真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
昨今の情勢において『マンハント』と呼ばれる者たちは消滅すると推測されていた。
元より素人上がりの半グレ、カジュアルたちの集まり。
弱者を襲って糧とするしかない文字通りの外道共だ。
主な獲物であったDB及び悪魔の平均レベルの上昇により、噛みつく事すら出来ずに飢え死ぬだろうと。
実際、少数の勢力は弱肉強食さえ出来ず、立ち向かう事も無いまま乾いて死んだ。
そうでなくとも自警団やマンハントキラー、あるいは治安維持組織によって逆に狩られるか。
―――しかし、世に盗人の種は尽きまじと言うように。
予想を裏切りしぶとく活動を続ける者たちもいる。
ある者たちはこれまで通りヤクザなどの手足となり続け。
ある者たちは『ガイア再生機構』なる組織の鉄砲玉となり。
そしてまたある者たちは
「魔法系はともかく、やっぱ銃対策が一番の鬼門だわー。
矢とか手裏剣はいけるけど、
「素直に盾持つかガン耐性のある装備すれば?
出来るなら悪魔使って射線切るのもアリだけど」
「鬼神術*1の類はからっきしでさぁ。
見るのとぶっ殺した悪魔封じるので精一杯。
“お前こっちマジ向いてないな”って言われたし」
「まぁ、サマナーなんて向き不向きがあるから……。
だからってシロエウィキとか掲示板で銃弾を斬るコツ調べるのはどうかと思うけど。
完全にネタと思われてるじゃないの相談スレ」
「真面目に質問してるんだが……何でだろ???」
日もやや傾き始めた、人影のまばらな道を歩くのは二人の男女。
片方は大きめの竹刀袋を担いだ黒髪の男。
もう片方は銀髪の髪が目を引く眼鏡をかけた少女。
共にたった今『レルム』を覆う人払いの結界から出て来た覚醒者だ。
そしてその背後から数十メートル離れた場所に人影がある。
地味なジャケットに帽子と眼鏡の青年、至ってごく普通の通行人らしい風体。
しかしその目だけは普通とかけ離れた、欲望に濁った色をしている。
「―――ああ、このまま予定通りに着きそうだ。先に待っていてくれ」
視線を先に歩く2人からややずらしつつ、青年は手に持ったスマホを操作し通話を開始する。
一見すれば誰かと待ち合わせをしているように見えるが、事実は違う。
「“歓迎会”の準備をもう始める? 随分気が早いな、慌て過ぎじゃないか」
青年―――マンハントの斥候役は仲間に
彼らは最近になって上京してきた地方の異能者や、『レルム』に迷い込んでしまった一般人をターゲットとする人狩りである。
取引先はもっぱら“裏”の闘技場だったりスナッフ動画の撮影会社など。
売り飛ばされた者たちがどうなるかなど気にもしない、金になるならそれでいいと考える
今も暢気に歩いている―――おそらく地方から出て来ただろう―――2人組に『レルム』内から目を付け尾行していた。
(男はどうでもいいが、女の方はかなりの上玉。ありゃかなり高く売れるぞ)
斥候役は訪れるであろう未来を予想し、思わず口元がにやけてしまう。
ここ最近は狩りの難度も上がった為“遊ぶ”機会も激減してしまっていた。
おかげで仲間たち全員にフラストレーションが溜まりつつあった所に見つけた極上の獲物。
流石に中立地帯である『レルム』内で仕掛けるのは背後の出資者たちや自警組織に目を付けられるため悪手に過ぎるが、出てしまえば話は別。
向かう先で自分たちに有利な状況を作り出し、いつも通り数で囲んで嬲り殺しにすればいい。
(いざとなりゃあの悪魔もいる、問題は無いさ)
気取られぬようアナライズこそしていないが、おそらくレベルは自分たちの
加えて、このような街中で嵩張るであろう防具をフル装備しているはずも無い。
ならば何も恐れる事もなく、哀れなカモへと牙を突き立てるだけ。
狩りを終えた後の
| 鋭い勘*2 | 部屋の中で隠されたものを探したり、何かの接近に気付くときに使用。 この特技の所有者は眠っていても警戒ができる。 奇襲に対しても使用可能。 |
| 察気*3 | 気功に分類される技能。 悪魔や害意、罠の存在の察知する。 |
「視線がキモイ、反吐が出る」
「同感な。とりあえず寝てろ」
―――いつの間にか。
数十メートルの距離を潰し正面に立っていた2人からそんな言葉をかけられた。
| 破城槌*4 | 格闘攻撃 | 剣相性。鞘から引き抜かないまま、鞘ごと打撃する。 回避に失敗した場合、スタン・チェックを行う。 |
同時に、側頭部へと走る巨人に殴られたかのような強い衝撃。
砕ける頭蓋とへし折れる頸椎の鈍い音。
言葉さえ発する暇なく意識は暗転―――そのままアスファルトの上に倒れ伏した。
・
・
・
東京という狭い故に土地代が都市であっても、使いにくいという空間というものが存在する。
それは周囲の建物の構造、位置関係によるものや交通の利便性が生み出すものが多い。
いわゆるデッドスペースというやつで、結果としてその周辺は人の行き来が少なくなる。
以前なら深夜徘徊する子供たちや半グレの集団がたむろする格好の場所として、土地の管理者の頭を悩ませる問題にもなっていたが、このご時世ではそういった者たちも姿を消して久しい。
「―――んでイスカンダル木星王の弟子の1人、カサンドラ金星姫って女が団体を引き継いだんだけど。
この女がとんだ拝金主義者だったせいで1年も経たずに空中分解しちまったのよ、笑えるだろ」
「後継者問題でゴタゴタは良く聞くけど……そんな音楽性の違いで崩壊するバンドみたいな魔術結社ってあるの?」
談笑する2人組が歩いているのもまさにそういった場所だった。
老朽化した廃ビルと廃ビルの隙間にある、路地裏と言うには大きく開けた空間。
所有者の失踪による土地の権利問題や買い手の無さで作り出された無人地帯。
大型のゴミが幾つも不法投棄され、誰の目にも止まらないまま放置されている。
今では時たまこうして、極少数の人間がショートカットする為に通るだけのまさしく空き地だ。
故に人影は彼ら以外になく、数分もしない内にこの場を通り過ぎるだろう。
――――何事もなかったのであれば。
「撃てぇッ!!!!」
| 軍勢 | マンハントの群れ | Lv32 | 破魔・呪殺無効 |
怒声と共に響いたのは幾つもの銃声音。
物陰から飛び出した十数人の人間―――マンハントたちによる一斉放火だった。
たった2人の人間を殺害するには過剰過ぎる銃弾の雨。
例え覚醒者でも、耐性を持っていたとしてもその上から削り殺されるであろう火力だ。
「いいぜぇっ! 無効も反射もねぇっ!!
このままぶち殺しちまえぇえええ!!!!」
「きひひひ! 女女女ぁっ!!
野郎はずだ袋に詰めて女は玩具にしてから売っ払うぜぇっ!!」
彼らの視線の先で踊り狂う2人分の人影に、絶頂の声が幾つも上がる。
真っ当な精神をした者なら―――業界人であろうと―――あり得ない狂騒。
人間でありながら人間を辞めた外道に他ならぬ証であった。
やがて、弾を撃ち終え硝煙の匂いだけが惨劇の証となった頃。
汚れた地面に倒れる人の形をした
「……あ? おい、待てよおい!
こんなになっちまったら蘇生も出来なくね!?」
「
この程度で原型留めなくなるとかフカシこきやがったのか!!?」
これに慌てたのはマンハントたちだ。
“弱い、聞いた話と比べて弱すぎる”。
故にこの数なら銃火器だけで十分と判断し、文字通り蜂の巣にした。
ここまでは良い。問題は蘇生出来なくなるほど肉体が損壊してしまった事で。
(チッ、これじゃ弾の無駄遣いじゃねぇか―――!)
こうなってしまえば遊ぶ遊ばないの話ではない。
ただの肉塊なぞ売れたとしても二束三文にすらならないだろう。
売り物を自分たちで壊してしまっては利益ゼロ、それどころか赤字なのだから。
この程度ならもっと少人数で襲うだけで十分だったというのに。
マンハントたちは内心で悪態を付きながら2人だったモノへと近寄る。
気分が削がれたどころではない、はっきり言って不快だ。
カモの質を見誤った愚か者に焼きを入れる事を誓いながら、せめて売れそうなものが無いか遺品を物色しようと手を伸ばし―――。
「まさか伏兵すらいないとか、舐めすぎでしょ」
「は――――?」
「死ね」
| 式神符*5 | 符に書いた人型に力を込めて、人間の形を取らせる。 ダメージを受けると符に戻ってしまう上、戦闘能力は一切なく、会話能力も低い。 簡単な作業が出来るのみである。 |
| 奇策Ⅲ*6 | 補助 | 1シナリオにランク回数まで使用可能。 このターン、次に行う攻撃1回の対象に中確率でSHOCK状態を与える。 |
| グレネード*7 | 射撃攻撃 | 敵全体にガン相性ダメージ。 |
カツン、と音を立て地面を転がって来たのは
投げ返す事はおろか逃げる事も不可能―――間髪入れずに爆発した。
・
・
・
まず若槻美野里がこの世界でぶち当たった最初の問題はデモニカについてだ。
一言で言ってしまえば、修理する事は不可能近かった。
その理由として規格の違いが挙げられる。
彼女の使うデモニカは異形科学―――科学と魔法のいびつな融合体である。
この世界の物とも共通する部分はあるが、所々に解析困難な技術・術式が使用されているのだ。
よって設計図もノウハウも無い以上、修復にはまず解析から始めなければならず、膨大な時間と労力がかかる訳で。
当然、そんな事をしている金も余裕も無いので諦めるしかなかった。
ちなみに“リアルG3じゃん! パチモンと全然違ぇっ!! ”と興奮していた宗吾は残念がっていた。
とはいえ、実はそこまで問題という訳でもない。
確かにデモニカは強力な装備ではあったが、このインフレ環境では雑魚がちょっとマシな雑魚になるだけ。
なら地力を鍛え上げ、頼らないくらいに強くなった方が効率的なのだとしばらく寝込んでから気付いた。
そうと決めたのならば行動は早い。
始めに行ったのはデモニカに搭載されていたCOMP機能と
悪戦苦闘しながら―――何度か宗吾に斬鉄して貰って―――取り外し、紹介してもらったCOMPスミスの協力の下、
この際、色々とトラブルもあったがそれはまた別の話。
―――よって今の美野里は本来の力を十全で発揮できる。
「コール」
―SUMMON――
『我ガ主ニ神ノ加護アレ!』
| 屍鬼 | ゾンビプリースト | Lv26 | 呪殺反射、ガン・精神無効 |
『ヴぃおおおおおおッ!!!!!』
| 悪霊 | ラルワァイ | Lv33 | ガン・呪殺・神経無効、破魔に弱い |
思考操作によりARレンズから魔法陣が投射展開。
そこから召喚されるのは司祭服を身に纏った骸骨と球体上の体に髑髏の張り付いた異形。
精神感応能力を悪魔召喚プログラムで補助する事で*8、特定の技能か技術*9がなければ契約出来ないダーク属性の悪魔を従えて。
突然の爆発によって混乱するマンハントたちを、
| 道具の知恵・癒*10 | 自動効果 | 戦闘中に回復・補助アイテムが使用可能になる。 悪魔合体によって継承。 |
| 羅刹の札*11 | 補助アイテム | 3ターンの間、味方全体の攻撃力上昇。 |
| 呪縛*12 | 補助 | 種族専用スキル。悪霊・邪鬼限定。 対象のイニシアティブを半分にし、全ての判定値を1段階低下させる。 シネマティック・バトルにおいて、対象は移動を制限される。 これらの効果は対象含む独立部隊全員に効果を及ぼす。 低下系解除の効果によって解除される。 |
| バインドボイス*13 | 魔法攻撃 | 敵全体に神経相性ダメージ。 低確率でBIND状態とする。 |
放たれるのは強化された神経を犯す咆哮と超重力にも似た呪詛。
二重の拘束を受け、この瞬間大半のマンハントたちは死に体へと陥る。
「―――今」
「あいよ」
であれば、その絶好の
| 隠形符*14 | この符を貼って動かなければ、敵から姿を隠すことが出来る。 敵が積極的に見つけようとした場合でも、ペナルティを受けた状態でチェックに成功する必要がある。 |
マンハントたちの背後、何もなかったはずの空間が歪む。
そこに現れたのは刀を腰だめにした―――居合の構えを取る剣鬼の姿。
転移した訳ではない。
「疾ッ―――!」
短く息を吐く―――抜く手も見えぬ超速抜刀が成る。
| 風神剣*15 | 射撃攻撃 | 抜刀術に分類されるスキル。 敵一列に風(衝撃)相性ダメージ。 素早い太刀筋から発する真空で相手を切る。 射撃かつ魔法攻撃として扱い、直感の判定で回避。 |
殺意の具現と化した颶風が、後列に居た外道たちの首を文字通り刈り取った。
・
・
・
自分たちを尾行していた怪しげな男を半殺し、もとい捕縛した後。
人気のない場所へ運んでから2人が行ったのは情報の抜き出しだった。
こちらを狙うのが何者なのか、正確に把握する必要があるからだ。
何かしらの陰謀に巻き込まれているのなら相応の対処、身の振り方を考えなければならない。
本来、自分たちはこの世界にいる筈の無い“
こういった事に関しては敏感過ぎるくらいで丁度いい。
もっとも、美野里がサイコメトリー*16で記憶を読み取った結果、単なるマンハントかつ偶発的なものであった事はすぐ分かったのだが。
―――問題はその後。
警察などの治安維持組織に通報し牢屋にぶち込んでもらう、あるいはレルムに引き返し姿をくらませる。
対応策として浮かんだのはこの2つで、すぐに却下した。
どちらも、特に後者はこの場を凌げたとしても後が続かない。
この手の輩に弱腰でいた場合、第2第3の同類が現れる事をどちらも経験で知っていた。
「じゃあ返り討ちにしましょうか。
有り金と装備全部頂くのもいいわね。
とりあえずこいつ洗脳*17して偽情報流しとくわ」
「式神で囮作って先にこっちが待ち伏せするかねぇ。
この手の連中に限らず、奇襲した側が逆にされると脆いし。
アクセも合わせて変えた方がいいか」
だから自分たちだけで殲滅する事を即断した。元より外道に慈悲など無い。
取り出せた情報からおおよその人数、装備、戦法、切り札について把握した上で可能と判断したのもある。
流石に洗脳した相手に爆弾を大量に抱え込ませて突撃させる“卑劣ボム”作戦は宗吾によって却下されたが。
よって、ここまでの流れは想定通り。
式神による囮を使った釣り野伏せで足を止め、意識を上方へと逸らし、背後から斬り崩す。
隠形しながらの観察により装備と急所を見抜いた上で*18、剣風の威力を向上させるアクセサリー*19を身に着けて放ったのだ。
結果としてマンハントたちの大半は物言わぬ躯と化していた。
「う、うわぁあああああああああ!?!?」
その惨状に、最も早く復帰した男が半ば錯乱しながらも宗吾へと銃を向ける。
効くかどうかも分からない、自分たちがハメ殺しにされかかっている現状も理解していない。
ただ、このままでは死ぬしかないという本能的判断が体を反射的に動かす。
| 籠手落とし*20 | 剣相性 | 相手が武器を握っている籠手を切る。 回避出来なければ手首を切られて武器を落とし、 治療を受けるまで格闘関係のチェックにペナルティがつく。 リティカル時、相手の腕の防具が破壊されるか、 手首そのものが半ば斬り落とされる。 『骨折』*21として扱う。 |
しかしそれはどうしようもなく遅かった。
気付けば銃を持っていた両手と白刃が重なり、通り過ぎる。
残されたのは吹き出す血と皮一枚で繋がる2つの
「ふぇ?」
「ちょっと失礼」
そんな言葉と共に、宗吾が空いた手で顔面蒼白な木偶の首を掴む。
抵抗は出来ない、藻掻くのが精々だ。
恐ろしい程の握力なのもそうだが、払いのけるための腕が無かったから。
直後―――。
「こ、殺せぇええええっ!!」
「上にいる奴を先に、くそ足が動かねぇよお!?」
「撃ちまくれぇっ!!」
理解が追い付き、恐慌状態に陥ったマンハントたちが引き金を引く。
しかし統率も何もあったものでない。
各々が好き勝手なターゲットを狙っている上、照準もブレている。
「この位置で当たる訳ないのに」
美野里は一歩後ろへと下がる。
それだけで下からの銃撃は射線が通らなくなった。
反撃される際、ビルの構造と利点も考えこの位置に陣取ったのだから当然だ。
前面に立つ仲魔もガン相性は無効なので意味は無く、近接戦を挑むとしても動きを縛られている以上ここまでたどり着く事はない。
「“盾”*22構えてんだよこっちは」
一方で宗吾は“盾”の陰へと隠れた。
サイズ的に完全に防ぐことは難しいが、防具と合わせて致命傷だけは避けられる。
弾丸を斬り落とせるだけの域にまだない故に仕方がない。
今は“盾”から漏れる苦悶の声を無視して、攻撃の波が収まるまで耐え忍ぶだけ。
やがて激しい銃声が弾切れと共に止んだ瞬間―――2人は再び動き出した。
「
| 愛用の武器*23 | 自動効果 | 習得者のレベルが武器のGPを5上回るごとに、 武器の威力を8上昇させる。 指定:『ベレッタ(GP7)』⇒威力+40 |
| 制圧射撃*24 | 射撃攻撃 | 敵全体にガン相性ダメージ。 |
仲魔の魔法と共に、上から降り注ぐ必殺の銃弾がマンハントたちを赤い染みへと変える。
同時に盾だった物を真っ二つに切り裂いた死の風が、銃弾から逃れた者たちを切り刻む。
「クソクソクソがぁっ……!
舐めやがって、こうなったらこいつの出番だ!!!!」
そして最後に残ったのは最もレベルが高く、高級な装備を身に着けていたマンハントたちのリーダー。
宗吾と同じように手下たちを盾にし、ギリギリで生を繋いだ彼は行うのは奥の手にして起死回生の一手。
血塗れの手に握られたスマートフォン―――悪魔召喚アプリがインストール済み―――から魔法陣が現れ、バッテリーからバチバチと音を立ててつつ膨大なマグネタイトが放出される。
そして一際大きく輝いたかと思えば、
『粛清粛清粛清ぃいいいいい!!』
| 鬼女 | 混沌の使い魔・ターラカ | Lv55 | 相性:??? |
現れたのは4本腕にそれぞれ剣を持った鬼面の女、『鬼女ターラカ』。
しかしそのレベルは本来ならば30代半ばがいい所なのを大きく上回っている。
たかがマンハントが従えられるような悪魔ではない。
「ぎゃはははは! やっちまえ悪魔ぁっ!!
こいつらを殺せぇええええ!!」
勝利を確信したかのように男が笑い叫ぶ。それもあながち間違いではなかった。
魔丞ほどではないとはいえ、格上の強大な悪魔。
1か月前よりずっと強くなったとはいえ、今の2人でも荷が重い相手であり、
| ギボアイズ*25 | 自動効果 | アナライズを強化する。 戦闘中、補助行動としてアナライズが行える。 失敗しても相性1種類かBS1種類を指定し、 それが効くか効かないかを知ることが出来る。 COMPアプリの内、サブアプリに分類される。 |
── ANALYZE COMPLETE ──
「火炎破魔呪殺魔力に耐性、神経・斬撃無効に氷結弱点。
これだけは分からなかったけど―――問題無いわね」
「応―――斬れるぜこいつ」
それでも、行動に一切の揺ぎ無し。
終わらせるための“詰み”へと入る。
『ぃいいいいいいいいいっ!!!!』
| ツインスラッシュ*26 | 格闘攻撃 | 斬撃(剣)相性。目にもとまらぬ二段斬りを放つ特技。 敵1体に対し、近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。 |
ターラカが繰り出すのは圧倒的膂力による力任せの斬撃。
回避も防御も決して不可能ではないが、しくじれば一撃死を免れぬ威力を秘めている。
よって宗吾は大きく体を捻り、刀を担ぐように構えて。
「
『了解シマシタ』
| トラフーリ*27 | 移動魔法 | 味方1名を視界内で瞬間移動させる。 COMPアプリ『スキルハック』によって獲得。 |
瞬間移動で割って入った*28ゾンビプリーストが代わりにその暴虐を受けた。
剣相性には若干強くとも*29、2人よりレベルが下の悪魔でしかない。
当然ながら耐えられるはずもなく死亡するが―――。
『我ガ恨ミ、受ケ取レ―――!』
| 逆恨み*30 | 即時効果 | 種族専用スキル。屍鬼・怪異限定。DEAD状態になる際に使用。 使用者が攻撃のダメージでDEAD状態になる時、 受けたダメージの半分を相手に与える。 この相性は万能かつ防御点無視となる。 |
屍の聖職者から発せられる逆恨みが、命と引き換えにターラカの体力を削りとる。
無論、これだけでは倒せない。この程度で死ねるほどヤワな悪魔でもない。
だが同時に――― 一手分の時間を稼いだのだ。
――― 《煌天の会心》 ―――
――― 《霊活符》 ―――
――― 《急所》 ―――
――― 『精神向上の札』*31 ―――
「―――“
| 雲耀の剣*32 | 格闘攻撃 | 神速の剣。目標に対しては剣相性の物理攻撃。 拡散する剣風は風(衝撃)相性の魔法攻撃として扱う。 副効果が発生したらスタン・チェックを行う。 八瀬宗吾の振るう |
ターラカに斬撃は効かない。
霊活符を使ったとしても、鉄の刃ではこの悪魔を殺しきれない。
―――しかし、風の刃は違う。
原型すら残さず、鬼女とマンハントの頭は見えざる牙に食いちぎられた。
・
・
・
「……気になったんだけど、聞いていい?」
「一番好きなライダーは誰かっていうと難しいんだが」
「そっちじゃないわよ」
マンハントを撃退したその日の夜、夕食を済ませる為に入ったレルム内のレストランで。
注文した料理が来るまでの間にふと、美野里ちゃんが口を開く。
「最初に捕まえたマンハント、生きた爆弾にして突っ込ませるの反対したわよね。
……どうして? あいつは警察に突き出したけど、どうせ最期は分かってるでしょ」
それを聞いて少し間を置く。
確かに効率を考えるのならそっちの方が良かったかもしれない。
自分も無駄に銃弾の雨の中に晒される必要だってなかったかもだ。
裏の人間なら情報を搾り取られた後でどうなるかなんて分かり切った事。
だから気にせず、使える時に使ってしまえというのも合理的である。
だけども。
「そりゃ必要ならやるさ。
俺だって最終的にぶった斬れるなら過程は割とどうでもいい派だし。
けど今回はそうじゃない―――必要ないなら態々外道に手を染めるのはねぇって」
こういうのは割と大事だ。
誤解されやすいが―――大抵の人間はその通りだろって言う―――自分は斬れるか斬れないかで全てを判断する
確かに斬る事しか出来ぬ身だが、それでも人として超えてはならぬ一線を自分なりに定めてはいるつもりだ。
あのマンハントのような者たちとはそこが違うと信じている。
「そういうやり方に頼り過ぎてたら、いつか
そうなれば俺の剣は堕落して―――無様を晒す」
この世界に来て初めて戦ったあの悪魔人間のように。
たぶん、あんな風になる前に自分で自分を斬ると思うけども。
「あと仮面ライダーファンとしてはダーティープレイに頼り過ぎるのもちょっと……
いや悪役ライダーも好きだぞ? 王蛇とかも貫いたゆえの良さが―――」
「最後の温度差がひどい」
ため息と共に美野里ちゃんはドリンクバーで取って来たジュースを飲む。
メロンソーダだった。最近見始めた鎧武の斬月が思い浮かぶ。
「……死にたくなかったから、手段は択ばなかったけど。
必要ないなら……そっか、そうよね」
どこか納得した様子で
「今のままじゃあたしも悪霊と屍鬼しか使えないし。
ちょっと自分を見つめ直す必要あるかも」
「そういう時は虚空蔵求聞持法やるといいぞ。
座禅汲んでひたすらお経唱えるやつ。
……俺は相性悪かったけど」
「悟りとは一生縁遠そうだものね」
自覚があるので目を逸らす。
ついでに弥勒菩薩を崇めていた連中の事も少し思い出してしまった。
再び記憶の底にしまう為に勉強しようとスマホで掲示板を覗くと―――。
「……ん? なんだこりゃ」
こんな一文が目に入った。
【レルム】残酷処刑場、殴り込みたいやつ集まれ~! 【裏闘技場】
◎登場人物紹介
・八瀬 宗吾 <剣士> <仙術使い> LV42
傍から見ると斬る斬れないで全てを判断してそうだが、意外とそうでもない。
剣の腕も上がってきているが、そろそろ術方面も力を入れようと思っている。
あと得物の更新の為にも、レベルを上げて業魔殿への紹介状も欲しい。
最近は鎧武を視聴中。何故か薩摩ホグワーツと掲示板で言われる事も。
・若槻美野里 <サイコメトラー><超能力者> <ガンスリンガー> LV36
超能力由来の悪魔使役能力を持つ。使えるのは屍鬼と悪霊のみ。
悪魔召喚プログラムもあるのでそれ以外も使役可能なはずだが、
荒んだ環境にいた影響でアライメントがダーク寄りになっているので難しい。
異形科学の装備と合わせて、かなりエグイ作戦も平気で立てられる。
ちなみに万全の状態であったのなら、ケートゥから逃げ切る事も可能だった。
・何処か死んだ、というか疲れて逝っちゃったような目をした少女
ご存じ媛巫女様。ドリフター関係で更なるダメージを負っていた頃。
映像越しとはいえ面談を行ったのは、魔丞を倒せる実力者というのもあるが
曰く、あちこちに濃い面子いた周回だったとのこと。
その割に何故か滅んだ理由は覚えていない。
―――――――――
次回、ワクワク裏社会見学編。