真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~   作:ジントニック123

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Demon Blade -後篇-

 

 

 刹那、かつての会話が想起される。

 まだ未熟極まりなかったガキの時分。

 ひたすらに強さを求めて道場破りを頻繁に繰り返していた中学時代の事だ。

 

 

「父上、お聞きしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」

 

「家の中でお行儀の良い口調止めてくんないバカ息子。

 普段からそれされたら息詰まるから」

 

「じゃあ改めて―――おいクソ親父聞きたい事あるんだがいいか?」

 

「流石に温度差で風邪ひきそう……っ!」

 

「うるせぇとっとと答えろ。

 今いる人間で聞けるのアンタしかいねぇんだ」

 

「言っとくが小遣いに関する話なら俺にしても無駄だぞ。

 父ちゃん今月分はお馬さんに全部つぎ込んで素寒貧だ。

 ほれ見ろ、財布を振ってもキャバ名刺しか出てこない」

 

「端から期待してねーよんなもん。

 生まれてこの方一度も勝った所見た事無いし」

 

「いいかよく聞けよ宗吾。

 男って生き物には負けの見える勝負でも挑まなきゃならん時があるんだ」

 

「あと先月ちょろまかしたへそくりについてお袋が話あるってさ。

 たぶんキャバ代に消えたのがバレたんじゃね?」

 

「おぉっと、久々にがっつり修行したくなってきたぞぉっ!! 

 今から1週間くらい山籠もりするけど心配するなって伝えておいてくれ!!!!」

 

「今がまさに挑む時では?」

 

「それはそれ! これはこれ!! ぶっちゃけ怖い!!! 

 母ちゃんに殺される!!!!!!!!」

 

「はいはい分かった分かった、ちゃんと(逃げられたら)伝えておくって。

 だからその前に答えてくれ。

 ―――今更だけどウチの流派の名前って何?」

 

「ん……あれ……言ってなかったか?

 うん、そういや言ってなかったかもな。

 ワハハ、すまんすまん忘れてた」

 

「いや俺も道場破りの時に名乗ろうとしたら知らない事に気付いたくらいだから。

 一応動きからして一刀流の系譜だと当たりは付けてるんだが……」

 

「おう、その通りだとも。

 北辰一刀流を修めた曾祖父が鞍馬山の天狗より教わった剣術と合わせて開いた流派でな。

 つまり鞍馬八流もとい京八流の流れを汲むのだ!

 どうだ、ビックリしただろう!?」

 

「あそこの天狗って縁があれば普通に教えてくれるし、ありがたみ全然無いじゃん。

 つか前に1手指南して貰った事もあるぞ俺。*1

 そもそも一刀流自体が元を辿ると京八流に辿り着く気が*2

 

「細かい事はいいんだ気にするな。

 で、奇しくもその頃は文明開化真っ只中。

 曽祖父は剣術に新しい風を吹き込むべく興した流派をこう名付けた」

 

 

 

 

「すなわち――――NEO京八流・ニューエイジ派と!!」

 

「文明じゃなくて頭が開化(パー)になってたのかご先祖様???」

 

 

 

 この日以降、自分は流派を口にする際は北辰一刀流を名乗るようになった。

 

 ちなみにクソ父親は玄関から出た所で母に捕まり地獄の折檻1週間コースとなった。

 

 

 

 

 

 

 

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 ・

 

 

 

 

 

「~~~~~ッ!!?」

 

 

 一直線に走る灼熱と共に意識が現実へと引き戻される。

 眼前には血振るいを終え既に納刀を済ませたX-2の姿。

 耳に届くのは自分以外の面子から零れ落ちた苦悶の声。

 

 それが意味するのは。

 

『―――HIとつ』

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事に他ならない。

 

 抜く手どころか軌跡さえ見えぬ神速超過抜刀。

 龍の反応(カポーピアス)によって反応速度が向上した宗吾でさえ対処不能の5連居合。

 あまりの速さに反撃に移る呼吸を掴む事も出来なかった。

 

(……()()―――ッ!?)

 

 そう、これは魔剣だ。その域に足を踏み入れた抜刀術だ。

 稀有の才能をもって磨いた技を理外の域にまで高めた剣。

 何をしたのかは分かっても、真似する事は不可能な芸術。

 

 視線を動かさず気配だけで周囲を探れば既に欠けた面子―――位置的にグルル―――がいる。

 おそらく初手で会心込みの居合を喰らったのだろう。

 食いしばりさえ許さずに死亡し美野里のCOMPへと叩き戻されたのだ。

 

(傷は深いが……即死しないのは救いか!)

 

 下手をすれば全滅していた所だが、どうやら幸運が味方したようだった。

 致命打を受けない限りそう簡単に落ちる事もないだろう。

 味方が1体落ちたとはいえ、それでも数ではまだ優位にある。

 

 

 

―――「状態異常:呪い」―――
*3

―――《鎮静の秘法:クロズディ》―――
*4

 

 

 加えてX-2の魔封攻撃への対策も十分機能している。

 宗吾は屠牛刀から受けた呪いによって魔封を無効化。

 美野里は自らの手番になれば自動的に回復できる。

 こうして先手を奪われようが、まだまだ巻き返しは可能な範囲だ。  

 

 

『つGI―――!!』

 

 

《居合一心》*5敵全体に物理属性の打撃型ダメージを与える。

 攻撃成功時、自身をチャージ状態にする。

《バイオレンス》*6点滅状態のプレスターンアイコンを2個追加。

 

 

 ただし―――それは敵の攻撃が終わっていればの話。

 

 再び無敵の居合が鞘より解き放たれた。

 此度の太刀筋は一振りで全員の首を刎ねる必殺を期した軌道。

 回避も防御も許さぬ、神業めいた刀剣技芸(ブレイドアーツ)

 次の瞬間には首無し死体が4つ転がる未来が訪れるのは予想に難くない。

 

 

『させぬ―――!』

 

 

 よって―――これを阻止出来るとすれば悪魔的な業だけだ。

 

 

「アテナの神盾」*7女神アテナの盾。イージスとも呼ばれる。

《女神の加護》*8即時効果。味方全員に対する攻撃を打ち消す。

アテナの神盾の付加スキル。シナリオ1回のみ使用可能。

《伝説の武器》*9英雄・軍神限定の種族専用スキル。

戦闘開始時、習得者のレベルに等しいGPまでの武器を得る。

武器の装備条件は無視される。

この武器の受け渡しをする事は出来ない。

 

 仲間を守るようにハゲネが前へと踏み出し、本来持つはずのない大楯を掲げる。

 直後、大楯から生じた光が拡散し迫っていた必殺の刃を食い止め不殺へと貶めた。

 

『主より授かったこの力、破れるものなら破ってみよ!!』

 

 これぞ美野里によって施されていたいざという時の切り札。

 戦女神が英雄に授けし鉄壁にして絶対の守りである。

 

『さあ、これより反撃開始だ!!』

 

 薄皮一枚繋いだ命脈―――ハゲネの魂が励起し口元にニヤリと笑みが浮かんだ。

 

 

 

 

 

『――――FUたつ』

 

 

 

 

 ―――《ムラマサコピー》―――

 ―――《剣神の武威》―――

 ―――《オーバードライブ》―――

 

 

 ―――笑みを浮かべたまま英雄(ハゲネ)の首は宙を舞った。

 

 如何にニヤリ状態であろうとも、行動する前に死ねばどうしようもない。

 力の抜けた手から大楯が床へと落ちて粉々に砕け散った。

 無力な愚者、強大な英雄の区別なく魔剣は等しく斬り捨てるのみ。

 

 

「舐めんなっ!」

 

 

金翅鳥王剣(デスカウンター)*10物理型攻撃に対し50%の確率で発動。

3倍の威力で通常攻撃を行う。

⇒段階1:クリティカルが発生する。

⇒段階2:いまだその領域に至らず。

《双手》*11通常攻撃が、小威力+通常の2回攻撃になる。

面倒を見た教え子から学んだ(パクった)技。

《聴勁》*12格闘回避、防御、反撃の成功率を上昇させる。

本来は太極拳に分類されるスキル。

抜刀術の奥義に通ずるものがある為、例外的に使用が可能。

 

 

 そこで剣鬼が斬り込んだ。

 

 消滅していくハゲネの身体を目隠しとして振るわれる8つの剣閃。

 流石に3度の居合により体勢の崩れたX-2では回避も叶わない。 

 連続する斬撃を受け、たまらず装甲を撒き散らしながら大きく吹き飛んだ。

 

「チッ……開けやがったか」

 

 ―――否、自ら飛んで距離を取ったのだと宗吾は察する。

 仕切り直したと言ってもいい。

 

 事実、吹き飛んだ先では既に居合の構えを取っていた。

 次で仕留めるという明確な意思表示。

 所々から火花が散っているが、それが叶う可能性は極めて高い。

 

(……撤退する?)

 

 宗吾の隣へと踏み出した美野里がアイコンタクトだけで尋ねた。

 

 その手には銃だけではなく煙幕弾も握られている。

 本来、強大な敵に対して効果は無いものだが使い方次第だ。*13

 実際に逃げられた例がある事も確認している。*14

 この状況では最も適した選択肢にも思える。

 

 それを踏まえた上で。

 

(―――無理だ、相手の間合いが広すぎる)

 

 宗吾は逃走が不可能であると判断した。

 煙で視界を塞ごうが、転移によって離脱しようが。

 意識を逃げに回した刹那に斬り込まれて終わる予想図(ヴィジョン)しか見えない。

 

 あのX-2はそれだけの相手だ。

 それだけの事が出来る剣士だ。

 それだけを極め抜いた魔剣だ。

 

 ならば、活路は1つしかない。

 

 

 

 宗吾は腰を深く落とし膝を床に着いて―――刀を鞘に納めた。

 命乞いなどではない、むしろその逆。

 

 

《抜刀の構え》*15間合いに入った相手に対して先に攻撃する。

敵は回避や防御にマイナス修正を受ける。

抜刀術の構えは自分及び背後にいる者に対する防御技としても使用可能。

宗吾は修練の結果、射撃攻撃も叩き落せる域に至っている。

 

 

 達したのは殺される前に殺すというシンプルな結論。

 形は異なるがどちらも居合の構え、刀圏に入った者を斬り捨てる迎撃態勢だ。

 

 本来であれば硬直状態にしかならないが……今は違う。

 X-2―――機巧剣神フツヌシは極大の間合いを操る魔剣使い。

 相対した時にはもう首筋に刃を置かれたも同然なのだ。

 

 この場合ガンマンの早撃ち勝負の如く、技量が上回る方が先に斬れる。

 そして居合に限定すれば―――宗吾の勝率は良くて1割あるかないか。

 格上相手とはいえ分の悪すぎる賭けである。

 

 

 

「その太刀筋からして、香取神道流の剣士とお見受けする。

…………NEO京八流・ニューエイジ派、八瀬宗吾。

いざ尋常に―――勝負!」

 

 

 ガチリと、X-2から異音が鳴った。

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

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 ・

 

 

 

 ―――とある男の話をしよう。

 

 

 その男は滅んだ世界から流れ着いた漂流者であった。

 特に語るべき因縁も無ければ背負いし使命も持たないありふれた人間の1人。

 

 ただ幼少の頃より鍛え続けた香取神道流の技と誇りだけがあった。

 日本最古とされる剣術の1つ、世界を跨いでも存在した流派。

 その中でも対悪魔・対超人を想定した秘伝術理の伝授まで至った剣士が彼だ。

 

 無論、恐ろしいほどインフレした現行世界においてそれらが通じるはずもない。

 積み重ねて来た歴史(研鑽)があろうとも、行使する者が貧弱であれば意味を持たない。

 

 結果、彼は漂流後に幾つもの敗北を味わい屈辱の泥を噛みしめた。

 負けた相手の中には己の半分も生きていないだろう子供の姿もあった。

 剣は届かず、刃は断てず、技は至らず。

 どうしようもないほど高く立ち塞がる現実という名の壁。

 

 

 ―――しかし、だからと言って彼が折れる事は無かった。

 

 

 壁があるのなら乗り越えればいい。

 斬れぬモノがあるならば斬れるようになればいい。

 腐っていじけている暇など無い。

 1回でも多く素振りに使った方が遥かに有意義だと考えたのだ。

 

 前向き思考(ポジティブシンキング)というには物騒で、剣者としては至極当然の話。

 加えて強くなるには事欠かないほど敵は多いのだから不可能でもない。

 

 それからは日銭を得る為に悪魔を斬り、流儀と縁深いフツヌシを祀りながら修練を重ねる毎日。

 それまで以上に死にかけながらも足掻いて藻掻いてひたすら前へと進み続けた。

 やがて彼の居合が空気を震わせないようになった頃、レベルは足切りとされる50に達していた。

 

 無論、そこで満足する筈もない。

 漂流者にしては高い域であるが足を止める気は毛頭無かった。

 更なる研鑽を積み、いずれはセプテントリオン相手に鍛え上げた居合を馳走するつもりであった。

 

 

 

 ―――新世塾の漂流者狩りに遭わなければそんな未来もあり得たのかもしれない。

 

 

 ある日の仕事仲間たちごと囲んできた鋼の人型戦車の群れ。

 当然抗戦したが数で叩かれればどうしようもない。

 捕まり無力化され……待っていたのは生き地獄。

 

 肉体の大部分を削ぎ落し脊髄から頭部だけを演算装置(光結晶)に作り替えられた。

 今では自分を殺した人形と同じ存在へと成り果て、魂さえも残りカスしか残っていない。

 

 ―――かつての名前は失われた。

 ―――かつての思い出は砕けた。

 ―――かつての願いは叶わない。

 

 それでも―――技と誇りだけは残った。

 現状を正しく理解出来ず周囲の存在の区別がつかない有様であろうとも。

 これだけは絶対利用されてなるものかという鋼の如き意志力があった。

 

 今の彼を突き動かすのはそれだけだ。

 それだけを支えに外道たちに抗った。

 抗った末に得た好機で皆殺しにした。

 

 あるいは……魔盾の装甲を外した瞬間に縁のある武神から加護を受けたのかもしれない。

 

 

 ―――だからこそ。

 

 

「その太刀筋からして、香取神道流の剣士とお見受けする。

…………NEO京八流・ニューエイジ派、八瀬宗吾。

いざ尋常に―――勝負!」

 

 

 視界(センサー)に映るそれを何があっても許す訳にはいかなかった。

 

 

 

 ふざけた名乗りはどうでもいい。

 そもそも何を言っているのか理解する機能は残っていない。

 重要なのはその姿、すなわち片膝を着いた居合の構えにある。

 よく知っている、知らない筈がない。脳ではなく魂に刻まれているから。

 

 

―――香取神道流表居合・草薙之劍―――

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()1()()()()()()()

 

 居合使い相手に居合で挑むというだけでも愚行以下の所業。

 それも相手の流派の技を使うなど侮辱の域だ。

 眼前の浅慮者は己が誇りを踏み躙ろうとしている。

 

 

『……KIる!!』

 

 

 ―――《ブラッディチャージ》*16―――

 ―――《ムラマサコピー》―――

 ―――《夢想の構え》―――

 ―――《縮地》―――

 ―――《剣神の武威》―――

 

 

 宣言と共に彼―――X-2フツヌシは既に相手との距離を縮めていた。

 

 新たな体となった人型戦車は限界を無視した過剰駆動により崩壊寸前。

 骨格(フレーム)には所々亀裂が走り、動力部を中心に融解が始まっている。

 機能停止するまであと数分も残されていないだろう。

 

 しかしそれだけあれば首を落とすのに十分過ぎる。

 眼前の敵手は今になってようやく鯉口を切ったところだ。

 1秒もしない内に居合を弄びし愚物へ相応しき結末が訪れる。

 

 

 

 

 

「―――エイト・マハーヴィディヤーズ」

 

『ついでにデバフだぁあああ!!』

 

 

 これが―――1対1の死合いであったのなら。

 

 本当の愚か者は果たしてどちらであったのか……刹那に彼は理解した。

 

 

《精神ガードキル》*17次のターンまで精神耐性を打ち消す。

若槻美野里に眠る力をスタンドによって引き出したもの

《フォッグブレス》*18敵全体の回避率と命中率を2段階ダウン。

《三挫き》*19心(精神)相性。

敵の行動を阻止する。

判定に大失敗した場合、金縛りとなる。

 

 

 2つの波動が剣神を絡め捕り、その隙を剣鬼が突いた。

 

 機巧剣神の失敗は1つ。

 殺さなければならない相手だけに意識を向け、それ以外を捨て置いた事。

 挑発に乗せられ、まだ生きている1人と1体を見えないようにされた事だ。

 

 仮に、彼に少しでも判断能力が残っていればこのような事態にはならなかっただろう。

 精神を磔にされ、神速越えの抜刀は見る影を失った。

 ―――すなわち。

 

 

 

「さあ―――“魔剣(おわり)”を始めよう」

 

 

 

 この瞬間、運命は確定する。

 

 

 

 

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 ・

 

 

 

―――「シーンBGM:Demon Blade」―――

 

 

 

 魔剣の話をしよう。

 魔剣とは、理論的に構築され、論理的に行使されなければならない。

 あるいは剣術の常道から外れた文字通りの必殺剣。

 特定条件下においてどんな相手でも確実に斬殺する機構(システム)

 

 そして、宗吾がいつか自分で語ったように存在する筈が無いモノ。

 水面に浮かぶ月の如く、決して手の届く事はない泡沫の夢である。

 

 だから―――これは遥か彼方の幻想(ラストバイブル)

 届くはずのない水月を限りなく現実へ引き寄せた魔剣ならぬ魔剣。

 流れ着いた世界で剣鬼が至った1つの回答だった。

 

 

《冥界波》*20突撃相性。

自ら精神と身体を引き離し、その間隙に凶暴なる突破力を得る。

使用者の周囲にいる敵に対して、近接・射撃攻撃力・魔法効果量の

全てを加味した物理ダメージを与える。

 

 

 ベースとなったスキルは己が力を全て集束する《冥界波》である。

 

 

 まず必殺という事を念頭に置いた場合、求められるのはシンプルに威力。

 膨大な体力を持つ悪魔であろうと一撃で殺せるだけの殺傷力と言い換えてもいい。

 当然、そんなモノを人間一人の身でひねり出すなど不可能だ。

 どれほど高レベルでも、筋力魔力技力全てを総動員した程度では結果は見えている。

 

 

 ならどうするか? 

 簡単だ―――他の所からリソースを持って来ればいい。

 そうした実例がある事を宗吾は知っていた。

 

 参考にしたのは2つの技。

 1つは鳴神虎春の世界知識を破壊力に変える打撃(アカシックバリツ)

 1つは藤原塔也の精神力を爆発力に転換する斬撃(メガストライク)

 

 どちらも本来無形のエネルギーを現実に出力するという共通点がある。

 そしてそれは、状況によっては格上をも喰らうだけの力を発揮しうる。  

 

 剣鬼・八瀬宗吾の場合、この太刀筋に込めるのは―――信念。

 

 悪魔の血を宿そうとも人として足掻くという祈り。

 悪魔の力を使おうとも人として生きるという決意。

 悪魔の声を聞こうとも人として咆えるという誓い。

 

 彼が人間としてあろうとする思いが強いほど、理論上威力は際限なく高まる。

 これらの総合力を斬殺の動力へと充て必殺へと昇華するのだ。

 

 もちろん、どれだけ威力が高まろうとも当たらなければ意味は無い。

 回避、防御、無効化―――他にも対策は山のように上げられる。

 無敵の剣、必勝技と言うには程遠いだろう。

 だが……無限の先にある到達点へ歩を進めたのは確かだ。

 

 かくなる工夫によりその理論はひとまずの完成を見る。

 

 これは歴史に記されぬ最強の剣士が振るった技に通ずるもの。

 

 心・技・体の総てを注ぎ込んだ絶技。

 機巧剣神X-2フツヌシの居合とは質の異なる魔剣。

 

 際立った工夫に依る剣ではない。

 稀有の才が生んだものでもない。

 

 形だけならなぞれるものは多くいる。

 しかしこれだけの威力を引き出せる熱量(思い)を抱けるものがどれだけいる事か。

 少なくとも彼の阿修羅は自分には不可能であると断言した。

 

 八瀬宗吾はこれを成す。

 悪魔の血を引き、剣の道に生きる鬼でありながら―――人であり続ける者。

 境界を踏み越えず人のまま人の剣を追い求める彼だからこそこの妖技を現実のものとする。

 

 

 

《我流魔剣・神鬼浪》*21突撃相性。

自ら精神と身体を引き離し、その間隙に凶暴なる突破力を得る。

使用者の周囲にいる敵に対して、近接・射撃攻撃力・魔法効果量の

全てを加味した物理ダメージを与える。

⇒1シナリオ1回のみ使用可能。

使用後、攻撃力・防御力が大幅に低下する。

⇒これは■である。

 

 

 

 

 ―――ここに必殺の刃鳴が咲いた。

 

 

 

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 ・

 

 

 

 

「ハ……ッァ……ッ!」

 

 

 荒い息遣いだけが広い空間に響く。

 刀を杖にして辛うじて立っている宗吾から発せられるものだ。

 自らの全てを文字通り振り絞った魔剣。その対価は当然軽くはない。

 

 現時点では連発など夢のまた夢。

 休息を挟んだとしても数日のインターバルを要するだろう。

 そういう意味でもまさに魔剣。使い手をも蝕む禁断の刃。

 

 ―――それでも見合うだけの成果は得られた。

 

『GA……ぎぃ、A……』

 

 遥か先まで()()()()()研究区画。

 そのすぐ手前の場所で頭部以外が粉砕されたX-2フツヌシの単眼(モノアイ)が点滅を繰り返していた。

 

 空間に威力を逃がさず軌道上の物を断ち切った結果だ。

 もう動く事は叶わない。

 居合(魔剣)が閃く時は二度と訪れない。

 

「……素晴らしい剣だった。あんな居合想像だにしなかった。

 搦手使わなきゃ、攻略するのはたぶん無理だったよ」

 

 だから勝者として伝えるべき言葉がある。

 相手に伝わるかどうか分からなくともやらねばならない。

 消耗した体に鞭打って、宗吾は口を開き続けた。

 

「あんたの背景は知らねぇし、これから知る事も出来ない。

 この目で見た事しか覚えていられない。

 ――――だけど」

 

 生身の目と機械の目が合う。

 名前はおろか性別も年齢も分からない。

 分かるのは香取神道流の剣士という事だけ。

 

 それでも、不思議とその瞬間だけは心が通じた気がした。

 

 

「あんたの剣、辿り着いた奥義は俺が受け継ぐ。

 俺の血肉としてこれからも振るい続ける。

 だから今は安心して逝ってくれ……生まれ変わったらまた戦ろう」

 

 

『―――――』

 

 返答は無い。

 やがて単眼(モノアイ)から完全に光が失われる。

 ―――その刹那。

 

 

 

 “……ああ、次こそはこちらが勝たせてもらおう。”

 

 

 ふと、そんなあり得ない筈の言葉が耳に届いた。

 

 

「っ……!」

 

「お疲れさま。今は休んでて」

 

 最期を見届けた後、宗吾の身体が大きく後ろに傾くが、すぐさま美野里が支えに入った。

 が、彼女の足も生まれたての小鹿のように震えている。

 仲魔(ガキ)もスタンドも戻している事から、宗吾ほどではないにしても消耗しているのは明らかだ。

 

「美野里ちゃんもだいぶ足キテるだろ。

 無理しなくていいぞ重いだろ」

 

「あんたが走れるようになるまでは頑張れるから。

 ―――それと、残念だろうけどパーティはここでお開きよ」

 

 網膜ディスプレイに表示された《メタボリズム・チェッカー》の診断は危険域(レッド)

 1分にも満たない戦闘であったが2人の体力を奪うには十分過ぎた。

 そうでなくとも仲魔の状態や消耗品の数からして、これ以上襲撃役として暴れるのは難しい。

 役割は十分果たしたとして撤退しても文句は言われないはずだ。

 

「ルートは確保してるから何事もなければ数分で脱出できるはず。

 もうひと踏ん張り行ける?」

 

「こんなとこで死んでちゃ嘘つきになっちまうからな。

 這ってでも動くって……!」

 

 残骸となった剣神に背を向けて2人は来た道を引き返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば―――NEO京八流・ニューエイジ派って何?」

 

 

「正直言うと今すぐ忘れて欲しいかなって」

 

 

 

 

 

 

 

 この後、異界に現れた餓鬼の群れとそれを薙ぎ払う3人組を見て自分も混ざろうとした馬鹿を拳で沈める少女が居たとか。

 手合わせを願い出ようとした所を無理矢理引きずられていったとか。

 そんな光景が目撃されるのであった。

 

 

 

 

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―――〈現行周回 座標不明異界〉―――

 

 

 そこはこの世ならざる光景の広がる場所だった。

 大小含め無限に存在するドラムと歯車で構成された異界。

 人や悪魔が介入する余地のない、蒸気と鉄とで積み上げた空間。

 

 そんな場所で重なるような声が響く。

 

 

「―――罪都の生き残りが足掻くか」

 

「己が罪、己が傲慢、己が愚昧によって神に怒り触れし者たちが」

 

「ならば再び動かなければなるまい」

 

「地上に対する権利も、終焉の喇叭を鳴らす役目を失おうと」

 

「あの都市と住人たちを滅ぼす―――その使命(オーダー)はまだ生きているのだから」

 

 それは1人で発したようにも4人で発したようにも聞こえる声であった。

 分かるのはただ一つ、必滅の意思を宿している事だけ。

 込めるのはかつて逃した得物を今度こそ逃がさないという妄執染みた決意。

 

「―――舐めた事抜かしてんじゃないニャ。

 こっちの封印でロクに動けねーくせに」

 

「老兵は死なず、ただ消え去るのみ。

 ……自分たちが時代遅れの遺物である事を理解したまえ。

 出番の終わった役者は舞台裏で引っ込んでいるものだ」

 

 

 それに抗う罅割れた姿が2つあった。

 声の主は猫のような耳のある少女と狼のような風貌をした青年のもの。

 込めるのはかつての仲間たちを今度こそ守ってみせるという悲壮染みた覚悟。

 

 

「痩せ我慢をいつまで続けるつもりだ―――限界も近いだろう」

 

「無論、この身が亡ぶまでさ」

 

「こっちがくたばるまでは付き合ってもらうニャ。

 少なくとも“本体”だけは絶対出させねー」

 

 

 ―――とある運命が再始動するまで、残り僅か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
※ 退魔生徒会シリーズ6巻 特殊アイテム「天狗の朱印状」をもらい、シナリオ中《夜桜の舞》が使用可能となった。

*2
京八流→念流→中条流→鐘捲流→一刀流

*3
※真1 石化以外で上書きは出来ない。

*4
※200X サブアプリの1つ。毎ターンセットされた治療系スキルを自動的に発動する。

*5
※D2

*6
※DDSAT

*7
※200X

*8
※200X

*9
※200X

*10
※真ⅢTRPG&タ■タ■コ■ボ

*11
※デビサバ2

*12
※誕生篇

*13
※真1メガCD版では煙幕弾でボスからも逃走可能

*14
※気力様「姫の護衛は地底人《ケガレビト》 真・女神転生オタクくんサマナー外伝」

*15
※誕生篇改変

*16
※ P3R HPを消費し物理攻撃2倍とクリ率アップ

*17
※200X

*18
※真Ⅲ

*19
※誕生篇

*20
※IMAGINE

*21
※IMAGINE《冥界波》改変&■■■■■





◎登場人物紹介

八瀬宗吾 Lv60⇒65
今回の仕事で強敵と戦い抜いたので大きくレベルアップ。
魔剣もひとまず完成させたがまだまだ研鑽が足りない。
機巧剣神との戦いで幾つか技を習得&アップデート。


若槻美野里 Lv58⇒63
ESP系の極地であるスタンドに発現し手札がさらに増えた。
ただ最近自分が本当にウカノミタマの転生者なのか疑っている。
この仕事の後、再会した須摩留の面子と色々話し合う事に。


機巧剣神X-2フツヌシ Lv86
元は香取神道流の使い手で魔剣の域に踏み込んだ剣士。
人型戦車の素材とされても利用されてなるものかという意志力で抗っていた。
新世塾以外の面子を斬らずに済んだのはせめてもの幸運だったと言える。
最期は再戦を約束しその生涯を終え、鍛え上げた技は宗吾に受け継がれた。


・Tips

「闘牛刀(相気の杖)」
マタドールの折れた剣を刀として打ち直した物。
吸い続けた血の呪いは健在で装備しただけで呪われる妖刀。
逆に石化以外の状態異常も防げるメリットもある。
アイテムで回復しながら移動しているが、その気になれば気合いで装備解除も可能。


「我流魔剣・神鬼浪」
八瀬宗吾が辿り着いた魔剣。
己が全てを、思いさえも力に変えて行使する超威力の絶技。
性質上連発は困難かつ自由に使えない。
そもそも本人に頼るという考え自体が存在していない(剣士として死ぬため)

人間であろうとする思いが要であり、人間でありながら人間から外れた者。
特に悪魔人間に対しては反発心から最大の威力を発揮する特徴がある。

―――宗吾は知る由も無いが、これと同質の剣を振るった剣士が存在する。


「NEO京八流・ニューエイジ派」
本人は黙して語らない。
高校時代の仲間でさえめったに触れる事はなかった。
ただし、美野里は精神攻撃として口にする事がある。





これで新世塾編は終わりです。
ようやく魔剣を披露出来ました。
まあイベント限定技みたいなものなので乱発はしません。

次回は幕間的な話を予定しています。


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