真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
2~3話で終わる予定です。
『都内での暴動により死者、行方不明者数は未だ把握し切れておらず―――』
『古い建物の倒壊が予想されます。なるべく近づかないように―――』
『各地で確認されただけでも強盗、傷害が50件以上発生しており―――』
“混沌の奇禍事変”の鎮圧、並びに終息から3日が経過した。
膨大な数の死者・行方不明者。
建築物並びにインフラの破壊。
混乱に乗じた様々な数の犯罪。
事変の期間は一日半程度で内乱とすればこれほど早く終わるのは奇跡と言っていい。
しかし、刻まれた爪痕は大きく全国各地で騒動は未だに続いている。
中には
人間の姿をした悪魔があちこちに紛れている。
このままではいずれ人間たちは殺されてしまう。
などと根も葉もない……とも言えない流言が流れるほどに。
少なくとも異形部分のある悪魔人間にとっては居心地が悪くなるのは間違いない。
一般人が理解をするにはまだまだ時間が掛かる。
無論、それを抑えるべく警察や自衛隊を始めとした国家機関は不眠不休で動いている。
労働時間や休憩時間といった概念を放り捨て、文字通り馬車馬のような働きっぷり。
過労死と言う言葉が身近に迫る状態でも止まる事は決してない。
内閣総辞職から臨時政府が結成され、まだ然程時間が経っていないのによくやっている方だ。
想定通りだったとしてもここまでスムーズに動けているのだから見事という他ない。
わだかまりこそ残るだろうが、致命的な悪化へ繋がる事はまず無いだろう。
それでも、本当の意味で状況が落ちつくのはまだまだ先の話だ。
それほどの事態であった……というだけでもない。
それだけであるならどれほどマシだったのだろうか。
何せ―――
予想よりも早い、理不尽な存在との血で血を洗うような本格的生存競争の再開。
戦わなければ生き残れない新たなる総力戦の開幕。
そして―――
未知の脅威に怯える者、既知の怪物に奮い立つ者。あるいはその両方。
反応は様々だが彼らの力も必要とされる時が来た。
正確な日時はまだ公開されていないが、最低でも2日以内には発表されるだろう。
一部勘の鋭い者、各地に情報網を持つ者はそれを察し準備を整え始めている。
逃げるという選択を選ぶ者もいるが、船も飛行機も完全臨検され密航も不可能な状態だ。
足が無ければ何処にも向かえない。そもそも安全な場所自体存在していないが。
加えて―――準備という言葉の中には後顧の憂いを断つ意味も含まれていた。
混沌の奇禍を生き残った、または参加しなかった阿修羅傘下組織及びその他の要注意団体。
それらの完全清掃―――すなわち
小石程度であろうと将来躓く原因となり得るならば排除しない理由がない。
現に幾つかの組織が事変後の混乱に乗じて動こうとし―――ものの見事に返り討ちにされた。
代表的なのは“無明の血盟”*1だろうか。
今ならば国の圧力を受けないと判断し、再び勢力を大きくする為に愚者覚醒者区別なくサーヴァント化を行おうとしたのだ。
……無論、失敗に終わったが。
そんな事を許す筈もなく、最後は関係のあるDBたちによって跡形も残さず壊滅させられた。
これより語られるのはその掃討戦の中でも最大のもの。
捕らえられていた少女によって齎された、恐るべき企み。
「日本沈没計画」と称された、霊峰富士にて繰り広げられる私闘にして死闘。
地に咆えるのは負け犬たちの連合。
思想も大義も目的さえ異なる烏合。
後先考えぬ自殺志願者たちの集合。
天を喰らうのは秩序側に立つ戦団
思想も大義も目的さえ異なる集団。
未来を求め突き進む勇気ある軍団。
―――後の世には残らぬ戦いが始まる。
・
・
・
半年前までは多くの登山客で賑わったこの奥宮も、最近では殆ど人が寄り付かなくなった。
GP上昇による強力な悪魔の出現、治安の著しい悪化、渡航・交通制限。
禁止こそされてはいないが、このような状況で登山する者など皆無に等しい。
よって警察の山岳救助隊も最低限の人数を残し、別の部署へと回されていた。
人手が足りていないのだから当然の異動だ。
不安こそあれど不満の声を上げる者は殆どいなかった。
同じような理由で各所の山小屋も封鎖され、今の富士山は人の立ち入らない聖域としての姿を取り戻したとも言えるだろう。
「急げ、登山ルート全てに布陣しろ。決して誰も近寄らせるな」
「誰に向かって命令してやがる雑魚が! テメエで勝手にやってろ!!」
「どうやら国の狗共より先に死にたいらしい……大人しく首を出すのだ」
「上等だやってみろよぉっ!!!!」
「チッ、また馬鹿な真似をしてるのが……付き合い切れん、我々だけで動くぞ」
その聖域を無頼たちが無遠慮に踏み荒らす。
年齢、性別、人種。おまけに所属までもがバラバラな集まりだった。
どこからどう見ても登山者とは思えない。
身に着けた装備も登山ではなく戦闘を意識したもの。
統率もまるで取れておらず、それぞれが好き勝手に動いている有様。
船頭多くして船山に登る、という諺があるが、それですらまだマシに見える。
中には殺し合い寸前の者たちもいるほどだ。
おそらく他の場所で展開している面子も同じだろう。
このまま何もなくとも数時間で瓦解するのは目に見えている。
烏合という言葉がこれでもかというほど当て嵌まっていた。
―――それをやや離れた場所で見る人影が2つ。
「分かり切ってはいましたが……実際集まると酷いですね。
どうします? ここで諦めて解散ですか」
| 幻視者 | 万里谷祐理 | Lv42 |
どうでもよさげな目をした亜麻色の髪を持つ少女。
とある世界において
流れ着いたこの世界で流されるままに生きる
「ハッ、決まってるだろ―――やる以外ねーだろうが。
元から隠す気は無かったが、予定よか早くバレちまったんだからな。
次がない以上やり遂げるだけだ」
| 超人 | 荼毘 | Lv70 |
焼き爛れたケロイド状の皮膚に覆われた男。
数々の放火及び殺人の罪により裏で賞金を懸けられた犯罪者。
“火男”の異名を持つ元阿修羅会所属の炎使い―――荼毘。
この馬鹿騒ぎの中核たる彼らは、始まる前から失敗している状態でもまるで気にしていなかった。
いや、実際裕理の方は本当に気にしていないのだろう。
駄目なら駄目で“ああそうですか”とでも言わんばかりの態度だ。
そして、それを咎める様子も荼毘には欠片も見られない。
はっきり言って、首謀者とはまるで思えない態度である。
何が何でも成功させようとする気概が感じられないのだ。
「そもそも燻ってる連中焚き付けただけで、信用なんて
前から声掛けてたのも同じ。こっちの言葉なんざもう通じない。
なら好き勝手やらせるさ―――目的達成までの時間稼ぎになりゃあいい」
元より急ごしらえの愚連隊。意思統一など出来るはずもない。
それ以前に、お題目として掲げた火山噴火による日本壊滅を本気で望む者がどれほどいるのだろうか。
皆無ではないだろうが1割いれば多い方で、中には単に暴れたいだけの馬鹿もいる筈だ。
「所詮、ここに集まってるのは蚊帳の外だったのと生き残った負け犬だけ。
……じゃあ潔く散った方がいいだろ。
ほらあれだ、美化運動ってやつだよ。社会貢献にもなる」
心にもない事を宣うが、同時に揺るがしようのない事実でもあった。
そもそもこんな話に喰いついた時点で程度は知れているのだ。
ガイア勢力の総本山となった阿修羅会に吸収されもしなかった残りカス。
好機を伺うつもりで何も成せないままダラダラ生き延びただけの腰抜け。
混沌の奇禍をたまたま生き残ってしまった一部残党。
再起を夢見て一発逆転の話に乗っかっただけの小物。
それぞれ平均レベルは30から40程度の足切りライン以下。
一番高い荼毘でさえ最前線の域には及ばない。
地獄を潜り抜けて来た歴戦のDBを相手にすれば容易く蹂躙されるだろう。
計画が成る前に全滅する可能性の方が高い……どころか
「乾坤一擲の計画だと思ってる人に言えますかそれ?」
「言わねーなら都合のイイもんしか見ねぇだろうさ。
第一、恨むならてめぇの節穴だろ。
こんな穴だらけのプランを素通しだぜ」
不気味に笑う荼毘に裕理はそれ以上何も言わなかった。
この男が一体何を見ているのか……まるで興味がない。
どうなろうと知った事ではない。
なるようになるだけなのだから。
「ちょっと、その手の込んだ自殺に巻き込まれた女に一言ないのー?」
だから、沈黙を破ったのは別の人間。
―――2人の足元からの声だった。
「ったく……仕事終わりに襲われて相方と一緒に拉致拷問。
管は奪われ、全裸にひん剥かれ。終いにゃ富士山のテッペンで転がされる。
オマケに頭悪い計画の生贄にされるなんて……やっぱ私って超不幸だわ~」
そこには全身をロープで拘束され転がる黒髪の女がいた。
高所ゆえに気温の低い中で一切の服を剥ぎ取られ、起伏に富んだ体はあちこち紫色に変色している。
美しいと呼べる整った顔立ちにも暴力の跡があり、土と埃と
それでも―――その双眸に曇りは欠片も見られない。
隙を見せたら噛み殺すと言わんばかりの熱量に満ちている。
というか、周囲に人がいないのはこの女の放つ迫力の影響も大きい。
「だからさっきから言ってるけど上着の一枚くらい寄越しなさい。
凍え死んだら慰謝料請求するわよ。
ついでにグルグル巻きも解いてくれたら大満足」
「布一切れを武器に*2仲間逃がすまで暴れた自覚有ります?」
「だって隙だらけだったしぃ……。
両手をフリーにさせるような素人混ぜるんじゃないっての。
やるならプロ呼びなさいよプロ!!」
……実際、彼女に狼藉を働いた者たちは既に数人が犠牲になっていた。
そのせいで共に捕らえられていた仲間の逃走を許し、計画が早い段階で露呈してしまった。
じゃじゃ馬にもほどがある。
「ハッ――そんなに寒いなら踊らせてやろうか?
あっという間に熱くなるだろうよ」
ボウ、と音を立てながら荼毘の手から蒼い炎が噴き出した。
蒼……つまりは通常の赤い炎とは異なる、完全燃焼の証である超高温の焔。
空気と肉の焼ける臭いと共に、あまりの熱量によって周囲に積もった万年雪が解け始める。
「ちょっと、場所考えてくださいよ……」
「アチチ! 子供の頃ストーブに手ぇ突っ込んだ時みたい!!」
髪が焦げそうになったので裕理は距離を取り、女は転がったまま炙られて顔を顰めた。
覚醒者である2人だからこのような反応で済んでいるのだ。
一般人……その辺の愚者であれば近くにいるだけで大火傷間違いなしだろう。
「あのさぁ……生贄は丁重に扱うもんだって知らない訳じゃないでしょ。
それなのにこの扱いとか、知識も技術も何もかも足りなさ過ぎじゃない?
ついでにオツムの方も」
「生憎と燃焼学以外は中卒レベルなもんでね。
高級ホテル並みの接客と行かなくて悪ぃな……これでも独学で頑張ったんだぜ」
破戒の八極道―――その一角であった“介錯人”の炎使いにしてダークサマナー。
その彼さえ上回る火力を持ちながら、阿修羅会から離れ独自に動いていた怪人物。
本心で何を考えているのかまるで掴めない荼毘の言葉に女は首を振る。
「―――国津神系の山神、あるいはその系譜に連なる者。
そいつらの一部には確かに火山から力を得る能力がある。
修験道にも似たような技術があるくらいだしね*3」
国津神とは日本土着の神。
ムーの血を引く古の神格。
そして、古代より続く山神は製鉄の民であり同時に火を司る神でもあった。
つまり―――。
「
更にここを起点として全国各地の火山も連鎖的に噴火させようってのは大したもんだわ、色んな意味で」
| 《カムナビ》*4 | 周辺の火山活動を活性化させてGPを一時的に上昇させる。 使用者のHPを全快させる。 |
彼らは日本の山野の荒ぶる自然。その御魂の力を操る者とも言えるのだ。
その力をフル活用すれば、成程。確かに日本各地の火山噴火も不可能ではないかもしれない。
……理論上では、という言葉が頭に付くが。
「ちょっと前ならやろうとした時点でヤタガラスにぶっ殺される暴挙よね……」
「内乱の立て直しでゴタゴタしてる状況じゃなきゃ絶対出来ねーのは同意する。
ぶっちゃけ、連中が勝っちまったらどうしようかと思ってたくらいだ」
「偉そうな事言ってますけど術式の提供をしたのは私なのですが。
根掘り葉掘り聞いてきてもの凄く疲れましたよ」
「教えただけで準備から人集めまでしたのはこっちだろ。
割合としちゃ9:1で俺の勝ちな」
「その努力を真っ当な方向に活かせこの嘘つき共め」
呆れたように。
どうでもいいように。
心底楽しそうに。
三者三様の態度を取りながらも時計の針は進んで行く。
既にDBたちの集団がこちらの戦闘範囲ギリギリのラインで布陣済みなのは確認している。
優れた指揮官のもと統一し洗練された動きはこちらと比べるまでもない。
戦闘開始までもはや秒読みの段階だ。
可能な限り急いだが、概して儀式というものは複雑な手順を要する。
今から行ったところで間に合うかどうかといったレベルだ。
だからこちらがやるべきなのは時間稼ぎであり―――。
「行くぜ行くぜ行くぜ逝くぜぇえええええ!!」
「“
「FOOOOOOOOOO!!!!!!!」
「ずるいぞぉっ!! こっちも続けぇー!!」
「“新生阿修羅会帝国”!
血気逸った一部が守りも考えずに突撃し……5秒もしない内に汚い花火と化した。
無駄に戦力を減らしただけ。こちらの問題が露呈するだけの自殺行為。
見るからにぐだぐだで―――どうしようもない。
「うっわ、戦隊シリーズの戦闘員並にエグイ溶け方してる」
「……アレで最前線には届かないなんて、本当に地獄ですねこの世界」
「あそこまで馬鹿だといっそコントに見えてくるな……って、お?」
無惨な光景を目の当たりにしながら荼毘が何かに気付く。
それはこちらの陣地に入り込んだ複数の小型ドローンだ。
おそらく偵察目的…………それ自体は何もおかしくはない。
既に何機かは連合の一部によって撃ち落されている。
問題はドローンに括りつけられていた
飛んでいる機体から、墜落した斜面から。
山風に吹かれて次々こちらへと飛んで来る。
「あぁん? なんだこりゃあ……」
「“今すぐ武装解除し降伏せよ、さもなければ武力制圧を実施する”。
下等種共が舐めた事を言ってくれるわっ!」
「ヒヒャッ! 降伏勧告なんて随分お上品ダナぁあっ!?」
読んだ者たちが言うように、飛んできたのは降伏勧告状だった。
弱気なのか、無駄な争いを避けたいのか。
いずれにしろ誰一人として従うはずもない。
そんな判断力があればそもそもこの場にはいないだろう。
―――だから。
「おいおい、
「戦術に著作権も何もありませんから。
……殆ど気付いてないのも問題でしょうけど」
「見事な嵌まりっぷり。実はワザとじゃないの?」
ここに残党連合の敗北は確定した。
| 軍勢 | デビルバスターズ | Lv80 |
| 《シャッフラー》*5 | 敵全体をカード状態にする。 |
| 《常世の祈り》*6 | 味方全体のHPとバッドステータスを全回復。 |
「…………ひょえっ?」
間抜け面を晒す連合の前で―――
それはかつて阿修羅会が行った手口。
アストラルシンドローム患者を誘拐するための潜入方法。
知識としては知っていた。だがそれを敵が使ってくるとは想定もしていない。
故に大多数が完全に不意を突かれ、奇襲を許す事となる。
「代金はてめえらの命だ今すぐ払えやゴラァッ!!」
「このクソ忙しい中仕事増やすんじゃねぇよゴミが!」
「いつか登ろうとは思ってたけどこんな形になるとかさー」
「日本一の山で死ねるんだから墓はいらねぇよなぁっ!!!!」
―――蹂躙劇の幕が上がった。
・
・
・
「ボスぅうううう!! オレを、オレを褒めてくれぇええ!!!!」
| 《オーバーチュア》*7 | 敵全体に電撃属性の魔法型ダメージ。 その後、自身をコンセントレイト状態にする。 このスキルによるダメージは電撃貫通を得る。 |
| 《電撃ハイブースタ》*8 | 電撃属性で与えるダメージが25%増加する。 |
魂からの慟哭と共に、森羅を焼き尽くす高圧電流が四方八方へと迸る。
周囲にいたDBやその仲魔たちが咄嗟に防御行動を取るが、まるで薄紙を破くように貫かれた。
耐性どころか
それを人の身で成すのは8つの電気傘を背負った黒衣の男。
イタリアンマフィアにおける最大手。
ボンゴレファミリーの精鋭部隊ヴァリアー。
その幹部にして今は亡きボスであるザンザスに忠誠を誓っていたヒットマン。
| 超人 | レヴィ・ア・タン | Lv64 |
名をレヴィ・ア・タン。
“ローマ・レルム”崩壊時、別件で外に出ていたため生き延びた負け犬である。
「ボス! ボス!! ボスぅううううううう!!!!!」
「さっきからうるせーんだよこの妖怪電気ウナギが!」
「狂人……じゃあないな。アナライズだと人間判定だ……信じらんねぇ」
「体のデカい駄々っ子かよ」
いなくなった
果たして、誰が信じられるだろうか。
ひたすら叫ぶこの男が、超一流大学を首席で卒業するほど聡明な頭脳の持ち主であると。
暗殺者の道を選ばなければ教授になる道まで用意されていた超エリートであると。
こうなった理由は極めてシンプルだ。
―――己の命より重かった主が、自分の居ぬ間に手の届かない場所で殺されたから。
連絡を受けなりふり構わず戻ってみれば、そこには跡形もなく消滅したレルムの跡地のみ。
喉から血が出るほど叫びながら主を探し続け……終ぞ骨の欠片さえ見つけられなかった。
何も出来ず。
最期を看取る事さえ許されず。
遺言さえ知らず。
己が間に合わなかった事を理解した瞬間、彼の精神は致命的に崩壊した。
今のレヴィという男にあるのはただ一つ。
ボスが命を落としたこの国の人間を皆殺しにして仇を討つ事のみ。
何処の猿が手にかけたのか分からない以上、全員を殺せば解決だ。
出来るかどうかはどうでもいい。
やれる可能性があるのならば何でもする。
流血には流血を、喪失には喪失を以って返すのだと。
そうすれば遠くへ行ってしまった主も褒めてくれると信じて。
ボンゴレ復興のため、ボスの隠し子を探すという任務を放棄して。
他にも生き残っていた仲間たちと完全に縁を切ってでも。
―――もっとも。
「―――大体手札は抜けたか。
目立って強いのはあいつだけだし、周りを削りながら囲んで殴る」
「あ、
「回復忘れんなよ。蘇生要員も準備だ」
DBたちからすれば、そのような事を許す筈もなく知った事でもない。
情報を抜き戦術を組んだDBたちが配置を移動。
より効率的に、確実に殲滅できる陣形を取る。
ヒット&アウェイに徹されていればこうはいかなかった。
暗殺者として敵を攪乱する動きをしていれば厄介だった。
正気のままであれば、多少の犠牲者が出たかもしれない。
「貴様らの死を天のボスへと捧げようっ!!」
「地獄行き確定な野郎が咆えてんじゃねぇっ!!」
結末の見えた戦いが終わるまで、残り数分。
・
・
・
「―――ぐふっ!!」
喉の奥から込み上げた液体が足元の岩場へとぶちまけられた。
どす黒い血の塊。おそらくは内臓からの出血。
しかし何らかの攻撃を受けた訳ではない。
敵はまだ離れた場所におり様子見の真っ最中。
味方と違って誰かが先に仕掛けた様子もない。
むしろこちらを見て戸惑っている者さえいる。
では何故か―――単純に、自分の命が尽きかけているだけという話だ。
| デビルシフター | 野上ケンジ | Lv52*10 |
老人のように皺だらけとなった手で少年―――野上ケンジは口元を拭う。
いよいよ身体の限界が近づいて来ている。
感覚は麻痺し息苦しささえも感じなくなってきた。
(もうちょっと我慢しろよこのポンコツめ……今が一番いい所だろ)
揺らぐ視界、霞む思考、早鐘を打つ心臓。
終わりが近づいているのが分かる。
死神が命を狩りに来た事を理解する。
―――ふと、走馬灯が走った。
不治の病を患い、持って半年の命と宣告された日。
自暴自棄になる中、ふとした出会いから入信したソリテアという宗教。
カードによる悪魔変身の力に目覚め活力を取り戻した肉体。
道を示してくれた教祖に指示されるまま戦い、牙を磨き続けた非日常。
人を倒し、悪魔を屠り、仲間から認められて生きがいを得た。
間違いなく人生の絶頂で―――だからこそ転げ落ちるのも早かった。
自分の知らないゴタゴタで消滅した
教祖もいなくなった事でバラバラになり、今では行方知らずとなった仲間たち。
トドメに頑丈となった身体さえも容赦なく蝕み始めた病。
そして、とうとう自力でベッドから下りる事も出来なくなった。
失って、得て、また失って。
絶望の中、それでも……せめて何かを残したいと思った。
このままでは終われない、終わりたくない。
病室という檻の中で、ベッドという棺桶で最期を迎えるのは絶対に嫌だった。
―――善でも悪でも、傍迷惑でも何でもいいから世界に自分を刻みつけたい。
その一念で命を繋ぎ止め、医者でさえ匙を投げた終焉に抗った。
だが、求めた
だから―――荼毘の話に乗ったのだ。
全く信じられない男なのは百も承知。
やろうとしている事も外道の行いなのは理解している。
しかし、やる以外の選択など最初から存在しない。
意志力だけではもう限界で次のチャンスは訪れない。
「これで最後だ……死ぬまで付き合ってくれ相棒」
握り締めたカードから応えるように力の波動が返って来る。
どうやらこちらも異論はないらしい。
何度も繰り返してきたやり取り。
これで最後となるシークエンス。
万感の思いを込めて名を唱える。
カードから閃光と共に膨大なマグネタイトが放出された。
ケンジの肉体と同化するようにして顕現するのは鉄の身体と鎖の髪を持つ悪魔。
運命の出会いから今日まで駆け抜いて来た、唯一無二の半身にして相棒。
―――それはイギリス最古の伝承に語られし怪物。
―――それは水底の魔女の息子にして人食いの巨人
―――それは若き日の英雄と激闘を繰り広げしカインの末裔。
| 邪鬼 | グレンデル | Lv70 | 相性:衝撃反射、破魔無効、技に強い |
英雄の敵対者―――邪鬼グレンデル。
蝋燭が燃え尽きる前の輝きの如く、その咆哮に込められた力はDBたちの足を僅かに止めるほどのもの。
……あるいは、ただ必死に足掻く子供の姿に何か思う所があったのか。
一瞬の空白が戦場に発生する。
「―――私が相手をする。皆は他の敵の対処を」
―――その空白を打ち破るかのように、真っ先に1人の男が前へと出た。
肩まで伸ばした茶髪に眉目秀麗な顔立ちの、全身鎧に身を包んだ騎士然としたDBである。
彼は剣を抜き、盾を構え、グレンデルの正面へと単身で歩んでいく。
その目に浮かぶ色はどこか真摯で、確固たる意志が宿っていた。
「……君の過去は知らない。君の境遇を理解出来ない。君の願いは分からない」
男は
“世界樹”と呼ばれた巨大異界が拡大し、文明が崩壊した終わりへと向かう世界。
近い未来に黄昏が約束された時代にて彼は生を受けた。
現行世界と比べれば別の意味で地獄だったが、比べるようなものでもないだろう。
まして、まだ恵まれた環境で育ったのだから何かを言う資格さえない。
偉そうに他人へ指図をするなど場違いもいい所だ。
それでも―――少年のような目をする人間を知っていたから前に出た。
明日を考える余裕もなく、今日を凌ぐので精一杯の苦界。
強くなければ生きられず、強さがあっても死ぬ時は死ぬ。
そんな中で時折現れる“伝説”となった者たち。
長く生きて忘れ去られる死ではなく、一瞬で燃え尽きて誰かの記憶に残る事を望む愚か者。
今まで何人も見て来た。幾人も見送って来た。全てと死に別れた。
忘れる事は無いし、命ある限り覚えて行くと誓った。
だから独善で傲慢に勝手な判断で……彼の相手は自分がすべきだと思ったのだ。
「だが―――君の絶望と向き合うくらいは出来る……これでも大人だからね」
| 超人 | フロースガル | Lv60 |
その宣誓に怪物は呆気に取られ―――次の瞬間には歓喜の笑みを浮かべる。
望外の幸運に恵まれたと言わんばかりに。
それを願っていたのだと謳うかのように。
―――鉄の巨体が
| 《 | 敵単体に技相性ダメージ。 グレンデルとタケミカズチのみ習得するスキル。 より深い同調と鍛錬により《準物理貫通》の効果を得た。 |
| 《ソードブレイカー》*12 | 自身と同列の味方に対する物理ダメージを中確率で半減させる。 |
拳と盾が激突し、辺り一帯の大気を震わせる衝撃が炸裂した。
・
・
・
―――そして山頂でも戦いの時が訪れた。
追加で飛来する紙束を抱えたドローンの数々。
その内の1機―――強化仕様の特別品―――が分厚い弾幕を突破し本陣付近へと辿り着く。
場にいた誰もが直感する……王手をかけられたと。
「やっとパーティに混じれるなァ……」
「やるなら一人でどうぞ。私はここで眺めているので」
「おっ、キタキタキタっ!!」
荼毘は変わらず笑った―――面白くなってきたと。
祐理は変わらず思った―――ここが死に場所かと。
生贄の女だけは喜んだ―――友の気配がしたから。
―――紙束が上空でばらける。
「ひい、ふう、みい……とにかく全員ぶった斬るか」
| 剣士 | 八瀬宗吾 | Lv70 | 相性:銃反射、破魔吸収、呪殺無効、全体的に強い |
「アプリケーション起動―――オープンコンバット」
| サイコメトラー | 若槻美野里 | Lv68 | 相性:破魔吸収、呪殺無効、全体的に強い |
「助けに来ましたよ“龍姫”さん!!」
| 鬼女郎 | ジール | Lv62 | 相性:破魔・呪殺無効、神経に極めて強い 全体的に強い(87.5~62.5%) |
「試合開始だゴングを鳴らせい佐藤!!」
| 魔人 | 蔵田 七海 | Lv80 | 相性:剣反射、全体的に強い(75%) |
「ケヒッ、そんなもん流石に持ち歩いてやしませんぜ」
| 筋者 | 佐藤 ケイ | Lv51/63 | 相性:神聖・暗黒・精神・魔力・電撃無効、全体的に強い |
あらゆる敵を断ち切らんとする剣鬼が。
異能科学の装備を身に纏う超能力者が。
褐色の肌に髑髏の面を付けた暗殺者が。
巌の如き肉体を誇る女傑にして武人が。
鋼の躯体を自在に操りし筋者の剣士が。
―――この戦場における最大戦力が盤上へ舞い降りる。
「ここで俺らと踊ろうぜ
キャラ情報とかは次回予定。
次もなるべく早めに書きます。