真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
「
グシャッ、バキッ、ゴキッ。
そんな異音が都内屈指の歓楽街に響いていた。
池袋という街の性質上、喧嘩自体はありふれた光景である。
特にこの時間帯であれば酔っ払い同士のいざこざも日常茶飯事だろう。
だが、それでも限度というものはある。
例えばこのように―――ヤクザに馬乗りになってひたすら顔面を殴り続けるなどまずあり得ない光景だ。
| 「シャドウジャック」*1 | 敵複数体に3~5回攻撃する。 ヘアリージャックの魔晶変化武器。 |
| 《狂乱》*2 | 「ヤケクソ」状態に入る。本来は「狂乱」となるスキル。 “心の一方影技・憑鬼の術”とも。 汝はチャラ男、罪ありき……と言うか死ね!! |
| 《大虎》*3 | ヤケクソ状態だと通常攻撃の威力が上昇する。 |
| 《双手》*4 | 通常攻撃が、小威力+通常の2回攻撃になる。 |
「
「いやもう死んでるって。
潰れたスイカになってんぞー」
| 超人 | BSSマン | Lv51 |
| 超人 | 三途の川常連 | Lv48 |
殺意と狂気に満ちた
宗吾の弟子の1人―――通称“三途の川常連”は軽く息をつく。
阿修羅会との戦争が始まってからそれなりに時間が経ったが、終わる気配は一向に見えないままだ。
妙な結界の影響で敵も随分と強化されており、今の所倒せてはいるが疲労も積み重なって来ている。
まだ行けるというのは危険信号。
見えない牙に噛まれて命を落とす兆候である。
よって指揮を預かる身としてはそろそろ引きたい気持ちがあるが、この状況ではそれも無理だ。
次善の方針として消耗を可能な限り抑えて戦っていくしかない。
「……おい、褐色巨乳好きと筋肉マンどこ行った?」
そうやって思考に数秒ほど割いていると、半分ほど正気を取り戻した少年―――通称“BSSマン”が口を開く。
尋ねるのはこの場に居ない仲間について。
ヤクザの一団を殴り殺すまでは近くに居た筈だが、いつの間にか姿が見えなくなっていた。
「2人には近くの店とかで物資の補充を頼んだ。
アイテム切らすとヤベーのが出た時まずいだろ。
死体が消し飛んだら流石に三途の川から戻れねーし」
「最後のはお前だけじゃねーか。
むしろ今別れるのが一番駄目では?」
全員揃っていれば大丈夫などという妄想は抱いていない。
むしろギリギリだという確信がある。
だというのに別行動などすれば各個撃破のリスクが著しく高くなる。
その訴えに三途の川常連は問題無い、と肩を竦めながら答えながら視線で指し示す。
釣られてBSSマンがそちらを見ると―――。
「ぽーっぽっぽっぽっぽ!! 我が恵体を活かしたヤクザヌンチャク!!!!
とくと味わっていくが良いぽ!!!!!!!!」
| 《ラブ・ハート》*5 | 死亡した敵悪魔を装備する。 スキルおよび相性耐性を自分の物として扱う。 ⇒ヘルズクーポンを使用したヤクザ(ケルベロス)を装備中。 |
| 《ハイプレッシャー》*6 | 敵全体に万能相性ダメージ。*7 |
ある場所では身長2メートル半ほどありそうな女性がヤクザを文字通りヌンチャクにして暴れ回っていた。
ブルース・リーめいた圧倒的ヌンチャクワークより発される万能の衝撃が、仲間を助けんとするヤクザたちを片っ端から粉砕する。
一般人どころか覚醒者でも目を疑う光景だ。
「そこのヤクザ、この傷を覚えているか?」
「!! その傷はぁっ!!!?」
「今ケガした」
| 「ムダ話」*8 | 敵の行動回数を1回減らす。 |
またある場所では話術で気を逸らしつつ、回想シーンに入っているサマナーの姿がある。
最終的に他のDBや仲魔による総攻撃で全滅させていた。
「お前ら今頭狙ったな。打ち所が悪けりゃ死んじまうって分かってるよなぁ?
分かっててやるってことは殺す気だったってことだよなぁ?
じゃあ……何をされても、文句はねェよなぁ!!!!」
| 《じゃあ死ぬか》*9 | 以下の攻撃がランダムで発動する。「車」の発動率は低め。 ポスト:敵複数体に物理攻撃をランダムで2~3回行う。 交通標識:敵全体に物理攻撃を行う。 自販機:敵単体に物理攻撃を行う。対象の指定は出来ない。 車:敵複数体に万能攻撃をランダムで数回行う。 |
| 《池袋最強の男》*10 | 物理属性の攻撃を行う際、その威力が通常の1.5倍増える。 |
| 《防御不能》*11 | 物理属性攻撃に、反射以外を無効化する能力を与える。 物理反射には貫通効果が残ったまま反射される。 |
またある場所では交通標識を振り回すバーテンダー服の男の姿があった。
近づくヤクザたちは悉くホームランされビルの壁面に突き刺さっていく。
防具を1つも身に着けていないので悪魔人間あるいはただの一般人だろう。
「ヘルズクーポンで悪魔化したヤクザですか。
可愛いですねぇとても愛らしい……本当に愛らしい……。
―――大人しくしなさいッ! 大丈夫、大丈夫だから!!
大好きだから!!!!!!」
| 《超常生物学》*12 | 悪魔を生物学の視点で観察、分析を行う。 その悪魔の弱点と能力を推察する事が出来る。 人間が積み重ねた叡智によって成り立つ |
| 《動物調教》*13 | 動物、獣型悪魔が対象。 訓練し自分の望む行動を行わせることが出来る。 |
更にまたある場所では、丸メガネにコルネパン風の髪型をした下半身丸出しの男が変身した
獣の悲鳴が聞こえて来るが、敵味方問わず誰も彼もが視線を背ける。
おそらく関わり合いになりたくないのだろう。
他にも似たり寄ったりな連中が暴れ回っているのがチラホラと見える。
BSSマンは思わず納得してしまった
何というか……池袋には濃い連中ばかりが集まっているのだろうかと。
「流石池袋……良い筋肉をしてるのが一杯だぜ」
「褐色巨乳枠が居れば完璧だった」
| 超人 | 筋肉マン | Lv50 |
| 超人 | 褐色巨乳好き | Lv49 |
いつの間にか戻って来ていた2名―――通称“筋肉マン”と“褐色巨乳好き”がそんな事を言う。
ちなみに筋肉マンは何故かサイドチェストのポージングを。
褐色巨乳好きは武器ではなく成人向け雑誌を抱えてていた。
「なあ、池袋って何時から変人の巣窟になったよ???」
「人の事言えんの特技脳破壊野郎」
「そろそろ脳ミソ空っぽになりそうだから筋肉詰めるか?」
「褐色巨乳BSS……駄目だ、こっちには劇薬過ぎる」
などと、馬鹿な事を言い合いながら―――次の瞬間には陣形を組んでいた。
戦いに身を置く者なら感じ取れて当然の流れ。
少々特殊ながらも秩序側の優位に進んでいる戦場。
その状況を崩しうる何者かが踏み込んだ証。
敵か味方か。そのような問いは聞くまでもない。
果たして、それは10秒もしない内に姿を現した。
| 秘神 | サルガミ | Lv87 |
| 軍勢 | ガイアーズの群れ | Lv83 |
現れるのは全身毛むくじゃらの悪魔。
山王信仰において触れられる山の神。
妖怪として貶め、軽蔑されし動物神。
一線級に至らぬ者では死を覚悟するしかない、敵側の特化戦力たる秘神。
そして、それに付き従う悪魔化したヤクザの軍勢。
姿を確認後、4人は警戒レベルを最上限にまで引き上げる。
アナライズせずとも分かる。これまで倒して来た雑兵とは別格の相手。
取り巻きがいるのを除いても、自分たちだけでは勝ち目はない強敵だと。
では逃げるのか―――否、それは最終手段。
周辺のDB達もそれぞれの武器を手に駆け寄って来ている。
どれほど強かろうと、これだけの数ならば打倒する事も不可能ではない。
探り、削り、殺し筋を確定させ囲んで殴り続けるのだ。
「……お前ら“火種”寄越せ、フルスロットルで行く」
その為には、まず自らのスイッチを入れる必要がある。
苦々しい顔をしながらBSSマンは仲間に要求した。
――――自らに眠る猛獣を呼び起こす為の火種を。
「この間の話だが、三途の川で知り合った子と付き合う事になった」
「今度会長と
「昨日ジムの美人インストラクターと夜のトレーニングを……おっと」
目覚めるのは目が血走り涎を吐き散らしながら咆える狂戦士。
失恋の痛みを力に変えて悪魔に立ち向かいし、孤高の哀戦士。
視界の中、
獣のように身を屈め、全身の筋肉から唸り声の如く軋む音。
細かいフォローは味方に任せ己はひたすらに攻撃へ専念する。
溜めたバネを一気に開放し、一番槍として先駆けて――――。
直後、真横を閃光が通過し―――
・
・
・
墨田区に存在するビル群。
スカイツリーには及ばないでもそれなりの高さを誇る建造物の数々。
遥か下の地上では悪魔化したヤクザとDBが抗戦する最中、夜に染まり始めた屋上を漆黒の影が駆ける。
| 《黒子の歩法》*14 | 敵から狙われにくくなる。 |
静かに、それでいて速く。
時には金属フェンスを足場に。
時には壁を上下に走り抜けて。
時には室外機の下を潜り抜け。
闇に紛れ陰に潜むその歩法は、一度目を離せば瞬きの間に姿を見失うなってしまうだろう。
しかし。
「ケ、ケケ……カカカカカ!」
| 《飛行》*15 | 条件:非戦闘シーン。 空を飛ぶ。地上の障害物に関わらず移動できる。 シーン移動や登場の判定にボーナスを与える。 条件:戦闘シーン。 衛、後衛の移動を補助アクションとして行える。 射撃回避を除く回避の判定、次に行う格闘攻撃の1回の威力に補正を得る。 |
背後に付き纏う黒鉄の武者―――新世塾が作り出した人型戦車X-1の改造機体。
その背部に増設された
そして獲物を付け狙う蛇の如き執拗さが逃走を許そうとしないのだ。
このまま地上に降りて、周囲の有象無象共を囮にした所で結果は同じだろう。
そう確信させるほどの“何か”を漆黒の影――――シャドウは感じ取っていた。
「チッ、やはり逃走不能……こんな所で
口から悪態を零しつつ手を伸ばす。
先にあるのは旗を立てる為の掲揚ポール。
手を引っ掛け、そこを支点に慣性を利用して
無理な急停止や体を捻らずに敵を正面へ捕らえる事に成功する。
「いい加減邪魔だお前」
剣型の武装COMPへ意志を回す。
ガシャンと音を立て―――
| 《ハイ・アクセラレート》*16 | 毎ターン3回行動する。 |
| 《ヒュージレイド》*17 | 銃撃属性で敵全体に中ダメージ。 命中、回避率を低下させる。 |
意識を加速させながら剣を振り降ろす。
刀身から放出されたのはマグネタイトによって構築された弾丸の雨。
かつての周回で女吸血鬼もどきから奪った
逃げ回ってから不意を突いたのもあって、自分でも回避は難しい。
流石に仕留めるまでは行かないだろうが、それでも足回りを殺す事は出来る。
(次で渾身の一撃を喰らわせる。それでこいつとはここまでだ)
頭の中で未来を想像し創造する。
目的は英雄が、勇者が、傑物がやって来るまでの時間稼ぎ。
この状況でそれが出来るのは自分だけで、求められる役割だ。
―――だから、こんな三下のヤクザに煩わされている場合ではない!
前のめりの意識のまま、シャドウは
「甘ぇんだよ半端野郎」
嘲笑う声がした。
| 《龍の反応》*18 | 命中・回避率を大きく上昇する。 |
| 《極・物理見切り》*19 | 物理属性攻撃に対する回避率が大幅に上昇する。 |
少なくともシャドウにはそう見えた。
実際に行われたのは―――
弾丸と弾丸の隙間を縫うような
数㎝の誤差も許さない困難極まる機体制御によって武者―――佐藤は被弾を免れたのだ。
常人なら内臓がよじれ破裂しているほどの負荷に晒されながら、無傷で乗り切った。
……まるで予期していたかのように。
シャドウの中でプランが音を立てて崩れ―――
佐藤はイメージ通りな事にほくそ笑み―――攻めへと転ずる。
| 《デスカウンター》*20 | 物理型攻撃に対し50%の確率で発動。 3倍の威力で通常攻撃を行う。 回避、無効化の場合でも発動する。 |
| 《双手》*21 | 通常攻撃が、小威力+通常の2回攻撃になる。 |
| 「妖刀村正」*22 | 攻撃力:145 命中:120 攻撃回数:0~7 追加効果:「FREEZE」 装備者は「CURSE」状態となる。 妖刀村正の一振り。攻撃力を抑え命中率を上げた作品。 |
動きが止まった
その数―――都合14回。
呪われた妖刀と使い手によってシャドウの全身が隙間なく刻まれる。
「ッ―――、……がっ!!」
当然、それだけ浴びれば鋼の
肉体が硬直し致命的な隙……死に体を晒す。
| 《魂の融合Ⅵ》*23 | ランクの数だけスキルを選ぶ。 人間形態、悪魔形態両方で使用することが出来る。 ⇒甲冑剣術の応用。四肢を鎧に対する神経や筋肉繊維として扱う技法。 |
| 《スティンガー》*24 | 敵単体に万能属性ダメージ攻撃&ランダムで即死。 とある悪魔狩人の技だが、手持ちの技をアレンジして再現した。 |
| 《ドラッグホルダー》*25 | 味方1人を対象とする消費型アイテムを1つ、 いつでも自分に対して使用できる。 1ターンに1回のみ。 ⇒「力向上の札」使用 |
続けて佐藤が行ったのは瞬間的な
平青眼の構えを取り、繰り出すのはブースターをも利用した超重量の突貫。
当然、凍て付き身動きの取れない者に回避など出来るはずも無く。
―――はらわたをぶち撒けられたシャドウは、追撃の体当たりで背後の貯水槽へ激突した。
・
・
・
「……ケハッ、ク、クク……ッ」
噴水のように空いた穴から水を吐き出す貯水槽を見つめながら。
顔含めて肉体の大部分が機械へと変身している故分かりづらいが、生身であったのなら多量の汗を流しているのが見えただろう。
余裕そうに事を運んでいたかのように思えても。
その実……彼は一呼吸もする暇が無かったのだ。
―――それだけの対手。
―――それだけの怪人。
―――それだけの怨敵。
なにせ、
猫に小判、豚に真珠、キチガイに刃物とはよく言ったものだ。
技量だけならともかく、基本的な性能では大きく劣っている。
1対1であれば戦うという選択はまず選ぶべきではない。
| 《裏ルート》*26 | GP制限を超えたアイテムと情報を入手できる。 |
ここまで優勢に戦えているのは、徹底した情報収集によるメタ戦術の構築。
あちこちの伝手を頼って入手し、幾重にも改修を施した最上級品のマシン。
それと幾つかの無茶と無理を重ねて、ようやく成し遂げているのが現実だ。
「本当に、ふざけた野郎だこって……」
―――それでも、先の一撃は間違いなく致命傷だった。
食いしばりを許さないよう急所―――主要臓器全て―――を徹底して破壊する太刀筋。
如何な超人と言えども、ここまで嵌まったのなら敗北は必須。
疑うまでもなくここで決着はついた。
誰の目にも知られない暗闘は佐藤ケイの勝利で幕を閉じる。
―――
金属が千切れる異音を響かせながら、貯水槽の上半分が吹き飛んだ。
「生憎、この程度の修羅場は幾度でも乗り越えてきた。
足を止める理由になどなりはしない」
中から悠然と歩いて姿を見せるのは全身水浸しの黒衣。
その足取りはダメージをまるで感じさせない確かな物。
事実、刻まれていた損傷は煙を上げて塞がりつつある。
| 「DieHard(15分)」*27 | 使用してから既定の時間有効。 自分自身がHPが2以上の時限定。 致死ダメージを受けた際、100%の確率で死を免れる。 |
| 「高級応急薬」*28 | 即座に自分のHP100回復。 スキル使用中やダメージ中でも使用可。連続使用可。 |
すなわち、薬の多用による疑似的な不死状態。
普通なら十数回死んでもお釣りがくるダメージであろうが、この男は死なない。
薬が効いている間は致命傷を即座に回復し、意志の力で幾度でも幾度でも立ち上がってみせる。
まさしく狂気の沙汰。正気で成せるものではない。
如何に死に慣れている歴戦の覚醒者であろうと、死というのは重大な
薬の助けがあろうと繰り返せば魂が摩耗し、やがて砕け散る。
生き物ならば―――悪魔であろうと―――無意識のブレーキがかかる所業。
シャドウはそれが全く機能していない。または無視している。
狂的なまでの妄信によって成される異常現象。
自らが定めた
「ケヒャヒャ……威勢だけはいいこった」
承知の上で佐藤は刀を再び構える。
この展開は分かり切っていた事だ。
ここで普通に斬り殺せれば楽であったが……そう都合よく行かないのが現実というもの。
再び斬り伏せんとブースターに火を入れ―――。
「良く分かったよ……消耗を抑えて戦おうなんて考えたのが甘かった。
やはり俺もまだまだだな」
シャドウが空いた手を前に突き出した。
―――黒い光が集う。
「だから―――ゴリ押しさせてもらう」
| 《メギドトランス》*29 | 使用したターンの間有効。 万能属性スキルの消費MPが2倍になり、威力が1.5倍になる。 |
| 《メギドラオン》 | 万能属性で敵全体に大ダメージを与える |
佐藤が答えを出すより早く、
「チッ――――!!」
それはビルの屋上全てを射程範囲とする増幅された破壊の万能光。
万能にも耐性がある筈の装甲が、まるで熱せられたバターのように融解していく。
圧倒的な火力があれば軽減されても問題無いと言わんばかりの力業だった。
「―――、……っ」
マシンが、すなわち自分の肉体が秒単位で削られる事を理解しつつも。
佐藤が選択したのは変わらずシャドウの元へ突き進む事。
この光の前に逃げ場はない。
下手に避けようとしても焼かれる時間が延びるだけ。
ならば、被害を最小限に抑えるには発射元の反対側へ抜けるしかない。
2秒後、佐藤は光の奔流の突破に成功する。
そして、その先で目にしたのは。
文字通りの
・
・
・
「フ、やはり魔法の回避は難しいか。
最初からこうしてればよかった」
再び万能魔法に焼かれる敵を前にして、シャドウはそうひとりごちる。
敵を見ていたという点では―――もちろん戦力分析のみ―――彼も同じであったのだ。
ここまでの戦闘において、シャドウの物理型攻撃は悉く当たらなかった。
当たったとしても耐性により深手を与えるにも至らない。
自身の得意技である
蝶のように舞い、呼吸を奪い取って斬り捨てる。
このヤクザが彼女の真似事を行えるのは、単純な見切り良さとマシン特有の機動力によるもの。
そしておそらくは―――。
「メタルスライムと言うには些か脆いが……攻略法を見つければこの通りだな」
あのまま戦い続けていても時間と物資をいたずらに消耗するだけ。
いずれは自分が粘り勝つであろうが、そこまで付き合う気は無い。
だから縛りを解き、万能魔法連打という雑にして無比な攻め手へと変えた。
その目論見の正しさは、全身を焦げ付かせながらも妖刀を構える敵が証明している。
「ォ、オオオオオオ―――!!」
裂帛の気迫と共にいっそ苛烈なまでの斬閃が繰り出された。
薬物で肉体を無理矢理賦活させながら、一切の曇り無き業。
下位のエターナルであれば等しく膾斬りにされる死神の刃。
「じゃあこうしよう」
首を狙ったその必殺を―――
刃は皮膚を裂き肉を斬ったが……骨を断つまでには至らない。
最初の奇襲で失敗したのとはまた異なる理由だ。
シャドウは自ら前に出て当たりに行く事で、威力が最大発揮される前に刃を止めたのである。
まるで先程、相手がやった事をそのまま返すように。
刀身から頸へと伝わる武者の動揺を見逃さず―――静かに装甲へ手を触れた。
「どうした、腰が入っていないぞ?」
零距離から再度の万能光。
これまた先の再現のように、今度は佐藤の方が吹き飛ばされた。
その途中で両足が千切れ飛び、装甲がおよそ6割が剥離した。
片目は拉げ、剥き出しとなった
―――――
「……ガ……ァッ」
佐藤ケイと言う男もまた死なない。
薬ではなく意志力で機体を起き上がらせ、ボロボロな両腕で刀を構え続ける。
もはや風前の灯火なのは明らかで、しかし闘志は欠片も衰えていない。
「……お前、本当に何なんだ?
中ボスヤクザの癖にしぶと過ぎだろ……設定ミスってるぞ」
その姿に思わずシャドウは眉をひそめて疑問を呟いた。
今更な話だが、随分妙な敵である。
徳川曼荼羅の反転による混沌勢力の強化は自分にも、
こちらに関しては流石にぽっと出の相手を身内とするほど、阿修羅会も間抜けではないからと推測できる。
ではあちらはどうなのか?
自分と同様に信頼されない程度の輩なのは確実だ。
使い捨ての駒、適当に切り捨てられる鉄砲玉といった所だろう。
ならば何故、因縁も無い自分にここまで命を懸けて戦うのか。
意味が分からない、道理が通じない。
1秒ほど思考を張り巡らせてから、どうでもいいかと放棄する。
どうせ大した
「―――どのみち、“
前座はここまで。さっさとメインイベントに進ませてもらおう」
| 《ドリンク各種》*32 | 特定の能力値を1.5倍する。 BARでオーダーできるドリンク。 数種類あり、それぞれに効果が違う(効果は次の満月まで有効)。 飲んだドリンクの効果はすべて反映される。 酒の効果が切れるとランダムで軽いBSとなる。 |
敵がシャドウとここまで渡り合えていた大きな要因。
酒によるステータスの増強は一度倒れた事で失われている。
ただでさえ存在した戦力差はさらに開いた。
疲弊し砕けかけた器では奇跡など起こしようもない。
消耗からして逃げる事さえ不可能であろう。
「じゃあな……あ、一応仲間の仇って事でだ覚悟しろ」
シャドウは武装COMPを構えながら力強く前に踏み出した。
最後は魔法ではなく自らの手で終わらせるようと思ったのだ。
敵は足を失っている以上、今までのような回避は難しい。
だからその判断は決して間違いではなく。
―――嘲弄、そして万能の刺突に妖刀が
―――刺突が逸らされ、逆に妖刀が突き出されて。
| 《 | 相手の格闘攻撃に対する反撃技。 この特技を使用すると、相手の格闘攻撃が反射される。 反撃に分類されるスキルであり、回避・防御の影響を受けない。 ⇒とある剣鬼の物より完成度が高く、万能相性でも反射可能。 |
シャドウの心臓を―――深々と貫いた。
「…………あ?」
時間が止まった。
一体何が起きたのか、脳が状況分析を開始―――記憶から1件ヒット。
剣術における流派の1つ―――“一刀流”。
その奥義には“切落”という技が存在する。
敵の剣を死太刀とし、自らの剣を活太刀と成す攻防一体である後の先。
敵の一撃に対して全く対称の一撃をもって迎え、これを切り落とし、更に敵の肉体をも断つ技法。
相手が使ったのはその変形“乗突”だ。
敵の突きに対し、自らの刀を回転させ上から押さえ込むようにして逸らしつつ、敵の肉体を貫く。
どちらにしても高等技術であり、実戦での行使はそう簡単なものではない。
技量の問題もそうだが、何より相手の動きを読み切らねばならないからだ。
故に、これが決まるという事は。
(―――読まれて……いや
観客の心境でシャドウは思う。
これまでの一連の流れは。
物理攻撃を捌かれ、魔法攻撃を主体として攻める。
徹底的に追い詰め、最後に自らの手で止めを刺す。
その何もかも全て―――相手の掌の上であったと。
時間が動く。
強烈なGが体を襲う。
足を失っても守り抜いたブースターが咆哮し、シャドウを貫いたまま飛翔を開始したのだ。
高く、垂直に、重力と言う力に逆らって。
誰の目にも留まらぬ、遥か天空の先へと。
続きもなるべく早めに書きたいと思います。