真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~   作:ジントニック123

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Raid Battle-前篇-

 

 

 東京各所に存在するレルム。

 本来中立地帯であるそこは今、血風吹き荒れる地獄の如き様相と化していた。

 止まらない剣戟と銃声、絶叫と咆哮。熱意と狂気に満ちた戦場。

 

 

「ひやっはあああああ!! ぶっ殺せえ!!!!」

 

「回せ回せ回せぇっつ!!!!」

 

「もっと強い敵出て来いよほらほら!!!!」

 

 

 ―――具体的に言えば精鋭DB達による周回マラソンが原因であるが。

 

 

 そもそもの始まりは<インヴォークシステム>。

 “悪魔を倒せば倒すほど儲かるデビルハントアプリ”。

 悪魔を生贄に捧げ、より強大な悪魔を召喚出来るプログラムがばら撒かれた事だ。

 複数の組織名義から拡散したそれは、最終的にレルムへと4柱の『神』を降臨させるに至る。

 

 

\カカカッ/

女神嘆きに呼び出されしラクシュミLv90

\カカカッ/

凶鳥嘆きに呼び出されし グルルLv90

\カカカッ/

邪龍断末魔の叫びに呼ばれしヴァスキLv90

\カカカッ/

破壊神断末魔の叫びに呼ばれしカルティケーヤLv90

 

 

 いずれもレベル90代の強大な悪魔(レイドボス)

 1体だけで都市を滅ぼす事も容易な災害。

 人の身では抗う事さえ烏滸がましき理不尽。

 

 本来であれば蹂躙され滅びを待つだけの状況だ。

 実際、多くのレルム在住者はしばしの呆然の後で我先にと逃げ出した。

 滅びた世界の敗北者である故に、生きる為に形を持った絶望から背を向けて。

 

 しかし―――用意されていた絶望の脚本は覆った。

 

「物理が通じて棒立ちのサンドバックがいるときいて!」

 

「範囲攻撃を親切な辻パーミッションが軽減してくれる戦場で経験値が稼げるときいて!!」

 

「ヒマつぶし」

 

 

 事前に出現情報を掴んでいた護国組織及びキリギリス含めたDB達による迎撃。

 幾つもの試練と困難を乗り越えた彼らにとって、このくらいはいつもの事。

 特記戦力がぶつかると並行して情報収集からの状況構築、そして数による暴力。

 

 幾らかの被害はあれど、仕掛け人の予想を大きく外れて『神』は倒された。

 ―――問題はその後。

 

「ざーこざーこww

 よっわ、どんびきだよ」

 

「もっと経験値出せばいいのに。

 こんなんじゃ魂の研鑽にならないよーw」

 

「おーい、どっかで見てる黒幕くーん。

 おかわりまだー? 出来ないだろうけどなww」

 

 

「やってやろうじゃねえか!!」  

 

 

 まだ戦いは終わらない。

 煽り耐性の低い黒幕が(コーラル)をキメつつ次なる敵を呼び出したのだ。

 

 

\カカカッ/

破壊神天命を奪うセイテンタイセイLv93

\カカカッ/

幽鬼狂気に侵されたレギオンLv38

 

\カカカッ/

龍神狂気に駆られたガンガーLv60

 

\カカカッ/

龍神狂気に駆られたコワトリクエLv65

 

\カカカッ/

幽鬼狂気に駆られたラフィン・スカルLv66

 

\カカカッ/

幽鬼狂気に駆られたピシャーチャLv72

 

 

 過去周回において幾つもの大陸を滅ぼした天命シリーズ最強の破壊神。

 そして取り巻きとして現れた高レベルのザコ集団(トループ)

 更に1時間後には再び4体の神が降臨するという悪夢のような展開。

 

 

「「「オカワリやったあああああああ!!」」」

 

「なんでじゃあああああああ!!?」

 

 

 

 それに対して狂喜乱舞するDB達(人類悪)と困惑し絶叫する黒幕(ガバガバ女)

 まだ戦いは終わらない、少なくとも彼らが倒し(回り)続ける限り。

 

 これはそんなイベント中に起きた出来事。

 上野レルム―――“シャドウ”なる狂人が出没した場所での物語である。

 

 

 

 

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『ギギギギィイイイイ!!!!』

 

 ボコリと異音を立てながら叫び声が響く。

 崩壊した壁、砕けたアスファルトより悪魔たちが湧き出て来た証。

 戦闘開始から数時間経過した現在、ローテーションを組んでDB達は対応していた。

 

 戦闘と補充、攻撃と回復。途切れる事を知らない敵の波。

 既に何度も強大な悪魔(レイドボス)を倒してはいるものの、終わりはまだ見えない。

 無論、その事にテンションを大いに上げている者が大半であったが。

 

「ん……。こっちにも出て来た」

 

 そんな集団の一人。セミロングの銀髪に獣耳の、ミステリアスな雰囲気を纏った少女が呟く。

 年若い容貌に反して油断なく銃を構える様は、それだけで歴戦の兵と分からせるものがある。

 事実、彼女は他のDB達と連携してこの戦場だけでもかなりの悪魔を倒していた。

 

 少女―――砂狼シロコは思う。

 

 “戦えている。無力ではない、存在価値はある。”

 

 力不足は否めないが、役立たずではない。

 総てに打ち勝てるような実力も知識も無いが、抗えている。

 此処に居ていい資格が自分にはちゃんとあるのだと。

 後方や別の方面で戦闘を続けている仲間たちと共に勝てるのだと。

 

 このままの調子で行けば絶対に乗り越えられると信じている。

 かつて世界を滅ぼし、逃げ出す事しか出来なかった相手でも。

 

 ただ問題があるとすれば――――。

 

「チィッまた出やがったぞあのキチガイ!! 

 負傷者下げろ、食いしばり切れてないのはカバー入れ!!」

 

「今度は無駄な横殴りのせいで新手が流れ込んできた!! 

 第三陣早めに上げろぉっ!!!!」

 

 近隣から聞こえてくる怒声にまた出た、と表情が少し歪むのを感じた。

 何が、という疑問も意味を成さない。嫌な事に慣れてしまった。

 この戦闘が始まってすぐに湧いて出た狂人の()()()()である。

 

 カウンター状態のレイドボスに攻撃を加え、周囲に被害を出した黒尽くめの男。

 しかも一度や二度に飽き足らずそれを繰り返すというオマケ付き。

 更に言えば、他人だけでなく自分も被害を受けているのに止まらないという狂いっぷりだ。

 

 それ以降も連携や状況を考えない突貫でいたずらに被害を増やし続けている。

 どう考えても正気の沙汰ではない。

 もし仮に確信犯ではなく素でやっているのであれば、さっさと精神病院にある檻付きの部屋にでも放り込まなければならない人種だろう。

 

「あの“シャドウ”とかいうの、さっさと消すべき……!」

 

 苛立ち交じりに、おそらくこの場に居る全員が思っている事を口にした。

 どういう技能(スキル)か分からないが、件の人物は気配を消したまま動いているようだ。

 そのせいで補足は難しいが、目の前に出て来たら撃つ事に一切の躊躇は無い。

 

 ―――そんな事に僅かでも思考を取られていたせいだろうか。

 

 

《かみつき》*1突撃相性。鋭い牙で噛み付く特技。

敵1体に対して、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。

 

 

「―――まずっ!?」

 

 死角からしゃれこうべ―――“狂気に駆られたラフィン・スカル”の急襲を受ける。

 タイミング的に回避は間に合わない。他のDB達も距離が離れていてカバーは不可能。

 それでも一撃死は無いと即座に判断し、耐えてから反撃の弾を撃ち込む事を考えて。

 

 

 

「油断大敵だぜケモミミ少女(ウルフガール)

 

 

 

《ガンマンの心意気》*2敵が物理・銃撃属性の攻撃をしようとした瞬間に確率で発動。

相手の行動を無効化する。

《クイックロードⅢ》*3即座に銃弾を装填、弾倉の交換が可能。

銃器を装備していなくとも、即座に準備できる。

射撃後に銃器をしまい、別の武器を構えてもよい。

《イレイザー》*4驚異的な集中力でより多くの射撃を繰り出す特技。

1度の詠唱で6発分の装填を行い、敵1体に対して、

射撃攻撃力に依存した物理ダメージを与える。

ショットガンを使用⇒散弾相性に変更。

《銃ハイブースタ》*5ショットガン(散弾相性)でも効果を発揮すると裁定。

銃属性攻撃時の攻撃力を1.5倍にする。

 

 

 四方八方、有り得ざる射角から銃撃の嵐が吹き荒れた。

 攻撃の出鼻を挫かれた“ラフィン・スカル”の動きが一瞬停止する。

 思わず瞬きを1つ―――その間に絶え間ない6連射が髑髏を跡形もなく喰い尽くしていた。

 

「―――――」

 

 あまりにも予想外の光景に思わずシロコは絶句する。

 自らも銃を使う身だからこそ分かった。

 これはただの早射ち―――もはや異能の域に達した銃技だと。

 

「弱点に威力増加(ブースト)した連射を決めれば……まあこんなもんか

 しかしだが、やっぱり合わないな散弾銃(これ)

 使い勝手が好みじゃない」

 

 振り返り、その早業を成した人物を視界に捉える。

 煙を吹くショットガンを担いだ、金髪に派手な赤いコートを着た目立つ風貌の男だ。

 どこか軽薄に微笑んでいるようにも見えるが、その振る舞いに隙は一切存在しない。

 おそらく新手を警戒してのものか。

 状況から考えれば、同業者なのは間違いないだろう。

 

「ん、ありがとう……助かった」

 

 だからまずは礼の言葉を口にする。言うのはタダだ。

 そして寄せ集めの集団戦だからこそ必要な最低限のマナーでもある。

 表社会でもそうだが、これを言えない者ほどロクな扱いを受けない事をよく知っていた。

 

「礼はいいさ、これも奉仕活動(仕事)の範疇でね。

 ただ、恩に感じてるなら一つ頼まれてくれるかい?」

 

 頼み、という言葉にシロコは首をかしげた。

 かなり“出来る”側の人間であろう男の頼みとは一体なんだろうか。

 非常識、不可能、無駄なものでなければ構わないのだが。

 

 その様子に苦笑しながら男―――タスラムは視線で答える。

 シロコも釣られるようにその先を見た。

 

 

「あのクズを殺せぇええええ!」

 

「出て来たら集中砲火しろ!!」

 

「ゴキブリ以下のクソ虫シャドウがぁっ!!!」

 

「瓦礫撤去と並行して見つけたら即報告しなさい!!!!」

 

 

 ―――血走った目に鬼のような形相を浮かべながら叫ぶ集団がそこに居た。

 中には見覚えのある顔も居る。

 レイドボスとの初戦で銃撃相性を弱点に変えていた、近未来的装備の少女だ。

 確か《ブラックフィエンド》なる傭兵集団を名乗っていた事を思い出す。

 

「えらい恨まれてるぜあのまっくろくろすけ(ブラックマン)

 オレが言えた事じゃないが、今までどれだけやらかしたのやら」

 

 遠目からでも分かるほど殺意と怒りが迸っていた。

 全員が全員、シャドウを例外なく毛嫌いしているのが見るだけで分かる。

 追っている狂人とは言っていたが、何をすればあそこまでになるのか。

 シロコはとりあえず考えない事にした。聞いてもストレスなだけだろうから。

 

「……ぶちのめすの手伝うならやるけど?」

 

「それとは別件……いや、関係はあるか」

 

 タスラムが懐からスマートフォンを取り出し画面を見せて来る。

 見慣れた掲示板―――キリギリスのもの。

 その中に立てられたスレの一つ。

 

 

 


 

DD CHANNEL:【上野】狂人出現! 全員警戒せよ【レイド】

 

 

516:名無しさん@レイド参加中

 アホのせいで吹っ飛ばされた。現在群れのど真ん中。

 再生治療必須1名、他同行者無し。脱出試みてるので可能なら援護お願いします。

 現在地点座標―――https://www.google.com/maps/place~

 

517:名無しさん@レイド参加中

 マジでど真ん中じゃねぇか!! 

 数集めるから待ってろ!!!! 

 

518:名無しさん@LV上げ中

 ひょっとしてボスのカウンターに巻き込まれてた奴らか? 

 災難どころの話じゃねーなおい

 


 

 

 再び絶句し、書かれている座標に体ごと向き直った。

 その先には100や200では効かない、ザコ悪魔の群れがひしめいている。

 あの中に、バカのせいで吹き飛ばされた者が居るという事実に思わず眩暈がした。

 

「―――騎兵隊へのお誘いさ。

 いっちょヒーローになってみないかい? 

 ブラックフェンド(加害者の知り合い)や脳破壊されてそうな兄さんにも声は掛けてるんだが」

 

 

 断る理由は無かった。

 

 

 

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 ・

 

 

 長引く戦闘の余波により瓦礫の山と化したレルム。

 レイドボスが出現したにしては被害は軽微だが、悲惨な状態である事に変わりはない。

 その中でもザコ悪魔―――最低レベルは38―――が見渡す限り闊歩する地帯。

 いまだにDB達に掃討されず、獲物が集まっている方向へ前進する怪物の群れの中にて。

 

 

 

「もっとスピード出せポンコツぅっ!!」

 

『これが最高速度ですバディ。

 更なる速度を求めるなら改造が要りますね』

 

 

 

 悪路を猛スピードで踏破し、群れの中を縫うように突っ切るバイクの姿があった。

 分類としては大型であろうか。その巨大なボディに反して驚くほどの静音性だ。

 しかし、これは普通に考えれば奇妙な光景である。

 

 いかに静かでも、この大群の中を堂々と突っ切れば確実に見つかってしまう。

 そうなれば四方八方から群がられ、袋叩きに合うのは避けられない。

 ―――だというのに。

 バイクとその乗り手()は悪魔に囲まれるどころか、存在を気取られる事さえなかった。

 

「んな金あるかよ分かってるだろオマエ!!」

 

『失敬、万年金欠赤字マンのバディには不可能でした。

 それよりそろそろ効果が切れるのでは? 

 一旦どこかへ隠れる事をお勧めします』

 

「ええいクソッタレ厄日にも程があるぞ今日は……っ、前方瓦礫の隙間!」

 

了解(ヤー)

 

 急制動(ブレーキ)と共にハンドルを大きく切る。

 そのままバイクは横倒しになり、勢いのまま目的の場所へと滑り込む。

 常人であれば大事故同然、最低でも骨折は免れない所業だ。

 覚醒者である乗り手―――10代後半であろう少年も塗装費を考えるとやりたくなかった。

 

 だが今はそんな甘えた事を言っていられる状況でもない。

 瓦礫で身を隠している間に成さねばならない事があるのだから。

 ―――目を閉じ、意識を集中する。

 

「幻影、希薄、誘導―――≪イルク≫」

 

 

《イルク》*6幻術に分類される魔界魔法。

幻影を纏い、周囲から見えなくなる。()()()()()()()()()()()()()()()

敵は術者の姿が見えなくなる。

術者のあらゆる攻撃に対して回避にマイナス補正を受ける。

 

 

 呪文と共に少年の体内からマグネタイトが消費され、その効果が発揮された。

 幻影―――味方全体への透明化。正確に言えば認識から逸らす魔界魔法。

 この魔法とバイクの速度及び静音性を活かし、ここまで何とか逃げる事が出来ていたのだ。 

 

『お見事ですバディ。

 後は呪文の省略と戦闘中に使用出来れば完璧かと』

 

「それが出来たら苦労しねーんだよポンコツ……!」

 

 毒舌や皮肉を通り越し、もはや罵倒の域にある言葉を発する相棒を少年は睨んだ。

 相棒―――バイクに搭載された高性能AIは悪びれも無く電子音声で答える。

 

『申し訳ありません、わたくし嘘はつけないものでして。

 事実を告げるのがせめてもの優しさと考える次第です』

 

「そんな優しさ要らねぇから。

 出来れば慰めてくんない???」

 

『満足ですか、無機物に慰めて貰うのは?

 流石バディ――― 一人遊びの達人でしたか』

 

「オマエを本気でスクラップにするか検討してる自分がいる……っ!」

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、コントするの……やめなさいよ。

 状況、分かってるキミたち?」

 

 

 

 

 背後からの―――それも息のかかる距離―――声に少年が顔だけ振り向く。

 目に映ったのは血色の悪い顔をした、赤黒く汚れた制服とベレー帽の少女。

 年齢は然程変わらないが、どこかすり切れたような目が印象的だった。

 

 更に言えば機嫌もかなり悪そうだ。

 いつものノリで会話をしていて、すっかり置いてけぼりにしてしまっていたからだろう。 

 加えて、この馬鹿騒ぎもそうだろうが―――。

 

「あと……大きい声出されると、傷に響くの。

 回復魔法で、止血はしたけど……動けるほどじゃないから」

 

 少女には両膝から下が存在しなかった。

 それどころか左腕も肩の部分から喪失している。

 強引に引き千切られたかのような、無残な傷だけがそこにあった。

 

 傷口こそ塞がってはいるものの、血が足りていないのは明白。

 本人の言う通り、とてもではないが動ける状態ではないだろう。

 如何に覚醒者といえども、ここまで負傷と消耗を受ければどうしようもない。

 

 現に、今は少年の背中に括りつけられるようにして固定されている状態だ。*7

 唯一の残された右腕も、力無く少年の服を掴むだけ。

 まさしく瀕死と呼べる姿である。

 

『言われていますよバディ。女心を学ばないツケが来ましたね。

 こういった場合のトークパターンをお出しした方が良いでしょうか? 

 もちろん使えるかどうかは知りません』

 

「火に油注ぐだけだから止めろポンコツ。

 あとゴメン。これがオレらのノリだから許してくれ」

 

 

(―――ムカツクわねこいつら。

 いやアレに比べれば100億倍以上マシなんだけど)

 

 

 口には出さず―――正確に言えば余裕がない―――少女は思った。

 そもそも自分が何故このような状況に晒されているのだろうか。

 決まっている。すべてあの男が、頭のおかしい狂人(シャドウ)が悪いのだ。

 

(銃背負って撃つだけの簡単な仕事って聞いてたのに! 

 あのクズが、また命令を聞かず勝手に動いて!! 

 それだけならまだしも、私まで巻き添えに―――!!)

 

 少女は《ブラックフェンド》―――正確に言えば《ガイア再生機構》に所属する者だ。

 <世界崩壊からの昇格者>(エターナル)とも呼ばれる才人の1人。

 少なくとも、元居た世界では誰もからも認められ褒め称えられた存在である。

 

 紆余曲折あって今の勢力に属する事となったがそれはいい。

 自分は選ばれた者で生き延びた者なのだから恥じる事など何もない。

 ただ、仮にも。非常に認めたくないしそもそも認めている者もいないだろうが。

 一応は味方と呼ばれる存在のせいで死にかけているのは勘弁して欲しかった。

 

 切っ掛けはシャドウがいつも通りレイドボスに不要な攻撃を仕掛けた事。

 運悪く射程内に居た彼女は反撃を受け、更に運の悪い事に直撃(クリティカルヒット)してしまったのだ。

 そのまま勢い良く吹き飛ばされ、意識は暗転。

 

 気がつけば手足が3本欠損、救援を呼ぶための通信機は粉々。

 オマケに武装とアイテムの入ったポーチまでもが紛失(ロスト)

 回復魔法で最低限の治療こそ出来たが、ここまで来るともう乾いた笑いしか出てこない。

 

 正直、自分がサマナーでない事をここまで悔いる日が来るとは思わなかった。

 深海でひみつ道具を全部無くしたのび太以上の不幸だろう。

 しかし、底まで沈んだのなら後は上がるだけとでも言うべきか。

 少女は完全にツキには見放されていなかった。

 

(一緒に巻き添え喰らった凡骨(ロバ)

 こいつを利用して絶対に生き延びてやる……!!)

 

 それは自分と同じく、クズのやらかしに巻き込まれた被害者が近くに居た事。

 ()()()大した被害もなく、しかも高速移動が可能な足(バイク)もあるという僥倖。

 目が合った瞬間、死に物狂いで助けを求めた。

 こんな真似は普段ならばプライドが許さないが、そこは緊急事態なので割り切った。

 

(それにしても……こいつ才能無さ過ぎでしょ。

 幾らロバだからって魔法1つ使うのに詠唱で補助必須とか*8

 

 これまでの道程、時間にして30分も経たない程度であるが。

 最後の生命線と化したこの少年が、何の才能も持たない凡骨なのはすぐ見抜けた。

 魔法を使うのに態々詠唱を使うのは勿論の事、感じられる力自体が弱すぎる。

 

 身のこなしはともかくとして、勘だがレベルは精々40に届くか否かといった所だろう。

 むしろ乗っているバイクの方が本体と言っても過言ではない。

 現地民あるいは漂流者にしてはマシな方でこそあるが、この戦場において圧倒的に力不足だ。

 

 おそらくだが、このレルムに最初から居て逃げ遅れた有象無象の1人。

 勘違いして立ち向かった馬鹿なのも考えられるが、そこは考えない事にする。

 重要なのは生き残る事、今はただその一点のみ。

 

『―――二人共、偵察に出していたドローン*9から情報を受信しました。

 良いニュースと悪いニュースがあります。

 どちらから聞くのがお好みで?』

 

「じゃあ良いニュースから頼む。

 悪い方から聞いたら気が滅入る」

 

『ではまずこの映像を端末に送ります』

 

 思考の海に沈んでいた束の間、そんな会話が耳に入る。

 なんとか頭を動かし、少年の手元にあるスマートフォンを覗き込めば―――。

 

 

 


 

 

『突入準備良いかぁっ!? 

 死にたい馬鹿だけ付いてこい!!』

 

『死んでたまるもんですかぁっ! 

 ダンシ先輩と再会してあの女から逆NTRするまで絶対にぃっ!!!!』

 

『いっぱい狩るにょぉおおおお!!!!!』

 

『途中に居る雑魚は経験値だ!

 襲ってくる雑魚は良く訓練された経験値だ!! 

 レイドバトルサイコー!!!!!』

 

『あのクズどれだけ仕事増やせば気が済むのよ!!』

 


 

 

(…………え? いや何こいつら???)

 

 もの凄く濃そうな連中が映っていた。

 具体的に言うと全員目が逝っている。

 おそらく、たぶん救援部隊だろうか。

 

 確かに助けを求めていたのは知っていたが、こんな面子は流石に予想外だった。

 中には自分と同じ<ブラックフェンド>メンバーの姿もあるが気にしない事にする。

 だがそれでも、生き残りの目が見えたのは事実だ。

 

 少女の口元にうっすらと笑みが浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

「ダメ元だったけど……うん、確かに良いニュースだな。

 で、悪いニュースは?」

 

『次はこちらをご覧ください』

 

 

 


 

 

『チッ、ここまで雑魚が集まっているのに何もしないとは。

 頭の無い案山子しかいないのかあの連中は? 

 しょうがない、俺がまた時間を稼ぐ!!』

 

 


 

 

 見覚えのある黒尽くめが雑魚集団を殴りつけている映像だった。

 無駄に大暴れするせいで周囲から次々と敵が集まって来ている。

 あと気のせいであって欲しいのだがこの近くではないだろうか。

 

『あの狂人の仕業で敵の密度が段々と膨れ上がっています。

 バディの幻術精度ではこれ以上の隠密行動は不可能かと。

 ―――救援部隊が来る前に飲み込まれますねこれ』

 

「さっきから思ったが頭湧いてないこいつ???」

 

『今更過ぎるご指摘お見事です』

 

 噛み締めた奥歯が砕けた。

 

(あのっ、生きた産業廃棄物……どれだけ邪魔を!!?)

 

 挙げてから落とされた。一気に絶望の底へと叩き込まれてしまう。

 これはもうどうしようもない。

 修羅場を相応に潜り抜けてきた戦闘者としての勘がそう告げていた。

 

 それは迫る危機だけによるものではない。

 このような状況であれば、自分なら間違いなく取る手段があるから。

 ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 お荷物を餌として悪魔共の目の前に放り出せば、僅かでも時間が稼げるだろう。

 1パーセント以下かもしれないが生存率は上がる。

 ましてや会ったばかりで名も知らぬ相手同士。切り捨てる事に躊躇を抱くはずもない。

 

(どうしよう、どうしようどうしよう―――!!)

 

 必死に考える、思考する、思索する。

 交換条件など出せるはずもない。

 対価として何かを差し出す事を約束しても無駄だ。

 鼻で笑って無視されるに決まっている。

 今まで仲間たちが、そして自分が現地民にしてきたように。

 

「―――――ぁ」

 

 一瞬だけ胸元に手をやってすぐに離す。

 使えない手札に価値はなく無駄なだけ。

 目を逸らした過去が応えるはずもない。

 

 諦観。その二文字が心を犯していくのを感じながら――――。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、オレらで囮になって時間稼ぎするぞ。

 ポンコツ、“カクテル”の予備ストック用意しろ」

 

『本日は既に使用済みです。

 致死量を超えますがよろしいのですか?』

 

「使ってから3時間くらいは空いてんだろ。

 せいぜい寿命が削れる程度だ問題無いって」

 

了解(ヤー)

 

 少年は少女を背中から降ろすと、瓦礫の奥へと隠すように押しやった。

 

「…………え?」

 

「今から暴れてアイツら引き付けて来るからそこで隠れてろ。

 幻術もあと10分くらい持つから、なんとか救援も間に合うはずだ」

 

 何の気負いもなく。当たり前のように少年は囮を買って出た。

 息を吸うように敵の群れへと踏み込もうとしている。

 少年(ロバ)にとって格上の怪物たちがひしめく戦場へと。

 昇格者(エターナル)である少女にとっても単騎では死を覚悟する死地へと。

 

 せせら笑ってやる場面だろう。

 身の程を弁えないゴミが馬鹿な真似をしようとしていると。

 嘲笑ってやる場面だろう。

 よくぞ自分の役に立った。無能のロバにしては上出来だと。

 

 ―――なのに。

 

「――――なん、……で?」

 

 無意識に、痛む肺腑から疑問を捻り出していた。

 

 分からない―――何をしようとしているのか。

 分かりたくない―――何故囮になろうとしているのか。

 分かってはいけない―――何が彼を突き動かしているのか。

 

 少年はバイクを起こしながら、振り向きざまに答えた。

 

「いや、戦えない奴を守るのは当たり前の話だろ? 

 特に泣いて震えてビビってるならなおさらじゃん」

 

 

 言葉を失った少女を背にして、少年は愛車と共に飛び出した。 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 視界の先、溢れんばかりの数で悪魔たちが迫る。

 既に幻術の効果範囲を抜け、あちらも少年達を捉えているだろう。

 もう30秒もしない内に戦いの火蓋は切って落とされる。

 

 ―――その直前。

 

<霊薬混合液>(カクテル)心臓直接注射完了。

 応急措置と並行して更に回復薬を投与します』

 

「覚醒、躍動、獣化―――≪ウルバーン≫」

 

 

「カクテル」「ハッスルドリンコ」と「マッスルドリンコ」の混合液。*10

30分間、使用者の最大HP+50%、移動速度+50%

一時的に最大値を超えてHPを回復する。

ただし最大値の2倍を超えると半分に減少する。

⇒HP3倍状態と裁定する。

《ウルバーン》*11覚醒魔法。

WOLF状態となり状態異常回復する。

月齢によってステータスが変動する。

 

 

 少年は常識で考えればあり得ない事を実行した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()D()B()()()()()()()()

 

 加えて、詠唱から行使されたのは獣化魔法(ウルバーン)

 人間の体に宿る休眠遺伝子を覚醒させ、獣性を引きだすもの。

 しかし月齢によって効果が左右されるそれは、現状では然程強化をもたらさない。

 ―――だがそれでも十分だった。

 

 

『多目的支援マシン、ペットネーム“カルラ”

 これより戦闘行動を開始します』

 

「《アーマーモード》起動!!」

 

 薬効により沸騰し加速する意識の中。

 少年が指令(コマンド)を音声入力すると同時に、バイクが一瞬にして()()()()

 数十から数百のパーツが高速で宙を舞い、やがて彼の身体を覆うように姿形を変えていく。

 

 

《マシン搭乗》*12シナリオ終了時までマシン1体を召喚し、搭乗する。

戦闘が発生する場合、その戦闘の間、

使用者のイニシアティブと回避判定値はマシンのものを使用する。

なお、搭乗したマシンがDEAD状態になった場合、効果は解除される。

《アーマーモード》*13条件:魔晶手甲の装備、マシンを召喚または搭乗している。

シーンまたは戦闘終了まで、使用者はダークゾーンと

ダメージゾーンの影響を受けなくなる。

物理・魔法防御点に素材悪魔(マシン)のレベルを追加する。

素材悪魔がヒーホーとニュートラル以外の属性を

持っていた場合、使用者の対応する属性を1点加算する。

 

 

「行くぞポンコツ―――ついて来れるな」

 

『そちらの方こそ―――遅れないでくださいね』

 

 

 

\カカカッ/

強化人間ダイLv37相性:全体的に強い、破魔・呪殺無効

 

\カカカッ/

マシンカルラLv40相性:物理に強い、電撃に弱い

 

 

 現れるのは人馬一体ならぬ人車一体。

 黒鋼の鎧と化した乗機を身に纏う戦士の姿。

 少年―――ダイは眼前に迫る死地へと向けて咆えた。

 

 己がいかに愚かな事をしているのか全て理解している。

 だが万度繰り返しても同じ選択をするのは間違いない。

 何故なら誓ったからだ、元の世界で戦っていた頃より。

 

 

 ―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 装着完了後、各所に搭載された補助推進装置(スラスター)を全力駆動。

 殺人的負荷は薬物と()()()に遺伝子強化された肉体で無理矢理耐え切る。

 そして―――鋼の流星が悪魔の群れへと突貫した。

 

 

 

 

 

 

*1
※IMAGINE

*2
※SH2

*3
※200X

*4
※IMAGINE

*5
※DSJ

*6
※覚醒篇

*7
※基本システム 状態異常【WOUNDED】(外傷) 両足をやられると歩行不能。 

*8
真・女神転生 ~東京黙示録~など一部の作品において魔界魔法使用時に詠唱をする場面が存在する。

*9
※覚醒篇 「ハニー・ビー」本来はCOMP用ソフトウェア。偵察用の小型ロボット、ハニー・ビー・ドローンを撃ち出し、ビデオカメラで偵察することが出来る。

*10
※IMAGINE&真Ⅰ

*11
※P1

*12
※200X

*13




後篇もなるべく早めに書きたいと思います。

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