真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
第六のセプテントリオン<
平均として小さなビルほどあり、人の背など軽く超えている。
その大きさに見合うだけの重量も有し、触手による固定もあって
無限増殖という出鱈目が間違いなく一番の脅威であるが、そういった点も忘れてはならない。
覚醒者でもない一般人であれば、攻撃どころか移動するだけで蹂躙される。
一部の面子―――主にキリギリス―――には“地鳴らし”と言った方がイメージしやすいだろう。
例え特殊な能力な無かったとしても、巨大な敵とはただそれだけでも厄介なのだ。
狙いが付けやすい、見つけやすいといった点を含めてもだ。
では、そういった敵に対し取るべき手段は何か?
―――レベル差や貫通による正面からのゴリ押し。
―――結界式カジャによる底上げからの万能攻撃。
―――“風邪”などの状態異常を用いた嵌め殺し。
あるいは。
「ぶっ潰れろやぁああああああ!!」
| 「手に持って使う」*1 | 手に持ったアイテムで攻撃する。剣相性の攻撃として扱う。 最大サイズの場合、中確率でSHOCK状態となる。 |
| 《物理ギガプロレマ》*2 | 物理属性の威力を増加する。 |
| 《物理・銃撃貫通》*3 | 物理・銃撃属性で攻撃する時、 耐性・無効・吸収を無視してダメージを与えられる。 |
同質量―――
これならば如何に大きくとも吹き飛ぶし、移動する為の道が塞がれる事もない。
分裂するにしても倒しやすい場所へと誘導する事も出来る。
やった当人からすれば一石三鳥の妙案。
他人から見れば頭が悪いと言い切る脳筋戦法であった。
「龍姫さん! やっぱり大雑把過ぎですよそれ!!」
| 鬼女郎 | ジール | Lv66 | 相性:破魔・呪殺無効、神経に極めて強い 全体的に強い(87.5~62.5%) |
「“いいもん見っけ”と言い出した時点で止めるべきでしたか……」
| 幻視者 | 万里谷祐理 | Lv47 | 全体的に強い、破魔・呪殺無効 |
「いいじゃないのどうせぶっ壊れてた建物なんだしさぁっ!
有効活用資源のリサイクルでしょうが!!」
| 巫女 | 八瀬龍姫 | Lv72 | 相性:物理・衝撃に強い、火炎・氷結・電撃反射 神経・魔力・破魔・呪殺無効 |
豪快に笑って、ビルの所有者が白目を剥く発言をしながら。
分裂するミザールを、まるでモグラ叩きでもするかのようにビルで打ち付ける龍姫。
呆れながらも支援に徹する
見ての通り、次々と現れるミザールやドゥベを千切っては投げの大暴れ真っ最中であった。
周囲に彼女たち以外の人影はほぼ無い。
一般人は勿論のこと、他のDBたちの姿が遠目に見える程度。
主要な戦場からやや離れた位置にいるのと、巻き込まれるのを避けているのが原因だ。
いかに戦い慣れた戦士であっても、笑いながらビルを振り回す女には近寄りたくない。
無論、これには理由がある。
何も考えずこのように豪快な戦い方をしている訳ではない。
背後にある小さな建物―――自分たちの職場である出版社を護る為だ。
築何十年の古強者で西向きの窓からは容赦なく夕日が照り付ける素敵な物件である。
上司である編集長は一度も姿を見せた事はなく他の同僚たちも癖のある面子ばかり。
発行している雑誌も余程の物好きしか買わないので主な収入は悪魔退治によるもの。
はっきり言ってロクな会社ではない。
先日など取材先で捕まって生贄にされかけた。
もっと昔にはカルト結社と抗争した事もある。
それでも、自分たちのようなはぐれ者を受け入れてくれる数少ない場所なのだ。
護る為に戦う事に、少なくとも龍姫は一切異存は無かった。
「というかさ! 他の連中は何やってる訳!!?
連絡まだ来てないの!!?」
「えっと、ちょっと待ってくださいね……」
ビルで殴られ吹き飛んでいくミザールを尻目に、ジールが手元の端末を覗き込む。
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「―――森の賢者がいれば大丈夫と!!」
「あいつらコレで叩き潰していい?」
「その言葉が出てくる時点で残当だと思いますよ……」
後日、会社周辺の建築物の殆どが鈍器として扱われた事で膨大な損害賠償が来るのだが。
それを龍姫がセプテントリオンのせいだとゴリ押しするのはまだ誰も知らない話である。
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止まらない、終わらない、増え続ける。
増えて増えて圧し潰し薙ぎ払い蹂躙を続ける。
絶え間なく降り注ぐ爆発の芽が何もかもを吹き飛ばす。
地獄の様相、絶望的光景という例えをよく聞くが。
まさにこの戦場がそうであった。
いかに迎撃の準備を整えてようが数の差というものは脅威だ。
北南の戦場の影響や太平洋から迫る津波への対処もある。
逃げ惑う漂流者まで強引に駆り出そうとも、とにかく手数が足りていない。
リソースは有限―――よって、どうしても手が回らない場所というものが出て来る。
布にインクの染みが広がるように、
止められない、抑えきれない、広がり続ける。
今はまだ問題にならない程度。
だが、長引けば孤立し包囲される場所も出て来るだろう。
致命打に繋がりかねない状況。
さりとて戦力を捻出し手を回すには時間も余裕も無くて。
「光になるがいいわぁあああああああああっ!!!!!!」
| 《フェイタルブロウ》*4 | 命を顧みず、相手を粉砕する一撃を与える特殊スキル。 装備相性。直線上の敵全員を対象とする。 近接・射撃・魔法の全てを加味した物理ダメージを与える。 ⇒3ターン、物理・四属性・破魔・呪殺耐性を1段階低下させる。 |
「どけぇええええええええええ!!!!!!」
| 《フェイタルブロウ》*5 | 命を顧みず、相手を粉砕する一撃を与える特殊スキル。 装備相性。直線上の敵全員を対象とする。 近接・射撃・魔法の全てを加味した物理ダメージを与える。 ⇒3ターン、物理・四属性・破魔・呪殺耐性を1段階低下させる。 |
| 《ヘビーレイン》*6 | 敵全体に突属性の中ダメージを与える。 突属性(突撃属性)と裁定する。 |
| 《虐殺者》*7 | 全体およびランダム攻撃スキルで与えるダメージが10%増加する。 |
| 「馬は蹄の音を立て」*8 | 牛馬の蹄を持つ悪魔、またはそれに騎乗した悪魔の特徴。 突撃相性・属性のスキル使用時、威力が50%上昇する。 |
「ケェエエエエケッケッケケ!!!!」
| 《奥義一閃》*9 | 敵全体に物理属性で中威力の攻撃を1回行う。即死の追加効果(50%)。 |
| 《準物理貫通》*10 | 物理貫通を得る。 敵の物理属性が「無効」以上の場合、与えるダメージが70%減少する。 |
そんな地獄を、瞬きの間に切り裂いていく閃光の如き影が三つ。
一つは筋骨隆々とした巌の如き巨漢―――としか見えない女傑。
一つは清楚可憐な愛らしい姿の少女―――同時に重度の
一つは無骨なデザインをした鎧武者―――ありふれた筋者の男。
鎧武者が背負った巨大スピーカーから流れる軽快な音楽をBGMとして。
圧倒的な戦力差を出鱈目な暴力で蹂躙する理解不能の光景がそこにあった。
「せんぱぁあああい!! 今! 貴方の!! ななみが!!!
最短距離で
『ツッコまねーぞもう……絶対に……っ!!』
| Lv58/70*11 | 相性:破魔反射、呪殺無効 |
「学園に向けて直進する輩がいると思えば面白い!!
此度はオレとお前でダブルななみ、ユニット結成だ!!!!」
| 格■王 | 蔵田 七海 | Lv82 | 相性:剣反射、全体的に強い(75%) |
「ケヒッ、担当が増えちまいましたなぁ~!」
| 筋者 | 佐藤 ケイ | Lv55/68 | 相性:神聖・暗黒・精神・魔力・電撃無効、全体的に強い |
良く言えば斬新、取り繕わずに言えば色物。
しかし実力は確かな三人が目指すのは聖華学園。
再会と戦場と愉悦―――目的は違えど向かう先は同じ。
であれば、九条ななみに共闘を拒否する理由も無い。
背中を押された以上、再会は絶対で優先すべき事柄だ。
彼女の脳内では既に何百通りの再会をシミュレーションしている。
無論、大前提として他人に迷惑を掛けないという点もある。
こんな忙しい時に私事で動いただけならともかく、戦いの邪魔をするなど論外極まる。
もし仮に付き合っている人―――例えば茶髪の彼女―――がいたとすれば。
この戦いが終わってから正々堂々正面から寝取りに行く心算だ。
そのくらいの知性と理性は持っていた。
「大将! どーしますか言っておきますかい!?」
「白ける!! 今は楽しめ!! 殴って斬って恋路を邪魔する連中を蹴散らすのみよ!!!!」
「ケヒャアッ! 了解しやした!!」
なお、迂回した方が速く辿り着くという事実に気付いていないのは彼女だけだった。
七海と佐藤は包囲網に穴を開け後続が広げやすいように露払いをする意図があった。
二人が口にしないのは趣味とノリと勢いである。悪気は一切ない。
『…………おっふ』
一歩離れた立ち位置で俯瞰するユニコーンは白目を剥いて沈黙した。
これ以上のツッコミは精神に多大な負荷を与える故の逃避であった。
その程度で逃げられないのでせいぜい数分程度の短い休みであった。
・
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想定していたセプテントリオン以外の敵から立て続けに襲撃を受けたグランギニョル社。
誰もが奮闘する戦場、その一つが今まさに佳境を迎えようとしていた。
「ぶっ飛ばすぞぉっ!」
「逃がすつもりはねーからな!!」
「今日のMVPは頂くぜぇっ!!」
「死に物狂いで力振り絞れザコオス共!!」
剣が醜悪な怪物の頭を斬り飛ばし、胴をライフル弾が風穴を開ける。
振るわれた鞭は機動力の要たる足を吹き飛ばし、槍でとどめを刺す。
まさしく疾風の如き連続攻撃。迫り来る怪物のほぼ全てが消し飛ぶ。
「アハ、はははははhhhっはhhhhh!!!!」
残るはただ一体。
唯一のレベル90越えにして最も巨大なニンゲン―――<ホモ・プルシャ>のみ。
身体の所々が欠け落ち、夥しい出血こそあれどいまだ健在。
それどころか発せられる狂笑と殺意は天井知らずに跳ね上がり続けている。
状況を理解する知性が存在しないのか。
この程度は危機でも何でもないと高を括っているのか。
いずれにせよ止まる気配は微塵も無い。
―――だが、それでも。
「チィッ、まだ残ってやがる!」
「お残しは許しまへんでー!」
「へばってんなら下がっていーぞ」
「人の事言えるの足震えてる癖に」
「マッスルドリンコ五本目キメろぉおおおおおお!!!!」
警備員たちは目を血走らせながら、それぞれが持つ獲物を強く握りしめた。
疲労は怒りと薬で強引に無視し、戦意と言う名の炎を一層燃え上がらせる。
彼らは英雄ならざる者。歴史には決して名前を刻めぬだろう名も無き戦士。
―――しかし、だからと言って。
「
「いい年した大人が体張って守らなきゃならねぇ」
「大して仕事熱心じゃないけど、給料分は働くさ」
「そもそも俺たちだって死ぬつもりは欠片も無い」
「今日が命日になるのはお前らだけだ」
「やりたい事まだまだあんのよ」
無名なれど矜持がある。
無名なれど信念がある。
無名なれど意地がある。
無名なれど歴史がある。
覚える価値も無い
侮り舐めた者たちが手痛い代償を支払うのは必然の話。
―――故に。
彼らの作り出した空白の隙を突き、五つの影が迫るのをホモ・プルシャは知覚出来なかった。
「新装リニューアル確定記念のサービスだ!
遠慮せず受け取れぇええええ!!!!」
「死ぬまで刻んでぶっ殺す」
『タフなのはいいけど、そろそろお休みの時間だ』
「聖女パワー全開でかっ飛ばす……!」
『リミッター全解除―――下手な笑い声は聞き飽きました』
「笑いながら逝っちまえよバケモノめ」
抉り、斬られ、穿ち、落とし、そして殴り続ける。
容赦なく、油断なく、順当に。
ありふれた怪物は何処にでもいる戦士たちによって当たり前のように倒されるのであった。
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・
・
「よし、回復も済んだしDAT隊とやらの所に行くぁあぶっ!?」
言葉が終わる前に、怒りのドロップキックが宗吾の背中へと叩き込まれた。
犯人は当然ながら美野里である。そのまま倒れ込んだ馬鹿へと無言で
かつてピンク髪の問題児をしょっちゅうガチ泣きさせた必殺コンボであった。
「――――――!!!!」
「美野里、美野里さん!? ちょっとタンマ、話聞いて……あ、これ駄目か」
宗吾は言い訳もとい説得をしようとしてすぐ諦める。
救いようのないゴミを見るかのごとき目であった。
キャバクラ通いがバレた父が母に折檻されている時と同じ目だ。
雰囲気からして言葉で何とか出来る状態ではない。
「どー考えてもキミが悪いって。
大人しくサマナーに蹴られてなよ……んぐっ」
仲魔の中でまだ活動可能であったリーベラは呆れながらその光景を酒のツマミにする。
キツイ戦いを乗り越えたので体が水分とアルコールを欲していたのだ。
既に三本目であるが注意する者は誰もいない。
結果、無抵抗の男を踏み続ける少女とそれを眺めながら酒を飲む女の絵が出来上がった。
「……あれって愛情表現?」
「DVってやつかな。離れてた方いいかも」
「その、随分と情熱的、ですね……?」
なお、遠巻きに見ていた楓含むリリィたちは色んな意味でドン引きした。
助けて貰った恩もあり、ある程度の情報交換を行ったらああなったのだ。
なんというか、色んな意味で近づくのは危険だろうという判断であった。
ぶっちゃけ、竜殺しという偉業を成した人間たちの姿には到底見えない。
「はいそれじゃあ言い訳タイム―――さっさと口開け馬鹿」
「ゴホン……よく考えろ美野里。
今ここの最高戦力が動けないんだろ?
使える連中が浮き駒になってるのも、されてるのもヤバい」
仰向けになった宗吾が口にするのは最もな、それでいて冷静な意見だ。
色々と内外で評判の分かれるグランギニョル社のDBチーム―――DAT隊。
強いとかズルいなどという噂話は幾らでも聞くが詳細はあまり分かっていない。
だがそれでも、決して弱いという評判を耳にした覚えはない。
「ハメられてるなら助太刀がいるだろうし、上手く行けば状況がもっと楽になる。
不確定要素の排除は大事だぜ、特にこんな時はさ」
そんな彼らが動けない状況にあるのなら、確認の必要がある。
最悪全滅していたとしても、それはそれで拾える情報がある。
僅かな違和感の無視、信頼と言う名の脳死は致命傷に繋がる。
「ふーん」
此処だけ聞けば確かに一定の理屈は通る……が、しかし。
「―――で、本音は?」
「―――有名な連中が動けない、あるいは倒されてるかもしれない相手。
ちょっとぶった斬ってみたい……無理なら撤退のついでに一太刀くらい」
そもそも強そうな相手がいたから突っ込んでいった馬鹿の言葉に信憑性など欠片も無い。
ボスン、と音を立ててヒップドロップが鳩尾に叩き込まれた。
ゲホッ、と息が口から洩れる。重量感たっぷりの一撃だった。
遠目に見れば
実際、楓たちの方から黄色い悲鳴が若干聞こえていた。
「あのさ、あんたも私も死にかけたせいで全然本調子じゃない。
動ける仲魔もそこの酒カスとグルルだけ。
それでまたヤバいのとぶつかったら次は十中八九死ぬからや・め・ろ」
まごう事なき正論であった。
ついでにビンタも叩き込まれた。
マウントポジションなので逃げ場はない。
今度は両頬へと高速ラッシュが始まる。
「わぁ~サ〇マンダーよりずっとはやい」
なお、そもそも着いて行く事前提の発言をリーベラは突っ込まなかった。
ある意味で二人だけの世界へと足を踏み入れる度胸は無かったからだ。
実際、宗吾が太腿から臀部にかけて手を滑らせているのに気にした様子もない。
「新手のいちゃつきかこれ……?
青春してるなぁ~、私にはあんなの無かったのに」
酒瓶から厚みのある唇を離し、ふと思い浮かぶのはこれまでの人生。
親の缶ビールをジュースと勘違いした事が切っ掛けで嵌まった飲酒。
深酒し過ぎて覚醒し、この業界へ足を踏み入れる事となった誕生日。
告白した、あるいはされた翌日に酒癖の悪さで破局し続けた思い出。
蘇るまるで透き通らない灰色の青春―――そして。
『わたしはねぇっ! あの四文字に取り込まれる前はそれはそれは凄いかみさまでねぇっ!!
おしりすとかしヴぁとかともどういつしされるくらうにはすごくてぇっ!!!!』
『うんうん、分かった分かった。だいぶ酔いが回って来たんだねおにーさん。
てんちょー、 さっきのウーロン茶ピッチャーでもっと持ってきてー。
一回休ませてあげないと』
『お客さん! ウィスキーとウォッカの混ぜ物をウーロン茶呼びは止めて欲しいんだが……。
ひょっとして殺す気かい?』
『えー、だって色は同じじゃ~ん! じゃあ代わりに……ほら、お水飲みましょ♪』
『だから、わらひとごーひつしてかふてのしゅがたぼぼぼぼぼ!?!?』
『あ、ちょっとマジかあんたスピリタスをラッパ飲みさせんなぁっ!!?』
「………うーん?」
何か思い出しそうになって、その前に思考が霞んでくる。
飲み直した酒が頭に回ってきたのだろう。
かつてと比べ情けなくなった自分に苦笑いしながら酒瓶を煽った。
「そういえば、結局あんたのお師匠さんってどうなったの?」
やがて一通りのいちゃつき、もとい折檻が終わって。
何事も無かったかのように起き上がった宗吾へと美野里が尋ねる。
その視線が注がれているのは、彼が握る愛剣以外のもう一振り。
先ほどドラゴンを倒すのに協力してくれた女剣士―――日高桜の“章姫”であった。
外見こそ変わりはないが、感じられる力の波動はもはや別物。
休眠状態が解けたと言うべきか。本来の“格”を取り戻している。
仮に不埒者が握ろうものならば指が全て落ちてもおかしくはない。
そして、本来の持ち主の姿は何処にも無い。
大技を放ち終えた後、その姿はまるで煙のように薄らいで消えてしまったからだ。
元より死人、何時居なくなってもおかしくはなかったが―――。
「―――
昔みたいに常時実体化とかは無理なんだろ。
色んな意味で複雑な気分だが」
「大人しく消えないあたりあんたの師匠だわ」
「年取ってるぶん生き汚いししつこいんだよ。
動ける限り斬りに行くババアだし」
なにせ刀に宿って遥かなる時を過ごし、自分を殺した相手を斬殺する機会を窺っていた女だ。
リベンジを果たした程度で成仏するような
ぶっちゃけ悪霊のようなものだ。身内でなければお祓い一択であろう。
「んじゃ―――休憩はここまでにして本格的に話つけに行くか」
本音を言えば、師匠には話したい事や聞きたい事も沢山ある。
しかし、先ほど言ったように今はそんな事をしている場合でもない。
抜身の章姫をベルトに差し、少し離れた位置の
目的はDAT隊の様子を見に行く事について。
先ほど美野里に語ったのは建前ではあるが本気でもある。
趣味だけで動くのはアウトだが、そこに実益が絡めば大体は何とかなる。
それはそうとしても、あちらに話をして最低限の筋を通す必要があった。
ドラゴンの時は緊急事態であったので省略したが、出来る事ならやった方が良い。
「真面目な話、今の俺らだけじゃリスク高すぎるから巻き込めるだけ巻き込んで行くぞ。
あっちの子たちも行く気満々だったし、着いて行くくらいならまー問題無いだろ」
「社外の人間にこれ以上頼れないって言われたら?」
「? その時は別の敵狙えばいいだけだろ。
あっちにはあっちの都合もあるんだしよ」
「思い出したように常識的な事言うの止めてよホント……」
「ぶっちゃけ十分働いたからしばらく休んでいいと思うの」
| 《モータルインヘイル》*23 | 使用者の周囲にいる敵を、使用者の位置まで引き寄せる。 |
周囲に敵影は無かった。
無論、警戒を怠ってはいなかったが注意が僅かに逸れた。
そして、
「え―――!?」
突如後方から発生した強烈な引力。
引き寄せられたのは一番後方にいた美野里。
踏ん張る前に両足が地から離れ抗う術を喪失してしまう。
「ッサマナー!!」
咄嗟にリーベラがその腕を掴むが、引き寄せる力自体も相当だ。
合■神となった事で得た膂力を以てしても留めるのは困難。
さりとて見捨てるなどあり得ない選択であり、そのまま纏めて宙を舞う。
「ッああ!?」
前を歩いていた分、一種遅れて振り返った宗吾の視界に入ったのは
そしてそこへと吸い込まれていく二人の姿。
思考する前に駆け出すが―――間に合わない。
向こう側へと落ちた直後、亀裂は急速に縮んでいく。
ほんの半歩、コンマ数秒足りない。
「―――借りるぞババア」
判断は刹那で行われた。
| 《スローイング》*24 | 汎用付加スキル。格闘武器を投擲し敵1体に剣相性ダメージ。 |
| 《フィジカル・エンハンスⅡ》*25 | 剣相性⇒電撃相性 |
腰から逆手で抜き放った章姫が雷光の速度で飛翔。
塞ぎかかっていた穴へと衝突し強引に押し広げる。
―――
刀を投げるという奇手にして、本来は鞘を用いた電磁加速による投擲術。
精々“使える”の宗吾では威力精度共に然程でもないが、問題は無い。
目的は亀裂へと滑り込むまでの時間を稼ぐ事なのだから。
「誰の女連れて行く気だよおい……!!」
怒りと殺意を滲ませて。
こじ開けた穴へと突っ込むと同時に空間の亀裂は完全に閉じた。
残されたのは弾かれた章姫と、何が起きたのか分からず呆然とする少女たちのみ。
斯くして竜殺したちは次なる戦場へと誘われる。
舞台は無限の歯車うずまく蒸気階差機関の産み出した異界。
学園都市須摩留の遺産にして朽ちた箱庭。
―――若槻美野里の、目覚めの時はすぐそこに迫っていた。
パートナーたちが状況によって回復や補助スキルを使用。
最後に全員による万能相性の総攻撃を行う。
発動後、敵のターンはスキップされ味方は60%の確率でニヤリ状態となる。
攻撃回数は5~7回
後列にいる時のみ使用可能。
敵1体に敵の耐性を無視した突属性の物理攻撃で超特大ダメージを与える。
春日と(一方的に)協力させる形で放ったジンテーゼ。
敵1体に対して近接攻撃力に依存した物理ダメージを与える。
更に、高確率で対象に30秒間、斬撃・突撃・打撃・射撃・貫通・散弾・火炎・氷結・電撃・衝撃・破魔・呪殺耐性が100%減少する状態変化を付与する。
このスキルは、ダメージやノックバックによって詠唱を中断されない。
通常攻撃は5~7回。
という訳で、次回より別の戦場で死闘開始となります。