真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~ 作:ジントニック123
次回で終わる予定です。
自分がお利口な生徒だったとは口が裂けても言えない。
一度キレると後先考えず暴れた事は数知れず。
書いた始末書の枚数は山を幾つも作れるほど。
特別課外活動部の仲間に迷惑をかけた回数は思い出すのも大変だ。
一応、1年生の頃はまだ大人しくやれていた気がする。
少なくともぶっ放す前に事前警告はしていたし、敬語だって使っていた。
段々と荒っぽくなって行った理由は、たぶん都市の空気に染まってしまったからだろう。
きっとそうに違いない。
周りは絶対に素だと言っていたがそんな事はない。
一番身近に居た3人は特に否定していたけど無いったら無いのだ。
……だけど、今はもうそんな声も聞く事は出来なくなった。
スズミはいつだって真面目に注意して来た。
―――病を運ぶ騎士相手に単騎で時間稼ぎを行って命を落とした。
レイサはいつだって元気一杯に駆けて来た。
―――戦えない生徒たちの盾になって、文字通り立ったまま息絶えた。
イオリはいつだって呆れながら着いて来た。
―――死地に付き合わせたくなかったから、何も言わずに別れた。
大切だった。
護りたかった。
失いたくなんてなかった。
死んだ後まで弄ばれる理由などありはしない。
例え天が許そうが―――己は全力を以てそれを否定しなければならない。
『射程距離に入った、行くぞ!』
| 《ギロチンフェイク》*1 | 敵全体に対し、仲魔をCOMPに戻すかHPを1にする。 魔王たる堕天使の長が持つ権能の一つ。 |
だというのに。
『必殺魔法いきます!痛いですよ~!』
| 《ヒエロスグリュペイン》*2 | 敵全体に対し神聖属性で大ダメージ。 幾多の騎士を束ねし王が持つ聖剣の輝き。 |
だというのに。
『ゆ、友情と!愛と!え、えっと……火力!?』
| 《閂投げ》*3 | 敵全体のうちランダムに1体にダメージを与え、これを1~15回繰り返す。 鳥を司る天使と同一視される四大天使の絶技。 |
だというのに―――届かない。
グルルは強制的にCOMPへと戻され、リーベラは実体を持つ故か見えない場所まで飛ばされた。
そして自分一人となった所へ、聖なる極光と幾多に分裂した閂による集中砲火が襲い掛かる。
「……ガ、フッ……ァ」
演算装置によって導き出された
長ずれば至れたであろう権能がこちらを追い詰める。
確かに凄いとは思っていたが、これほどとは想定外だ。
「―――、……っ!」
地面を派手に転がった後、口の中に鉄臭い苦みが溢れ出す。
吐き出した先に見えるのは色鮮やかな鮮血。
どうやら内臓と主要血管がやられたらしい。
出血量と感覚の喪失具合からして、ほぼ致命傷だろう。
「フ、ぁ……うあ」
現に指一本動かせない。
頭は怒りで沸騰し続けているのに、体の方は言う事を全く聞いてくれなくなった。
元よりあのドラゴンとの戦闘でかなり無茶をしていたのだ。
消耗した状態でよくここまで動けたものだと、ほんの少し残った冷静な部分が告げる。
―――では諦めるのか?
「―――じるが、ぞんなの」
歯を砕けんばかりに―――実際砕きながら―――噛みしめた。
ほんの僅かに感覚が戻って、そこを起点に無理矢理体に力を入れる。
そして不格好に、死人が起き上がるかのように……両足で大地を踏みしめる。
「まだ、やれる……!」
頭から流れる血が目に入り、視界が赤に染まる。
頬を伝って顎へと向かい、まるで血涙のように零れるが気にしない。
まだ戦える、諦めるなど冗談ではない。
生きている限り、戦う事は出来るのだから。
―――踵を踏み鳴らして、叫ぶ。
「エイト・マハーヴィディヤーズ……!」
『―――癒しを』
| 《常世の祈り》*4 | 味方全体のHPと状態異常を回復する。 |
状況を鑑みて、最大限に理性を働かせて今まで伏せていた札を切る。
単独かつ敵陣のど真ん中で使うのは、この場に引き込んだ敵へ手の内を知られる事に繋がる。
しかし、そんな余裕をぶっこいていられるような状況でもない。
「こっからが本番よ!」
たちまち全身の傷が癒え、盤面はこちらにやや不利な状況といった所まで立て直した。
まだ数の上では負けてはいるが、向こうにもそれなりにダメージは与えられている。
1人でも落せればそこから一気に崩して行けるはずだ。
『相変わらず怒りに支配された女だ。いっそ哀れと言える』
『己の業を理解してなお止まらぬとは愚かしさの極みよ』
『写し身とはいえ、友の手で終わるのが慈悲と考えたが過ちであった』
『やはり、我らが直接引導を下すべきか』
「―――あ?」
声が降り注いだ。
同時に襲い掛かる、身の毛もよだつ濃密な“
並大抵の相手なら裸足で逃げ出す、強大な悪魔が放つ
そして、
忘れるはずもない。
忘れられるはずもない。
忘れてなどやるものか。
何人もの仲間を奪い去った、あの連中の事を。
「お前、ら……!」
何人もの仲間が、友人知人が、名も知らぬ学生たちが。
その命を散らす事となった戦いと―――その元凶たち。
眼前の相手を無視して、弾かれたように視線を上空へと向けた。
『忌々しき罪都の生き残りよ、今こそ審判の時である』
| 魔人 | ホワイトライダー・オルタナティブ | Lv89 | 相性:??? |
『その魂、潔くこの場で散らすがいい』
| 魔人 | レッドライダー・オルタナティブ | Lv91 | 相性:??? |
『それが天の怒り触れた貴様らへの罰である』
| 魔人 | ブラックライダー・オルタナティブ | Lv93 | 相性:??? |
『幾星霜の時を超えようが―――我ら
| 魔人 | ペイルライダー・オルタナティブ | Lv95 | 相性:??? |
そこにいたのは、こちらを見下す馬に乗った4体の
記憶にあるものとはやや姿形が異なる。
記憶にあるものとは遥かに
だが、間違いない。
間違いなくこいつらは―――!
「お前らぁあああああああ!!!!!」
黙示録の四騎士。
かつて須摩留を襲った災厄にして怨敵。
この世界に存在する同名の悪魔などではない。
刃を交え、敗れて、追い詰めて、取り逃がした連中だ。
「殺す! 殺す殺す殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」
呼吸も忘れ、頭が殺意に染まる。
気づけば銃口を突き付けていた。
引鉄には既に指がかかっている。
「ぶっころしてやるぅううううううううううっ!!!!!!!」
自分と同じように、この世界へ流れ着いていたのだと把握して。
この悪趣味な舞台を整えたのがこいつらだと悟って。
死したこの3人を弄び、わざわざ自分と戦わせていたのだと理解して。
『やはり愚かだ』
『たかが仇を前にした程度で冷たさを失い』
『自らの寿命を縮めるとは』
『救いようがない』
| 「ムダ話」*5 | 敵の行動回数を1回減らす会話スキル。 須摩留の遺産及びこれまで漂着した世界で収集した異形科学によるもの。 |
そして―――貴重な一手を潰してしまった。
| 「応援」*6 | 対象のキャラクターを応援する。 そのキャラクターが次に行う行動の判定値を+20%する。 |
「なっ」
意識を上に向けた瞬間に近づいた3人が、こちらの手足へと万力のようにしがみつく。
ガラスのように無機質な、何の感情も宿さない6つの瞳が向けられた。
そこに怒りを感じる前に、この行動の意図を察した。
これは味方を援護する為のものだ。
「まずっ―――」
振り解くには時間が足りない。
致命的な隙を晒してしまった。
であれば、次に何が来るかなど考えるまでもない。
『まずはその邪魔な分身を処理する』
| 《ゴッドアロー》*7 | 敵単体に破魔属性で大威力の攻撃を1回行う。即死効果。 |
| 《破魔貫通》*8 | 相手の破魔属性の吸収、反射、無効、耐性を無視する |
目の前で
胴体に大きな穴を開けて、糸の切れた人形のように倒れ伏す。
『差し出せ、その罪に塗れた命』
| 《ソウルバランス》*9 | 敵単体に万能属性で大威力の攻撃を1回行う。魔封付加。 |
『今なお生きている事実が許し難い』
| 《テラーソード》*10 | 敵複数に物理属性で大威力の攻撃を1~5回行う。混乱・貫通効果。 |
黒と赤の騎士による連撃が容赦なく攻め立てる。
首から上と腰から下が無くなっても、スズミとレイサの手が離れない。
『今度こそ―――散るがいい』
| 《ペストクロップ》*11 | 敵全体に物理属性で小威力の攻撃を1回行う。状態異常に貫通大威力。 |
最後に。
以前、病院で受けたものと比べ物にならない本物の呪詛を受けて。
粉々になって崩れた2人の残骸を目に焼き付けながら。
―――自分の意識は深い闇の底へと墜ちて行くのだった。
・
・
・
それはかつて須摩留に顕現した四騎士たちの総称であると同時に、現行周回までの長き年月を漂流し続けた魔人たちの呼び名でもある。
バベッジの解析機関による次元潜航を繰り返し、各周回から技術や物資あるいは情報を蒐集すると同時に、
そこまでする目的はただ一つ。
崩壊する須摩留から
異形の都市にて生み出された存在へ死と凶事を撒き散らす事こそ、彼らの
よって今日此処に至るまで、既に数え切れないほどの犠牲者が出ている。
なにせ
軽く探して、魂を粉砕するだけで片が付く。
いくら
手を焼くほど強かったとしても、自分たちの
もちろん、全てで上手く行ったという訳でも無かった。
文明崩壊後のパターンでは単純に見つからない事もある。
警備の厳しい所に匿われ、手出しが出来なかった事もある。
追い詰めても
あるいは―――“先生”の同位体が立ち塞がって逃がされた事もある。
例えば、古書館の魔術師と呼ばれた少女。
例えば、魔法使いを名乗っていたオカルト研究会の少女。
例えば、食事への探求を続ける集団の長たる少女。
何の因果か、記憶どころか関係も無いというのに。
そこに居合わせていれば高確率で彼はかつての教え子たちを守る。
強い
そして、全体的な数は徐々に減らしてはいるが……いまだ優先対象の抹殺に成功した例はない。
“全知”はあらゆる周回において影さえ踏めず逃げられ続けている。
本人の危機察知能力と情報戦の強さによる物だろう。
“方舟”は
あの鬼神の如き漢の護りを抜いて命を奪うのは、当時の彼らでは不可能であった。
生徒会長が重要視していた高位神格の力を宿す生徒たちも同様である。
だから―――今周回で訪れたチャンスを逃がす訳にはいかなかった。
優先対象がかつてないほど集結するという待ちに待った機会。
長く世界が続いた影響で誰も彼もレベルが高いが、1人ずつ奇襲で潰せば問題はない。
当然のように“先生”の存在も確認したが、
それが縁の浅い者ならなおさらに。
そうした理由でまず狙われたのが美野里だった。
強大な敵との戦いを乗り越えた事で僅かに緊張が緩んでいたのも大きい。
四騎士からすれば
彼ら……特にペイルライダーからすれば昔の話ではあるが痛手を負わされた恨みもある。
途中で異界を支える解析機関、その支配権を取り合う畜生共の妨害と傍にいた剣士が侵入するというトラブルはあったが、目的は達した。
それぞれが持つ権能を最大出力で叩き込んだ結果、若槻美野里は間違いなく絶命したのだ。
特に原型を留めぬほど骨肉を腐らせた呪詛は魂にまで及んでいる。
間違いなく
『さて、これからどうする?』
『外は騒がしい。意識がそちらに向いている間は攻めやすい』
『“先生”の姿も確認出来ない、邪魔に入る者はそういないはずだ』
『畜生共や侵入者は後でどうとでも出来る』
仕留めた獲物に見向きもせず、各々が意見を出し合いながら次のターゲットを定めていく。
ここまで息を潜めていた魔人たちの暗躍はもう止められない。
各地で奮戦する
【適格者候補“若槻美野里”の
【霊格規定段階に到達―――転生覚醒による自己蘇生を確認】
【《
【貯蓄フォルマ解放、設計図データ解凍】
【覚醒兵装の作成準備完了】
「…………………」
そう―――腐肉となったはずの美野里が傷一つなく立ち上がらなければ。
『―――馬鹿な』
誰が口にしたのか。
いや、四騎士の全員が同じ気持ちであっただろう。
間違いなく殺したはずだったのだから。
権能を用いて魂まで消滅するほどのダメージを与えた筈だった。
食いしばりも不屈の闘志による自己蘇生も出来ない筈だった。
なのに、何事も無かったかのように両足で立っている。
夢や幻ではない、紛れもない現実で―――考えられるとすれば1つ。
『覚醒による蘇生か!?』
| 「覚醒の発動」*12 | 相応しきイベントが発生した際、いつでも覚醒判定が可能。 覚醒成功時、HPとMPは完全回復しする。 全てのBSも解除される(死亡を含む)。 ⇒「PC本人の死亡」及び ⇒「覚醒段階:転■者」 |
「……、――――――」
美野里は答えない。棒立ちのまま俯いており、その表情は伺えない。
先程まで放っていた突き刺さんばかりの殺意もどこかに消えてしまった。
ただ
『……!』
幾度もの殺戮を経験し力を増したはずの魔人が微動だにしない。
まるで、これ以上の刺激を与えないようにする為に。
破裂寸前の風船が割れないよう、細心の注意を払っているかのように。
10秒か、1分か、1時間か。
無言のまま時間だけが過ぎて行き。
「――――――――――――――――ぁ」
ふと、風が吹いた。
この異界の何処かで
そうして生まれた風に煽られて、美野里の足元へ赤い布切れが飛んできた。
それは、まだ消滅し切っていなかった
何かを求めて、美野里が手を伸ばし触れようとした所で……粉々となって散った。
「―――――――――――――――――――――――ぁ、あ」
瞬間、空気が変わった。
虚無から噴火する活火山へと変貌したかのように。
これまでとは桁違いの熱量が美野里から放たれ始める。
『あり得ぬ』
『これはまさか』
『ここまで至れるというのか』
『たかが小娘如きが』
ここで四騎士が戦闘の構えを取り―――美野里はゆっくりと顔を上げた。
そこにあったのは憤怒に染まった形相。
そこにあったのは血涙を流す赤き双眸。
そこにあったのは―――額に開いた第3の眼。
「ァぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!!」
絶叫と共に、背後の空間が撓み幾つもの兵装が現れる。
T・Rに貯蓄されていたフォルマを材料とする作成機能。
条件を満たした事で解禁された、神話再現の為の機構。
【作成完了】
【専用プロトコル“
曰く、アスラの軍勢を討つべく神々の祈りによって生まれた戦神。
曰く、神々から幾つもの兵装を授かり振るったシヴァ神の神妃。
曰く、戦いの中で頂点に達した怒りにより変身した殺戮と破壊の女神。
生徒会長こと峰津院都が本人にさえ秘匿していた本来の神格。
それを目覚めさせ、成長させるために用意されたプロトコルが遥かな時を超えて起動する。
殺戮が始まった。
・
・
・
「おいおい、イメチェンにもほどがあるだろ」
「激しく同意するニャア」
「どうやら遅かったようだ」
宗吾
まず目に入ったのは地平の先まで広がる灼き焦げた黒の大地。
辺り一帯に幾つも散らばる剣、弓、鎌、天秤、髑髏の欠片。
そして、それらを執拗に何度も何度も踏み潰し続ける
光を反射する腰まで伸びた銀髪。
赤く染まった双眸と額の三つ目。
豊満な肉体とその背から伸びる半透明な8腕。
異形なれど美しいと言えるその容姿は間違いなく彼女のもの。
やがて、宗吾たちの存在を知覚したのかゆっくりと向き直る。
狂気に彩られたその瞳は対話不能である事を雄弁に語っていた。
ため息を一つついて―――刀を構える。
「今回ばかりは俺が言わせて貰おうか。
―――なに暴走してんだよこの馬鹿!!」
「あああああああああああああああああああああ!!!!」
| 転生神 | カーリー・マー | Lv100 | 相性:??? |
美野里覚醒回、あるいは四騎士出落ち回でした。