真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
ヤマタノオロチにとってその3人は場を温める為の前座であった。
宗吾の記憶に存在する
そこを心象風景として再現する際についでに出来た
おそらく、この異界攻略へ参加した面子であったから強く紐付けられていたのだろう。
変わっていた点は互いに知り尽くした関係であるが故か、その人格が本物同然であった事。
即座に反逆を仕掛けられたが、あえて殺さずに行動を縛った上で宗吾へと仕向けた。
その方が盛り上がるし、使えるならなら使おう―――その程度の考えで。
結果としては予想通り瞬殺された訳で、これまで意識から外していたのだが―――。
『こいつはどういった理屈だ?
何故俺に歯向かえる。一度死んだ程度でどうなるものでも……』
今目の前で有り得ざることが起きている。
何らかの方法で蘇生したのはともかく、こちらの支配を完全に断ち切るなど。
創造物の反逆など手垢の付き過ぎたジャンルだが、幾らなんでも理屈が通らない。
改めて16の瞳が自分に向かって疾走する弱者を捉えた。
そう、彼らは弱者だ。覆しようのない事実としてそこにある。
例え鋼の如き決意と意志を持とうとも、厳然たる
ヤマタノオロチのレベルは90代後半。
対する3人は平均して30代前半。
約3倍の差―――ここまで来ると戦術や装備、スキルで何とかなる次元ではない。
鎧袖一触、誰がどう考えても一瞬一撃で終わる。
ヤマタノオロチの間合いに入るまであと数秒―――それが彼らの稼いだ成果。
「―――んな風に舐めてるから駄目なんだよ」
| 《ケミストリーⅢ》*1 | このターン、使用者は「種別:支援魔法」の消費型アイテムを 同時に【ランク+1】個まで使用できる。 |
間合いへ突入する直前、
あらゆる攻撃をあらぬ方向へ誘導し無効化する
攻撃力を下げる薬品の含まれた弱体化スプレーが1つ。
「これで最低でも
その早業を成したのは山本総次郎。かつての退魔生徒会唯一の後輩。
直接的な攻撃は不得手であるが、サポートの腕で右に出る者はいない男。
先程の戦いにおいて、宗吾が彼を最優先で仕留めたのはこの技量を知っていたからだった。
過去に仲間たちのピンチを幾度も救ったその力を、ヤマタノオロチは知るはずもなかった。
『やってくれる』
意識が向く、厄介な真似をしてくれた男へと。
どれも同じ程度の雑魚でしかなかった認識から、優先的に潰す者を選択する。
全ての瞳が行動を終えて動けない総次郎を捉えて――――。
「モテるのぉ総次郎! 熱い視線向けられるとるで!!」
「眼中無しというなら無理矢理向かせてやろう」
その瞬間を、意識が逸れるのを待っていたと言わんばかりに。
残る2人は
半呼吸以下の僅かな隙に、その巨体の下へと潜り込んだ。
| 《牙折り》*4 | 敵単体に小威力の物理属性攻撃。 3ターンの間、対象の攻撃力を1段階低下させる。 |
| 《連続技》*5 | 補助スキル | このターン、2アクション分の格闘攻撃が可能となる |
繰り出されるのは弱体化の念が込められた2発の拳と剣による一閃。
完全に意表を突かれた形となったヤマタノオロチに回避など不可能。
その攻撃の毒に抵抗出来るはずもなく、全身から力が抜け落ちた。
『む……っ!』
第128代加茂玉帝学院退魔生徒会。
彼らは
宗吾と違ってレベルはそのままで、足切りラインにさえ届かぬ弱者である。
だか―――舐めてかかればタダでは済まない“修羅”なのも事実だ。
確かにヤマタノオロチを倒すというのは不可能だろう。
しかし、時間稼ぎという条件で考えれば可能性は十分に存在する。
『……なるほど、考えてみれば兄弟のダチだった。
これは舐めてかかった俺の怠慢だな。
―――詫びに全力で潰そう』
それは己の失態を、この3人を弱者であれど敵と認めた証。
そして遊びも油断も消え失せた蹂躙の始まる合図。
| 《即時デクンダ》*6 | BOSS側に掛けられた低下系スキルが解除される。 即時効果の消費型スキルとして扱われる。 BOSSは相手の強さを認め奮起する/逆境を克服する。 |
| 《ティタノマキア》*7 | 敵全体に中威力の物理属性攻撃。クリティカル率が高い |
弱体化の解除、そして振るわれる万物粉砕の一撃。
事前に放っていたバルーンがその役目を全うし、3人全員無傷で切り抜ける。
だがこれは邪魔なものを退けるための、いわば掃除が目的の攻撃だ。
―――であれば次が本命。
「下がれ塔也―――!!」
| 《アイスバウンド》*8 | 敵全体に氷結相性ダメージ。 低確率でFREEZE(凍結)状態となる。 |
| 《氷結ハイブースタ》*9 | 氷結属性攻撃の攻撃力が50%上昇する。 |
続けて絶対零度の大蹂躙が降りかかる。
氷結相性である事を見切った新がすぐ隣の塔也を庇う事で再び凌ぐ。
――――しかし。
「――――ッ」
1人、耐性を持たず捌く術も持たない総次郎には直撃した。
歯を食いしばり死ぬ事だけは免れたが、代償と言わんばかりに全身が凍り付く。
更に言えば、ヤマタノオロチはまだ1回動きを残した状態だ。
(動けない、回避もおそらく無理。
僕はここで
攻撃の予備動作に入る多頭龍を前に、総次郎は自分が詰んだ事を理解する。
幸いと言うべきか、狙いはおそらく自分のみ。
確実に殺す為、念を入れて来たのだろう。
―――なら仕事は果たした。後は任せよう。
「くたばれクソヘビ……っ!」
凍り付いた口を無理矢理動かして。
かろうじて動いた左手で
それが彼の最期の言葉となる。
ガシャンと、ガラスの割れるような音が響いた。
正確に言えば出来たばかりの氷像がヤマタノオロチに砕かれた音。
今度こそ蘇生する事は不可能な、絶対的な死。
「残り
「死んでも倒れん!!!!」
| 《咆哮》*10 | 3ターンの間、敵から狙われやすくなり、自身の防御力を1段階上昇させる |
残された漢たちは奮起し、すぐさま次の行動へと移る。
再び牙を折る剣が炸裂し、怒りの咆哮が
先程と同じ弱体化攻撃に攻撃誘導と防御強化。
この行動の意図するものはただ1つ。
『1人ずつ削りながらの時間稼ぎか……!』
それは文字通り後先考えない、死兵だからこその選択。
生きる事を端から度外視にすれば、遥か格上の相手でも時間稼ぎは成立する。
例え認知存在とはいえ、それを平然と意思疎通もせず行えるのがそういないだけで。
『いいだろう、なら正面から潰してやるさ』
その挑発にヤマタノオロチは敢えて乗る。
やろうと思えば抜け穴など幾らでもあるが使わない。
1撃目―――新の左腕が吹き飛んだ。
2撃目―――新の右腕がひしゃげる。
3撃目―――新の脇腹が噛み抉れた。
4撃目―――新の全身が叩き潰され。
| 《男気》*11 | DEAD状態でも使用可能。使用者のBSを解除する。 HPが0以下の場合は1で復活する。 気合いと意地による自己蘇生。 |
―――
見るも無残な姿になろうとその目は死んでいない。
そんなものかと不敵な笑みさえ浮かべていた。
時代遅れの番長にして魔導を修めた不死身の男、風祭新。
宗吾に殺された後で息を吹き返し、仲間全員の蘇生を行ったのは彼だ。
常人なら確実に死ぬ負傷でも、この
『ならこうしよう』
| 《カタストロフ》*12 | 敵単体に特大威力の物理属性攻撃 |
不敵な笑みを浮かべた顔ごと、頭が消し飛んだ。
食いしばりなど出来るはずもなく、残された体は糸の切れた人形の如く崩れ落ちる。
とどめの追撃を終え、ヤマタノオロチは最後の1人へと問いかけた。
『お前は俺に何を魅せてくれる?』
刀を担ぐように構えながら塔也は答える。
「別に構わんが―――代金は貰っていくぞ」
| 《メガストライク》*13 | 剣技相性と裁定。 敵1体の急所一点を貫く剣技最強攻撃(if) 対象とその周囲の敵に対して近接攻撃力に、 魔法効果量の50%を上乗せした物理ダメージを与える(IMAGINE) 藤原塔也が得意とする、雲耀に並ぶ秘剣。 |
直後、激情の込められた斬撃が
『ぐおおおお――――!!?』
ここに来て初めて、七頭龍と化した怪物の苦悶の声が漏れる。
それはレベル差から考えればあり得ない攻撃だった。
この短時間で何度も見させられたが、これはその中でも極めつけである。
まるで、
「何を驚いている。
宗吾なら躱すか防ぐかして反撃していたぞ」
アルカニストにしてオールラウンダーの指揮官、藤原塔也。
ペルソナとして大天使《ラグエル》を使役する美丈夫。
だがその外見と肩書に反して、本質的な部分は宗吾と負けず劣らずの剣士に他ならない。
状況も都合も無視して強者に腕試しを挑む分、更に性質が悪いとも言えた。
在学中、宗吾と模擬戦という名の斬り合いを行った回数は数知れず。
―――もしどちらか片方がいなければ、互いに秘剣の体得には至らなかっただろう。
「これで30秒……」
剣を振り切った姿勢のまま塔也は動かない。
迫る攻撃の気配を前にして微動たりともしない。
否、正確に言えば動けないと言った方が正しいだろう。
遥か格上の怪物の首を斬り落とした太刀筋は、間違いなく生涯最高のもの。
故にその代償と言うべきか、体がまるで鉛のように重く感じていた。
これでは回避も防御もままならない。
『実に“美事”だったぞ退魔生徒会。
今の世界に流れ着かなかったのが心底残念に思う』
だからこの流れは必然である。
賛辞と敬意の込められた尾撃が直撃する。
全身の骨が砕けながらも歯を食いしばる。
次で終わる、約束した時間は稼ぎ切った。
そう己に言い聞かせつつ目線は外さない。
そして終わりを告げる連撃が塔也の視界一杯に広がって。
「あいつを―――
ドン、と強い衝撃が襲い掛かった。
ヤマタノオロチの攻撃ではない。
| 《トラップ・カード》*14 | 攻撃スキル、支援魔法の1つを指定する。 ⇒《ネクロマ》を指定。 任意のキャラクターの手番開始時、または終了時に 1度だけ指定したスキルを発動させることが出来る。 コストとして悪魔カードを使用。 |
| 《ネクロマ》*15 | DEAD状態の仲間を戦闘に参加させる。 |
それは事前に仕込んでいた保険。
通常、ここまで肉体が損壊していれば高位の覚醒者だろうと蘇生は難しい。
だがこれは蘇生ではなく死体の操作。原型をある程度留めているなら動く程度は出来る。
塔也が言った通り、ヤマタノオロチは彼を肉片になるまで潰すべきだったのだ。
そこまでされていれば流石に《ネクロマ》も意味を成さなかっただろう。
しかしそんな仮定はもう意味が無い。あるのは目の前の現実だけ。
―――見たかいヘビ野郎。
喋る口も無いのにそんな言葉が聞こえた気がした。
実際届いたのはグチャリという異音。
生者を庇った代わりに再び物言わぬ死体へと逆戻りした証明。
「
つまりこの瞬間、
続けて挑発するかのように塔也が再び剣を振りかぶる。
全身から夥しい血を流す姿は誰がどう見ても限界を迎えていた。
まさに虫の息同然。
剣を構えて立っている事すら奇跡に等しいと言える。
このような有様で技が使えるはずもなく、悪あがきにすらならないだろう。
「―――知った事かよそんなもの」
決意を滾らせ
| 《絆スキル:回復》*16 | 自分か絆を結んだ対象のHPかMPを 【絆レベル×10点】回復する。 八瀬宗吾との絆レベルは【10】である⇒HP100点回復。 |
| 《忽の剣》*17 | 剣相性。副効果発生時、スタン・チェックを行う。 |
| 《煌天の会心》*18 | 格闘攻撃を確定でクリティカルとする。 |
魂の底から力を無理矢理引き出して、ボロ屑の器に火をくべる。
片道切符、行きだけの燃料。使い果たせば本当に終わるのを理解して。
ほんの刹那、力を取り戻した体が閃光の如く疾走り、怪物へ文字通り
巨体に撃ち込まれた刃、そこから波紋のように衝撃が浸透し―――。
歯車がズレたかのように、ヤマタノオロチの動きが目に見えて鈍くなった。
「見ていたぞ……お前に
宗吾が剣を奪い返した際、反撃として叩き込んだ雲耀。
あの時、確かにヤマタノオロチが動けなくなっていたのを遠目から確認している。
だからこの時、ギリギリまで使うタイミングを計っていた。
急所に捻じ込めば確実に1手稼げると踏んでいたから。
果たして―――その狙いは達成された。
「これで
『―――お前たちだからこそ、と付けるのを忘れるなよ』
短い硬直が終わる。
持てる全てを出し切った勇者たちを称賛しつつ、7つの首が同時に襲い掛かった。
防御不能、回避など出来るはずもなく、噛み千切られ、潰され、抉られて―――。
「……ちゃんと勝てよ」
最後に
| 《集中》*19 | 手番を放棄し、指定した次に行う行動の成功率を上昇させる。 |
| 《 | 他人が失敗したときに、何らかのカバーとなる能力。 判定に成功すれば他のPCの行動に割り込んで、 《慈愛の反撃》と同系統の技能として裁定する |
| 兜割り*21 | 神速の剣気を命中の瞬間に集束し、固い防具も両断してしまう必殺剣。 防御不能、防具は一切無効となる(防具による耐性も無効と裁定)。 |
攻撃を終えた直後、獲物を殺した瞬間。
その拍子を狙い、絶殺の意志を宿した剣鬼が斬り込んだ。
・
・
・
強固な鱗を幾つも断ち切った感触が伝わって来る。
間違いなく痛打を与えた事を確信しながら、宗吾は勢いを殺さずに駆け抜けた。
残心を疎かにすれば死あるのみ。格上であるならばなおさらに。
「―――――」
十分な距離を取ってから向き直る。
目に映るのは頭が1つ失われれ、兜割りで大きく一閃されたヤマタノオロチの姿。
友人たちの姿はない。あるのは彼らだったモノだけ。
「―――――――」
こうなるのは分かり切っていた事だった。
あの3人が限界を超えてくれたおかげで、回復と作戦を立てる時間は十二分に取れた。
だから嘆きは要らない。感謝するのも後回し。
今はただ―――敵を斬り殺す事だけに専心する。
『よう兄弟、休憩はもういいのかよ』
「十分過ぎるくらいにな。
両腕も使えるし、後はてめぇを斬るだけだ」
切断されていたはずの左腕を見せびらかしながら宗吾は答える。
一体どういう手品を使ったのか、負傷は欠損含めて完全に回復していた。
多少の疲労はあるだろうが、ほぼ万全と言っていいだろう。
―――それでも、決して状況が良くなった訳ではない。
常識的に考えて、格上の
膨大な
先に宗吾が自身で言ったように逃げて準備を整えるべき状況。
しかし精神世界である以上、逃走はどうやっても不可能。
であれば、こうして正面から立ち向かうのは自暴自棄、あるいは一矢報いるという精神故か。
―――否である。
その瞳に諦観は存在しない。
その瞳に虚勢は存在しない。
その瞳に蛮勇は存在しない。
あるのは確かな
当然、それを感じ取れない
心底楽し気に笑い声を漏らす。
『クハッ……じゃあお前も魅せてくれよ、あの3人のように。
一体どうやって俺を斬るつもりなのか!!』
その問いに、鈴の音のような少女の声が答えた。
| 《八塩折之酒》*22 | 自分よりレベルの高い相手に対して状態異常を付与する確率が上がる。 |
| 《挑発》*23 | 敵1体を高確率で激怒状態にする。 |
直後、劇的な変化が発生する。
『がっ、ぁ、あああああああああああああああああああああ!?!?!?』
状態異常攻撃を受けた―――言葉にするならそれだけ。
問題は一切の抵抗も出来なかったという事。
先程気絶状態へ陥ったのは
これは違う、まるで異なる。
(なに、が―――!)
暴走する感情に翻弄されながらも、怪物は見た。
「あんた、こんなの中で飼ってたの?
自分で面倒見れないなら捨てなさいよ」
「生憎と気付かんうちに住み込まれててさぁ。
だから今こうして躾の真っ最中ってな」
\カカカッ/
| サイコメトラー | 若槻美野里 | Lv55 | 相性:破魔・呪殺・神経無効 |
宗吾の隣、朧げな姿で共に立つ
同時に理解した、己が一体何をされたのか。
『
俺に酒を飲ませたのか――――!!』
| 神話的弱点*24 | 200Xスポット・ルール。 BOSS悪魔などについて神話的なイメージに基づき、 特定のアイテムが弱点である事にしてもよい。 この場合、スキルがアイテムの変わりを果たしていると裁定する。 また、弱点を突くことによってBOSSが「激怒」*25する事にしてもよい。 |
―――古事記において。
スサノオはヤマタノオロチに酒を飲ませ、酔い潰してから斬り殺した。
その飲ませた酒こそが“八塩折之酒”。
確かに現物はここに存在しない。
だが、その名を冠したスキルの所有者が傍に居た。
若槻美野里―――スサノオの娘たるウカノミタマの転生体*26。
相方を助けるため、精神世界への侵入を諦めなかった少女が。
彼女が常に呼びかける声は宗吾の耳に届いていた。
彼女がこの領域へ辿り着くまで時間が必要だった。
彼女がボロボロの彼を回復させるのに十分だった。
何もかもが繋がっている。
何一つとして無駄はない。
今、宗吾の築いて来た全てがここに集束する。
| 「激怒」*27 | 通常攻撃しか行わなくなり、攻撃力は2倍に上昇するが、防御力が半減する。 |
「
普通ならミンチになるが……ここは現実じゃない。
無理なら幾らでも利く」
「現実側でもファウスト先生が回復を続けてる。
こっちからも私が回復すればまず死なない」
ここは精神世界であり、現実の肉体の縛りが無い分、宗吾の能力は向上している。*28
曲がりなりにもヤマタノオロチと無手で渡り合えていたのはこれが理由だ。
継続的な回復と自身の意志力が続く限り、そう簡単に死ぬ事も無い。
例え攻撃力が倍であろうと、通常攻撃のみであるならばまだ防げるし凌げる。
ならばひたすら耐えて反撃を繰り返すのみ。
―――奇しくもそれは、とあるDBが神霊《クズリュウ》に取った戦法と同種のものだった。
『ハ、ハハハハハ!!!!!!!
こいつは参った流石だ兄弟!! 流石は人間!!!!』
己が嵌められた事実を前に、ヤマタノオロチは再びの絶笑を上げた。
戦意は衰えない、むしろ激怒状態な分ボルテージが天井知らずに跳ね上がってく。
期待に違わず、己の半身は確かに魅せてくれたのだから。
『我が名はヤマタノオロチ!!
水神にして山神! 旧支配者に連なる神である!!!!
俺程度乗り越えてみせろ、此処から先へ進みたいのならば!!!!』
咆哮―――そして最後の激突が始まる。
『オラオラオラァッ!!!!』
巨体が大気を打ち砕きながらひたすらに連撃を繰り返す。
まさしく荒れ狂う自然の化身。
人など容易く粉砕する純粋な暴力の嵐。
「皮剥いで捌いてやる……っ!!」
その嵐を剣鬼が片っ端から刻み続けていく。
対応が間に合わなければ歯を食いしばって耐えてから斬る。
一度斬った場所を何度も斬り付け頸を落とす事を繰り返す。
「あーもうっ! ちょっとくらい手ぇ止めなさいよあんた達!!」
銀髪の少女が後ろに下がりながら挑発状態の維持と回復を続ける。
一体何故このような大事になってしまったのか頭は疑問で一杯だ。
しかし半分以上は自分のせいだと受け入れて、成すべき事を成す。
この光景がどれほど続いたのだろうか。
正確な時間こそ分からないが、おそらく10分と経ってはいまい。
だが―――終わりは必ず訪れる。
『ク、ハ、ハハ……』
ヤマタノオロチは笑う、笑い続ける。
全ての尾と6本の首を落とされ、まさしく死ぬ寸前だとしても。
この瞬間、崩壊が始まってもおかしくない状態だ。
残る首1本ではもう笑う事しか出来ないのがその証拠。
「……実は第3形態とかねーだろうな?」
対する宗吾も無事ではなかった。
傷は無いように見えても、内側はヤマタノオロチと比べてそう変わらない。
軽く一発殴られただけで倒れるだろう。
それでも―――後一振りするくらいの力は残されている。
『ある訳ないだろ。
俺は間違いなく全力を尽くした。
だからこの戦いはお前の……お前たちの勝ちだ』
笑うのを止め、半身たる悪魔が
宗吾は返答の代わりに構えを取った。
刀を担ぐのではなく、前に突き出すような平晴眼の構え。
何故か、こうした方が良いと自然に体が動いたのだ。
「―――いつか絶対
『いいぜ、その時をお前の中で楽しみにしてる』
音もなく地を蹴った。低空を滑空するような静かな足さばき。
狭まる間合い。繰り出すべき技、染み付いた動きが浮かんでは消える。
浮かんでは消えて―――零になる。
“やっさん頑張れー! ”
“こんなところで死なないでくださいよ!! ”
“まだ君には新商品を振舞っていないんだ”
“ボクにも責任があるから早く起きてくれ”
“行け、走り続けろ”
“気合い出せいダチ公”
“派手な技見せてくださいよ先輩”
| 《応援》*30 | 1アクションを消費し対象を応援する。 次に行う行動の判定値に修正を加える。 |
過去から
紡いだ絆が、人の剣術を追い求めた魂が、ここに常理を
| 《我流魔剣・■■■》 | 詳細不明。いまだ完成に至らぬ―――八瀬宗吾だけの魔剣 |
――――再現された異界ごとヤマタノオロチは消し飛んだ。
・
・
・
目を覚ませば、そこは見覚えのない天井だった。
全身に走る激痛と倦怠感に思わず顔をしかめる。
視線だけ動かせば、こちらを心配そうに覗くリコリコの面子と医者らしき風貌の男。
―――そして。
「……おかえりなさい、
どこかほっとしたような表情の、疲労の色が隠せない相棒の姿。
体勢的に考えて、どうやら膝枕をされているようだった。
年下の女の子にされるのは初めての経験だが、不思議と気恥ずかしさは感じない。
色々と言うべきことはあるのだろう。
一体どれだけ無茶したのかとか、助けてくれてありがとうとか。
だけども、まず最初に口にするのは―――。
「―――ただいま、美野里ちゃん」
ここに戻ってきた、まずはそれを伝える事。
それが正解かどうかは……彼女の笑顔が答えだった。
◎登場人物紹介
・八瀬 宗吾 <剣士> <仙術使い> <サクセサー> LV59⇒60
VR空間に飛び込んだと思ったら自分の精神世界だった男。
己に宿る悪魔因子の源、ヤマタノオロチの打倒に成功した。
イニシエーションの達成、技量の上昇、スキルの習得、
特に“魔剣”へと指をかけたのが大きな成果。
・若槻美野里 <サイコメトラー><超能力者> <ガンスリンガー> LV55⇒56
今回の一件の戦犯にしてMVP。
この後、関わった全員にめちゃくちゃ謝った。
治療費とか迷惑代を稼ぐために宗吾と奔走するが、
その間にユルングが襲来しコユキとはすれ違ってしまった。
―――過剰なドーピングで何らかの影響がある模様。
―――――――――
時系列的にはユルング戦のちょっと前くらい。
参加できなかったのは調整とお金を稼ぐためでした(
他にも書きたい事はあるけど次回予定のintrudeに纏めます。