真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
それと新しい表現を試してみました。
ダイエット方法というものは手を変え品を変え、あらゆる時代で流行るものだ。
90年代の日本では主に糖質カット、サプリメントを用いたダイエットが主流である。
これはTV番組やCMでの宣伝によって、信憑性の不明な健康情報が氾濫したのが原因だ。
これさえ食べていれば勝手に痩せる。
誰でも出来るお手軽な減量。
楽して簡単ダイエット。
そんな都合の良い幻想に大勢の人間が踊らされ―――当然のように失敗した。
タンパク質などの栄養不足による健康被害。
糖質ゼロを謳いながら砂糖を混入する偽装。
果てにはTV番組による意図的な情報の捏造。
むしろこれで上手く行くはずがない。
何もかもが間違っていたわけではないだろうが、成功するのは一部のみ。
大多数は途中で挫折するか体に不調をきたすかのどちらか。
極論、人が痩せるには食べた分以上に消費するしかないのだ。
それこそが古今東西揺るぎない真理であり。
| 悪人 | チンピラ | Lv3 |
―――だからといって、こんなものが認められるはずもないのだが。
かつては日本の中心にして“千年の都”と雅称で呼ばれる京都。
100年以上前に皇室が東京へ奠都しようとも、歴史と霊的な面からの重要度に陰りは無い。
今もなお日本文化を体現する古都として世界に知られている。
その都の一角を今、無頼の輩たちがダイエットなどとほざきながら我が物顔で蹂躙していた。
それぞれが手に持つのは釘バットにメリケンサック、あるいはゴルフクラブ。
どう見ても活人剣の要素ゼロである。
そもそもダイエットに用いるものではない。
「活人剣とは人を活かす剣!
自分を活かす為に他人をボコって金を奪う!!
心も体も懐も温まらせる、まさに一石三鳥の剣!!」
偶然通りがかったサラリーマンの頭をバットで打ち抜き、意識をホームランさせる。
「真の達人はなぁ……刀なんていらねーんだよぉっ!!
オレは活人剣を初めて1時間でこの境地に至った天才!!
無刀の剣術、虚刀流開祖を名乗らせてもらうぜぇ~っ!!」
通報しようとした青年を殴り飛ばし、馬乗りになって全身へ拳の雨を降らせる。
「流行るぞこれは~~! 真似されねぇうちに稼がないとなぁっ!!
だから金だけじゃなくてクレカもついでに服も下着もおいてけぇっ!!」
蛮行に悲鳴を上げる少女を背後から襲い、身ぐるみ剥いでから川に投げ捨てる。
まさに悪鬼の如き所業だった。
犬畜生にも劣る行いであった。
救いようがないのは、彼らは特に深い考えでこのような事をしている訳ではない点である。
ただ汗水流して働かず、楽に稼げる方法を考えて。
最近のダイエット方法の失敗について聞き及んで。
偶々る〇うに剣心を読んでいたから活人剣ダイエットを思いついた。
それだけの、浅過ぎて摩天楼の域にある発想だった。
しかも殺していないのは半分以上が偶然によるもの。
このまま続けていれば確実に命を落とす者が現れる。
これを見れば抜〇斎も殺さずの誓いを破りかねない。
つまり、このチンピラたちは悪魔に乗っ取られたとかそういう特殊な背景は一切ない。
その場の衝動と勢い、思いつきだけで動くブレーキの壊れた暴走車だ。
本来ならとっくに警察のお世話になり牢屋にぶち込まれている人種だ。
そうなっていないのは、全員が覚醒を果たしており
―――故に。
「ん……ケヒャッ!? 新しい獲物はっけ~~ん!!」
チンピラの1人が、
「――――」
少年は喋らない、動かない。
俯きがちで表情も伺えない。
ただ緩やかに拳を握るだけ。
その制服は近所にある国内有数の名門学校の物。
良家の子女が通う、所謂金持ち学校の生徒の証。
チンピラからすれば恰好の鴨で見逃す理由はない。
そもそも目の前に現れた時点で逃がす選択もない。
「オラァッ活人させろや!!
いや、やっぱムカつくから死ねぇっ!!!!」
ふと、チンピラの脳裏を過ぎったのはかつての高校入学式。
面倒だったので入試を受けず向かったら追い返された過去。
怒りのあまり、お礼参りを断行したら警察に追われた日々。
軽く思い返すだけでも腹が立つ、己の人生が決定的に躓いた原因。
だからあの時の屈辱を釘バットに込め、まるで関係無い少年の頭へと振り下ろす。
| 《見切り》*1 | 相手の武器の長さをセンチ単位で見切り回避する。 回避の代わりに使用し、成功したら相手に1回攻撃できる。 相手は回避や防御にペナルティ。 |
| 《無刀術》*2 | 技相性。武器が無い場合に、手を刀に見立てて相手を斬る技。 |
ベキベキ、と箸の折れるような音がした。
少年の頭蓋骨が砕けた音ではない。
チンピラの両腕が釘バットごとあらぬ方向へと折れ曲がった音だ。
「……ケヒャッ?」
「――――――――――」
痛みを脳が理解する前に、チンピラと少年の目が合う。
能面のような無表情に嵌まる、瞋恚の炎を宿した双眸。
少年が獲物ではなく狩人であると悟った時―――彼は無造作に一歩踏み込んだ。
絶叫代わりの破壊音と共に、
潰れたタコ同然にして、トドメにアスファルトへと叩きつけ完全に意識を断ち切った。
「んだぁてめえ……!!」
「オレらの活人剣を邪魔しようってのかぁ~~っ!?」
轟音に反応した残りの2名が、凶器をちらつかせながらドタドタと詰め寄って来る。
突如として掛け替えのない仲間が一瞬で倒されたのだ。
その事実に恐怖する前に、怒りが勝ったのだろうだろう。
勝ち目があるはずもない相手に自らを捧げに行っていた。
……仮に、脱兎の如く逃げ出していたとしても結果は変わらなかっただろうが。
「―――安心しろ」
ここでようやく、無言を貫いていた少年の口が開かれる。
| 《三挫き》*4 | 心(精神)相性。 敵の行動を阻止する。 抵抗判定に大失敗した場合、金縛りとなる。 |
放たれるのは静寂に満ちた刃の如き殺意。
首を刎ねられる光景を幻視し、愚か者たちの勇み足が完全に潰される。
先ほどまでの勢いと口調は何処に行ったのやら。
顔を蒼褪めさせ口をパクパクと動かすだけの、最早まな板の上の鯉でしかない。
少年……宗吾はキレていた。
学園の近所で活人剣を謳いながら人を襲う通り魔たち。
剣に生きる者を馬鹿にする、阿呆にもほどのある理屈。
実際に耳にしてしまった、聞くに堪えない妄言の数々。
動かない理由が無かった。
退魔生徒会としての活動承認など関係ない。
単純に襲われたから返り討ちにするだけ。
苦言を呈されればそれで押し通すまで―――屁理屈だろうが理屈は理屈だ。
「やばくないです? あそこまでガチギレな宗吾先輩久々ですよ」
「同じ剣士としては分からなくもないが……殺しまではしないはずだ、おそらく」
「いざという時は止めるで。ダチをブタ箱に入れる訳にはいかん」
生徒会の仲間たちも、茶化せないほどキレているのを悟って何も言わず送り出した。
今はやり過ぎ過ぎないよう、すぐ止められる位置で見守っている。
外道であれば特に躊躇う必要も無いのだが分類上、相手は人間*5なので殺しまでやると流石に不味いからだ。
「知ってるか―――活人剣って“手足をつめて首と胴を活かす”ってやつなんだよ」
口にするのは鬼さえ切り伏せたという彼の“剣術無双”、柳生宗矩が説いた活人剣の概念。
誰も殺さない剣という意味ではなく、生きてさえいればどうでもいい剣。
むしろ生きたまま苦しみを味合わせる、外道畜生の心根が為せる技。
そういう意味では確かにチンピラたちも該当しない訳ではないが―――。
「覚悟しろ……本物の活人剣ってのを教えてやる」
齧っただけの俄かでは、本物には遥か遠く及ばない。
この日、活人剣ダイエットは流行る前に終焉を迎えるのだった。
・
・
・
所々で修繕工事が行われている香港市街を黒塗りの高級車が1台走り抜ける。
所謂ベンツの中でも最上級のクラスであるマイバッハだ。
しかも、外見からは分からない改造が幾つも施されている際物であった。
流石の香港でも、ここまで法律をぶっちぎった車に乗るのはそこまで多くはない。
「いやぁ~まさかこんな高級車に乗る機会に恵まれるなんて嬉しいなぁ。
お礼に1枚どう? 出来立てほやほやの新作だよ」
「いりません」
後席の対面シートに座る乗客は3名。
刀を携えた黒髪に整った顔立ち青年。
チャイナ服を身に纏った緑髪の美女。
そして蕩けた瞳で虚空を見つめる男。
運転手は高度な式神*6なので数える必要はない。
「え~純粋な善意なのに酷いや」
「貴方、よりにもよって私に
| 符術師 | 翻香鈴 | Lv30 | 備考:三業会の現 |
美女―――香鈴は差し出された切手サイズの紙きれを呆れ交じりに見た。
これは郵便物ではなく、舌の上に貼るタイプの物だ。
どういう理屈か分からないが七色に光り輝いている。
健康に良い事だけは絶対に無いと断言できるだろう。
実際、目の前で舐めている男の瞳が両方光り始めた。
ちらりと隣の席に座る青年―――宗吾を見れば自分と同じような目をしていた。
口にはしないが気持ちは自分と同じと見て間違いない。
ハッキリ言って、対面の席に座るこの男は何度会っても慣れる気がしなかった。
というか出来るだけ顔を合わせたくない人種だ。
心情的にも、そして立場的にも。
何せ―――。
「いくら人手不足でも何故貴方みたいなのを雇っているのですか対策室は。
同僚がこれでは凛子さんにも同情しますよ流石に……」
「酷い言い草だな~。
ちゃんと法律守ってるのに……煙草と一緒だよこんなの」
| 警察官 | ホンジュン | Lv25 |
どう考えても牢屋か病院に放り込まれるべき怪人。
キワモノ揃いの香港特別対策室の中でも特に異端な
それがこのホンジュンという、本名かどうかさえ不明な男に他ならない。
職業倫理やモラルという言葉に唾吐く採用基準であった。
「クスリは僕の一部なんだけどね~。
理解され難いマイノリティは辛いや……」
「マイノリティじゃなくてソロでは?」
この男は本来、
仕入れる物より安価かつ、依存性と副作用のない物をばら撒く警官など予想出来るはずもない。
おかげでそっち関係の商売からはほぼ撤退させられたのが現状だ。
それでも、今こうして話しているのは。
「―――やっぱりねぇ、イタリアンマフィアが
ほらあの……ドンカラさん? のいたところ。
それもバリッバリに規制されてる、危険行動と重度の依存性伴うタイプの。
はしゃいでるチンピラを足場に広めようって感じかな~」
「やはり、ですか……この混乱期を狙って人の縄張りに押し入るとは舐めた真似を。
こちらも
早急に手を打たねばなりませんね」
“香港血戦”以来、香港は極めて不安定な情勢にある。
それに乗じて他国の勢力が介入して来る事自体は予想していた。
ただ、今回は些か規模が大きい。
相手はイタリアンマフィア……三業会、いや天尊流星の被害を受けた者たち。
ボスである“ドン・マルカラ”を操り、欧州の飲み水に毒を混ぜさせる暴挙に至らせたのだ。
それによって出た被害も、傷付けられたプライドも。
彼らからすれば到底許せるような事ではないだろう。
利益と報復を兼ねたものだというなら納得する所もある。
関係のない分派を主体に再編したから無関係。
……そんな屁理屈が通るはずもない。
しかし、だからといって。
無抵抗に殴られるままなのは面子が立たない。
何よりも関係のない市民に、同胞に被害が出てしまっているのだ。
だからこそ、公権力と手を組む事にも異存は無い。
悪い言い方をすれば、なりふり構っていられないのだ。
秩序側も混沌側も、自分たちだけでは手が足りていない。
出来ない訳ではないが、他が疎かになってしまう。
そうなれば本末転倒―――より大きな被害が出る。
こうして自ら情報交換を行うのもその一環。
相手に本気である事を伝える為である。
「それにしても……こんな手を打ってくるなんて許せないよねぇっ!
僕は違法薬物も! それをばら撒く輩も死ぬほど嫌いなんだ!!
薬物乱用ダメ絶対!!!!!!!」
「ブーメラン発言って知ってます???
そもそも何故貴方が来るんですか人選間違ってますよね。
てっきり凜子さんだと思っていたのですが」
連絡役が腕に注射痕の残る、薬物常用者なのはどうかと思うが。
というか、対策室でもマトモな人種の凜子が来ると考えていた。
他の面子も大概なので、普通に会話の成立する相手が良かった。
「規制されてないのしか使ってないからセーフだよセーフ!!
んで凜子ちゃんだけどね~妙に荒れてるというかぁ……」
アウトを通り越してデッドボールな発言をしつつ、ホンジュンが理由を語る。
「ほら、この間の“ホンコンガー事件”から圧がすごいのよ彼女。
鬼気迫るというか、
鎮静剤あげたら無言で斬りかかって来たから今回はお休みってこと」
「………へぇ」
2人の視線が当事者―――護衛として無言を貫く宗吾へと向く。
プイっと窓の外を見た。色々と
「ねーねー八瀬くん、キミやっぱりウチに来ない?
腕が立つ相手は大歓迎だしさぁ、凜子ちゃんの機嫌も良くなると思うんだよ」
「―――はっ? あげませんけど???」
気づけば咄嗟に宗吾の腕を掴んでいた。
一般的な男性の太さに見えて、引き締められた筋肉で編まれた腕だ。
最近寝る時はほぼ毎日自分を抱きしめてくれる逞しい腕である。
―――抗議の念も込めて強めに睨むと両手を振りながらヘラヘラ笑い出した。
「あはは~そんなガチにならなくても良いじゃないですか~。
ジョークだよジョーク……ほら、今3人になってるから1人くらいいいかなって」
「この薬中……っ!」
会談中に幻覚を見始めた警察官に思わず悪態をついて―――。
「ッーーーー姐さん!!」
当然、窓の外を見ていた宗吾によって抱き抱えられる。
直後―――
・
・
・
「あたたたた……いきなり酷いなぁ」
人通りのほとんど無い道路で横転し炎上するベンツ。
その砕け散った窓からホンジュンは暢気な声と共に這い出した。
よろめきながら立ち上がり、パンパンと服の汚れをはたき落す。
多少髪の毛は焦げているが五体満足、傷らしい傷もない。
薬中であろうと覚醒者だ。普通の人間と比べれば遥かに頑丈なのだ。
加えて、装甲面でも改造が施されていたので被害はほぼ抑えられたと言っていい。
足元がおぼつかないのは単にラリってるだけである。
ちなみに宗吾と香鈴の姿はどこにもない。
着弾前に天井を切り裂いて脱出していた。
今頃は味方の所を目指して逃走中だろう。
「……ん~~どうしようかなぁ」
懐から取り出した
甘ったるい匂いを放つ煙が発煙筒のように噴き出し、ホンジュンは至福の一時を味わい始めた。
車内は禁煙なのでどうしても吸えなかったのだ。彼はそういう喫煙ルールは守るタイプである。
なお、特に依存性は無いが10分に1本は吸わないと落ち着かない自家製中毒でもあった。
「本部に連絡……いやその前に消防に通報……番号なんだっけ?
まあいいか、誰かやってくれるでしょ」
自分が放置されたのはまあ仕方ないかと受け入れる。
そもそも、この程度で死ぬならとっくに死んでいる。
気にするだけ無駄なので優先するのは
――――そうするつもりだったのだが。
突如として何台もの
逃げ場を完全に封じた後、降りて来るのはアルマーニのスーツを着た強面の男たち。
全員の手には往年のギャング映画さながらの
映画撮影にしてはカメラも無いし殺意も本物だ。
| 軍勢 | マフィアの群れ | Lv35 |
というよりどう見ても……どう考えても件のイタリアンマフィアであった。
警察と三業会が合同で動き始めたのを察して牽制に来たのか。
あれこれ思考を回そうとするが幸福感でよく頭が回らない。
面倒になって煙を吸う事を優先する。
「■■■■■!! ◆◆■■■!!!!」
「ん、あ~吸いたいの? 分かるかいこれ、僕が自分で調合*7したんだぜ。
ほらお近づきの印に1本どうぞ、欲しければ幾らでも用立ててあげるさ」
視界の中で七色に光り輝く黄金像と拡張するブラックホールに話しかけた。
ちなみに、傍から見ると何もない空間に紙巻を差し出している。
マフィアたちは思わず引いた……状況が分かっているのかと。
敵に囲まれ退路は無く、味方もいない。
絶体絶命の状況でおかしくなったのか。
いやそれ以前に最初からおかしいのか。
―――どちらにせよ、やる事には変わりはない。
自分たちを、“ボンゴレファミリー”を愚弄した三業会とそれに協力する者たちを許す訳にはいかない。手始めに、まずはこの警察官? を血祭りに上げる。
これは報復の始まりを告げる嚆矢なのだ。
だから。
何の躊躇もなく。
引き金を、引こうと、して―――。
| 《仕切り直しⅢ》*8 | 戦闘に参加している全員がイニシアティブを振り直す。 ランクⅢ:使用者は最初に行動可能となる。 |
―――甘い匂いと声が脳髄を蕩かせた。
景色が歪む。
思考が霞む。
天地が軋む。
世界が侵されねじ曲がり変容する異常な感覚、そして
抗おうという意志が秒で溶けて流されていく。
歯を食いしばって堪えた者も、その場に膝を着いて蹲る。
―――彼らの失敗は1つ。
この男を前に“囲む”という選択を取った事。
香港に生きる者なら、対策室を知る者なら絶対にしない悪手なのだそれは。
最初の奇襲と同じように、遠距離から釣瓶打ちにするべきだったのだ。
そうすれば逃げられる目はあった……しかしもう遅い。
既に彼らは釈迦の掌の上―――もはや何処にも行けはしない。
紡がれるのは救済の祈りを込めた祝詞。
人が持つ七つの穴を閉じ内海へと沈める呪詛。
何時かの未来/過去、何処かの世界/時代の
紡がれるのは凄惨なる戦いを止めんとする決意。
万人に死の薬丹を飲ませてでも終わらせんとする狂気。
彼の電子の歌姫が編み出すものと比べれば、規模も範囲も劣るが悪辣さで優る孤牢。
| 《四凶渾沌・鴻鈞道人》*9 | シーン属性を任意のものに変更。 習得者のイニシアティブは0となる(自由乱戦では最後に行動) 使用に手番は消費しない(補助スキル)。 ⇒シーン属性:VRを選択―――痴れた夢に酔え。 |
| 「シーン属性:VR」 | 効果:装備の1つが失われ、30%の確率でBIND状態になる。 リアルに見えるバーチャル・リアリティの内部に居る。 データ上、武器や防具、能力値やスキルはそのままであるが、 フィルターや安全装置によって変更される可能性が高い。 HPが0になった場合、バーチャル・リアリティの外に放り出される。 VR中のダメージや効果が実際に適用されてしまう場合もある。 |
| 《邪念の波動》*10 | 使用者が次に行う攻撃1回の対象を【全体】に変更。 使用者が次に行う攻撃1回の射程を【3】に変更する。 使用に手番は消費しない(補助スキル) |
| 《毒薬》*11 | 死・瀕死・トリップ・眠り・鎮痛・精神安定・バーサクなどの効果。 ⇒敵味方を対象に使用可能と裁定する。 精神安定したものは1時間ほど精神系BSにならない。 効果が切れるとMPが現在値の2割減少。 大丈夫、全部規制されてないクスリだから!! |
爆速で周囲に拡散する煙の形をした甘き夢。
取り込まれた者たちは老若男女関係なく、誰も出られないし動けない。
―――ある者は死んだはずの妻子と再会を。
―――ある者は己が組織の頂点に立つ姿を。
―――ある者は真っ当な世界で生きる己を。
涙を流し、恍惚の表情を浮かべてあり得ざる夢に浸る。
いずれも五感全てを塞がれ、己だけの
脱出は極めて困難。独立した世界である故、目覚めるには自力で何とかするしかない。
しかし、仮に現実へと帰還する事に成功しても。
既に耐性を剥ぎ取られた状態で煙に混じった
逆転の目は無い。少なくとも、ホンジュンを襲撃した者たちは全滅したと見てよかった。
「……ふぅ、いいことしたなぁ~~。
あとは……めんどいや、誰か来るまで休んでよっと」
そうして。
誰一人として血を流さず場を修めた警察官は、道路のど真ん中で朗らかに笑った。
彼らが目を覚ます、あるいは自由を取り戻すのは全てが終わった頃。
武装解除の上で拘束され牢屋の中に放り込まれた後だ。
ついでにやらかした本人もぶち込まれるがいつもの事なので気にしない。
―――人呼んで“
道教の頂点に立つ仙王の名を持つ男。
“香港血戦”において、天尊流星側に立った勢力の大半を
・
・
・
平屋建ての屋根の上、あるいはビルの屋上を疾走する影がある。
人目に付かぬよう静かに、それでいて矢のような速さで。
宙を飛ぶ太刀に乗った男女2人―――宗吾と香鈴だ。
背中と膝裏に腕を回して支えられた―――いわゆるお姫様抱っこ―――香鈴は後ろを振り向く。
遠目に見えるのは先ほど襲撃を受けた現場。
そこには既に怪しげな色の煙が拡散していた。
「―――ここまで離れたなら大丈夫ですね」
「巻き添えは勘弁だからな」
互いに安堵の息を漏らす……最初の危機は免れたと。
宗吾は着弾前に香鈴を抱えて
ホンジュンを放置したのは文字通り手一杯だったのと、あの程度では死なないという確信。
そして続く展開を予想していたからだ。
ある意味で当然ともいえるが、ホンジュンの万仙陣は
対策無く踏み込んだ者は容赦なく夢の世界へと叩き落されるのだ。
同時に……それだけならまだマシでもある。
“香港血戦”の折、一切の制限無く街中で解き放たれた光景は忘れようもない。
のた打ち回りながら3メートルの巨人に肥大する者。
全身を緑色に染めながら死ぬまで頭を壁に叩きつける者。
奇声を上げながら爆発四散する者。
共通するのはいずれも恍惚の表情を浮かべていた事。
まさに地上に顕現した楽土と地獄であった。
つまり、好んで巻き込まれる趣味は無い。
今優先すべきなのは味方との合流だろう。
―――とはいえ。
「―――誰だと思います?」
「……幹部以上は間違いないだろ、絶対」
この会談は安全を考慮して極秘で行われた。
念には念を入れて、式神を使って複数のダミーまでばら撒いる。
場所も時間も方法も、知る者は殆どいないはずなのだ。
なのに狙われた……不特定のルートを進む車を。
最初から分かっていなければ不可能な真似である。
準備はこちら側で全て行ったので警察から漏れる可能性は限りなく低い。
だから情報を流したとすれば身内―――それもかなり上の立場の人間でしかありえなかった。
「戻ったら大掃除ですね……ケジメは絶対につけさせます」
「どんなやり方するかは聞かないでおくわ……」
| 《暗殺者の歩調》*12 | 一定距離、移動速度が上がる |
| 《テツ・カン・コー・■■》*13 | 敵単体に剣相性ダメージ。首を狙ったハイキック。 クリティカル時、「混乱」の効果発生。 3度突き刺さる暗殺の絶技。 |
| 《会心》*14 | クリティカル率上昇。 |
背後からあり得ざる第三者の声がした。
高速移動する2人に追いすがる何者か。
同時に耳元へと届く、死神の鎌の襲来。
| 《カバー》*15 | 集団スポーツで他者のカバーに入る臨機応変の能力を示す。 他人が失敗したときに、何らかのカバーとなる能力。 判定に成功時、他のPCの行動に割り込んで自分の行動を行える。 代わりにダメージを受けるのも可能。 この場合、回避は出来ないが防御は可能。 |
| 《神符作成》*16 | いずれかの神符1枚を作成し、対象に使用する。 ⇒「観音神符」を宗吾へと使用。クリティカル効果の打ち消し。 |
| 《猛反撃》*17 | 攻撃してきた対象に中確率で剣相性ダメージ。 防御力無視及び必中。 |
| 《急所》*18 | 割り込みで使用。肉体の知識を学び、急所を見つける。 直後の攻撃で急所を狙ったり、わざと外したりできる。 急所を狙った場合はダメージ2倍、外した場合はクリティカルしない。 |
対して宗吾が選んだのは、香鈴を空高く放り投げる事。
攻撃の範囲から身を挺して護衛対象を逃がす。
代償に蹴撃の軌道上にあった己の肺腑が潰されアバラも全損するが安いもの。
投げられたと同時に香鈴が放った神符が致命傷へ至らせるのを防いでいる。
そのままめり込んだ足を片手で押さえつけ、お返しに顎に強烈な裏拳を叩き込む。
一拍遅れた音と共に、弾かれたように距離を取る両者。
宗吾は血を吐きながら香鈴を受け止め地面に降ろし。
襲撃者は顎をさすりながらも不敵な笑みを崩さない。
「あら残念だわ~。せめて一撃で終わらせてあげようと思ったのに」
女のような口調で話すのは、一部を緑色に染め上げた髪に筋骨隆々とした肉体を持つ偉丈夫。
只者ではない、最低でも己と同格かそれ以上と宗吾は当たりをつける。
これだけの実力者、そしてイタリアンマフィア。
考えられるとすれば―――。
「独立暗殺部隊ヴァリアー所属、ルッスーリア……お命頂戴しに来たわ」
| ムエタイ | ルッスーリア | Lv35 |
ヴァリアー……それはボンゴレファミリーが抱える最強部隊。
いかなる任務をも成功させてきた凄腕揃いの武闘派集団。
欧州から遠く離れた香港でも噂は耳にする精鋭。
「……まだ生き残りがいたのですね」
「ボスのザンザスとドン・マルカラが相打った時、一緒に死んだって聞いてたぜ」
そして―――
「運が良かったのよ……自分でもびっくりよねぇ~~」
おどけるような口調。
しかし、サングラスに隠れた瞳の奥にある炎は誤魔化せない。
―――恩讐を果たさんとする復讐者特有のものだ。
「……これでも仲間の事は大事だったのよ。
個人としても、プロとしても。
ちゃーんとケジメつけさせて貰わなきゃ、納得できなくてね~~」
| 《ワイクル》*19 | 自己暗示によりムエタイの成功率を上昇させる。 立ち技最強の格闘技はムエタイである。そう信奉しているのだ。 |
「生憎と、そう簡単に殺されような女ではありません。
……あまり舐めないで貰えますか」
| 《依り代・五芒星》*20 | 味方1体に斬・突・壊属性の攻撃を1回反射するバリアを張る。 ⇒宗吾へと使用 |
「関係ねーよクソヤロウ……人の雇い主狙ったんだ覚悟しろ」
| 《気合い》*21 | 次の物理型攻撃の威力を2.5倍にする。 |
宣誓―――そして激突。
この日、新生三業会とボンゴレファミリーの暗闘が幕を上げる事となる。
その果てに、香鈴が絶対的君主として組織の掌握に至るが……それは過ぎた話である。
挿絵代わりのAAですが、不評なら次回から止めようと思います。
高校時代の小話、そして香港時代に縁深かったもう一人の女との話でした。
本当に警察官か疑わしい男も出て来たけど(