真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~   作:ジントニック123

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かなり間が空いて申し訳ありませんでした。
長引きそうなので全中後篇です。



Line Of Defense-前篇-

 

 アストラル・シンドロームと呼ばれる病気がある。

 幽体離脱症候群とも呼ばれるそれは、罹患すれば原因不明の昏睡状態へと陥る恐るべき病だ。

 実態は精神をとある電脳異界に取り込まれた事による現象なのだが、表向きはそうなっている。

 

 被害者数は国内だけでも数千人以上。

 海外に至っては計測不能なレベルで増え続けている。

 これ以上増えれば病床はパンクし、次のセプテントリオン襲来後の大きな足枷となるのは間違いない。

 

 推測される今後の経済面、介護面における負担の大きさから被害者たちを“脳死判定”とする法案まで通ろうとしているのが現状であり。

 そしてそれを裏で推し進めているのが《八部連合阿修羅会》。

 ―――国内最大の寄生虫(ヤクザ)たちである。

 

 

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「リアルでハビタット計画みたいな事やってるとかさ。

 何度聞いても正気疑うわ、うん。

 ほらあれ……宇宙猫ってやつ」

 

「あたしも初めて聞いた時そんな顔になったわ。

 絶っ対正気でやれる事じゃないでしょそんなの。

 もし素面でやってるなら、正真正銘のサイコパスか馬鹿ね」

 

「なんか昔香港で重サイボーグ(サイバーサイコ)共が電子ドラッグ(VR)キメてたの思い出すな。

 ヤバさで言うならこっちが全然なんだが社会問題なのはどっちも同じな所で」

 

「あ、そっちにもあったんだVR。

 リミッター外した製品流すブローカーが絶えなくていっつも捕まえてたわー」

 

 都市圏最大のアストラルシンドローム収容病院。

 その正面に配置されたそこそこの広さがある広場にて。

 うららかな日差しの差すベンチで2人の男女―――宗吾と美野里は愚痴るように言葉を交わしていた。

 

 一見すれば若い男女のデートにも見えなくはない。

 が、話す内容は逢瀬にしては些か物騒に過ぎる。服装もそうだ。

 素人目には普段着にしか見えないが、身に着けているのは全て偽装された防具とアクセサリー。

 武器も一般人には見られないよう複数隠し持ち、いつ戦闘になっても即応できる状態だ。

 

 加えて、どちらも呆れの混ざった声音に反して周囲の警戒を全く怠っていない。

 親に連れられて来た幼子から、通院のため訪れた老夫妻まで。

 病院を訪れる人間全てをチェックし、違和感があれば内部の同業へと報告を入れている。

 その性質上、警備もほぼ万全に近いこの病院で何故そのような事をしているのかと言えば、

 

「ヤクザ共のカチコミ、あると思うか? 

 俺は今日の晩飯のおかずを賭けてもいい。

 本当は来ない方が一番なんだが」

 

「同じ方に賭けるんだから意味ないわよ。

 “千束”たちいわく、他にもめぼしい候補はあるらしいけど……嫌な事に勘が疼きっぱなし」

 

「世も末過ぎると思うなこんちくしょう」

 

 裏闘技場での一件で知り合って以来、度々仕事を共にするようになった少女。

《喫茶リコリコ》の看板娘にして《リコリス》の一員である錦木千束を通しての依頼。

 ―――ヤクザたちによる襲撃、アストラルシンドローム患者の拉致を防ぐためだ。

 

「昏睡状態の人間使って何する気かは知らんが。

 ぜってーロクな事じゃないよなぁ……てか想像したくない。

 連中の施設襲撃した時も脳ミソ吸出し現場だったし」

 

「想像するだけでも気分悪くなるっての。

 鉛玉撃ち込んでよさそうのしか来ないのが幸いね」

 

「斬っても問題ねーのもな。

 人様の負担に付け込んで身柄の引き受け―――人身売買までやらかしてんだ。

 これ以上堂々と外道働きなんてさせたら駄目だろ」

 

「まったくだわ」

 

 それは2人が以前出くわしたマンハント、その派生形態の一つ。

 一般人の目を気にせず白昼堂々行われる、常軌を逸した蛮行に他ならなかった。

 

 美野里は手元のタブレットに視線を落とす。

 そこに映し出されているのは周辺の監視カメラ映像だ。

 もちろんだが事前に許可は取ってある。

 

 今の所怪し気な物も人の姿も無い。

 道路を走る一般車両と通行人のみ。

 なんてことのない、ありふれた光景だけが広がっている。

 

「……病院狙うとかふざけんな」

 

 ポツリ、と美野里の口から声が零れた。

 怒りと憎悪、そして僅かな悲しみの混じったものだ。 

 許せない、許せるはずも無い。

 こんな光景(へいわ)を壊そうとすることも、何より病院を狙うという行為そのものが。

 

 思い浮かぶのはかつて自分がいた世界。

 学園都市須摩留―――またの名を〈真実の都市(イデアシティ)〉。

 完全支配された労働力(アクマ)を用いてどこよりも発展した最先端都市。

 外から入学した“学生”だった自分は本当の意味で馴染めなかったあの場所。

 

 急激なGPの上昇で暴走した悪魔たちとの戦いに次ぐ戦い。

 当然無傷で済むはずもなく、何人もの仲間が倒れていった。

 そして治療を受けていた都市最大の病院で、

 

『我ハ魔人ペイルライダー! 

 弱者ヨ、コノ蒼キ騎士ニ恐レ慄ケ!!』

 

 突如として現れた四騎士の一画―――ペイルライダー。

 多くの学生が―――即ち覚醒者が―――いたから。

 それだけの理由で襲い掛かってきた魔人。

 

 動けない仲間たちを見捨てて逃げるなど論外。

 全てを守り抜くには力も数も足りなさ過ぎて。

 それでも、皆と死に物狂いで戦ったのを覚えている。

 

 結果として撃退には成功したものの、帰らぬ人となった者も少なくなかった。

 

 あの時とは状況も何もかもが違うが、どうしても意識してしまう。

 口の中にジワリと鉄の味が広がりタブレットを持つ手にも力が入る。

 忘れられぬ怒りが腹の底から湧き上がってくるのを抑えきれず―――。

 

「ほいほい深呼吸……その辺で飲み込んどけ美野里ちゃん」

 

 軽く肩を触られる。本当に触ったかもどうか分からないほどに軽く。

 それだけで荒れ狂いそうになっていた感情の波がスッと納まった。

 

「っ―――」 

 

 別にその程度でどうにかなるような安くもチョロくもない女だ。

 そのくらいの自負はある。

 おそらく気功法あたりで*1マグネタイトを流し込み、こちらの精神を安定させたのだろう。

 だから思ったのは、

 

「……いつも思うけど気安く触らないでよ。

 セクハラよセクハラ。

 私じゃなかったら訴えられるんですけど」

 

「いや今のは軽く触っただけじゃん。

 胸揉むより全然マシだろ」

 

 ホラ最初に会った時みたいに、と手をワキワキ動かす剣馬鹿。

 何か腹が立ったので、とりあえず脛を鉄板入りのブーツで蹴る。

 悶絶して蹲るのを見下ろしながらため息を一つ吐く。

 

「ごめんなさい、ちょっと気負ってたわ」

 

「そいつは何よりだが次は手加減してくれ……!」

 

「だって本気でやらないと効かないじゃん」

 

 などと軽いじゃれ合いも終え、改めて襲撃へと備える。

 先にも言ったが来ないのが最良なのは間違いない。

 しかし物事はそう都合良く行かないのはどちらも経験則で知っている。

 

 ヤクザたちは必ず来る。ここが戦場になるのはほぼ確定事項。

 患者以外の一般利用者もいるこの病院を何としてでも守り抜かねばならない。

 不安はある―――しかし絶望はない。 

 何故なら、この病院を守っているのは自分たちだけではないから。

 

 天魔の力を振るうDBを始めとしたキリギリスの精鋭たち。

 何度も仕事を共にし、その腕前を良く知るリコリスの少女2人。

 葛葉四天王のゲイリンや対悪の警察官たち。

 そして〈最後の大隊〉と呼ばれる漂流者(ドリフター)の中でも最大の集団。

 

 自分たちより強い格上も頼れる相手も数多くいる。

 確かに守る側に比べ、無法者故に手段を選ばぬ事が出来る相手が断然有利だろう。

 だがそれを真正面から跳ね除けるだけの戦力がここにはある。

 

 そして状況が動いたのはこれより数十分後。

 車道を進む3台のマイクロバスが監視カメラに映った後。

 持ち前の勘の鋭さと僅かに見えたバス内部の様子から、即座に他のメンバーへと伝達。

 

 すぐさま近くにいた青年が躊躇いなく道路へと踏み込み、

 

 

「物反鏡」消費アイテム次ターン、味方全員を物理反射にする

《カバー》自分に攻撃を移し替える

 

 

 物理反射(テトラカーン)によって撥(・)ね(・)返(・)さ(・)れ(・)宙を舞う車体。

 鈍く響いた金属の音―――それが開戦の号砲となった。

 

 

 

 

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「お前たちをブラッドぱーティーにしてやる!!」

 

「聖戦だおらあああああ!!!」

 

 炎上するバス3台と石化した何人もの人間たちを背景にして。

 白い仮面を被ったトレンチコート姿の外道と緑がかった黒鎧の天魔が吠える。

 互いに繰り出すのは全てを打ち据える万能魔法(メギドラ)と鋼さえ断ち切る2段斬撃(ツインスラッシュ)。

 

 遅れて届く破砕音と衝撃が連続し止まる様子を全く見せない。

 互いにレベル60代後半―――この戦場における最高峰(ハイエンド)同士の戦いだ。

 生半可な者では踏み込んだ瞬間に相応の代償を支払う事となるだろう。

 

 こうして戦闘が始まった時点でヤクザたちの初手。

 すなわち悪魔融合車両と爆弾化*2させた覚醒者(ロバ)を使った突撃は失敗に終わった。

 

 中にいた一般人を含める被害者たちは《ペトラレイ》による石化によって無力化(保護)。

 状態異常の上書きによって爆発*3も阻止する二重の対策。

 そして後で蘇生を行えば死ぬ事は無く記憶にも残らない。

 

 同時に行われていた動画配信による情報戦。

 これも事前に対策していた電霊とハッカーたちが新作特撮の番宣として偽装し阻止。

 視聴していた人間の殆どは良く出来たCGとしか思わないだろう。 

 

 相手の出鼻を挫く事にはこれ以上ないほど成功したと言える。

 だがこの場に居る者たちは分かっていた―――これは陽動だ。

 正面から派手に仕掛ける事で目を逸らす手でしかないのだと。

 

 今頃は他のルートから病院内への侵入が行われている頃だろう。

 人数的にはそう多くはないはずだが、間違いなく質の高い者たちが向かっているはず。

 残念な事にそちらは内部の人間に対応を任せる他なく。

 さりとてこちらも決して気を抜いて良いわけではない。

 

「さっさと入りこめぇっ!!」

 

「数はこっちの方が多いんだ! 押せ押せ押せ!!」

 

 

\カカカッ/

軍勢ヤクザの群れLv50相性:??? 

 

 

 破壊されたマイクロバスの後方。そこから続々と何台もの乗用車が姿を現す。

 降りて出て来たのは武装したヤクザの集団だ。

 第2波―――すなわち追撃の為に用意されていた人員。

 

 個々のレベルでずば抜けているのは少ないが、まとまった数はそれだけで脅威となり得る。

 仮に1人でも中に入れてしまえば誰かの血が流れるのは間違いない。

 そうでなくとも、既に人を辞めてしまった者も含まれているのだ。

 

 通常の悪魔と同様に意識不明の身体や新生児に情報汚染の被害が及ぶ可能性もある。

 故に―――。

 

 

 

 

 

 「ノーコンテニューでぶっ殺して(クリア)やるよ……!」

 

 

 

 

 速攻で片付けるのみ。

 

 景観のために植えられた街路樹、それを足場として跳躍。

 宙を舞いヤクザたちの上を取った剣鬼の声が響き渡る。

 体を捻るようして構えられるのは妖しげな光を放つ刀だ。

 

 見る者の目を奪う美しくも恐ろしい―――魔剣の類。

 

 反射的に幾つもの銃口が向けられた。

 ヤクザたちの顔に浮かぶのは危機感、あるいは嘲弄の色。

 身動きの取れない空中で、あの姿勢では防御もままならない。

 如何な対策をしていようと、これだけの集中砲火を前にしては無駄に命を散らすだけ。

 

「技借りるぜ“凛子”」

 

―――《搬運功》―――

 

 それを眼にしながら平然と口ずさむのは女の名。

 直後―――そ(・)の(・)姿(・)が(・)ヤ(・)ク(・)ザ(・)た(・)ち(・)の(・)視(・)界(・)か(・)ら(・)掻(・)き(・)消(・)え(・)る(・)。

 

「どこに行っ」

 

 疑問の声は続かない。

 そもそも彼らは違和感を持つべきだった。

何(・)故(・)態(・)々(・)頭(・)上(・)を(・)取(・)っ(・)た(・)の(・)か(・)。(・)そ(・)し(・)て(・)気(・)付(・)か(・)せ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)声(・)を(・)張(・)り(・)上(・)げ(・)た(・)の(・)か(・)。

 

 

「―――“雲耀”」

 

 

《雲耀の剣》*4万能物理スキル敵前列に万能相性ダメージ。

八瀬宗吾の行使する3つの雲耀の内、最も消耗が少ない。*5

《搬運功》*6気功に分類されるカルトマジック。

外界の気の流れを操作し空間転移(テレポート)を行う。

超人以上ならば他者も含めて可能だがその領域には届いていない。

かつて出会った封剣士の女が得意としていた術でもある。

 

 

 答えは群れの中心、全員の意識の死角(下)から現れる。

 視線誘導(ミスディレクション)と空間転移を併用した正(・)面(・)か(・)ら(・)の(・)不(・)意(・)打(・)ち(・)。

 上空へ注意を向けたままの木偶(ヤクザ)たちには防御も反応も許されない。

 そして所詮使い捨ての駒(下っ端)である彼らに万能耐性などあるはずもなく、防げるような防具*7も与えられてはいない。

 

 よって最期まで何が起きたのか理解出来ぬまま意識は暗転。

 アスファルトに斬り分けて転がった複数の肉塊と化す。

 

 

 

 

「て―――、んめぇええええ!!?!? 

 やりやがったなこのクソガキャぁっ!!!!」

 

 ―――ただ一人を除いて。

 

 

\カカカッ/

魔族サーヴァントヤクザLv55相性:全体的に強い、破魔無効

 

 

 胸を半ばまで両断されながら耐えきったのは口元に鋭利な歯を覗かせる男。

 サーヴァント―――すなわち悪魔とは異なる生体吸血鬼の下僕。

 物理的に脳を破壊し薬漬けにした、お手軽な強化装置の恩恵を受けた人外だ。

 

 人を辞めた証拠に、今こうしている間にも与えたはずの斬傷が煙を上げながら塞がっていく。

《大治癒促進》などのスキルによる自動回復ではなく、生態的機能によるもの。

 古代より続くカインの末裔、その呪いの力が下僕とはいえ死ぬ事を許そうとしないのだ。

 

「……なるほどな」

 

 そもそも万能相性の雲耀は3つの中で最も威力が低い技である。

 レベル以上の生命力と耐久力を備えた相手を殺せなかった事は別に可笑しなことでもない。

 その事実を踏まえた上で。

 

「まだ届かねーか、俺の剣は」

 

「舐めるなあああ―――!!」

 

 未だ高みへは届かぬと受け止めた言葉。

 それを挑発と受け取ったサーヴァントヤクザの足元が爆(・)ぜ(・)た(・)。

 かつて人間だった頃とは比べ物にならない脚力による超加速。

 

 音に迫る迅さで狙うのは心臓一点―――この生意気な小僧から抉り出し喰らってやるのだ。

 

 

《怪力乱神》*8物理スキル敵単体に物理属性で大威力の攻撃を1回行う。

 

 

 繰り出されるのは力任せの、だからこそ対応の難しい一撃。

 シンプルに速く強い暴力はそれだけで回避も防御も許さない。

 掠めただけで脳震盪、直撃すれば死は免れないだろう。

 

(こいつでくたばっちまえ――――)

 

《見切り》*9防御スキル相手の武器の長さをセンチ単位で見切り、

攻撃半径すれすれを移動して回避する。

成功時、相手への攻撃権を得る。

 

 だから見切った。

 一歩横へと逸れる、それだけで十分。

 振り遅された凶腕は何もない空間を打撃するだけで終わった。

 

「あれ???」

 

《もがり笛》*10物理スキル抜刀術に分類されるスキル。

対象の喉や首など防御の薄い箇所を切り裂く。

物理防御点を無視する。

 

 同時に抜刀、すれ違いざまに相手の勢いをも利用した断頭の一閃。

 体だけはそのまま前へ転がっていき、頭は明後日の方向に飛んで見えなくなった。

 

「こいつがサーヴァントってやつか。

 概要だけはシロエWIKで読んでたが……頸落とす要領は人間と同じだな。

 終わったら書き込んどかねーと」

 

「いやそんな情報要らないから。

 あんたみたいな変態以外で」

 

 背後からの声に宗吾が振り向く。

 そこにいたのは少し離れた場所で戦っていた相棒の姿。

 装備に汚れこそ見られるが特に目立った負傷はない。

 

「そこはあれだよ、無駄なデータなど存在しない的なやつ。

 それと、そっちの方はどうなった?」

 

「予想通り伏兵とか破壊工作しようとしてた奴らがいて〈最後の大隊〉の人達と叩いたわ。

 流石プロというか、もの凄い連携と十字射撃であっという間に終わったけど」

 

 美野里も戦ったがメインで活躍したのは彼らだった。

 一応デモニカ装着者(ユーザー)だった身として、あそこまで使いこなせるのかと感心したほどだ。

 ―――もっとも、こちらは正規の訓練を受けた訳でもない窃盗犯だったが。

 

「あんたの方は聞くまでも無いわね

 この数を一蹴とか腕上がったんじゃない?」

 

「いーや、まだまだだ。

 一番火力の低い万能の雲耀だからって耐えられちまった」

 

 そもそも小細工を弄してまで放った先制攻撃(雲耀)で仕留めきれなかったのが未熟の証なのだと言い切った。

 究極の一太刀と呼ぶにはあまりにも烏滸がましい。

 

「何回か仕事一緒にした可奈美ちゃんって子がいたろ? 

 あの子ならたぶん出来てたぜ」

 

「ああ、あの中学生くらいの……いやでもレベル相当高そうだったし」

 

「それ言い訳にしたくないんだよなー。

 俺も早いとこあのくらいまで上げたいわ」

 

 他にも忍者らしき少年と一緒に仕事をしたが、彼もまたずっと強かった。

 この業界に年齢など関係ない事は承知の上だが、それでも思う所はある。

 最低ラインに立ったくらいで満足していてはいけないのだ。

 

「この後は予定通り大隊と合流だな。

 流石にこれ以上のお代わりは無いとは思うんだが」

 

「なら連絡入れて千束とたきなたちの方と合流する?

 巡回するならそっちの方が効率いいかも」

 

 美野里の案に頷き、連絡の為装着したインカムに手を伸ばして―――鯉口を切る。

 

 「チッ、最悪……っ!」

 

 舌打ち、そして険しい表情を浮かべ美野里も銃を構えた。        

 気配がする。探らなくとも分かるほど濃密な死(・)臭(・)が漂ってきた。

 これに比べれば先程斬り捨てたヤクザたちなどまだマシだ。 

 

 かつん、かつんと戦場に響くのは重苦しい足音。

 やがて視界に入り込んできたのは2つの人影。

 

 姿形は人型であれど―――それは決定的に“外れて”いた。

 

 

 「刺してあげる! (ファックユー)刺してあげる! (ファックユー)刺してあげる! (ファックユー) 」

 

\カカカッ/

悪魔人間ウィドウLv59(Mag強化済み)相性:全体的に強い、精神・破魔・呪殺無効

 

 

 「キルマム! キルマム! キルキルマム!! 」

 

\カカカッ/

悪魔人間ホラースターLv64(Mag強化済み)相性:物理反射、破魔・呪殺・魔力無効

 

 

 

 片方は黒いレースの喪服を着た、古びたガスマスクに異形の鉄爪を装着した小柄な女性。

 片方はホッケーマスクに横縞のセーター、皮のエプロンを付けた電気鋸(チェーンソー)を持つ大柄な男性。

 

 ヤクザと言うには悪い意味で不似合いで、襲撃者というには納得するしかない容貌。

 どう見ても正気には思えない。そもそも殺意しか振りまいていない。

 まるで別世界から迷い込んできたような2人組で―――自分たちより格上という事だけは確かだ。

 

 

「分断した方が良いなこりゃ。美野里ちゃんは女の方頼む」

 

\カカカッ/

剣士八瀬宗吾Lv55相性:全体的に強い、破魔・呪殺無効

 

 

「了解。今大隊の人達にも連絡入れたからすぐ援護に来てくれると思う」

 

\カカカッ/

サイコメトラー若槻美野里Lv5Ⅰ相性:破魔・呪殺・神経無効

 

 

 挑まない理由はない。引けば間違いなく犠牲者が出る。

 この病院を、患者たちを守ると決めたのだ。

 なら格上だろうと倒して自分たちの力に変えるまで。

 

 

 今ここに―――漂流者(ドリフター)同士の死闘が幕を開けた。

 

 

 

 

 

*1:
《正呼吸》精神治癒魔法。MPを倍消費すれば他人にも使用可能。

*2:
※DSJ 状態異常「爆弾化」

*3:
※真シリーズ・DSJなどでは死亡の次に<石化>が優先される

*4:
※TRPG200X

*5:
TRPG200Xでのデータ上ではコスト0で使用可能

*6:
※TRPG基本システム

*7:
「スプリガンベスト」

*8:
※真Ⅳ

*9:
TRPG誕生篇

*10:
※TRPG覚醒篇




次回はなるべく早めに投稿したいと思います。
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