真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
―――ツイてない。
まずダイが思ったのはそれだった。
消耗品の補充と摩耗した装備を整備する為に訪れた拠点近くのレルム。
そこでまさかの
数日ぶりのオフを楽しもうという気持ちは跡形もなく消し飛んだ。
―――やるか。
次に思ったのは戦う事。
もちろん単騎では無謀どころの話ではない。
せいぜい逃げ回るのが精一杯だろう。
しかし、幸いと言うべきか。既に自分より格上のDB達が陣形を構えていた。
手際の良さから事前に情報を掴んでいたのかと推測するが後回し。
一先ずは彼らに交じる形で、現れた『
途中でアホのやらかしこそあったが概ね順調に、問題なく戦うことが出来ていた。
―――マジでツイてない。
再び思ったのはボスのカウンターに巻き込まれた時。
問題となっていた狂人の暴挙が、よりにもよって自分のすぐ傍で行われたのだ。
咄嗟に捌く事には成功したが、吹き飛ばされた先が悪魔の群れの中という最悪の事態。
ダイにとって死地へと放り出されるのは慣れたものだった。突っ込む事も同程度には。
だが流石に、今回のような
出来れば二度と味わいたくない。
せめてもの救いは、
このような状況でも高速移動出来る足があれば、どうにか離脱する目はある。
愚痴もそこそこにバイク形態のカルラへと跨り、幻術の詠唱をしようとして。
「たす……けて……お、ねがい……っ!」
―――そこで助けを求める声を聴いてしまった。
気配のする方へ眼を向ければ、手足を3本失った瀕死同然の少女の姿があった。
元は純白であっただろう制服は真っ赤な血に染まり、反対に顔色は恐ろしいほど蒼褪めている。
そして、そんな弱々しい瀕死寸前の姿でこそあるものの。
まず間違いなく自分より格上の実力者であろう事が肌で感じられた。
―――彼女を助けないという選択肢は無かった。
状況からして自分と同じように巻き込まれたのだろう。
そして不運な事に行動不能へと陥ってしまった。
普通なら無視しても当然な状況、言い方は悪いが自己責任である。
だがそれでも、そんな状態の人間を放っておく事は出来なかったのだ。
戦えない者を、死の恐怖に震える少女を見捨てるなどしたくなかった。
相手が自分より強いからといって、それは守らない理由となり得ない。
だから、自ら囮となった事にも後悔など無い。
いつも通り―――命尽き果てる事前提で戦い抜くだけであった。
・
・
・
| 「シーンBGM:死闘」*1 | 交渉・逃走不可。死力を尽くすべし。 BGM『Face of Fact -RESOLUTION ver.-』 |
\カカカッ/
| 軍勢 | ザコ悪魔の群れ | Lv38~72 |
『第一波捕捉―――
HMDに映し出される敵の一部。
エネミーソナーはいずれも格上という事実を残酷に伝えて来る。
まともに戦えばあっという間にすり潰されるのは火を見るより明らかだ。
よって、必要なのは邪道。
この数の差を逆手に取った戦法にしか活路は無い。
―――意識を研ぎ澄ませる。
| 《ATTACK》*2 | 物理属性の通常攻撃。 軍勢の通常攻撃は3~4回。 |
眼前の相手。懐へと飛び込んできた
悪魔たちは機械的に攻撃を加えた。所詮は取り巻き、自我も薄ければ悪意も無い故に。
ただひたすらに打ち込まれた使命を果たす為、爪と牙の嵐が吹き荒れる。
「一回潜り抜けるぞ!!」
「
| 《回避専念》*3 | アクションを消費し、次の手番まで回避判定値+20% ダイ及びカルラが同時使用。 《マシン搭乗》中は搭乗者のプラス補正も加えるものと裁定する。 |
| 《獣の反応》*4 | 命中・回避を上昇させる(スクカジャ1段階分) |
それら全て、スラスターによる加減速と急激な方向転換を駆使して
マシンの性能に頼った強引な回避運動。
代償に内臓がねじ切れそうになるが気合いで堪える。
『スロー、スロー、クイッククイックスロー』
「素敵なっ、ステップだなぁ
死線を駆け抜けながら軽口の応酬。
そして自らの生存確認と共に、ダイはこの交差で確信を得た。
―――やっぱり通常攻撃だけか。
レイドが始まって以降、DB達の間で確認と共有がされていた情報を思い出す。
今湧いているザコ悪魔たちの殆どには
レベルこそ高いが、それに反するかのように手札が貧弱なカモという事実。
弱点も判明しており、まるで倒されるためだけに生まれた悪魔だ。
これならば、如何なレベル差があろうとダイ達でも食い下がれる。
――――もちろん、このふざけた数の差に目を瞑れるのであれば。
『前方に第2波確認―――
「
| 《クィック・ロードⅢ》*5 | 即時効果 | 即座に銃弾を装填、弾倉の交換が可能。 銃器を装備していなくとも、即座に準備できる。 射撃後に銃器をしまい、別の武器を構えてもよい。 《アーマーモード》中は装着者にも効果が適用と裁定。 |
| 「SPAS15」*6 | ショットガン。前列複数体に3~6回攻撃。 ⇒石化弾使用。呪殺相性。 |
抑揚のない電子音声と共に、両腕部に
連射された石化の散弾は前方の新たな群れを捉え、その全てを物言わぬ石像へと変貌させる。
『砕かないのですか?』
「射線切る壁と新手の足止めに使う」
相棒の疑問に答えながら反転。
同時に排莢と自動装填の工程を1秒で終了させる。
そして潜り抜けた方の群れへと2丁のショットガンを構えた。
『ア゛アアアアアア―――!!』
| 《テトラカーン》*7 | 物理攻撃に対して無類の強さを誇る防護壁を作り出す魔法。 自分自身に対して5分間物理攻撃を反射させる状態変化を付与する。 この効果は「物理ダメージを1回受ける・死亡」の場合にも消失する。 本来は単体効果だが、軍勢であるため全体に適用すると裁定。 |
視線の先で群れの中の1体―――“狂気に侵されたレギオン”が
ダイたちの攻撃手段が物理主体と本能的に判断したからだろう。
事実、1人と1体には
―――思考は0.5秒、判断は0.2秒で終わらせる。
「ポンコツ、リミッター外してガード専念。
オレにダメージ通すな」
『まったく、マシン使いが荒い方ですね。
生き残ったら最高級オイルを所望します』
再び蹂躙の嵐が襲い掛かった。流石に今度は回避し切れない。
射撃の為一度停止した状態である故、全て避けるのは不可能だ。
鉄を穿つ音と共に、何体かの爪と牙がカルラの装甲へ深々と突き立つ。
『―――駆動系に問題無し。依然として戦闘続行可能。
珠の
| 《ガード》*8 | 防御態勢を取って敵から受けるダメージを半減する。 クリティカル、状態異常を防ぐ。 P2において防御時は披ダメージをおよそ1/4まで軽減する。 耐性と合わせて1/8まで軽減。 幾度の敗北と蹂躙に晒されながら磨いた、致命傷を避けるための防御技術。 |
| 《カバー》*9 | 味方一人に対するダメージと追加効果を自分に移し変える事ができる。 |
「傷は男の勲章って言うだろ?」
『生憎ですが私は無性です―――
| 《反撃》*10 | 物理属性の効果を受けた場合、50%で発動。 反撃として通常攻撃1回を行う。 ⇒「SPAS15」による反撃。 |
| 《リミットブレイクⅡ》*11 | 格闘武器または射撃武器を1つ指定。 シーンまたは戦闘終了まで対象を使用した攻撃の相性は 万能に変更される(スキル本来の相性も無視)。 自動失敗または大失敗した場合、使用したアイテムは壊れる。 |
刻まれたプログラムに従い、カルラの反撃―――万能へと変更された石化弾が群れを撃ち抜く。
《テトラカーン》もこの射撃には意味を成さず、群れのほぼ全てが石化する。
残されたのは石化に対し耐性のある“レギオン”*12のみ。
「ブレードロック解除。
サポートしろ、止めを刺す」
「
腰部に装着されていた剣の固定を解除。
強化された肉体の内側から唸り声が上がる。
スラスター点火、再び鋼の鎧が宙を征く。
「ッォオオオオオオオッ!!!!」
| 《達磨返し》*13 | 敵1体を攻撃。術者のMAXHPにより威力が変わる。 メギドラオンにも匹敵する剣技。 《アーマーモード》時のみ使用可能。 《リミットブレイク》により剣相性⇒万能相性へと変更。 |
| 《会心》*14 | 格闘攻撃のクリティカル率が上昇する。 |
絶叫と共に、素の状態では不可能な斬撃が“レギオン”を真っ二つに両断した。
確かな手応えを感じると共に着地。プシュウ、と排熱音が軽く漏れ出す。
マグネタイトへと変換される様子に目もくれずダイは口を開く。
「―――次は?」
『第3波、
接敵まで7秒、実に人気者ですねバディ』
「そんな人気は要らねーな。
障害物多い所のルート探せ、攻撃方向と数を限定させるぞ!」
迫る敵を引き付けながらダイは動く。
真正面からやれば足止めさえにもならない。
まだここで死ぬ訳にはいかないのだ。
何故なら彼の勝利条件は敵の全滅でもなければ生き残る事でもない。
銃声と剣戟の音。方向と絶叫が響き渡る。
戦いは続く。鋼の戦士が踊り続ける限り。
・
・
・
「はっ……ぐ、ぅううう……っ!」
レイドボス含めた悪魔たちの暴威によって築かれた瓦礫の山。
そこから絞り出すようなうめき声が続いていた。
全身を赤く染めた、右腕一本しか残っていない少女から発せられたものだ。
「う、く……っは」
それは痛みを堪え切れず漏らしたものではない。
今更死にかける程度の痛みで悲鳴を上げる素人でもないのだ。
理由はただ一つ―――残された右腕を使って這い進んでいるからだった。
「ハッ、ハッ、ハッ……っ!!」
ゆっくりとしたその動きはまるで地を這うイモムシのようにも見えた。
ガラスの破片、砕けたコンクリートが体を削り汚すのにも構わず少女は這い続ける。
―――自ら囮になって突っ込んだ、名も知らぬ少年の元へと。
彼女の仲間が見れば気が狂ったのかと思うだろう。
わざわざ幻術の範囲内を抜け、死にかけの身体で悪魔がたむろする場所へと向かうなどと。
事実、これは自殺行為に他ならない。
ダイが囮となって敵を引き付けているから悪魔の姿が見えないだけで、ここが戦場である事に変わりはない。
今この瞬間にも、悪魔の咢が少女を喰い散らかしたとしてもなんらおかしくはないのだ。
目的の場所へ近づけば近づくほどそのリスクは高まる。
彼の奮闘が、命を捨てる覚悟で行っている時間稼ぎが。
何もかもが無駄になりかねない、まさしく愚行。
「あ、……っぐむぅあああああっ!!」
―――それでも。
少女は向かう、向かわずにはいられなかった。
理性的な判断とやらは今すぐやめろと叫んでいる。
命を捨てるつもりかと、あんな凡人は放っておけと。
全くもって同感だった。否定出来ない。
なのに、それを全力で無視する自分に、もはや呆れの感情しか沸いてこない。
何故なら、今彼女を突き動かしているのは――――。
「もう……捨てた、はずなのに、……なぁっ!」
胸元へとボロボロになった手を突っ込んだ。
そこから取り出したのは百合の銀細工があしらわれたペンダントだ。
少女が肌身離さず持ち歩いていた―――過去の象徴。
かつて護国の守護者として戦っていた頃。
牙なき人々を守る盾とならんとした日々。
誇りと決意を胸に抱いて歩み続けた軌跡。
自分にとって最も
だがそれは―――GPの上昇により現れた強大な悪魔共によって砕かれた。
鳴らされた喇叭、抗う事は出来ない滅びへのカウントダウン。
脳裏に浮かぶのは、逃げ惑い隠れるだけで戦おうともしないアリたち。
必死になって戦う者を安全地帯から口汚く罵るだけのブタ共。
護りたいと願った人たちは何も出来ずに死んだ。
共に切磋琢磨してきた仲間たちは悉く戦死した。
後方からの罵詈雑言は誇りと決意をすり潰した。
だから見捨てた、何もかもが馬鹿らしくなったから。
あんな奴らの為に恐怖を押し殺し、勇気を振り絞る事など出来やしなかった。
故にガイア再生機構―――世界を渡り続ける集団の手を取ったのだ。
終わりへと向かう世界など、もうどうでもよくなっていた。
選ばれた人間として、この窮屈な場所から出ていきたかった。
それからは
他の者と同じく無様な現地民を嘲笑って利用し見下す毎日。
何者にも重責を負わされずに済む、ぬるま湯のような楽園。
―――それでも。
「なんで、思い出すかな……今にっ……今になって!!」
うめき声が叫びに変わる。それは怒りの発露だ。
無責任に自分を責め立てた無能たちへの怒り。
今こうして自分を死ぬような目に合わせたシャドウへの怒り。
弱い癖に自分を守ろうと無謀な戦いへ挑んた少年への怒り。
何よりも――――
本当は分かっていた。結局自分は折れただけなのだと。
自らの信念を貫く事も出来ず、逃げ場があったから逃げただけの負け犬なのだと。
強いだけで、強靭さを持てなかった―――何の変哲もない小娘だ。
だけど、思い出してしまったから。
理想しか知らなかった小娘が小娘なりにしかと抱き続けた原点を。
かつて胸に宿した想いを。魂を燃やし絶望へと抗い続けた決意を。
地獄のような世界で、誰かを守るために剣を振るい続けた信念を。
「都合のいい事は……分かってる!
どの口が、言うんだって!
いっぱい、……いっぱい酷いことをしてきた!!」
そして、思い出したからこそ。
これまで幾つもの世界で行ってきた非道が心を苛む。
昔の自分が見れば真っ先に殺しにかかる邪悪の類だろう。
そんな外道へ堕ちてしまった己の姿に涙が浮かんでくる。
―――それでも。
「だけど、まだ……、まだ私に、資格が……あるなら!」
歯を食いしばりながら顔を上げて前を向く。
遥か先で激しく戦闘を繰り広げている誰かがいる。
膨大な数に飲み込まれ、それでも抗う少年がいる。
あらん限りの力でチェーンを引き千切り、ペンダントを天へと掲げた。
「もう一度、力を貸して……誰かを守るために」
逃げ出して。
許されぬ罪を重ねて。
無様で情けない姿を晒して。
―――それでも。
「大事な事を思い出させてくれた―――彼を助けたいの!!」
清廉とは程遠い、
――――その祈りへ応えるように、銀の百合が煌いた。
・
・
・
『ア゛ギャア゛アアアアアアア!?!?!?』
| 《自爆》*15 | 肉体を爆弾に変え、特攻後に大爆発する特技。 使用者は死亡するが、直線上の敵全員に対して、 残りHP量の割合に依存した物理ダメージを与える。 |
断末魔の悲鳴を上げながら、辺り一帯を粉砕する爆発が生じた。
敵はおろか味方さえ巻き込むであろう過剰火力。
まともな知性があるならこのような―――崩壊しかけのビル内に密集した―――状態で使うはずのない1手。
だが残念な事に。この悪魔たちに
共通の目標がいるだけの相手、身も蓋も無く言ってしまえば敵の敵。
連携も何もあったものではない烏合の衆以下の集団だ。
『《
「ぶちぬけぇっ!!」
| 《緊急防御機構(幸運Ⅱ)》*16 | 自分に対するダメージと追加効果を完全に打ち消す。 レイドボスのカウンターを防ぐために1度使用。 |
| 《カバー》*17 | 味方一人に対するダメージと追加効果を自分に移し変える事ができる。 |
爆発によって崩落するビル。
そこから黒煙を引くようにして鋼の鎧が飛び出した。
見る者によってはまるでハリウッド映画のワンシーンの如き動きだ。
もっとも、当人たちからすればたまったものではないが。
『行き当たりばったりの自爆とは芸の無い……保険はこれで使い切りました。
残念ながら次はもう防げませんよバディ』
「なら次からは当たらなきゃいい」
僅かな隙間に潜り込み、攻撃と反撃を繰り返す。
薄氷の上を全力疾走で駆け抜ける時間の連続。
その甲斐もあってこれまでに都合11もの波を彼らは乗り越えていた。
――――だが、当然ながら無傷とはいかない。
幾度も攻撃を受けた鎧の各所からは火花が生じて煙を吹いている。
どう見ても限界寸前、いつ機能停止してもおかしくない有様だ。
『
それに伴い機体各部に異常発生。ほぼ全て
残存エネルギー30%以下、弾薬はほぼ払底しました』
「……そうか」
『ついでにバディのダメージも深刻です。
内臓2つが潰れて骨もあちこち折れてますよ。
物理的によく動けるものと感心します』
「うるさい、要するにどういうこった?」
『つまるところ―――絶好調でございます』
「よく言ったポンコツ!!」
しかし彼らは諦めない。
諦めは敗北で、立ち止まれば死ぬ事を理解している。
活路を見いだせるのは、いつだって走り続ける者だけなのだ。
だから指一本でも動く限り戦う。
文字通り魂の一片までもを燃焼させ抗う。
己に出来る最善と次善を取り続ける、それはまさしく弱者の足掻き。
――――だが現実は思いだけでどうにかなる物ではない。
思いだけでどうにかなるなら、世界はとうに救われている。
第13波を乗り越えようとした矢先、ついに死神の鎌が彼らを捉えた。
「――――ッ!」
ブツン、とHMDに表示されていた光景が暗転する。
それが意味するのは外部カメラの機能停止。
度重なるダメージでとうとう使い物にならなくなったのだろう。
ならば肉眼で見ればいいだけの話だが、この瞬間は不味い。
接敵の一瞬に視界が死ぬのは、それだけで致命的な隙を晒す。
薄氷を渡り切れず、ただ深い水底へと沈むのみ。
「ギイイイイイイイ!!」
よってこれは当然の結果。
動きのブレた獲物目掛け、凶悪な爪が振るわれて。
ダイの身体は鎧ごと―――上下へと引き裂かれた。
『助けて……大ちゃん……』
―――
目の前で実の親に絞殺されようとしている同級生の少女の姿。
止めようとしても無理だった、体が竦んで動けなかったから。
泣きながら助けを求める手を握る事が出来なかった。
『大ちゃんはどうする?
僕は彼女についていくよ』
―――
微笑ながら外道の道へ進もうとする友人の姿。
殴ってでも止めようとしたが、悪魔の力を前に返り討ちにあった。
もし何か歯車がズレていれば、自分も同じになっていたかもしれない。
『大ちゃんは戦うのね。
きっとそれは、ひどく困難な道のりだと思う』
―――
恩人にして聖母のような慈愛に満ちた女性の姿。
遠い異国の地で口にした決意を、ただ静かに受け止めていた。
最期に、自分を救■主の運命に引き込んだ事を謝罪して逝った。
『あはははは!! いいよ、遊ぼうよ
あんたなんかに何が出来るのか楽しみにしてるわ!』
―――
少女の形をした人ならざる邪悪の姿。
魂さえ殺す恐ろしき邪気を纏ったあの怪物に、決して屈しないと誓った。
最期は半ば相打ちに持ち込んで、怨念の言葉を吐いて消し飛んだ。
敵も味方も世界ごと死に絶えて。
悪運強く自分だけが生き残った。
いい加減、もう楽になって良い。
――――それでも。
意識の断絶は一瞬。
歯を食いしばって死を拒絶し、最後の石化弾を反撃で打ち込んで群れを無力化する。
次の問題は宙を舞う上半身と下半身。数秒後には出血多量で確実な死が訪れる。
―――ならば。
「カルラァッ!!
薄れゆく意識の中、文字通り血を吐きながら
| 「悪魔合体ライト」*19 | 戦闘中に通常の悪魔合体ができる。 ⇒「マシンと悪魔の融合」 |
| マシン:カルラ(近接戦闘形態) Lv40 |
《射撃武器》⇒《近接武器》 《獣の反応》 《クイックロードⅢ》⇒《乱入剣》 《電気ショック》⇒《ホールド》 《自己修復機能》⇒《追加格闘威力》 《緊急防御機構(幸運Ⅱ)》⇒《オーバードライブ》 《リミットブレイクⅡ》 《反撃》 |
『―――ッ
息を吹き返した機体が再びパーツへと分解し違う形を取ろうと動き出す。
―――
もちろんこれではくっつけただけだ。出血は止まらず死に体のままである。
『
―――戦闘前の過剰投薬が無ければ。
| 《応急措置:薬物》*20 | 薬物の効果の進行を停止する。 有効時間は威力×(10分) ⇒「特級傷薬」*21使用。 |
再構築した鎧を外骨格として体を固定。
効果を遅延していた霊薬により傷口を無理矢理癒合。
少しでもタイミングがズレていればそのまま死んでいたであろう荒業を成し遂げる。
込み上げてくる内臓の欠片を吐き出しながらダイは苦笑した。
「ゴフッ……呆れるくらい……悪運ツエーなオレ。
何度目だよ、こういうの?」
『10回を超えてからはカウントを辞めました。
……エネミーソナーが14波を感知。
近接兵装ではこれまでのようには行きませんよ』
「さっき言ったろ絶好調だって。
オマエは補助に徹しろ。
―――回避運動は全部
| 「状態異常:高揚」*22 | 気分が乗って勢いがついた状態。 誕生篇において「マッスルドリンコ」を使用するとこの状態になる。 ⇒急に反射神経が研ぎ澄まされる。全ての攻撃をスイスイかわす。 ⇒1/20の確率で生じる効果。《アリ・ダンス》と同補正と裁定。 ⇒毎ターンMPを消費する。 |
| 《焚きつける》*23 | 相手を煽り、闘争心を焚きつける特技。 対象と、その周囲の敵に対して、使用者に注意を集中させる。 |
デメリットも多く安定性が低い故なるべく避けていたが、今回ばかりは“当たり”を引いたようだった。感覚が異常なまでに研ぎ澄まされ、あらゆる動きがスローモーションに映る。
だからまだ戦える。
挑発を行いターゲットを自分へ集中させつつ、更なる時間稼ぎを行う。
文字通り、その精神力が尽き果てるまで。
『
「最後まで付き合えよ
そして再び敵の大群へと突入し―――――。
| 《両断破》*24 | 斬撃相性。具現化した気を放つ特技。 使用者の前面にいる敵に対して、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
「―――ッ」
後方から予想外の攻撃。相棒のセンサーが捕捉するよりも速い何者かによる援護。
ダイは思わず振り返り、そして見た。
―――純白の衣を身を纏う、1人の少女の姿を。
「オマエは……」
失っていた手足は元通りになり、姿も多少異なっている。
それでもダイが見間違うはずもない。
己が命を懸けて助けようとした、死への恐怖に震えていた彼女がそこに居た。
無論、今でもその瞳には恐怖の色があった。
死への恐怖が、死地へと挑む恐怖が、蔑まれ否定される恐怖が。
ダイを遥かに上回る力を持ちながら、真正面からそれを跳ねのける
それでも―――“勇気”を以て心を奮い立たせ、彼女は今この場所に立っている。
大切な事を思い出させてくれた彼を助ける為に。
誰かを守ろうと戦う彼と肩を並べられるように。
「……教えて、キミと、キミの相棒の名前。
知ってないと誰も褒めないし、誰も悲しめないから」
次なる敵の波が来る前に、少女は1人と1体の名前を問うた。
本来ならこのようなタイミングでする事もない自己紹介を。
まるで大切な儀式であるかのように、どこか顔を赤らめて。
「―――ダイ。今はそう名乗ってる」
『高陽親王が傑作の1つ、カルラで御座います。
以後お見知りおきを』
「……うん、ダイとカルラ。
覚えたわ、絶対忘れない。
だから―――私の名前も覚えて」
\カカカッ/
| デビルシフター | サロメ | Lv60 | 相性:精神・魔力・破魔無効 |
| 英傑 | ジャンヌ・ダルク | Lv65 | 相性:破魔・呪殺・魔力・神経・精神無効 |
「私はサロメ、ただのサロメ―――英傑ジャンヌ・ダルクの
今から一緒に戦っても良い?」
かつて全てから逃げ出した少女が、今ここに再起を果たす。
見放されたと、使う資格を失ったと思っていた力を以って。
「―――戦えるなら一緒に頼む。
オレ1人じゃ切り抜けるのは無理だ」
『予定を変更。このまま援軍の所まで強行突破を推奨します。
レディ、貴女もそれで構いませんね』
「分かった……一緒に
斯くして2人と1体は死地を駆け抜ける。
援軍と合流するのはそれから数分後。
生を拾ったと実感し、全員そのまま後方へと移るのであった。
これはレイド中に起きた出来事。
上野レルム―――“シャドウ”なる狂人が出没した場所での物語。
救■主に成り損ねた少年と逃げ出した少女、負け犬たちの再起と新たな始まりの序章である。
◎登場人物紹介
・ダイ <強化人間> <グラディエーター> LV37⇒40(限界突破)
シリーズポジション:大沢俊之(真・女神転生 エル・セイラム)
神童克彦(真・女神転生 エル・セイラム)
どこにでもいる
元居た世界ではとある邪悪の権化と戦っていた。
才能限界は低く、未だ最低ラインにさえ届かぬ弱者。そして救■主に成り損ねた者。
戦闘においては強化された肉体と薬物、相棒のマシン。そして不屈の意志を武器とする。
邪悪と理不尽に屈さない、戦えない者の盾になるという信念はかつての経験から来るもの。
自らの世界が滅び、今の世界に流れ着いてもそれは揺らがない。
―――ただし、金欠には無力なのでいつも頭を抱えている。
・カルラ <マシン> LV40(機体によって変動)
シリーズポジション:なし?
ダイの相棒。
日本で初めてからくり人形を作った人物“高陽親王”が作り上げた傑作。
核となるパーツを入れ替える事で別の機体でも動くことが出来る。
最大の特徴は悪魔合体を利用した形態変化。
近接戦闘形態の他にも電子戦闘形態、魔法戦闘形態など複数の形態を持つ。
AIでありながら口調は辛辣、毒舌を超えて罵倒になる事も。
それを抜きにしてもダイとは不動の絆で結ばれている。
―――ちなみに今回の戦いで今の機体は再起不能になった。
・サロメ <デビルシフター> LV60
シリーズポジション:太宰春子(真・女神転生 エル・セイラム)
レッドベアー(真・女神転生Ⅱ及び白刃シリーズ)
<ガイア再生機構>に所属する少女。
元居た世界では護国の戦士として悪魔と戦っていた。
才能限界は高く、英傑の力を身に宿す強者。そして逃げ出した負け犬。
戦闘においては素の力と変身先であるジャンヌ・ダルクの能力を武器とする。
力はあれど心はごく普通の少女、それでも勇気を振り絞って戦っていた。
しかし、最後はへし折れて何もかも見捨ててしまう。
―――今回の
・同級生の少女
悪魔に操られ非道に手を染め、後悔し助けを求めた少女。
必死に助けようとしたが、当時小学生のダイにはどうしようもなかった。
・外道の道へ進もうとする友人
悪魔に操られたことが切っ掛けとはいえ、自ら悪意の道へと向かった友人。
必死に止めようとしたが、当時小学生のダイにはどうしようもなかった。
数年後、互いに成長した彼らは殺し合い―――そして永遠の眠りへとつく。
・聖母のような慈愛に満ちた女性
かつて絶体絶命の窮地にいたダイを助け出した女性。
しばらくの間、遠い異国で共に隠れ住んでいた。
―――彼女が悪魔の手によって命を落とした時、抗い続ける事を決意する。
・少女の形をした人ならざる邪悪
人でありながら人でない何か。
人の遺伝子に潜む邪悪なものが、幾百万もかかって進化を重ね生まれた新たな種族。
この娘の前では、愛も哀れみも意味を成さない。
半ば相討ちとなって消し飛んだが、直後に漂流したためダイは死ぬ瞬間を見ていない。
これでレイドバトル編は終了。
次回は短編集をやるか戦闘をするか考えています。