真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
そこは廃墟と化した街並みであった。
発展の象徴として立ち並んでいた高層ビル群は悉くが崩落し、瓦礫の山と化していた。
数年かけて建設された環状道路も穴だらけとなり、二度と車両が走る事は無いだろう。
何より―――生きた人間の気配がまるで感じられなかった。
あるのは食い散らかされ踏み躙られた残骸、ただそれだけ。
まさしく
人の営みが消え失せた巨大な墓標。
終わりを迎えた文明の
これがほんの数ヶ月前までは。
数多くの住人や旅行客で賑わう国内有数の大都市であったなど、誰が思おうか。
もはや、その姿を目にする事は叶わない。
「まったく……人生何があるか分からぬものだ」
そんな場所で、血を吐くようなくぐもった声が零れた。
いや、実際口元には血を吐き出した跡がある。
それどころか、全身のいたる箇所から夥しい量の血が流れ続けていた。
かつては純白だったであろう戦闘衣も流血と泥で赤黒く染まっている。
外見だけでもそれなのだ。
体の内側はもっと悲惨な事になっているのは想像に難くない。
骨や肉どころか、主要臓器も損傷していると見て良いだろう。
―――だが生きている。
比喩も冗談も抜きに満身創痍。
立って言葉を話せるだけでもありえない状態。
生きているだけで不思議だと誰もが思う有様。
―――だというのに。
「まさかこの歳になって、これほどの強敵と死合えるとはな……!」
心底楽しそうに、口元が弧を描いた。
手元の刀をより一層強く握りしめる。
瞳には途切れる事の無い闘志が宿り気迫に満ちていた。
死にかけとは到底思えない、まさに不撓不屈の求道者。
斬れる存在があるのなら斬り捨てるのみ。
その至上命題を果たすべく肉体を駆動し続ける。
ある意味で場違いな存在。
死んだ街に似合わぬ生者。
誤植したような登場人物。
| 剣士 | 日高桜 | Lv80*1 | 相性:火炎吸収、精神・破魔・衝撃・氷結無効、ガンに強い |
それが日高桜―――若き姿をした老剣客に他ならなかった。
『eイ Y o uuuuu』
『GYAAAAAAAAAA!!』
反応するかのように二重の
この場における絶対者。世界を単独で滅ぼしうる厄災。
そこに込められた念は何か?
称賛か憤怒?
敬意か憎悪?
懇願か殺意?
いずれにしろ、戦闘開始から今に至るまで、この二体は攻撃の手を緩めなかった。
剛爪を、尻尾を、咆哮を、息吹を、時には触腕を。
あらゆる手管を躊躇いも無く繰り出し、ただひたすらに、眼前の
そう……脅威であると認識していた。
何せ、
世界を滅ぼせる怪物が、
かつてないほど深手を負わされていた。たかが一人の剣士によってだ。
紛れもない偉業。
半端者では到底真似出来ない絶技であり―――。
「ほう、英雄か。随分と過ぎた評価をしてくれるものだ。
―――生憎と、私はそんな大それた者ではないぞ」
桜は辛うじて聞き取れた声に苦笑交じりで応えた。
もしこの場に何も知らぬ第三者がいたとすれば、一体何の冗談かと思うだろう。
事ここに至るまで、幾人もの戦士たちがこの厄災に勝負を挑んだ。
しかし、だ。
素手で鋼鉄を砕き悪魔を屠ってきた武闘家も。
長き探求を重ねた末に絶技を得た魔法使いも。
ヤタガラスに所属する名だたる悪魔召喚士も。
用意周到に準備を尽くして。
最善に最善を幾つも重ねて。
命を振り絞り魂を燃やして。
それでも、皆等しく散っていった。
誰一人も弱卒はいなかった。
誰もが歴戦の戦士であった。
全員間違いなく英雄だった。
そんな怪物を単騎で相手取れる傑物が英雄ではないなど、到底信じられるはずが無い。
「御覧の通り、私は棒振りだけが取り柄の女だ。
この歳まで我欲のまま生きて来ただけに過ぎないよ。
そんな輩が英雄とは……本物たちに失礼であろう」
しかし、それが彼女にとっての真実である。
己の全盛期―――最も情熱に満ちていた大正時代。
その頃から幾つもの悪魔や超人と斬り結んできた。
ヤタガラスや明治神宮の媛から依頼を受け戦った事もある。
陸軍の一部が開発していた超力兵器を斬り伏せた事もある。
神代の丘に封じられていた破壊神と斬り結んだ事さえある。
それでも。
誰かを、何かを護ろうと剣を取った覚えはない。
強くなりたいから、剣の腕を磨きたいから戦った。
ただそれだけ。
やりたい事をやり続けただけ。
徹頭徹尾、我が道を征っただけの話。
斬姫、戦鬼、剣鬼……そう呼ばれるのが精々。
とてもではないが英雄と呼ばれるには不適切。
歳を取って多少は丸くなったが、本質的な所はまるで変っていない。
あの時代を代表する英雄……14代目ライドウと比べれば烏滸がましいにも程がある。
―――故に。
(
積み重ねてきた経験。
研ぎ澄ませてきた長年の勘。
そこから導かれる残酷なまでの回答を、彼女は動じることなく受け入れていた。
いつか来る事を覚悟していたのが今日だったというだけの話。
仲間を持たず、味方を連れず、縁に乏しかった孤剣の終わり。
ただひたすら
もし仮に。
絶賛行方不明中の馬鹿弟子か、馬鹿弟子を探しに来た女たちがいれば。
結末はまた別だっただろうが、たらればを言ってもどうしようもない。
だから。
「――――うむ、どうせ死ぬなら前のめりであろうな」
―――
―――
―――
呼吸を一つ吐く。空気を焦がすほどの高熱を帯びた吐息が漏れる。
同時に全身を駆け巡る膨大な熱量と反比例して失われていくマグネタイト。
後先を考えない、一瞬限りの身体強化。
当てようが外そうが、生涯最後の一撃。
であれば、繰り出すのは己が必殺―――魔剣しかない。
「次に
……まあいい、遠慮なく受けると良いさ」
―――ふと、走馬灯が流れる。
「見よ! これぞ日本帝国陸軍が誇る人型決戦兵器“ヨモツイクサ”である!!」
「超超ジェラルミンによる軽量化が可能とした変形合体機構だとぉっ……!」
「ここで倒さねば
「ご当代! いい加減に章姫を次代へ譲って欲しいのですが!!?」
「若いのがこんなド田舎から飛び出してガイア教に入っちゃいました……」
「ちなみに盆と正月には帰って来るそうです」
「おいクソババア! 全身に重石着けて海に沈めるのが本当に剣の修業なのか!!?」
「平家の亡霊軍団やらネオアトランティスやら……何なんだよこの島……?」
「―――こっちの意味でリベンジしたくはなかった……!!」
若き日の、血風に満ちた青春時代。
年老いて、少ないながら人に剣を教え始めた日々。
そして最も見込みのあった馬鹿弟子とのあれこれ。
比率としては最後が一番多い事に微笑んで―――
そして満開の刃鳴が裂き誇り―――戦いは決着した。
開かれた第三の目が全てを灼き払うという結果で。
予想通り、何の奇跡も起こらずに剣鬼は終わった。
星毒竜に食い込んだ一振りの刃を、ただ一つの残滓として。
・
・
・
ニーラカンタ―――正気を失った英雄より放たれし極光。
吸収した星毒龍の生命力が引き金となって漏れ出した、世界を滅ぼす猛毒の一欠片。
周囲の施設は余波だけで融解し、炙られた大地は見渡す限りガラスの花畑と化した。
「何が……っ!?」
最も近くにいた為、熱風を背に受けた
眼前の強敵―――軍曹という種族のギリメカラ―――を相手取るので精一杯であるのも大きい。
レベル90を超える強敵にして格上。決して気を抜いていいような相手ではない。
故に、出来たのは視線を送る程度。それでも、分かる事はあった。
「あんなもの、人に耐えきれる筈がありません……!」
まとめ役である少女“楓・J・ヌーベル”が口にしたのは厳然たる事実。
ある意味において、戦闘における
強敵を相手に覚醒者がよく行う事になる食いしばりや不屈の闘志―――情報操作による肉体的拡張、あるいは自己保全―――だが、これには限度がある。
例えば、肉片一つ残さず消し飛ばす斬撃。
例えば、消し炭さえ残らぬ超高熱の炎。
例えば、魂の欠片さえ残させない万能の光。
そういった超火力を受ければ、文字通り跡形も無く消えるしかない。
どれほどの超人であろうと、核兵器の直撃には耐えられないように。
情報的生命体であろうと変わらない絶対のルール。
邪神の類であろうと覆せない根幹的な世界の仕様。
先の光はまさにその類だ。
悪魔であればまだ蘇生の可能性があるが、肉を持つ存在ではそうはいかない。
戦っていた青年たちはどうなったのかなど、確認するまでもないだろう。
そして、このままでは眼前の敵と挟み撃ちになる可能性が高い事に端正な顔を歪ませて―――。
「―――嵌まったわね」
聞こえる筈の無い声が響いた。
『0000000―――!?!?』
悲鳴染みた咆哮。
発生源は
それは紛れもなく、自らの極光によるダメージだった。
「来るって分かってるなら、やりようはあんのよ……っ!」
『任務完了―――!』
| 怪異 | ムラサキカガミ | Lv65 | 相性:物理・四属性・精神・神経・魔力 破魔・呪殺反射 |
| 《逆恨み》*2 | 《ハーモニクス(召喚)》によって外付けされた種族専用スキル。 攻撃で死亡する際、受けたダメージの半分を攻撃してきた相手に与える。 |
| 《カバー》*3 | 味方一人への攻撃対象を自分に差し替える。 全体攻撃の場合、二回ダメージ判定がある。 |
主を庇い、COMPへと送還される悪魔―――最後の仲魔である“ムラサキカガミ”。
いざという時の盾役であり、こういった超火力の持ち主に対する搦手担当。
極光が溢れ出す直前にリーベラと交代し、見事その役割を果たしてみせた。
「よくやったわ、ありがとう」
労いの言葉を掛けながら、視線を走らせる。
己以外に立っている者はいない。
仲魔は全員死亡しCOMPへと送還され、
そして―――。
「この馬鹿、あとで覚えてなさいよ……!」
足元に転がる
死んではいるが原形は保っている。消し飛んではいない。
万能に耐性のある防具*4と攻撃力が低下していたおかげだろう。
つまりまだ蘇生の余地はある。
そもそも、この程度でくたばるようなソウルの持ち主でもない。
(次で
盤面は壊滅し、立っているのは己しかいないという絶望的な状況。
しかし、ここさえ乗り越えればチャンスは十分にある。
瘴気によって
マッスルドリンコによるドーピング分が丸々残っている以上、決して分の悪い賭けではなかった。
「グルゥアアアアアアアアア!!!!」
| 《魂の絶叫》*5 | 点滅したプレスアイコンを5つ増やす。 ニーラカンタによって抑えつけられていた暴性の解放。 |
「―――――は?」
そんな思惑を容易く踏み躙って、理不尽極まりない暴力が起動した。
若槻美野里という少女の判断に間違いは無かった。
自分に行える最善手を選択し、実際に手痛い傷を刻み込んだ。
まさに妙手。起死回生、逆転へと繋がる一手。
それでも敢えて言うのであれば。
ムラサキカガミによる反撃は止めるべきであった。
人型の方を過剰に追い詰めるべきではなかったのだ。
そうすれば、人型が抑え込んでいた星毒竜が暴走する事は無かっただろう。
それが最悪の形で裏目に出たのであり―――つまりツキに恵まれなかった。
一撃目は反応し切れず、棒立ちのまま直撃して数十メートル吹き飛ばされた。
二撃目は飛ばされた勢いを利用し跳躍回避に成功。しかし、反撃の弾丸は鱗に弾かれて終わる。
三撃目は再び回避する前に死角から来た尻尾に打ち据えられ、動きの鈍った所を追撃された。
四撃目はなんとか立ち上がった瞬間に地面にめり込む勢いで叩きつけられる。
五撃目はボールのようにバウンドした所をもう一回叩きつけられる。
六撃目は掬い上げるようにして逃げ場のない空中へと放り出された。
「GYAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
「――――ッ、ァ」
そして、七撃目。
力なく落下するボロ雑巾と化した美野里の心臓を尖爪が貫き―――彼女は息絶えた。
種も仕掛けもありはしない。演技やハッタリの類でもない。
星毒竜の爪を赤く汚し続けるその姿は、紛れもなく本物だ。
「RUUUUU……!」
しばし貫いた姿勢で固まった後、ゴミを放るかのように少女の体は打ち捨てられる。
強大なドラゴンへと挑み、そして無惨に敗れ去るというありふれた光景。
まさしく、英雄ならざる者たちの末路であった。
・
・
・
決着はついた。覆しようのない結果は出た。
怪物は討ち果たされず、戦士の新たな躯が積み上がって終わる。
| 《無尽蔵の不安》*6 | カーラクータのHP50%回復する。 周囲に満ちた不安を吸収し、己の生命力へと変換する。 しかしそれでも、かつて刻まれた古傷は癒える事なく残っている。 |
尽きる事なき不安によって傷を塞ぎつつ、カーラクータは鼻先を少し離れた戦場へと向ける。
そこにあるのは今なお死力を尽くし強敵と刃を交える
この状況で星毒竜に乱入されればどうなるかなど、火を見るよりも明らかだ。
元より星毒竜は怪物。
人類と相容れぬ敵対存在にして生きた災害……手心などあり得ない。
人の都合など関係無く、蹂躙を以て終わるだろう。
一方のニーラカンタは物言わぬ機械然とした状態に戻っている。
それでも視線の向く先は星毒竜と同じで、むしろそちらへ誘導しようとしていた。
別に弱者をいたぶるような趣味がある訳ではない。
そもそも、そんな感性や思考能力はとうの昔に消え失せている。
ただ、僅かに残る自我が己たちを打倒しうる者を求めているだけ。
討たれるべき怪物を討たんとする英雄を求めて彷徨っているだけ。
それこそが、彼に残された唯一の
これまで幾星霜と繰返し、そして果たされなかった願い。
英雄に討たれるべく英雄、もしくは英雄候補へ挑む災害。
鹵獲され、利用されている事を自覚出来ないのは、ある意味で幸運な事かもしれなかった。
「ガァアアアアアアア!!!!」
いずれにせよ決着はついた。結末は見えた。
願いの果たされなかった闘争を後にし、次なる戦場へ向けて星毒竜が翼を広げる。
―――更なる悲劇を齎す為に/次こそ終わりにする為に。
「男気って、なに?」
「男の子の意地とかでBSを治すスキルです」
「男の子の意地って?」
「根性だ! って使ってたダチが言ってた」
「それって食いしばりとどう違うの?」
「え? いや食いしばりは死なねえって耐える奴で」
「耐えるってどうやってるんだっけ?」
「そりゃあ気合と根性で死なねえって」
「それって男気と同じじゃない? むしろ名前が違うだけじゃない? 」
「……やっぱ別物だよ美野里ぃっ!」
| 《男気Ⅱ》*7 | 使用者のBSを解除する。死亡状態でも発動可能。 即時効果である為、任意のタイミングで使用可能。 |
確定したはずの結末が覆った。
カーラクータが飛び立たんとしたまさにその時。
ゆらりと、つい一瞬前まで焼死体であった男が立ち上がった。
「テメェ……よくもまあウェルダンにしてくれやがって。
せめてミディアムにしとけよ……!!」
口を動かす度に、体がボロボロと崩れていく。
傷が癒えた訳ではない。ただ気合いと根性で無理矢理息を吹き返しただけ。
黒焦げなのは相変わらずで、顔も分からない黒子のような有様である。
よって
子供に小突かれただけで物言わぬ死体へと戻るだろう。
いや、その前に体の各所が崩れるのが先かもしれないが。
この状況で攻めに行くのは自殺と変わらない。
よって宗吾が選択するのは攻撃ではなく―――。
「って訳でお休みのところ悪いが……さっさと起きろ美野里」
| 「金丹」*8 | DEAD・DYINGを回復する、HPはMAX1/8回復する。 |
「この、偉そうに……先に寝てた癖に……!!」
「下手に起きてたらマジ終わってたからヨシって事で」
仙丹の齎す賦活効果を受け、自らの血だまりから体を起こし、罵倒と共に美野里も立ち上がる。
蘇生の代償―――レベルダウンに伴う能力低下―――は然程でもない。
こうなる事を予想して、
| 《食いしばり》*9 | HPが0になった時、1度だけHP1で耐える。 この仕様の物は自動効果ではなく任意発動となる。 |
そんな物に対して下手に耐えた所で、宗吾が言ったように追撃で終わっていた可能性もある。
であればリソースの温存、蘇生率を上げるべく素直に死んでいた方が良い。
もちろん宗吾が起き上がってから蘇生出来る確証は無かったが―――そこは信頼した。
この馬鹿が、こんな雑な終わり方をするはずが無いと。
この剣鬼が、自分から始めた死合いをこんな中途半端にしないと。
根拠の欠片もない感情論にして盲打ち。
作戦に夢と希望を詰め込むような愚行。
はっきり言ってギャンブル以前の問題。
「―――それもそうね!!」
しかし美野里は気にしない事にした。
上手くいったのだから別に構わない。
そもそも敵は遥か格上の存在なのだ。
無茶の一つや二つは必要経費である。
―――ある意味で、宗吾以上に感情と直感で動く女であった。
「コール―――ッ!」
『呼ばれたぜぇー!』
| 幽鬼 | ガキ | Lv60 | 相性:呪殺無効、火炎・破魔に弱い |
軽口の応酬もほどほどにして状況を再開する。
壊滅状態の場へと美野里が呼び出したのは一匹の小柄な鬼。
以前受けた《餓鬼王国》の間引き依頼の際に契約した変わり者のガキであった。
レベルからしても、普通に考えればこのような悪魔に出来る事などまず無い。
この状況、予想される相手のスキル構成を相手に《グリード》も効果は無い。
他の仲魔と比べても紙切れな耐久性からすれば、爪の一振りで容易く散ってしまうだろう。
だからやれるとすれば使い捨ての肉盾が良い所であり―――。
「逝って」
『あいよ! 後でお菓子くれよなー!!』
もう1枚の切り札が開帳された。
| 《リカームドラⅢ》*10 | 味方全体のHP/MPを回復し、術者は死亡する。 ランクⅢ:味方全員のBS(DEAD、CURSE含む)を回復する。 行きつけの邪教の館、そこで働く少女と協力して積んだスキル。 曰く、とある闇ブローカーの商品であったガキを参考にしたとの事。 |
「不甲斐ない姿を曝した、申し訳ない」
「我々はここからが本番です」
「次で
「貴方を、終わらせる」
ブラックマリアが。
ムラサキカガミが。
消滅したE・Mまでもが戦場へと舞い戻った。
「八瀬宗吾だ―――勝ち筋は見えた、今度こそ斬ってやる」
「若槻美野里……竜殺し、やらせてもらうわよ」
そして全快した剣鬼と少女が高らかに名を叫んだ。
今から貴様を斬り伏せる、ここで終わらせると告げる為に。
「オ、お雄oOOOOoオオオオオオッ―――!!!!」
その光景を目の当たりにして。
熱を取り戻したカーラクータが咆え、星毒竜の飛行先を無理矢理変更する。
向かう先は言うまでもない。
互いに仕切り直しは完了―――第2ラウンドの幕が上がった。
先ほどの展開をなぞるようにして戦いは続いていく。
宗吾たちは毒気によって体力が削られているので、回復を適時挟みつつ決して無理はせず、敵の攻撃を捌きながらダメージを重ねる。
対する星毒竜は剛爪と咆哮を駆使し、時折人型が命を吸い上げつつ暴走する触腕が周囲を薙ぎ払う。
―――押しているのは人間たちの方。
1発1発はかすり傷程度であろうと、重ねれば肉を抉り骨を断つ。
鋼の城塞を思わせた肉体も、今や各所が剥がれ落ち血を垂れ流していた。
経験の浅い者から見てもパターンへと完全に入ったのが分かるだろう。
このまま順調に行けば遠からず決着はつく。
―――だが、しかし。
「やっぱもう1回来るよなぁ――――ッ!」
「流石に次は無理だからね!!」
第3の目が再び開いていく。
おそらく、これが最後の壁だ。
此処で乗り越えられなければ勝機は消え失せる。
アイテムやカバーで凌いだ所で次へと続かない。
遅かれ早かれ今度こそ、虚しく亡骸を晒して終わるだろう。
(“魔剣”……それでもギリか?)
宗吾はこれまでの感覚と経験を総動員し勝率を推測―――凡そ四割、いや三割か。
天秤は向こう側へと傾いている。己の持つ最強の業を使ったとしてもだ。
それでもやる以外の選択は無い。
「上等……!!」
歯を剥き出しにするようにして平正眼の構えを取る。
前傾姿勢となると同時に、全ての想いを刃へと収束。
軋むような音と共に膨大な熱量が刀身を覆っていく。
新生した鬼神楽の耐久性でなければ耐え切れず弾けていたかもしれない。
そう思わせるほどのエネルギーを制御しつつ必殺を狙う。
外せば死ぬ、殺せねば死ぬ。自分だけではなく相棒も死ぬ。
当たり前の事実を当然のように腹へと収める。
コンマ数秒後、美野里の仲魔と呼吸の合った瞬間に駆けようと意識を前方へ集中して―――。
『まったく……人生何があるか分からぬものだ』
だから気づかなかった。
少し離れた後方で墓標のように突き立っていた章姫を握る存在がいた事に。
そして
| 「絆によるシーンへの介入」*12 | 登場しておらず、招かれてもいないシーンに介入する。 絆を使用する事で関係するシーンへ登場が可能となる。 |
| 《飛霊八方》*13 | 幽体離脱の術。 MPを更に費やせばドッペルゲンガーとして時間を超越する事も可能。 全盛期の姿を維持していたのはこの術の応用。 |
「――――」
宗吾は思わず言葉を忘れてしまった。
立ち位置を奪われた美野里もまた目を見開いて固まる。
それはもう記憶の中にしかいない、遥か過去に居なくなった筈の人物だったから。
「キsaマは……」
英雄と星毒竜もまた釘付けとなった。
かつて己たちを最も追い詰めた相手。
今なお癒えぬ斬傷を刻んでみせた女。
それは間違いなく極光で消し飛んだ筈の人物だったから。
―――彼らが知るはずもない。
命尽きるその瞬間、
元より飛霊によって形作られた器、純粋な肉体から離れるよりは融通が利く。
そうして絶好の機会が訪れるまで眠りについていた訳だが……まさか遥かな時を超えた果てに馬鹿弟子を見つけるとは予想外であった。
『久方の稽古だ、ちゃんと見て覚えるのだぞ』
此処に―――散ったはずの刃鳴が再び裂き乱れる。
| 《ファイアブレス》*14 | 使用したターンの間、攻撃力が上昇する。 コストを払えるなら連続使用が可能(即時効果と裁定) 現代では廃れてしまった身体強化技術。別名「炎の呼吸」 |
| 《ヒートウェイブ》*15 | 使用したターンの間、使用者の攻撃は火炎相性となる。 (即時効果と裁定) |
| 《火炎貫通Ⅲ》*16 | 7割の確率で無効・吸収・反射の耐性を持つ者にダメージを与えられる。 持っていた《貫通》の技術をより尖らせた。 |
| 《修羅道》*17 | 死亡含めた状態異常を解除し行動回数を1回増やす。 死亡状態からも発動が可能(即時効果と裁定)。1回の戦闘で2度使用可能。 プレスターンバトルでは3回連続行動を行うと裁定。 |
| 「乱舞スキル」*18 | 単体を対象とする攻撃につけられるキーワード。 元々の判定値に関わらず、3分割のマルチ・アクションになる。 ⇒3回攻撃になると裁定。 |
| 《我流魔剣・花無十日紅・満開》*19 | 敵全体からランダム1体に電撃相性で5連続攻撃。 これを3回繰り返す。中確率で気絶効果。 |
目にも止まらぬ高速斬撃……都合45閃。
これこそ彼女の辿り着いた理論。
乱入剣をベースとして編み出した誓願。
相手を煉獄のごとく終わらない火にて焦がし切るように。
死ぬまで切り刻めば勝てぬものはないという、ただただ単純な――最強の魔剣。
その名も“我流魔剣・花無十日紅・満開”。
如何にして剣速を上げるか。
如何にして早く斬り殺すか。
ただそれだけを追い求め形とした剣士―――日高桜の編み出した奥義に他ならない。
「GYAAAAAAAAAA!?!?!?」
とはいえ、霊格差の壁は流石に分厚かった。
翼が捥げ、両眼が潰れはしたがまだ生きている。
融合しているニーラカンタへと狙いも分散する故に致命には至らなかった。
かつてと同じように、たたらを踏んで後退させるに終わる。
だから。
| 《 | 敵全体に相性無視で大ダメージ。 最もダメージ量の多い属性へと自動決定される。 行動消費は無しとする(裁定)。 |
生まれた隙へと追い打ちをかけるようにして、紅蓮に染まった一閃が叩き込まれた。
かつては瀕死であったが故に使えなかったもう一つの奥義。
同じ時代を生きた伝説の悪魔召喚士、その業を再現したもの。
―――天秤が逆側に傾いた。
「ッ全員行動放棄、宗吾に回して!!」
「ァァ……」
膨大なエネルギーを有したまま、ニーラカンタと星毒竜の融合部分がほつれ始める。
それが意味するのは抑え続けていた怪物の命が尽きかけている証。
待ち望んだ時が……己の願いが果たされる時が来たという事だ。
澄み始めた思考の中、開眼した3つの目でしかと捉える。
「美味しい所持って行きやがってクソババア!」
『まだまだ魅せ場はここからであろう?
ちゃんと合わせられるかなぼっちゃん』
「馬鹿言ってんじゃねぇよそっちが合わせろ!!」
今まさにこちらへと向かって来る2つの人影―――怪物を討つ英雄たちの姿を。
「ウ、グ……ングッ」
残された力を振り絞り、開いていた口を空いた手を用いて無理矢理閉じる。
これで死ぬと同時に極光が溢れ出す心配はなくなった。
結末が何もかも消し飛んで終わりなど冗談ではなかった。
しかし、残念ながら礼を口にする事は出来そうにない。
だから、ニーラカンタは目を合わせて気持ちを伝える事にする。
“――――感謝する、英雄たちよ。”
| 《秘剣・紅月閃》*21 | 敵全体に斬属性の物理攻撃で超特大ダメージ。 一定確率で魅了状態にする。ジンテーゼと呼ばれる合体技。 貫通特性付与済み(D2仕様)。*22 |
絡み合う2つの刃と幾つもの剣閃。
切り裂かれた大気が光を屈折させ産み出す大輪の花の如き軌跡。
見た者の目と命を奪う美麗なる剣舞にして、戦い続けた英雄神を送る為の神楽。
「……………綺麗」
そう呟いたのは果たして誰だったのか。
美野里が、仲魔たちが、
周辺で戦う大勢の人間たちがその光景を目に焼き付ける事となる。
―――戦場に咲いた花と共に、天へと昇りながら散っていくドラゴンの姿を。
・Tips
「我流魔剣・花無十日紅・満開」
乱入剣をベースに
連続攻撃をさらに分割した上で繰り返す。
相手が死ぬまで斬り続けるだけの―――単純にして最強の魔剣。
宗吾は理論だけ聞いていたが実際の動きは見た事が無かった。
感想は変態の業、心血注いだ上で成り立つ師匠だけの剣、との事。
ちなみに幾つかパターンがあり作中で使ったのは最も攻撃数が多い物。
返し技や
反撃を殺す動きも組み込んでおり、相手によっては最大48連続攻撃になる。
「飛霊八方」
宗吾が使うものよりも古いタイプの術。更にそれをアレンジした物。
愛剣を依り代に全盛期と遜色ない肉体を作り出し、そこに魂と精神を移していた。
流石に2度と同じ事は出来ないらしい。
いつかどこかで王となった少年と同系統の器。
次回は幕間で短い話になると思います。