真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~   作:ジントニック123

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Edge Runners-後篇②-

 

 

―――〈学園都市須摩留 天の絆学園(ミレニアム)研究室最奥部〉―――

 

 

 カツンカツンと窓の無い通路に足音が響く。

 歩いているのは白い背広に眼鏡をかけた若い青年だ。

 一目見て分かるほど濃い隈の浮かんだ目は、これ以上ないほど真剣身を帯びている。

 日頃浮かべている柔和な表情も鳴りを潜め、毅然とした立ち振る舞いを見せている。

 

 あるいは抜身の刃、職業軍人としての顔とでも言うべきか。

 普段から彼の傍にいる生徒たちには殆ど見せない姿である。

 写真撮影されれば普段の数倍の値段が付くのは間違いない。

 

 そのまま歩き続けて数分後。

 通路の最果てにある扉の前で足を止めると、懐からタブレットを取り出す。

 

 

「―――プラナ、今から休眠状態(スリープモード)に入ってくれるかな。

 私1人で話したいんだ」

 

『推奨できません先生。

 対象は武装解除の上で拘束済みですが、100%の安全は保障されていません。

 せめて保護モードの維持だけでも』

 

「大丈夫」

 

 タブレットに映る白髪の少女に、先生と呼ばれた青年は優し気な口調で。

 同時にどこか懐かしむようにして告げる。

 

「彼は何もしてこないよ。やる理由が無いんだ……()()()()()()

 だから、お願いプラナ」

 

『……………了解しました』

 

 プラナと呼ばれた少女―――『シッテムの箱』に在中する電霊はしぶしぶと。

 心底納得していない気配を隠そうともせず目を閉じる。

 そしてそのまま画面はブラックアウト……休眠状態(スリープモード)へと入った。

 

 苦笑しながらタブレットを懐に戻し、事前に受け取っていたカードキーを扉の前へとかざす。

 電子音と共に扉が横にスライドしたのを確認して、室内へと足を踏み入れた。

 中はそれほど広くはない、精々学校の教室程度だろうか。

 所狭しと様々な機器が設置されているが、どのような物なのかは科目見当もつかない。

 ただ少なくとも、この部屋の中央―――一番目立つ者の為にあるのは間違いなかった。

 

「………」

 

 歩を進めながらゆっくりと視線を向ける。

 

 


 

 

 

             


 

 

 

 部屋の中央に吊るすようにして固定されているのは黒い鉄塊だ。

 正確に言えば上半身と右腕だけになった壊れかけのサイボーグ。

 武装解除された上で、最低限の生命維持装置を着けられた捕虜。

 

 須摩留設立以来最大の襲撃犯。

 名うての機械化傭兵(サイバーパンク)として知られる人物。

 “アダム・スマッシャー”の()()()で呼ばれる男がそこにいた。

 

「…………」

 

 目の前まで来たというのに微動だにしないその姿は死んでいるようにしか見えない

 すぐ傍のモニターに脳波が映っていなければ、誰もがそう思うだろう。 

 意識がある事は間違いない。

 しかし捕縛されてから2日間経過した今でも、一言も喋らないのだ。

 

 無言のまま、然程長くない時間が流れて。

 

 

 

「……やあ、久しぶりだね兄弟(チューマ)。元気にしてた?」

 

「―――――ハッ」

 

 

 

 気安い声掛けに、初めて反応が返って来る。

 吊るされたまま、死んだように動かなかった男が顔を上げた。

 

 

「おかげ様で元気一杯さ、御覧の通りな。

 ……いつの間に自衛隊辞めたんだよ、()()()()

 

「部署異動ってやつさ、公務員は辛いよ。

 そっちは相変わらずソロを続けてるんだってね、()()()()()

 

 

 出て来たのは―――旧知の相手と再会を喜ぶ声だった。

 片方はかつて組んでいた時の愛称で。

 片方は今の通称などではなく本名で。

 どちらも、ほとんど呼ぶ者の居なくなった名前である。

 

 “アダム”と“先生”。

 “デイビッド・マルティネス”と”間宮トモサネ”。

 企業に雇われた新人傭兵とDD技術対策室に配置されたばかりの新米指揮官。

 

 所属は違えど、上の利害一致でチームを組み幾度もの戦いを駆け抜けた戦友同士。

 もう数年は会っておらず、互いに風の噂だけは聞いていた相手。

 それが、このような形での再会とは皮肉というべきか、必然というべきか。

 

「最後に戦ったガキ共の動きとパターン。

 道理で覚えがある訳だ……まさかお前が指揮してたなんてな

 おかげでコテンパンにやられちまったよ」

 

「こっちもミレニアムに単騎で侵入したサイボーグって聞いてまさかとは思ったけど……。

 ここまで派手にやってくれるとは思わなかったよ。

 それと、キミをコテンパンに出来たのは生徒の頑張りがあったからさ」

 

 そう言いながら先生は近くにあった椅子へと腰掛ける。

 アダム……デイビッドの正面で対話する為の姿勢だ。

 間近で見ても、やはり生身の頃の面影はなかった。

 

「リオやヒマリ……キミの体を解析した子たちが驚いてたよ。

 身体の9割以上が機械、常人ならとっくにサイバーサイコシス化してるって。

 昔は精々サンデヴィスタンくらいだったのに」

 

「俺は特別なんだよ。

 どんだけ積んでも発狂しない体質らしくてな。

 ……知ったのはフリーになってからだが」

 

「それで行きついた末がハカイダーかぁ……」

 

「009の方にしろ、そっちの方が好きだ」

 

「ビジュアル的にはピッタリでしょ」

 

 否定出来ないのでデイビッドは黙った。

 力を求めて多量のウェアを装着(インストール)してきたが、外見に拘らなかったのは確かだ。

 眼前の男との最後の仕事(ミッション)で、体の大半が使い物にならなくなったのも大きいが。

 ―――それと、気にする相手がいなくなってしまったのも。

 

「……もっと俺の口を軽くしたいなら、ヤニの1本でも寄越せ。

 お前吸ってたよな」

 

「あいにくと禁煙中だよ、生徒たちに副流煙になるから。

 というか吸えるのその体で?」

 

「酒と煙草を楽しむ機能くらいは付けてあるさ。

 にしても喫煙者には世知辛い場所だ……一応聞くがまさか酒もか?」

 

「名目上は学園都市だから缶ビールの1本も売ってないよ。

 生徒たちが間違って飲もうものなら大変だから家にも置いてない。

 炭酸水ならあるんだけど」

 

「あっても飲まねぇよ、苦手なの知ってるだろ」

 

「よく噴き出してたもんね。

 その度に皆に笑われてたっけ」

 

「うるさい……というかまさかガキを家に上げてるのかお前???」

 

 今度は先生が黙った。

 家に上げるというか、いつの間にか勝手に上がられていて。

 一部の生徒には肉食獣の如く貞操を狙われていると言ったらどうなるか。

 

 初対面の生徒の足を1時間以上足舐めたり、首輪を着けたり着けさせたりしてワンワンプレイまでやったと言ったらどんなリアクションをされるだろうか。

 それ以外にも教師と生徒の関係にしては、セーフどころか連続デッドボールで即退場レベルの事をやらかしていると知られたらどう思われるだろうか。

 

 流石に古くからの友人に淫行教師と思われるのは勘弁してほしかった。

 

「―――生徒たちには多大な責務のストレスと能力の過負荷があるんだ。

 それを解消するために付き合うのも先生の、いや大人の義務なんだよ」

 

「オーケー、相変わらずの女たらしっぷりだな。

 刺されない、いや犯り殺されないように祈ってやる」

 

「ハハハ、生徒たちが卒業する前にボクが人生卒業しちゃうかもね」

 

 ひとしきり乾いた笑いをした後で、咳払いをする。

 旧交を温めるのはここまで。今は成なねばならない事がある。

 

 先生はポケットから何かを取り出す。

 密封された手のひらサイズの小瓶だ。

 中には虫のような何かが入っている。

 

 

「―――超小型のロボット・ドローン。

 外の最先端技術を使った偵察用のマシン。

 これに、盗んだデータを入れて飛ばしていたんだろう」

 

 

「ハニー・ビー」*1偵察用の小型ロボット、ハニー・ビー・ドローン。

ビデオカメラを使って偵察する事が出来る。

ドローンは超小型で、直感チェックに成功しなければ発見できない。

 

 

「………やっぱりバレてたか」

 

 やや落胆の混じった声でデイビッドはため息混じりに声を漏らす。

 成功率及び生還率が限りなく皆無に近いミッション。

 つまりデータを持ち帰るのも出来ないという事。

 

 やるだけやって満足して死ぬのはいいが、仕事は達成せねばならない。

 自らが囮となってデータだけでも外へ送るのがプロというものだろう。

 だから、タワーから出たタイミング―――つまりメイド少女(ネル)との戦闘中に射出していた。

 

 須摩留の防諜技術を鑑みて、都市の最も高い位置かつ激しい戦いの最中ならあるいは。

 そう考えていたのだが、やはり現実はそう甘くはない。結果は見ての通りだった。

 

「監視カメラで見るしか出来なかった子たちが血眼になって探したおかげだよ。

 彼女たちがいなければ、ギリギリで須摩留の外まで逃げられてたって」

 

「そりゃあ素晴らしい。ガキの内にいい経験が出来たろ。

 大人になる頃には俺らより立派になってるぜ」

 

「違いない……ところで、()()()()()()?」

 

「―――こっちの侵入が最初(ハナ)からバレてた事か?

 絵を描いたやつは減点だな、お上品過ぎだ」

 

 主語の無い質問に。

 デイビッドは当たり前のように、なんて事のない風に答えた。

 ジッグラド・タワーへと潜り込んだ……どころの話ではない。

 デイビッドが須摩留に踏み込んだ時点で全てバレていたのだ。

 

 都市へと侵入して1時間も経たぬうちに気付いた違和感。

 あまりにも都合の良過ぎる、スムーズ過ぎた作戦工程。

 タワー内での戦闘もそうだ。確かに始まりは偶発的な要因だった。

 だがそれ以降は、まるで取り決められていたかのように区切りがしっかりしていた。

 

 ここまであからさまだとよほど鈍くない限り分かる。

 相手はこちらを誘い込もうとしている。

 何のために―――答えはすぐに出た。

 

侵入者()とわざと戦わせて経験値にしようとか。

 大した教育方針だよ、教育委員会がキレるのは間違いない」

 

 要するに、己は当て馬として利用されたのだ。

 対悪魔戦ではなく、意志を持った人間との戦闘経験を積ませる為に。

 生徒たちに更なる成長を促さんとする、総生徒会長の思惑によって。

 何も知らずに戦った側からすれば、堪ったものではないだろうが。

 

「誘われてるのが分かってて乗ったのかい?」

 

「元から逃げる気も無かったんでね。

 それに、わざわざ向こうから股開いてくれてるなら乗るのが男ってもんだろ」

 

「そして怖い人に囲まれて違う意味で絞られちゃうと」

 

「手痛い反撃喰らって慌てふためくツラ見るのも一興と思わないか?」

 

「残念ながらボクは生徒たちの味方だから全然楽しくない」

 

「そりゃ悪かった、すまん。

 けどよ、()()()()()()()()()()()()……手応えで分かったぞ」

 

 2人の間に微妙な空気が流れた。

 肯定的なようで否定的。不要に思えて必要。

 そんな相反する感情のカクテル。

 

 ―――それは、事実であった。

 

 

《安らぎの園》*2建物や広場などの範囲を、シーン属性「聖域」に指定する。

NPC集団1グループを保護する。

出現値B以下の悪魔は保護対象に攻撃をしかけることは出来ない。

味方と集団は1時間ごとに、HPとMPの10%ずつを回復する。

⇒生徒たちを守るセーフネットの一つ。「瀕死」状態に留める。*3

《回復施設Ⅲ》*4PT全員を最も近い回復施設までテレポートすることができる。

⇒「瀕死」状態になった生徒をすぐさま搬送するシステム。

 

 

 須摩留の各地に設置された建造物(モニュメント)による守護。

 全国各地からかき集め育成した貴重な人材を失わない為の安全装置。

 都市内でどれだけの騒乱があれど、死者がほぼ出ない理由がこれである。

 そもそも、表向きは教育機関を謳っているので流石にポンポン死なれては立ち行かなくなる。

 

 無論、万能ではないし絶対でもない。

 特殊な条件下では当たり前のように命を落とすし、蘇生も間に合わない。

 現実という当たり前のルールが等しく降り注ぐ。

 

 見方によっては悪影響とさえ言えた。

 死に際の感覚を誤って覚えてしまう生徒もいるだろう。

 加減を間違えてやり過ぎてしまった生徒もいたはずだ。

 

 それを考えれば諸手を上げて歓迎できるものではない。

 子供たちより長い時間を生きた分、彼らには思う所があった。

 ―――思うだけで、どうしようもなかったが。

 

「……キミにぶっ飛ばされた子たちは、今頃退院してる頃だよ。

 特にネル―――スカジャンの女の子はリベンジしたがってたね」

 

「勘弁してくれ、次は9割こっちが負ける」

 

「10割って言わない所がらしい」

 

「逃げられないならともかく、確実に負けるならそもそも戦うかよ。

 ―――というか、リベンジ以前に“処理”されるだろ」

 

「…………」

 

「どうせ雇い主は知らぬ存ぜぬを通して……弱み握られて何人か首は飛びそうだ。

 んで俺は絞れるもの絞ってポイ捨てと。海が近いから魚の餌になればマシな方か?」

 

「海への不法投棄は犯罪だからさせないよ。

 デイビッド、本題に入らせて貰う―――須摩留に雇われてくれないかな。

 総生徒会長や上層部の子たちとは話は付けて来てある」

 

 椅子から立ち上がりながら。

 先生が告げたのは勧誘の言葉……より正確に言えば須摩留の犬になれという提案だった。

 何となくそう提案して来るのではないかと、デイビッドは薄々感じていた。

 あと、あの超人相手によくそんな話を通せたなと驚いた。

 

「……まあ、失敗した時点で雇い主との関係は切れてるけどな。

 けどこっちが命惜しさに蜘蛛の糸へぶら下がるとは思ってる訳じゃないだろ」

 

 傭兵は信用が第一である。

 何処の誰に雇われて戦うかは自由であるが、信じられない相手を使う所は無い。

 より好条件を示されて、平気で裏切るような輩が生き残れる業界ではないのだ。

 

 そういった点で考えれば、今のデイビッドには特に問題は無い。

 任務失敗による契約の白紙化。評価は下がるだろうがそれだけ。

 フリーの身である以上、何処に雇われようが文句は言われない。

 

 ―――だが、須摩留は別だ。

 

 国内どころか諸外国が同盟を組むほど危険視している勢力。

 そこに雇われるという事は積み上げて来た全てを投げ捨てるのと同じ。

 事実上、傭兵としては死んだも同然となる。

 

 傭兵としての高みを目指してきた彼からすれば受け入れ難く。

 そもそも生き延びる為に飼い犬になる事を選ぶ性質でもない。

 でなければ剃刀の上を走る者(エッジランナー)等と呼ばれる筈がないのだから。

 

 そう、だから。

 

 

「―――口説いてみろよ、女たらし(チューマ)

 話が面白けりゃ付き合ってやるさ、特別にな」

 

「責任重大だねそれは。

 少なくとも、後悔だけはさせないつもりだよ」

 

 

 この時、どのような会話が成されたのかを知る者は殆どいない。

 

 ただ、事実を語るならば。

 

 彼の機械化傭兵(サイバーパンク)“アダム・スマッシャー”はこの日命を落とし、外の世界で伝説となり。

 先生の護衛として“デイビッド・マルティネス”というサイボーグが雇われるのだった。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

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【推奨BGM:I Really Want to Stay at Your House】

 

 

 

 

―――〈過去周回某日 連邦捜査部S.C.H.A.L.E オフィス〉―――

 

 

「おいミナモリ、聞いていいか?」

 

「何かなデイビッド」

 

「当番のお嬢ちゃんたちが仕事を手伝うのはともかくとして。

 ナチュラルに膝枕とかさせてるのは教師としてどうなんだ。

 あと当たり前のように香を持ち込んでくるのも」

 

「…………」

 

「昨日なんて書記の娘(ノア)がお前に嘘ついて此処に泊まり込んでたろ。

 ―――正直舐めてた。お前一体何したよ?」

 

「みんないい子で、相応に純情で、重い子だから……」

 

「卒業したら責任取れよ絶対……地の果てどころか死んでも追いかけて来そうだぞ」

 

 

 

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 ・

 

―――〈過去周回某日 新市街・ゲームセンター〉―――

 

 

―――【WINNER:David!】―――

 

 

「ぐああーっ! くっそ! また負けた! めっちゃ練習したのに!!」

 

「アリス、ネル先輩のその言葉……先週も聞いた覚えがあります。

 今日で20連敗、クソザコですね」

 

「実戦ならともかく、ガンシューで俺に勝つのは10年早い」

 

「あぁっ!? 言ったなじゃあ次だ! あたしが勝つまでやんぞ!!」

 

「閉店時間まで続ける気かよ……?

 コンビニのシフトが入ってるんだがこっちは」

 

「ゲームの腕ではネル先輩はまだまだです。

 アリスたちの空腹ゲージがゼロになってしまいます……」

 

「安心しろ、後輩のメイド(アカネ)でも呼んでおく」

 

「おいゴルァ! 画面から目ぇ離して喋ってんじゃねえ!!」

 

 

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―――〈過去周回某日 ブラックマーケット〉―――

 

 

「……ガイア再生機構の装備が此処にまで流れてるか。

 ヤクザ連中が手引きしたにしても随分と浸透が速い。

 このままじゃ、ブラマは連中の作品で溢れるかもな」

 

「“先生”の盗撮写真は相変わらず高値で取引されたままなんだけどね……。

 あんた警備してるならその辺もガードしてくれない?

 うちの後輩とか同級生たちも何枚か持ち歩いてるんだけど」

 

「ビルの盗聴器やらカメラを見つけるので忙しいもんでね。

 流石に外回りしてる時のモノまではどうにもならん。

 張り込んでる生徒まで居るくらいだしな」

 

「やっぱり変なフェロモンでも出してるのその人?

 私、絶対近寄らないでおくわ」

 

「賢明な判断だ。好きになるなら普通の大人しい男にしておけ。

 たぶんそっちの方が色々と楽だぞ」

 

「ご忠告どーも……そういえばあんた初めて会った時何か言ってたような」

 

「気のせいだろ」

 

 

 

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―――〈過去周回某日 ミレニアム某所〉―――

 

 

 


 

 

 

             


 

試作型サイバースケルトン(アーガマスーツ)*5部位:全身防具 防御力:120 GP:60 価格:4億

「歩くシェルター」と呼ばれる装甲強化服。

武器を持たずとも格闘攻撃の威力は120となる。

特技(攻撃スキル)は使えない。

武器はヒートグレイブが標準装備されている。*6

銃器は肩にバスターショットが装備されている。*7

1時間でバッテリーが切れる為、頻繁にチャージが必要。*8

⇒《ムラサキカガミ》を封じた魔晶手甲と物霊合体済み。

⇒「マガタマ:ムスペル」を封入済み。

⇒腕部防具化。相性は悪魔とマガタマの物を使用。

 

 

「アーガマスーツをベースに魔晶技術も盛り込んだ試作型強化外骨格(サイバースケルトン)

 装着(インストール)すれば多大な力を得られる反面、負荷も凄まじいわ。

 貴方以外の人間なら、入れただけで4回はサイバーサイコシス化するでしょうね」

 

「加えて、燃費も悪いから支援用に調整し直したこの造魔も必須と。

 試作品にしても合理なんて言葉とは随分かけ離れてるな。

 過剰にも程があると思うんだが?」

 

「うぅ……(意訳:ぶっちゃけさんぱいだとおもう)」

 

「―――それでも、必要になるかもしれない。

 あの生徒会長が何を考えているのかは未だに分からないけど。

 無駄になる事だけは無いはずよ」

 

「……そうか」

 

「ちなみに名前はバリスタボット3号というの」

 

「………………そうか」

 

「うぅううー(意訳:せんすがざんねん)」

 

 

 

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 ・

 

 

 

 ・

 

 

―――〈過去周回某日 旧市街・薮内薬草園〉―――

 

 

超人化ドラッグ(イグナイター)知覚力強化ドラッグ(フィトストーン)をベースにした新薬。

 ―――それをさらに9倍まで濃縮した代物。

 ククッ、作った私が言うのもなんだけれど、こんな薬を欲しがるなんて正気かい?」

 

「あいにく精神鑑定で引っ掛かった試しは無くてね」

 

「奇遇だねぇ、私もだ。

 ああ、先生の事もあるからこれだけは伝えておくか。

 いくら体の9割以上が機械であろうとも、これを使えば―――」

 

 


 

 

 

             


 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

 

「デイビッド、頼みがある―――君の命をボクにくれ」

 

 

「仕方ないな……全部終わったらあの世で1杯奢れよ」

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

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信号途絶(シグナルロスト):間宮トモサネの生体反応停止を確認】

 

                                         

 

 

『中位エターナル3割ロスト……全滅を確認。優先殺害対象設定』

 

 

『スキャン完了―――アンノウン、イレギュラーを推定。情報は一切無し』

 

 

『『警告する。尽く自害せよ、首を刎ねる(デリート)』』

 

 

 

\カカカッ/

エターナルト■ル騎■団・■■■Lv9■相性耐性不明

 

\カカカッ/

エターナルト■ル騎■団・■■■■Lv9■相性耐性不明

 

 

 

「悪いが戦友(ダチ)の最期の頼みでね―――ちょっと遊んでくれよ、ブリキ野郎共」

 

 

\カカカッ/

サイボーグデイビッド・マルティネスLv9■*9物理・万能に強い。

物理・万能以外反射

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

 

―――〈過去周回某日 須摩留某所〉―――

 

 

「―――ッハ、ァ」

 

 そして―――長くて短い走馬灯が終わり、意識が現在へと追いつく。

 見上げる空から、いつかと同じような満月がデイビッドを照らし出していた。

 

 状態は過去最悪と言っていい。

 両足は下半身ごと消し飛び、両腕はサイバースケルトンと共に完全破壊された。

 ここまでついて来てくれた造魔(フラン)も、物言わぬ人形と化して先に逝った。

 

 おまけに、薬の副作用だろうか。脳もどこか壊れたらしい。

 視界は色を失った挙句に解像度も落ち、音は遥遠くに行ってしまっている。

 文字通り手も足も出ない、まさに風前の灯火……次の瞬間には消えてもおかしくない命。

 

 ―――それでも

 

 

                                         

 

【旧須摩留工業高等学校:砂狼シロコ】

 

【須摩留市立学校:浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、天雨アコ】

 

【天の絆学園:生塩ノア、黒崎コユキ―――】

 

【計6名の離脱を確認―――任務完了】

 

                                         

 

 

「ハ、ハハ、ハハハハ……ッ」

 

 

 成すべき事は成した。両手の指に満たぬ数であろうと、逃がす事が出来た。

 戦友の願いを、可能な限り果たしてやれた。

 ならばこれでいい。此処が―――己の死に場所だ。

 

『デイビッド。俺はここで死ぬ、お前は生きろ。

 人より速く走れるんだろ……走り抜けろ』

 

 自分に託して死んでいった仲間のように。

 

『私なんか守らなくていい。

 あんた自身が生きてくれていれば、それだけでよかったの』

 

 護ると誓って護れなかった彼女のように。

 

 戦うだけが能の傭兵にしては上等過ぎる最期にひたすら笑う。

 心残りがあるとすれば、そう。

 

「…………月、行けなくてごめん」

 

 かつて叶えてやることの出来なかった夢を。

 この都市ならあるいはと思っていた方法を。

 

 ついぞ見つける事も、果たす事も出来なかった。

 ―――その点は、あの世で謝るしかないだろう。

 

 

 

『……中々に楽しめたぞ、イレギュラー』

 

 

 

 ふと影が差す。

 おそらく、先ほどまで戦っていた相手。

 全身甲冑の集団―――その主であろう人物。

 

 顔は分からない。声も聞こえない。

 かろうじて生き残ったCOMPの機能が、言葉を自動翻訳をして脳に伝えているだけだ。*10 

 

 

『お前のことは忘れないでおこう』

 

「ヘッ……知るかよ、クソヤロウ」

 

 

 最後に。

 不敵に、ふてぶてしく。

 それだけを言い残して。

 

 

『そうか……ではさらばだ、限界を超えて駆け抜けた男(エッジランナー)

 

 

 閃光が―――デイビッドの頭を撃ち抜いた。

 

 

 こうしてデイビッド・マルティネス、あるいはアダム・スマッシャーの物語は幕を下ろす。

 この周回のみに発生したイレギュラー。

 誰かの願いを叶える為に駆け抜けた男。

 

 ループする世界ではありふれた、掃いて捨てるほどのある伝説の1つ。

 ―――語り継ぐ者がいる限り、彼もまたその中で生き続けるだろう。

 

 

*1
※覚醒篇

*2
※200X 神威

*3
※ 誕生篇

一切行動不能。10分毎に耐久力チェックを行い、失敗すると死亡に移る。

*4
※200X 神威

*5
※覚醒篇追加データ&200X シュミット

*6
※デビサマ 攻撃力:231 命中:50 攻撃回数:1回

*7
※デビサマ 攻撃力:140 命中:27 攻撃回数:前列1回

*8
※覚醒篇追加データ チャージャー10個が必要。

*9
※ イグナイター使用済み

*10
※覚醒篇 「ジャイブトーキン」

外国語データベース。会話を自動翻訳してくれる。

盗聴癖のある生徒が組んだアプリ。





◎登場人物紹介

デイビッド・マルティネス <サイボーグ> Lv45
シリーズポジション:サイボーグ(200X)

かつての周回に存在した先生の戦友。
エデンを相手にシロコたちを逃がすべく戦った。

常人であれば発狂するほどサイバー装備を積んでも正気でいられる体質。
須摩留で行われた実験にもいくつか参加させられたとの事。

―――届かぬ月を見上げ、伝説となって逝った。




セプテン戦が本格的に始まる前に書き上がりました。
美野里の過去編のつもりが斜め上に行ったけど楽しんで貰えたら幸いです。

過去に何があったかは……ルーシーの本名がルキナ・“クシナダ”な所で何となく察せるかと。
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