利用し、回転ドアのように円運動を開始。
踏み込みと共に遠心力を加えながら敵の背後、死角の中へと回り込む。
狙うは無防備に晒されている後頭部、そこへ渾身の反撃を叩き込んだ。
『―――痒いな、鱗が一枚剥がれたくらいだ』
常人なら、並みの悪魔なら一撃死する手刀を受けてなお。
自信が言う通り、本当にその程度の痒痛しか感じていないのだろう。
逆に攻撃した宗吾の手から皮膚が破け血がにじみ出しているくらいだ。
「……何喰ったらそうなるんだよお前」
『人肉っつったら納得するか?』
ため息交じりの呆れ声と堪えるような笑い声が交差した。
戦闘開始以降、殺し合っていた両者が初めての会話を交わす。
『分かったろ、これが
生き物いや、存在としての次元がそもそもとして違う。
なのに………………まだやるのか?』
「当たり前の事言ってんじゃねぇよ。
そりゃ神話の怪物なら次元からして違うのは当然だ。
―――でも関係ない。生きてるなら死ぬし斬り殺せる」
挑発するかのように告げた言葉に、一秒どころか刹那も迷わず宗吾は即答した。
人間と悪魔の差など百も承知。この世界に来る前から嫌というほど知っている。
しかし、それが一般的に恐怖で脅威であり誰もが諦めを抱く理由になるとして。
「死なないなら死ぬまで斬る。
殺せないなら殺せるまで斬る。
剣術だけで無理なら策練って術を使って数を揃えて斬る。
どーしても無理なら逃げて鍛えて準備を整えてから斬る。
何処まで行っても、どんな世界でもそれだけの話だろ」
少なくとも、八瀬宗吾という人間が止まる理由にはなり得なかった。
それはこれまでの人生が、彼が歩んできた道程が証明している。
そもそも、そうでなければ生きてはいないしこの場所に立ってもいない。
『ハ、ハハハハ!! そうかそうだよ流石だ兄弟!!!!
剣に生きる鬼!! 求道者!! 修羅道を征く者!!!! 』
首へ手刀が食い込んだまま、とうとうヤマタノオロチは絶笑した。
夜闇を裂くような人間に非ざる、人間には出せない大声量。
なんだ、という疑問符さえもが口から出てこない。
笑い声に込められた超重量が、言葉を紡がせない。
『お前の祖で良かった! お前の影で良かった! お前とこの世界に来れて良かった!!
言っちゃなんだが、元の世界じゃ俺と繋がる霊格を得られなかっただろう!!
こうして相対する事もなくその生を終わらせていただろう!!』
それは歓喜に満ちていた。
祝福があり呪怨があり、瞋恚があり悲嘆があり、狂気の中に敬意があり。
あるいは愛にも似ていた。
煩いと思う間もなく、ヤマタノオロチの腕が動きだす。
これまで一度も使わなかった腕が。
宗吾の愛剣を、鬼神楽を持つ腕が。
『だけどこうも思うんだ―――
| 《ATTACK》*8 | 剣相性の通常攻撃。 |
6つの閃光が疾った。
宗吾にはそうとしか知覚できなかった。
遅れて痛覚が全身を刻まれた事と、左腕が斬り飛ばされた事を伝えて来る。
同時に全身へと広がる衝撃と崩れた体幹バランス―――その場に両膝をつく。
「――――、――――っ」
『流石に《八艘飛び》とはいかんがな。
その気になればこのくらいはいける。
聞いていただろう、あの女剣士から』
ヤマタノオロチが大きく血振るいをする。
技量も何もない、腕の力だけで振った雑な動作。
それだけで刀身には血の1滴さえ付いてはいない。
宗吾が習得の為に頭を悩ませていた連撃という概念。
それを技でもないただの攻撃で成してしまうのが悪魔という理不尽。
わざわざ剣を使ったのは、その事実を身をもって叩き込むためか。
両膝をつき、腰の沈んだ状態で、人間という生き物は機敏に動けない。
宗吾を殺すなら今がまさに絶好の機会で、しかしヤマタノオロチはそうしなかった。
先程と同じように。親し気に話の続きを再開する。
『なあ兄弟、道を極めるってのは至難だ。
余計な物をそぎ落としてナンボってのは決して間違った意見ではないだろう。
それを踏まえた上で聞くが――――
嬢ちゃん――――誰を示しているかなど問うまでもなかった。
宗吾は答えない、ただひたすらに荒い呼吸を繰り返している。
ヤマタノオロチも返答を待たずに思いの丈を吐き出し続ける。
『確かに放っておいたら無茶をするタイプだ。
目的の為なら平気で死地へ飛び込むタイプだろうよ。
だが……わざわざ心配して力になる必要はあるまい。偶然共闘した、1度助けられた程度で』
―――それが、それこそが。八瀬宗吾が若槻美野里と共にいる理由だった。
一見すれば冷静のようでいて、その実暴走特急のような少女。
必要とあらば無理無茶無謀は当たり前。短い付き合いですぐにその在り方を理解した。
なにせ、問題のある人間は自分含めて相当見慣れていたから。
そして、見捨ててハイさようなら―――そんな選択肢は浮かびさえしなかった。
それこそが欠点なのだと。その甘さが不要なのだと。
剣に生きる者、強さを求める求道者、修羅道の住人として不純だと。
彼の中の悪魔は言外にそう告げていた。
『だからなあ兄弟、一つ提案があるんだ。
―――俺と
人間を超えて、誰よりも強く……どこまでも剣を極められるぜ』
それはまさしく悪魔の誘いだった。
人を辞めれば更なる強さを、これだけの力を得られると。
余計な物を捨て、真の意味で剣に生きる存在になれと。
『人間を超えた力、耐久性、寿命……得られる物は多いだろう。
脆い器を捨てて限界のその先へ行こうじゃないか、なぁ。
これから先の戦いを考えるなら悪い話でもないだろ』
どこまでも真摯な、もう一人の自分の言葉に対し、
「―――――ハ」
宗吾は侮蔑の混じった笑いで返した。
まるで話にならない、分かっていない。お前は一体何を見て来たのか。
言葉にせずとも、まるでそう告げているかのようだった。
『ハァ…………残念だ。
ならば―――――』
明らかな拒絶の意志を前にして。
ヤマタノオロチは再び剣を振りかぶる。
狙うは眼前の死に体にして半身。
『ここでお前を喰らい、俺が表に出るまでだ!!』
再び閃光が疾った。狙い所は頭部。
スイカ割りのように打ち下ろし、胴体ごと真っ二つにせんとする重斬撃。
今度こそ死ぬ、とてもではないが人に耐えられるようなものではない。
――――――当たればの話だが。
| 《無刀取り》*9 | 素手で相手の刀剣を奪い取る柳生新陰流奥義。 大成功時、相手の刀剣をそのまま叩き折ることが出来る。 判定に成功時、相手の武器を奪い、失敗すれば離す。 どちらにしても敵の刀剣による攻撃を止める。 |
| 《集中》*10 | 手番を放棄し、指定した次に行う行動の成功率を上昇させる。 |
左足を踏み込み、体重を前方に飛ばし、残された右手を伸ばす。
両膝をついた時点で、宗吾は次の手の準備をしていたのだ。
これまでに得た情報から、自分の全てを把握している訳でないのは分かっていた。
だから知らなかったのだろう、日本剣術には着座状態からの技術体系がある事を。*11
だから気付けなかったのだろう、確実に剣を奪い取る為、鬼神楽による攻撃を誘っていた事を。
如何に目で追えず、意に先んずるのが不可能な速度でも。
来ると分かっている、ド素人の斬撃であるならば。
例え隻腕だろうと十分この奥義は通用する。
二つの影がすれ違う。
果たして――――立ち上がった時、宗吾の手には愛剣が握られていた。
「―――“雲耀”」
振り向きざまに。音さえ断ち切り、置き去りにする斬撃が放たれる。
当然ながら素手とは比べ物にならない、どころか。
どういう理屈か
『フハッ―――!』
これまでとは逆に、ヤマタノオロチの方が派手に吹き飛ばされた。
・
・
・
「俺が求道者として見りゃ不純ってのは否定しねぇよ。
本格的な連中からしたら、実際無駄だらけだろうしな」
吹き飛んだ先、土埃に隠れる半身に視線を送りながら肯定の言葉を送る。
ヤマタノオロチの言葉は決して的外れなものではない。
剣に生き、剣の道を極めんとするならば他は一切不要で捨て去るべき。
余計余分なものを削ぎ落し、ただひたすらに刃を研ぎ澄ませる。
鋭く、ただひたすらに鋭く。万物を断ち切る域にまで。
それこそが純粋な剣者としてのあるべき姿、目指すべき場所。
その為ならば極端な話、人間を捨てる選択を取る者も確かに存在する。
例えば、相方の少女の買い物に荷物持ちとして何時間も付き合う。
例えば、
例えば、行きつけの喫茶店で店主や店員と談笑しながらコーヒーを楽しむ。
――――全て無駄であり、そんな事に時間を使う暇があれば剣を振る時間に当てるべきだ。
求道者にあらず、と言われればまさしくその通り。
否定はしない、出来ない、決して間違った事ではないから。
「でもな、
いるかそんなモン。俺の趣味じゃない」
意見を踏まえた上で―――そんな
趣味ではないという極めて個人的な、故に絶対的な理由で。
「ただ1人で鍛え続けて、鋭く薄くなるだけの孤独の剣。
―――“孤絶剣”に先は無いんだよ。
強くはあっても
仮に100年間誰もいない空間で修行を続けた者がいたとして。
単純な技のぶつけ合いなら確かにその者の方が上回るかもしれない。
では搦手に対してどうするのか? 籠っている100年の間に生まれた新技術への対処法は?
―――絶無である。手札など1枚たりとて持つはずがない。
特定の環境に慣れた者は違う状況に放り込まれれば容易く死ぬ。
自分の知識が世界の全てでしかないから、未知への対応に固まって死ぬ。
天才と呼ばれる存在であろうとも、例外は早々存在しない。
もちろんこれは極端な例えであるが、そう外したものでもないだろう。
八瀬宗吾という剣士にとって、他者との
元来武術とはナニカを打倒する為の物。自分以外の存在が居て初めて成立する物。
繋がりを断って得られるものなど、結局のところ自己満足が精々だ。
誰かと共に生き、寄り添い戦い学んで、血肉に変えながら進み続けるのが人間なのだから。
「自分とは違う誰かが居るから人は成長できる。
1人で生きられる奴がいないように、1人で極められる道がある筈もねぇ。
それと、そもそも―――――」
一拍おいて。
「人間として生まれて人間として剣を磨き続けて来た奴が。
人辞めた程度で
そんなに浅くねーんだよ剣ってもんは舐めてんのか!!!!」
特大の怒気が辺り一帯へと轟いた。
普段の彼とは異なる、静寂の如きものとは真逆の破壊的なエネルギーに満ちた気当たり。
それだけ宗吾は怒っていた。
自分の半身、悪魔としての側面を謳いながら根本を理解していない事に。
何より、剣術をいう概念を安く見られた事に。
悪魔―――それも怪物に類する―――である故かもしれないが、それとこれは別。
絶対に斬り殺す……彼は
声と共に、薄れていく土煙から巨大な影が姿を現す。
今までの
宗吾が10人いても届くかどうかといった大きさの、8つの頭と尾を持つ怪物の姿。
国津神《ヤマタノオロチ》―――
先程までとは何もかもが違う威圧感。
怒りとは反対に冷静さを保ち続けている脳が迅速に答えを弾き出す。
(
足りない、自分だけでは届かない。
どう考えても途中で押し切られる。
人と悪魔、覆せない
加えてこちらは隻腕かつそれなりに負傷している。
怒りや根性、気合だけでどうにかなるものではない。
誰がどう見ても詰みと答える盤面。
―――――宗吾が1人だけで戦うのであれば。
「ならここで真打登場といこう。
前座は大人しく舞台袖で休んでいろ」
後ろから声がして通り過ぎた。
「自分なぁ、いくらなんでもやり過ぎや。
心臓まで潰されたら流石に自己蘇生もギリギリやったで」
後ろから声がして通り過ぎた。
「女の子の為ならともかく野郎しかいないとか。
まーでも、最期くらいは良いでしょこういうの」
後ろから声がして通り過ぎた。
3人の人影が、宗吾の良く知る後姿がヤマタノオロチへと向かっていく。
分かり切っていた、接敵したその瞬間から。言葉など無くとも伝わるものがある。
間違いなく最初から
今までずっと、死んだふりをして機を伺っていたのは気付いていた。
必要な時が来たから、こうして出て来たのだ。
だから、掛ける言葉は1つだけ。それ以外は侮辱でしかない。
「……
| 《神威・退魔生徒会出動!》*13 | このスキルは何の効果も存在しない。 ただ、彼らが不動の絆で結ばれている事を証明する。 無価値でも無意味でも無駄でもないもの。 |
本物も偽りも関係ない。
どちらだとしても取るだろう選択に違いはない。
ただ友の為に―――漢たちは駆け出した。