真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
次から本編に合わせてセプテントリオン編に入りたいと思います。
「―――悪魔を使う連中は全てゴミだ」
100万ドルの夜景とも称えられる煌びやかな大都市・香港。
その輝きに隠れるように、ぽつりぽつりと点在する影に覆われた地区の1つ。
所有者が夜逃げ同然に失踪し、権利ごと放置された古いビルの屋上にて。
背中合わせに構える2人のうち、黒いローブに身を包んだ男がそう呟いた。
「
何一つとして違いは存在しない。俺から言わせれば兄弟のようなものだ。
わざわざ区別する意図さえ、理解出来ない」
深淵から覗くような暗褐色の瞳に宿るのは殺意―――ただそれだけ。
悪魔の力を使う者を決して許さない鏖殺の決意―――ただそれのみ。
周囲を悪魔と悪魔使いに包囲されながらも、その言葉に迷いは一片たりとも無い。
それなりに広い屋上には軽く見積もっても50を超える数の敵がいるというのにだ。
単体ではさほど脅威ではないが、間違いなく多勢に無勢の状況。
勝機は限りなく薄く、かといって逃走も囲まれていては難しい。
有り体に言えば絶体絶命の危機で傍からすれば自棄にも見える。
「
「
それを理解している故か、周りからは余裕に満ちた
あと10秒もしない内に一斉攻撃が始まり、たった二人の襲撃者たちは圧し潰される。
彼らの
既に商品の大部分が焼かれるか逃げられた。
取引相手も縦に
大赤字は確定で、信用の面でも大打撃だ。
こうもやられっぱなしでは面子が立たず今後にも差し障る。
なので、犯人には愚行の代償を払ってもらう必要があった。
こちらに歯向かう事の恐ろしさを市場へ喧伝する材料にもなる。
生きたまま悪魔の餌にしたり悪趣味なオブジェにしないだけ慈悲深いかもしれない。
―――そんな事を考えていた。
もし彼らが新参の悪魔犯罪組織でなければ。
もし彼らが拠点のマカオから香港へと販路を伸ばそうとしなければ。
もし彼らが
このような余裕は間違いなく存在しなかっただろうに。
彼らが選べる選択肢は2つだけだった。
有無を言わさず仕留めに掛かるか、脱兎の如く逃走するか。
だが選択の機を逃した以上、彼らの運命は最悪の方向へと半ば定まっていた。
「んじゃあ自分は違うって言うのか元民主主義テロリストさんよ?」
今まで黙っていた方の片割れが流暢な英語で問いかける。
黒髪に端正な顔立ちの男で、年齢は20に届くかといったところか。
ローブの男も若い方だが、こちらは少年と間違われるほどに若い。
「捕まって処刑される代わりにエクソシストなんて名前のイヌに成り下がる。
こっちも大概だけどお前には負けるわ、その超カッコイイ経歴。
―――カッコ良すぎて俺なら腹切ってるね」
手に持った
案の定、背後から感じる殺意が一段と膨れ上がったが肩を竦めるだけで特段気にもしない。
元々仲が悪い……どころか凛子以上に殺し合いを繰り返してきた腐れ縁だ。
今回はたまたま仕事先でぶつかってなし崩しに共闘しているに過ぎない。
直後、ローブの男が持つ剣―――その鍔元が展開し結晶基盤のような電子装置が露わとなった。
「
「ッ―――“フェイプ”!!?」
矢継ぎ早に繰り出される
その意味と装置に気付いたダークサマナーの1人が叫ぶがもう遅い。
男は振り上げた剣をそのまま勢いよくコンクリートの床へと叩きつける。
| 《デサマンダイン》*1 | 敵全体の悪魔を属する魔界へと送還する。 本来は特定の神族1つが対象だが、その縛りは存在しない。 |
シンプルな装飾の両刃剣より生じたのは波紋上に広がる光の帯。
瞬きよりも早く迫るそのベールを悪魔たちは避けれず―――
別に
これが“フェイプ”―――FAITHコンピューターシステムの力。
悪魔並びにその力を利用する召喚士への対抗手段として作られた人類の執念。
あらゆる悪魔を戦場から追放し浮き駒としてしまう反則技。
あるいはいつかどこかで誰から生み出してしまった異形科学の結晶。
原理としては悪魔召喚プログラムにおける供物データの応用に近い。
対象となった悪魔が弱点とする情報を即座に解析、召喚し叩きつけて封殺。
そこから送還術式を以って契約さえも無視し物質界から叩き出すのだ。*2
とはいえ、流石に契約をそのものを強制的に切るだけの力はない。
召喚士が再びしかるべき手順を踏めば問題無く呼び戻せる。
悪く言ってしまえば永続性の無い一時凌ぎの小技であった。
だが―――戦闘中に呼び戻す術を持っていなければ関係無い。
管使いに代表される古式召喚士。
《サバトマ》を初めとする召喚系魔法の使い手。
こういった手合いには然程効果は期待出来ないだろう。
だが現在主流の、機械に依存したデジタルサマナーには特に
目の前の、手持ちの
そしてそのような相手を見逃すほど彼らは甘くない。
| 神聖召喚士 | レイン・ラウ | Lv27 |
対悪魔秘密結社《
| 《クイックロードⅡ》*3 | 即座に銃弾の装填、弾倉交換が出来る。 ランクⅡ:銃器を装備していなくても即座に銃器を準備できる。 必要ならば装備している武器を地面に落としてもよい。 |
| 「ギガスマッシャー」*4 | 「火」「物(ガン)」の相性で、使用者に有利な方を用いる。 本来はパワードスーツ専用の銃を無理矢理拳銃サイズにした物。 ⇒神経弾(真Ⅰ)装填。 ⇒「火」「ガン」「無視」のいずれからか有利なものを自動選択。 |
耳をつんざくような轟音、同時に標的の頭が砕けたスイカのように弾け飛んだ。
ここでようやく意識を切り替えたダークサマナーたちが反撃に出ようとする。
悪魔が使えないとしてもまだ数の優位は覆ってはいない。
それぞれが得物を構え勢いのまま殴りかかろうとして―――。
「遅ぇ―――ッ!」
| 《雲耀の剣》*5 | 敵前列に万能相性ダメージ。 |
| 《会心》*6 | 格闘攻撃のクリティカル率が上昇する。 |
| 《急所》*7 | 割り込みで使用。肉体の知識を学び、急所を見つける。 直後の攻撃で急所を狙ったり、わざと外したりできる。 急所を狙った場合はダメージ2倍、外した場合はクリティカルしない。 |
紫電一閃―――万能の斬撃が複数の首を刎ね飛ばす。
機先を制された彼らの目に映ったのは、くるくると宙を回る幾つもの生首たち。
全身を防具で固めた筈の仲間がたった一撃で殺されるという現実。
そして、こちらを射抜く極寒よりもなお冷えた眼差しと悪鬼の如き笑み。
「
「
「
その凶貌を認識した瞬間、ダークサマナーたちの士気が
戦うという意志が消滅し、それぞれが喚きながら勝手に動きだす。
完全に統率を失い、ほんの数秒で数の力は足を引っ張るだけの障害と化したのだ。
ここに歴戦の、あらゆる戦いを駆け抜けて来たベテランが一人でもいればこうはならなかった。
一瞬、一呼吸で状況を把握し立て直しを図っただろう。
しかし、残念ながらここにいるのは数で敵を嬲りうまい汁を啜って来ただけの小物共。
こいつらには敵わない、戦えば命を落とす……そう思わせられた時点で終わりである。
実際には、最後まで全員が死力を尽くしていればまだ可能性はあったというのに。
おそらく、早過ぎても遅過ぎても駄目だった。
早ければ自棄で、遅ければ勢いのまま突っ込まれていた。
宗吾とレイン。互いが互いに狙いを共有し、絶妙なタイミングで動いたからこその結果。
―――性格面では相性最悪でも、連携の息だけはぴったりと合うのがこの2人であった。
「逃げるなゴミ共が!!!!」
| 「七星剣」*9 | 「剣」「聖」「風」の相性で、使用者に有利なものを使用。 北斗星君の加護を受けた両刃の直剣。 かつて倒したダークサマナーから鹵獲した武装の一つ。 悪魔との交渉やタオ系の技能に補正が掛かるが、その恩恵は受けられない。 |
迷いのない刃が閃き、召喚士たちが次々と血の海に沈む。
「動くなよ斬れねーから!!」
| 《フィジカルエンハンス》*10 | 剣・ガン(物理)相性の習得済みスキルを指定する。 「属性攻撃」に対応する相性へと変更。 ⇒万能相性へと変更。 |
| 《桜花の舞》*11 | 敵全体に剣相性ダメージ。 低確率で魅了状態にする。 |
人心を魅了する妖しげな太刀筋が、外道たちを永遠の眠りへと誘う。
最初の銃声から1分後―――ビルの屋上に立つのは宗吾とレインの2人だけとなった。
つまり……
―――目と目が合う。
―――同じタイミングで床を蹴り駆け出す。
―――左右対称のように剣を振るう。
軌跡が重なり刃鳴咲いて―――新たなる襲撃者の剣戟を受け止めていた。
単独ではまず気付けなかった。
いつものように死合いを始めようとして、互いの瞳に相手以外の
すなわち自分たちの知覚をすり抜ける隠形の使い手……だから息を合わせた。
「んがっ……!!」
「グ―――ッ!!」
しかし―――幸運の女神が微笑んだのはそこまで。
2対1という変則的な鍔迫り合いへ持ち込んだというのに
まるで大地に根を張った大樹の如く、襲撃者はピクリとも動かないのだ。
身長、重量、地形、装備、それとも何らかの能力……どれも違う。
これが意味するのは単純に2人がかりで力負けしているというだけ。
つまり、敵が格上の強者だという事に他ならない。
「カアアッ!!」
そのまま気合いの籠った掛け声と共に鍔迫り合いから弾かれる。
技も何もない、純粋な膂力による力業。
それに敢えて逆らわず、力を利用して跳び下がった2人は改めて敵の姿を見た。
月明かりの中でも目立つ、肩口まで伸びる痛んだ白髪。
古めかしい―――おそらく魔術的な加工がされた―――レザーコート。
ゆるやかに握られた業物らしき大太刀。
そして、
「……カハッ、とんだ
「よくもまあ、俺の前に顔を出したものだ」
宗吾は予想外の強敵に笑みを浮かべ、レインは忌まわしき討伐対象に侮蔑を吐き捨てた。
この特徴と強さに合致する相手は香港でも一人しかいない。
勢力争いに負け壊滅した“東方魔術協会”香港支部唯一の生き残り。
ただひたすら力を求める求道者にして異端の
香港でもトップクラスの危険人物として知られた悪魔人間。
| 悪魔人間 | スレイクサースト | Lv40 |
名乗り上げからの無情なる処刑宣告。
どのような依頼を受けたのかは知らないが、間違いなく2人は対象外。
なのに命を狙われるのは歯応えのある獲物、戦うに足る敵手と判断されたからか。
つまりは完全なる私闘。傍迷惑にも程がある辻斬りだ。
膨れ上がる
相対する2人にとっては慣れ親しんだものだが、気の弱い人間であれば即座に失神するだろう。
「人呼んで
仕事でブッキングでもしたか?
まあいい……そっちがその気なら斬ってもいいよなぁっ!!」
「調子に乗るなよ
今すぐ殺してやるから有難く思うがいい……っ!!」
格上とのイレギュラーな遭遇戦。
勝機は薄く、しかしどちらも撤退は頭に無い。
片方は斬れる気配を感じて。
片方は殺せる予感に従って。
どちらも―――肩を並べる相手がいたから。
宗吾が刀を担ぐように構える。
レインが拳銃の照準を向ける。
スレイクサーストは無形の構。
殺意がぶつかり、見えざる火花を散らして――――屋上に月光を遮る巨大な影が掛かった。
『ハロー! どうも皆さん私はSEBEC香港支社所属、
偶然散歩の途中にここに来たのですがテンションが極めて高ぶっておりミサイルを連射したくなっています!! 決して証拠隠滅とかそういうのじゃないのであしからず!!!!』
| マシン | トイ・ソルジャー・コマンダー | Lv33 |
思わず3人揃って空を見上げる
そこには無音で
搭載された夥しい数のミサイルが真下のビルと3人に向けられた。
『先日試作したレーザーライフルのテストも予定しているので斜線上に立たないでください!
警告を行いました!! 訴訟は一切受け付けておりません死ねぇえええ!!!!!!!』
その夜、放棄地区に爆発と閃光が轟いたが誰も気にしなかった。
香港ではたまによく見かける光景だった故に。
ちなみにSEBECは誰に聞かれた訳でも無いのに無関係だと発表した。
・
・
・
「ヒャハハー! また来たな小僧共ォ――! 俺の鍼の味を忘れられないみたいだなぁ~~ッ! だがまずは指圧で治したての筋肉と関節をほぐしてやるぜぇ――ッ!」
「がッ、ぐっ、ぐぉあああああ!!!」
「やめ、貴様……っがっぬうううううう!!!」
「回復魔法でも歪みは残るんだよォ―――! オラっ、力抜けッ! ギャハハハハ――ッ!!!」
「「ァアアアアアアアアアアアア――――ッ!?」」
「ヒャハハ――! 前衛のDBにはこのツボがよく効くんだぜ――ッ! 最後に秘伝の漢方入れた熱湯風呂に漬け込んでやるから覚悟しやがれ~~ッ!」
ついでに、馴染みのモヒカン警官から尋問という名の
これもまたいつも通りのよく見かける光景なので誰も気にしなかった
・
・
・
「お願いしましゅ養ってくらひゃい、ついでにお酒をくれればあなたがうえっぷーーーッ!!」
「ちょっ、吐きそうな顔して足掴もうとすんな酔っ払い!!
ああもう縋りつかないでよこんな所で!!!!」
「うわぁ……」
―――遡ること数分前。
日も沈み辺りが暗くなった頃、宗吾と美野里は気晴らしを兼ねたレルム内の散策を行っていた。
ようやく宝石を一通り揃え終わり、その他の支出を含めても大分余裕が出て来たからだ。
宗吾の方はまだ色々とローンがあるが、払い終わる目途も立っている。
であればと。せっかくなら普段は行かない場所まで足を伸ばした。
案外こういった時に掘り出し物を見つけたりすることもある。
だが残念な事に、今回ばかりはあまり得策ではなかった。
なにせ、“ヤクザが国軍として起用される”という俄かには信じがたい噂もあって街全体にどこかひりついた空気が漂っていたからだ。
これも複数の勢力の思惑が絡んだレルムという街の特色だろう。
裏業界の情勢が街の顔としてダイレクトに出やすい。
宗吾たちが普段利用するレルムはそこまでではないのだが、この渋谷レルムは特に分かりやすかった。
もちろん非合法レルムほど治安が悪い訳でもないので過ごす分には問題無いのだが……。
「夜歩きって気分じゃないわねこれ……変に気疲れそう。
いつもよりこっち見て来るのも多いし」
「
それに白昼堂々腕ごと
「いや怖すぎでしょ。どこのヨハネスブルグよそれ。
……そう考えたら夜の須摩留ってだいぶ大人しかった?」
美野里の脳裏に
恐れ知らずにも
しかし冷静に考えると銃弾や魔法、超能力が飛び交うわ悪魔まで使ってくるわで別ベクトルで危険だった。
なお、その集団相手に大型戦車で轢き逃げするわ機関銃でハチの巣にするわを繰り返していた美野里が一番恐れられていたのだが、それを本人が知る由もない。
「
国家権力とつるんだ反社なんて鬼に金棒どころじゃない」
「嫌過ぎる……っ!」
最悪の場合、有志の連中と共にカチコミをかける必要がある。
たぶんその時は千束あたりから声が掛かってくるかもしれない。
―――そんな風に考えていたからだろう。
「いい加減にしやがれよてめぇええええ!!!!
いくら飲み放題だからって店の酒飲み尽くす奴が何処にいんだよ!?!?
出禁だ出禁、二度と来るぁっ!!!!!!」
「しょんなぁ!! お金ないしここ出禁にされたらもう飲めにゃい――――ッ!!」
「禁酒しろ――――ッ!!!!」
「え―――」
ドゴン、と派手な音を立てて店から蹴り出された人影に反応するのが一瞬遅れてしまった。
数回転した後、足元で大の字になって寝転ぶのは20代前半ほどの女だ。
白髪に酒で赤らんだ美貌。仰向けになっても分かる豊満なスタイル。
そして……感じる気配からして
「……ふむ」
「フンッ!」
宗吾の目が重力に負けず
脛を抱えて悶える男と鼻を鳴らす少女。
しかしその音で女の視線が上を向き、美野里と目が合う……合ってしまった。
「お願いしましゅ養ってくらひゃい、ついでにお酒をくれればあなたがうえっぷーーーッ!!」
そして話は冒頭へ戻る。
・
・
・
弱音ハクという女はいたって普通の、どこにでもいる覚醒者だった。
たまたま覚醒して、たまたま裏の業界に関わり、たまたま仕事を得ただけの女。
特段優れた能力がある訳でもない、探せばどこにでもいる十把一絡げの凡人。
強いて言えば酒に強いのが取り柄だろうか。
しかし夜の店ではともかく、命がけの戦いでは役立つはずもない。
噂されるヤクザの国軍化も不安には思うがあるがそれだけ。
いざという時は襲撃を仕掛ける、など夢のまた夢だ。
人目に付かない所に隠れ、亀になって嵐が過ぎるのを待つのが精々だろう。
それが変わったのは数日前。
いつものように働いた後、夜の街で店をはしごしていたら―――。
『お嬢さん、いきなりでなんだが私と飲まないか?』
妙に整った身なりの、掘りの深い顔立ちの美形に声をかけられた。
見覚えのない、どこか退廃的な雰囲気を醸し出す外国人だ。
最初はナンパかと思い、適当に断るつもりであったのだが奢ると言われたのでホイホイ着いて行ってしまった。
しかし懐に寂しさには屈するしかない。
そして―――。
『オラァッ飲めや色男―――ッ! 私の酒が飲めないのおおっ~~!?!? ほーらイッキイッキ―――ッ!!』
『オボボボボボボ―――――ッ!!? パ、パパパト、パトララララ―――ッ!!』
『酔い覚ましなんて可愛いわね!! 追加でワインと焼酎とビール!! 頑張れ頑張れ飲めやコラ♪ 』
『お客さんもう止めなって! そのお兄さん真っ青になっちゃってるよ!?』
『アルハラ、アルハラよこれ!』
『平気平気~~ッ!! あ、このボトルも開けちゃおっと!!!!』
相手が吐こう白目を剥こうが関係なく。
店にあるだけの酒をチャンポンして、ただひたすら飲み続けた。
途中で店長や他の客が止めに入ったが、彼らも男と同じ運命を辿る事となった。
『ウプ……わ、わたしの、おえっ……負けか……おえっぷ』
『何言ってんの? 気絶するまで飲むわよここからが本番でしょ』
『かんべんしてください……っ!
―――流石、私の半身……みどめよう!
ぎみごそが……うえ、“次”にふさわしっぷうう』
『阪神? タイガースはまあまあ好きかも』
やがて空が白み始めた頃。
死屍累々となった店内で男が何か言っていたのは覚えている。
流石にこの時は自分も
何やら“ごーいつ”だとか言っていた気もするが、呂律も回っていなくて聞きにくかった。
『我が知■たる君よ……いざぁっあうええええええ!!』
『ちょっと大丈夫ー?』
そして、手を差し出しながら吐く男の手を取り――――。
| Lv63 |
『―――――ふえっ?』
気づけば男は消え――――ただの覚醒者だった弱音ハクという女は悪魔になっていた。
そして会計も済んでいなかったのでとんでもない金額を請求された。
・
・
・
「―――ってことがありましてぇ。
お金はないわ人間じゃなくなるわ……。
しかもお酒にも弱くなっちゃって」
「出禁食らうくらい飲んでおいて???」
「そもそも金ないのに何で飲むんだよ」
思わずツッコミの言葉が出た。
人間から悪魔人間を通り越して悪魔になってしまったのは確かに同情する。
しかし半分以上自業自得な気もするのも確かだ。
目の前の女―――弱音ハクことリーベラを改めて“観る”。
美野里ちゃんと比べれば然程優れた
それでも、種族も名前も
観ている側の己が正しく理解出来ないのか。
それとも相手に何かしらの問題があるのか。
分かるのは実体を持っているという事。
そしていざとなったら斬れるという程度だ。
(そもそもリーベラにリーベル……何でその名前が?)
頭の中から知識を引っ張り出す。
どちらもローマ神話における生産と豊穣の神だ。
夫婦とされるが男性形と女性形で呼び方が違うというだけで、無理に括れば同一神と言えなくもない。
だか、それでもこのような観え方になるのだろうか?
(同一視されるのはペルセポネ、あるいは―――)
「―――契約で縛って酒の量を制限する。
戦えなくなるくらい酔わない。
その上で戦闘にガンガン放り込むけどいいの?」
「お願いします! 野良悪魔扱いで人権無くなって色んな意味で後がないんです!!
ヤケ酒してたけど勘で貴女が最後の蜘蛛の糸ってわかるのぉおおっ!!」
「え、マジで契約するのか? このアル中悪魔と???」
あれこれ考えてるうちに、いつの間にか美野里ちゃんが契約寸前まで行っていた。
本当に大丈夫なのだろうか?
超能力者である以上、直感は彼女の方が優れてるとはいえ危険な気もするが―――。
「言いたい事は分かるけど能力は優秀だし、実体があるから消耗も殆どない。
今後を考えたら囲っておくのもアリかなって。
それに変わり者の仲魔なんて今更でしょ」
「それもそうだがなぁ……」
新宿地下街で《餓鬼王国》と戦った時にあれこれあって拾ったガキ。
“タイムマシン・レジスター”の誤作動による合体エラーで生まれたハゲネ。
それと比べても頭一つは飛び抜けている気がしなくもない。
「逆らいませんよぉっ! こっちも人生もとい悪魔生かかってますから!!
それに、強くなればいつか元の量飲めるようになるかも……っ!!」
「言っとくけど酒代はバイトするなりして自分で稼ぎなさいよ?
こっちはたたでさえ金欠気味なんだから」
―――そうして美野里ちゃんは新たな仲魔を得た。
・
・
・
「ヒャハハー! お前が残党の親玉ぶった斬った小僧か――! いい具合にボロボロだな~~ッ! まずは歪んだ場所を整えてやるぜ――ッ!」
「嘘だろ何で初めて会う顔見知りがよりにもよってお前なんだよ何で香港にいないんだよ……っ!?」
「ああん……ヒャハッ! どうやら違う俺と顔見知りのようだな~~ッ!? 世界を超えても俺の施術を味わいに来やがって―――ッ!」
「違う違うってガッ、ァアアアアアアア!!!!!」
「ギャハハ――! 特別サービスだ~~ッ! いつもより多めの鍼を打ち込んでやるぜ―――ッ!」
「やめ、このっぐぅおおおおおお―――!?!?」
「ヒャハハ―――!! 野郎の野太い声が気持ちいいぜぇ~~ッ! もっと叫べぇ―――ッ」
・
・
・
「しぬかとおもった」
「大げさな……とは言えないわねアレは」
都内にある覚醒者御用達しの病院。
その一室にて宗吾はベッドに横たわっていた。
死んだ目こそしているが、回復魔法も用いて傷の大部分は既に癒えている。
しかし、万物を焼きつくす炎をその身で受けた影響か。
両腕に関しては肩から指先まで包帯が巻かれたままだ。
感覚も鈍く、動かすのも一苦労だった。
とはいえ快方には向かっており、後遺症が残る程ではない。
おそらく明後日にでも包帯を外せるだろう。
しょせん、その程度の傷でしかなかった。
「けど、明日には退院でしょ。
あの施術もあと1回受けるだけと思えば……」
「傷の残らない拷問だぞ好んで受けたくねぇって。
痛みには強い方だが、あればっかりは慣れん」
椅子に座ってリンゴの皮を剥く美野里を見ながらそう呟く。
思い返すのはかつての世界の香港。
そこでトラブルを起こす、または巻き込まれるたびに世話になってしまったモヒカン警官。
どうやらこの世界では普通にモヒカン医者をやっていたらしい。
モヒカンなのもそうだが、腕も変わっていないようだった。
恐ろしいほど体が軽いのが証拠である。
「……正式発表があったけど、もう少しで第3次セプテントリオン戦だって。
掲示板じゃどこもかしこも大騒ぎよ」
「楽しみだな、ようやく斬りに行ける」
「この剣バカ……ッ!」
適度な大きさに切ったリンゴが宗吾の口へと突っ込まれる。
終焉を齎す厄災―――セプテントリオン。
幾つもの世界を終わらせた実績のある脅威を前にしてこんな事を言える者は少ないだろう。
特に宗吾の場合、性質が悪いのは侮っている訳でも過小評価している訳でもない所だ。
「んぐっ……実際戦わなきゃ終わりだろ?
なら楽しんだ方が得だと思うんだがな」
「そんな幸せメンタルしてる修羅勢ばっかりじゃないのよ。
大体は悲鳴上げるから」
確かにこの世界は2度に渡る襲撃を跳ねのけている。
だからといって今回も上手く行く保障など欠片もありはしない。
実際、戦う前に膝を折った者があちこちにいると聞く。
それを惰弱とは言えない。美野里とて可能なら避けたいくらいだ。
―――だがそれでも。
「じゃあ引き籠るか? 止める気は無いぞ」
「まさか―――前にも言ったけど嫌なのよそれ」
それは末期の須摩留で嫌というほど思い知った事。
優等生も不良も。悪魔人間も超能力者も関係ない。
逃げるだけではいつか必ず追いつかれる。
どれほど走っても必ず逃げ場は無くなる。
理不尽に噛みつき咆えねばならないのだ。
「別に戦うのは好きじゃないわ。
だけど……ムカつく、許せない、死にたくない。
こっちの人生無茶苦茶にされるのたまったもんじゃない」
「同感だな。俺もまだまだ強くなりたいし、仮面ライダーも見たい。
こんな所で終わりたくないからぶった斬ってやる」
どんなに絶望的であろうと自分からゼロにしない。
勝利の女神が微笑むのは何時だって膝を折らなかった者だけなのだから。
「だから頼りにさせて貰うぜ、
「こっちも頼りにしてるから、
宗吾は破願して拳を突き出した。
美野里は微笑んで拳を合わせる。
過去から流れて辿り着いた最新の世界にて。
これまで積み重ねて来た全てが試される時が来る。
どちらも終わる気など毛頭無い。
むしろ邪魔だ退けと言わんばかりに決意を滾らせる。
ここに改めて―――2人だけの誓約が交わされるのだった。
「にしてもセプテン前の駆け込み需要がスゲーな。
物資とか軒並み値上がりしてるぞおい」
「ある程度は確保してたから問題ないけど……乗り越えたらまた財布が寂しくなりそう」
「……うわっ、風俗の宣伝までやってら。
商魂逞しいというかなんというか」
「…………………………行きたいの?」
「いや別に。 金勿体ないし」
「そうよね、そうだった。健全もとい“剣全”な男だもんねあんた」
「そもそも風俗とかこりごりなんだよなぁ。
流れで
「――――――は?」
「姐さんからは房中術の手解き受けてなかったらガチでやばかったかもだし。
いやもちろんそういう仕事してる相手を貶すつもりはないぞ。
むしろこっちの業界じゃ切り離せねーからな」
「――――――――は???」
「……あの、美野里? 美野里さん???
どうしたベッドの上に乗って来て――――!!?」
―――数時間後。
見舞いに来た千束は、何故か2人が窓を全開にして換気している光景を目の当たりにするのであった。
◎登場人物紹介
レイン・ラウ <神聖召喚士> Lv27
シリーズポジション:レイン・ラウ(真・女神転生デビルサマナー TVドラマ版小説)
対悪魔秘密結社《銀翼十字結社》のエクソシスト。
宗吾の香港時代における腐れ縁の1人。
元テロリストという異色の経歴の持ち主。
だが、本人曰く“一般人を手にかけた事は無い”とのこと。
三業会との決戦において行方不明となったが死体は見つかってない。
余談であるが香港の近くには異界を拠点とする海賊がいたりする。
・Tips
ギリギリBで済ませた。
最後に何があったのかはR-18の方で書く予定です。