真・女神転生オタクくんサマナー外伝~エピソードオブドリフターズ~   作:ジントニック123

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Line Of Defense-後篇-

 

 

―――〈200x/xx/xx 陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地〉―――

 

 

 

「君は“魔剣”という言葉が嫌いなのかな?」

 

「…………は?」

 

 疲労困憊で座り込んでいた時、いきなりそんな言葉を投げ掛けられた。

 顔を上げれば、そこに居るのは抜身の刀を携えた鋼の如き偉丈夫。 

 幾つもの勲章の付いた制服を身に纏った1人の剣士だった。

 

 ただし、息も絶え絶えなこちらと違って疲弊している様子は欠片も見えない。 

 激しい戦いを制してなお悠然としたその姿は―――紛れもない達人の証。

 いまだそこへ至らない、未熟たる自分を恨めしく思うと同時に。

 何故そんな事を聞いたのか疑問が浮かんだ。

 

「ああ、答えたくないなら構わない。

 ただ本当に、ふと気になっただけだ」

 

 苦笑しながら刀を鞘に納め、足元に転がった機械の残骸を踏みしめて近づいて来る。

 どうやら表情に出ていたらしい。

 まだ立ち上がれない自分に手を差し出し理由を語った。

 

「出会ってそれなりになるが、君の口からその言葉を聞いた事が無い。

 合体剣や魔晶剣、秘剣という言い回しを使うほどだ。

 だから、何か理由があるのかと思ってね」

 

「……別に、単なる個人的拘りってやつですよ」

 

 差し出された手を取らず、気合を入れてゆっくりと立ち上がる。

 我ながらつまらない意地だが、疲れている程度で手を借りたくはない。

 まだ未成年で世間一般の基準で言うなら子供であろうと、剣士の端くれなのだから。

 相手も特に気にした様子はなく、苦笑しながら手を引っ込める。

 

「―――“魔剣とは、理論的に構築され、論理的に行使されなければならない”

 

 なので、こちらを気遣ってくれた代わりと言ってはなんだが質問に答えた。

 何故自分が魔剣という言葉を使わないのか。

 それこそただの拘りとしか答えようの無い理由を。

 

「言い換えれば邪剣の類。

 特定条件下においてどんな相手でも確実に斬殺する機構(システム)

 剣術の常道から外れた必殺剣―――それが俺にとっての“魔剣”なんです」

 

 敵が何者であれ関知せず。

 屈強な戦士であろうと。無力な幼子であろうと。

 ひとたび抜けば問答無用で等しく斬り捨てる無敵の剣。

 

 人や流派ごとに定義は異なってくるが、少なくとも己はそう定義している。

 だから、それ以外に魔剣という言葉を使わない。使いたくない。

 もちろん、自分のようなやつが少数派なのも承知済みだ。

 

 悪魔の力、超常の力を宿した刀剣。

 あるいは際立った才と修練、工夫の果てに許される習得困難な絶技。

 それらを魔剣と呼ぶ事は納得しているし否定するつもりも無い。

 本当に単なる拘り、もしくは意地の話なのだ。

 

 そもそも―――。

 

「……こう言ってはなんだが、()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()

 

 否定の言葉を即座に肯定する。

 そうだ、どんな相手でも確実に斬り殺す無敵の剣? 

 あるはずがないだろう、そんなものが。

 剣術どころかあらゆる武と言う概念を侮辱している。

 

 覚醒していない愚者同士の戦いならばともかく。

 死んだ程度なら蘇生可能。

 何でもありの異能者同士の戦いでそんな都合の良いものが存在してたまるものか。

 

 仮にそんなものを使えるようになって、縋るようになったら。

 ―――()()()()()()()()()()()()

 角度の付いた鉄の棒を振り回すだけの、無様な剣使いへと堕ちるだろう。

 それならまだ腹を切って死んだ方がマシかもしれない。

 

「だから俺にとっちゃ究極の一太刀―――“雲耀”も魔剣じゃないんすよ。

 まーこれ言ったら殺しに来る連中もいるだろうけど」

 

 というかいた。

 奥義を馬鹿にしてるのかと本気で殺りに来た。

 返り討ちにして簀巻きにして送り返したけども。

 

「なるほど……しかし、私は嫌いではないな。

 むしろ好ましいと思う」

 

 こちらの話を聞き終えるとほんの少しだけ笑みが浮かべて。

 陸上自衛隊統合幕僚長、“後藤陸将”はそう言い切った。

 

「決してあり得ぬ太刀筋(ブレイドライン)

 だがそこに近づこうと先人たちは研鑽を積み後代に託してきた。

 思い描く魔剣(理想)へ進もうとする意志―――実に素晴らしい!!」

 

「いやそこまで大それた事考えてもないんですけど……っ!?」

 

 何か派手に勘違いされたっぽいので焦る。

 届かない剣を目指す意思はともかく、託す云々はまるで意識の外。

 それを言ってしまえば実家の剣術なんて触りしか覚えていない。

 

「やはり卒業後は自衛隊に来ないかね? 

 可能な限り好待遇を約束するが」

 

「職権乱用じゃねーかそれ」

 

 しかし面と向かって否定するのもあれなので。

 ついでに圧の強い勧誘から逃れる為に話を逸らす事にする。

 

 

 

「あーでも―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 足元に転がる機械の残骸―――正確には自分たちを殺そうとしたパワードスーツの成れの果て。

 クレハ・コーポレーションの一部が送り込んだ殺戮兵器群。

 学院との提携で見学に来ただけなのに巻き込まれ、死に物狂いで斬りまくった連中。

 

 その大半を()()()()()()()()()()()()()()剣だけは。

 

 ひょっとすると――――魔剣と呼んでも良いのかもしれない。 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

「うぃんうぃんうぃーん! うぃーん!」

 

「らぁああああっ!!」

 

 

 過剰改造された電動鋸と鋼の刃がぶつかり合う音が響き渡る。

 戦場となった駐車場は既に悲惨な有様と化していた。

 刻まれた車が何台も散らばり、舗装されたアスファルトはめくれ地面が露わとなっている。

 

 さながら廃棄場(スクラップヤード)の如き光景。

 車の所有者が見れば悲鳴を上げること間違いなしの状況だ。

 その鉄屑たちの中心で文字取り火花を散らしているのは2人。

 

 剣鬼と殺人鬼、あるいは守護者と襲撃者。

 すなわち八瀬宗吾とホラースター。

 両者の戦いは始まって以降、同じ展開が続いていた。

 

 

「まあああああああああむ!!!!」

 

―――《ぶちかまし》*1―――

 

 脳天から股下まで真っ二つに両断せんと振り下ろされるチェーンソー。

 まともに受ければ絶死間違いなしの一撃。

 

「っとぉ―――!」

 

―――《受け》―――

―――《猛反撃》*2―――

 

 それに刃を絡めベクトルを横へと逸らし、多少肉を抉られながらも強烈な反撃を叩き込む。

 斬られた右肩から血が飛び散るが、ホラースターは大して気にした様子も無い。

 聞く者を恐怖させる爆音と共に再び得物を振り上げる。

 

 まるで互いの命を削り合う、破滅へと向かう輪舞曲。

 本来であれば、格上かつ物理反射の相性を持つ相手に成立する戦法ではない。

 もちろん、これにはタネも仕掛けも存在する。

 

《霊活符》*3補助スキル武器に貼る事で威力上昇及び相性を「-」*4に変える。

簡略化により使いやすくなった代償として、

《準物理貫通》とスキルへの適応は失われている。

《堅気功》*5補助スキル気功に分類されるカルトマジック。

防御力を一時的に2倍にする。

一度使用した後は継続してMPを消費する事で維持可能。

「鬼神楽」格闘武器ナガスネヒコ、アマゾーンと合体済み。

威力:273 命中:130*6

 

 1つ目は悪魔合体によって力を増大させた愛剣。

 異界潰しのバイトに業魔殿と邪教の館の反復横跳びの成果だ。

 以前のままであればここまで打ち合う事は出来なかった。

 

 2つ目は肉体の強度を底上げする気功術。

 全身に張り巡らせた気が、防ぎ損ねたダメージを最小限に抑える。

 

 3つ目は簡略化した霊活符。

 剣術(スキル)にまで効果は及ぼせないが今は通常攻撃と反撃(カラテ)で十分。

 

 そして4つ目は―――。

 

「ブラボー3! もう一度行くぞ!!」

 

「了解!!」

 

 

\カカカッ/

軍勢ブラボーチームLv55相性:??? 

 

 

―――「虚弱性・消毒スプレー」*7―――

 

 

 戦闘音を聞き付けやってきた〈最後の大隊〉のメンバー数名。

 彼らによって投げ込まれる弱体化アイテムでの支援だ。

 拡散するガスの成分がホラースターの筋肉を弛緩させ、一撃の威力を落としている。 

 

 

 これらの内、1つでも欠けていればまともな戦いにならなかっただろう。

 策を弄し、準備を整え、有利な状況で挑む。

 それこそ格上殺しの基本中の基本。

 

 だがそれでも――――。

 

「アイ―――」

 

 ホッケーマスクの隙間から覗く目をギラつかせて。

 架空の殺人鬼をごちゃ混ぜにした格好の男は叫ぶ。

 

 

 

 

「アイ! アム! ホラースタァアアアアアア!!!!!!」

 

 

 

 

《五分の活泉》*8自動効果HPの最大値を50%上昇させる。

《仁王立ち》*9自動効果回避出来なくなる代わりにダメージを半減する。

《地獄のマスク》*10自動効果状態変化になりにくくなる。

《コロシの愉悦》*11自動効果クリティカル発生率が25%アップ。

 

 

 

―――《アカシャアーツ》*12―――

 

 

「がっ……!」

 

 止まらない、止まらない止まらない。どれだけ斬撃を浴びても止まらない。

 肉体の負傷や弱体化など目もくれず、桁外れの一撃を繰り出し続けている。

 達人の技量を以てしても捌き切れない速度と威力。

 宗吾の体へ幾つもの、決して無視出来ない傷が刻まれ始める。

 

「OoooooOoouoooo!!!!」

 

 その事に歓喜する姿はまさしく不死身の怪物(ホラースター)

 標的が息の根を止めるまで襲い続ける理外の殺人者。

 多少の小細工など正面から踏みつぶし、ただひたすら蹂躙する。

 

 ―――時間を追うごとに、戦いの天秤は宗吾の不利へと傾いていく。

 

「ここから援護するだけじゃ駄目だ! 

 あのサムライ殺されるぞ!」

 

 ブラボーチーム、そのリーダーが叫ぶ。

 このまままでは遠からず敗北の未来が訪れるだろう。

 それを覆すのに手っ取り早いのは数による援軍だ。

 

 古今東西、囲んで叩けば如何な怪物とて膝を折るしかない。

 無論ある程度の実力があれば、という枕詞が付くが、可能なだけの力と数をブラボーチームは有している。

 同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「分かってるがやはり近づけん……っ!!」

 

 

《ゲートキーパー》*13自動効果敵・味方の増援パーティは行動できない

 

 

 彼らの正面に存在する不可視の障壁、すなわち()()()()

 後から来た余計な救いの手(デウスエクスマキナ)を払い除ける凶悪極まりない能力。

 自分と獲物以外が狩場に存在する事を拒絶する、殺人鬼に相応しいの結界だ。

 

 これによってブラボーチームは直接肩を並べて戦う事が出来ない。

 銃で撃つ、爆破する、魔法を叩き込む、殴る蹴る。

 あらゆる手を試したが、可能だったのは遠距離からアイテムで支援する事のみ。*14

 だから今は、血に染まり続ける青年をひたすら見守るしかないのだ。

 

「クソッタレ……!!」

 

 デモニカスーツの下から、噛み締めた奥歯が砕ける音がした。

 理不尽は知っていた。不条理を理解していたつもりだった。

 最近では臨海公園地下水道で地獄を見た。

 

 だが、現実は何時だって想像を上回るのだ。

 まさか戦闘行為そのものへの参加を制限されるなど。

 

「本当に地獄だぜこの最前線(せかい)は!」

 

 軍人としての冷たい思考が言う。

 ここは情報収集に徹し、確実に無力化する手段を構築すべきだと。

 戦友としての燃える感情が叫ぶ。

 諦めるな何としてでも助けろ、自分たちに出来る事をすべきだと。 

 

「観察を続けながら何でも試せ!! 

 アイテムはまだ残っているだろう!」

 

「援護を切らすんじゃないぞ、タイミングを外すな!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ただ手をこまねいて観客(ギャラリー)に甘んじるなど許されない。

 自分たちは軍人(プロフェッショナル)―――無能のやられ役はフィクションで十分なのだから。

 

 

 

 

「キルキルキルマァアアアアアム!!!!」

 

 

 

 しかし、その決意さえ無に帰すような雄叫びと共に。

 もはや死にかけの剣鬼へ―――最後の一発が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 ―――男の事を語ろう。

 その男はいわゆるオタクと呼ばれる人種であった。

 好みは映画、特にB級ホラー映画が好きで平日問わず鑑賞する毎日。

 

 その事を不気味に、気持ち悪く思う人間も多少いたが大した問題ではなかった。

 男のいた世界、時代ではもっと()()()()()()趣味の持ち主はいた。

 それに比べるとまだマシで、特に害も無いと判断されていたからだ。

 

 実際、その評価は間違ってはいなかったのだろう。

 男は高校に通っていた3年間、良くも悪くも問題を起こさなかった。

 人によっては顔さえ覚えていないほど“薄い”同級生だったとも言える。

 

 だが違った。

 男は無害という概念からは程遠い存在であったのだ。

 そう見えていたのはただひたすらその時を待っていただけに過ぎない。

 

 “その時”―――高校の卒業式。

 学生生活の終わりである記念日に、男はあらゆるホラー映画で学んだことを実践した。

 

 1つ、ワイヤーは高速で移動させる事で人体を切断できる。

 1つ、あらゆる場所を封鎖し、閉じ込めておくべし。

 1つ、殺人鬼は顔を隠すべし。

 1つ、油断をするな。

 

 結果、男は卒業式の行われていた体育館を血の海へと変えた。

 卒業生、在学生、教師、保護者、一切区別なく真っ二つにしたのだ。

 かろうじて生き残った者も容赦なく惨殺し、男は悠々と学び舎から巣立って行った。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ありふれた人間なんかじゃなくて。

 誰からも恐れられ、忘れられない、正真正銘のモンスターに」

 

 後日、自宅で発見された直筆のメモにはそんな言葉が残されていた。

 ―――全身を刻まれ拷問死した両親の遺体と共に。

 

 この凶行に及んだ男が、殺人ゲームを主宰する組織のスタッフとして招かれたのは幸か不幸か。

 少なくとも男にとって幸福であったのは間違いない。

 なにせ自分を肯定し居場所を与え、殺人鬼(ホラースター)と認めてくれる場だったのだから。

 

 例え異世界に流れ着いて、ヤクザたちの鉄砲玉となってもやる事は変わらない。

 あらゆる者に恐怖と絶望を与え無慈悲に殺して誰かの記憶に刻まれる。

 悍ましき怪物としての役割(ロール)を果たすだけだった。

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

「―――大体分かった」

 

 迫る一撃を前にして、ぽつりと零れたのはそんな言葉。

 

 

《飛燕》*15返し技格闘攻撃を回避する。

その後、攻撃してきた相手に2アクション分の格闘攻撃を行う。

《会心》*16自動効果格闘攻撃のクリティカル率が上昇する。

 

 

 同時に、ホラースターの視界から()()()姿()()()()()()()

 少なくとも、彼にはそうとしか表現のしようがない。

 目標を見失ったチェーンソーが空しく地面へと突き刺さる。

 

 そして視界の外、あるいは意識の隙間から襲い掛かかったのは上下への切り返しだ。

 一息の間に2度の斬撃を行こなう“燕返し”と呼ばれる技法。

 強靭な手首と握力、類まれな身体操作技能に支えられた業。

 回避は勿論の事、防御どころか認識する事すら不可能。

 

 一の太刀が胸を裂き、二の太刀がホッケーマスクを捉える。

 バキリと音を立てて砕けた仮面の下、その素顔が覗く。

 そこにあったのは怪我か何かで二度と見れないような容貌―――などではなく。

 

「……なんだ、意外と普通のツラだなお前」

 

 ごくごく普通の、どこにでもいそうな、ありきたりな青年の顔だった。

 

「ああ……ああ!」

 

「どうしたよ、素顔見られた程度で。

 恐怖俳優(ホラースター)の名が泣くぞ、なあ」

 

 喘ぐような悲鳴と共に、()()()()()()()()退()()()

 有利なのは依然相手でそれは変わりない。だが、明らかに狼狽えている。

 本当の顔を見られ、己のコンプレックスを指摘されたから……否。

 仮にそうだとすれば怒り狂っている筈だろう。

 

 

 

 ―――答えは宗吾の表情にあった。

 

 

 

「笑え、嗤うんだよ……こんな風によぉっ!! 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 画面の向こうの殺人鬼たち(ホラースター)が可愛く思えるほどの表情。

 決して人間がしていいような、許されるような顔ではない。

 

 自らの思い描く画面の向こうの理想が、目の前の現実に打ち砕かれた。

 その事実が彼の根幹(アイデンティティ)を著しく揺るがせてしまったのだ。

 思考が空白化する、狭窄化する―――()()()()()()()()

 

 

 ――― 修羅に入る(ニヤリ状態)―――

 

 

 精神的な高揚による潜在能力の完全発揮。

 先程の攻撃で*17その状態に突入した宗吾は刀を担ぐようにして背に回す。

 更には切っ先を指で摘まみ、力を溜めるようにした独特の構えを取る。

 

 明らかな必殺の意志―――次で勝負を終わらせようとしているのは明白で。

 それを察したホラースターも全身の筋肉を膨れ上がらせながら構えた。

 ここに、最後の激突が始まる。

 

 

「うああああああああああああああっ!!!!!!」

 

「――――――――――」

 

 咆哮―――自分の勇気を鼓舞させるようにして突撃するホラースター。

 静寂―――自らは微動だにせず致命の刃を研ぎ澄ませる八瀬宗吾。

 

 ―――先手を取ったのは殺人鬼。

 

 

《マイティブロー》*18格闘攻撃敵単体にクリティカル率50%の万能属性打撃型ダメージ。

攻撃成功時、連動効果が発動。

「敵ランダムに10回、万能属性打撃型ダメージ」

このスキルは反撃効果の発動を無視する。

 

 

 文字通り命を、魂を削る勢いで繰り出されるのは万能物理攻撃。

 ホラースターの奥の手にして必殺。

 如何なる獲物であれ反撃を許さず殺害する理不尽の権化。

 怪物に憧れた男の人生そのものの証明ともいえるスキルであり―――。

 

 

 

 

 

 

「避けられねーのがお前の欠点だ」

 

 

 

 

《三挫き》*19割込行動心(精神)相性。相手は魔法回避を行う。

失敗すると宣言した行動を止めてしまう。

次の手番まで全ての判定にペナルティを受ける。

 

 

 ()()()()()()()()()

 一瞬で体をバラバラにされたかのような激痛が走る。

 全身が強張り、深海の底に放り込まれたかのように体が重くなった。

 分からない、わからない、ナニモワカラナイ。

 ただホラースターは、自分が死に体にされた事だけは理解した。

 

 

 ―――二階堂平法秘技「心の一方」

 

 

 現在では失伝したとされる剣術の奥義が一つ。

 実際に斬られたと相手に錯覚させるほどの剣気を以て初めて可能となる技。

 “使える”程度には、宗吾はこれを修めていた。

 もし相手に回避する能力、もしくは精神系への耐性があれば話は異なっていただろう。

 

 

 そしてここから繋ぐのは自身が知るとある剣士の太刀筋、その劣化にして模倣。

 かつて自分が目撃した―――()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

《フィジカル・エンハンス》*20補助スキル剣・ガン相性の習得済みスキルを指定する。

「属性攻撃」に対応する相性へと変更。

発動済み⇒電撃相性へと変更。

《大地鳴動》*21補助スキル次に行う格闘攻撃の威力に、使用者のレベルの2倍を加える。

クリティカル時の威力を3倍に変更する。

《急所》*22割込行動肉体の知識を学び、急所を見つける。

急所を狙った場合はダメージ2倍、外した場合はクリティカルしない。

《煌天の会心》*23即時効果格闘攻撃の成功をクリティカルに変更する。

《根性》*24即時効果レベル分のHPとMPを回復する。

「紫電のネックレス」*25アクセサリー《電撃ハイブースタ》の効果。

電撃属性の攻撃を1.5倍する。

 

 

 気力(ソウル)を振り絞りボロボロの身体から一振り分のエネルギーを確保。

 愛剣に込められた悪魔の力を開放、背に回した刀身から青白い放電(スパーク)が奔る。

 固定する両手から肉の焼け焦げる臭いと激痛―――無視する。

 

 

「――――やっちまえサムライ!!!!」

 

 

―――「柔軟性・消毒スプレー」*26―――

 

 

 合わせて放り込まれたのは肉体強度を下げる支援アイテム。

 観客では終われない軍人たちの意地。

 それを合図にして、必殺は放たれる。

 

 

 

「秘剣・兜割りが崩し―――“電磁抜刀・威(レールガン・おどし)”」

 

 

 

《電磁抜刀・威》*27格闘攻撃電撃相性に変更。防御不能、防具無視。

複数のスキルを組み合わせた崩し技(コンボ)

行使するまでの過程を含めて一つの技とする。

 

 

 それは元々対マシン・パワードスーツを想定して構築された剣。

 本来なら《雲耀の剣》を電撃相性に変更し威力を増幅、急所に叩き込むというもの。

 言葉にするだけならシンプル極まりないコンボである。

 

 ただ、これには複数のスキルを組み合わせ確実に当てる状況を作る必要がある。

 成立させる為の技量、そこに至る過程を構築する戦況把握能力とやり遂げる為の精神力。

 何かが欠けても成り立たない―――ひどく歪な魔剣擬き。

 

 

 レベルは上がっても、まだ宗吾は完全にものにしたとは言えなかった。 

 

 

 遅れて響く轟音、そして爆風と舞い上がる土煙。

 降り注ぐアスファルトと地面の混合物。

 やがて見守っていたブラボーチームの視界が晴れた時、そこにあったのは―――。

 

「……マジかよ」

 

 大きく斬り抉られた駐車場。帯電する大気とオゾン臭。

 そして剣を振り下ろした姿勢のまま動かない傷だらけの剣鬼。

 それだけだ。

 

 ホラースターは、文字通りこの世から姿を消していた。

 架空の存在に身を落としたのなら、これが当然の結末とでも言うかのように。

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 斯くして病院を守る戦いは幕を閉じた。

 ヤクザたちの襲撃を防ぎ、アストラル・シンドローム患者を守り抜く事に成功。

 人質にされていた者たちも殆どが無事確保された。

 

 だがまだ終わりではない。

 アストラル・シンドロームの大本を潰さない限り同じような事は起きる。

 ヤクザたちも同様だ、人間同士で争っていられるにも限界はある。

 近い未来、決着をつける時が来るのは間違いない。

 

 だからこそ、今はそれぞれが出来る最善を尽くすべきなのだろう。

 

 

「あのー! 確かに駐車場と車ぶっ壊し過ぎたのは俺にも責任あるけど!! 

 クソサイコな奴らから守り抜いたんだから結果オーライにならない!? 

 結構ボロボロだから穴埋めるだけでもしんどい!!」

 

「特撮の撮影とかアスファルトの劣化で誤魔化すのにも限界あるって言ってたでしょ。

 弁償はいいって言われたけど、それくらいしときなさいよ。

 あんたなら数時間あればやれるって。私はリコリコでコーヒー飲んで待ってるから」

 

「まぁ頑張りなサムライ野郎。

 貰いもんだがほれ、この菓子でもやるよ。

 終わったら一杯奢るってウチのリーダーも言ってたぜ」

 

「ちくしょう頑張る!!」

 

 夕暮れのブルーシートで囲われた駐車場で、そんな声が響くのであった。

 

 

 

*1
※真Ⅴ 敵単体に小〜大威力の物理属性攻撃。自身の残りHPが多いほど威力が上昇する

*2
※TRPG真Ⅲ 物理攻撃を受けた際、50%の確率で反撃として通常攻撃を1回行こなう。そのダメージは2倍になる。

*3
※TRPG覚醒篇

*4
無属性

*5
※TRPG基本システム&覚醒篇改変

*6
《武器強化》及び熟練度による修正済み

*7
※P5R 3ターンの間、敵全体の攻撃力を低下させる

*8
※デビルサバイバー2

*9
※P4G

*10
※真Ⅳ

*11
※真Ⅳ

*12
※真Ⅴ 敵単体に特大威力の物理属性攻撃。クリティカル時、威力が上昇する

*13
※NINE

*14
※真ⅣF パートナーによるサポート。直接戦闘には加わらない。

*15
※TRPG200X

*16
※TRPG200X

*17
ニヤリの発生条件「クリティカルをヒットさせる」

*18
※D2劣化

*19
※TRPG誕生篇

*20
※TRPG200X

*21
※TRPG200X

*22
※TRPG誕生篇

*23
※TRPG200X

*24
※TRPG200X

*25
※P5R

*26
※P5R 3ターンの間、敵全体の防御力を低下させる

*27
※TRPG誕生篇 《兜割り》




◎登場人物紹介
・八瀬 宗吾 <剣士> <仙術使い> <サクセサー> LV55
メガテン世界で魔剣理論語りだした変なやつ。
無敵の剣なんてある筈がないが、そこへ近づこうと走り続ける事が大事だと思っている。
ちなみに今回使ったコンボは不完全。前提となる技を幾つか習得出来ていない。
愛剣に悪魔を合体させたので新たなスキルツリーが解禁された。
自分で作った穴を埋めた後は〈最後の大隊〉のメンバーと飲み明かした。


・若槻美野里 <サイコメトラー><超能力者> <ガンスリンガー> LV51
四騎士絶対ぶっ殺すウーマン。こいつら絡みだと凄まじい底力を発揮する。
屍鬼と悪霊以外の悪魔も使役出来るようになった。
ついでに邪教の館と業魔殿の反復横跳び地獄を知る事となる。
元居た世界では外から来た生徒だったのであまり馴染めていなかった(と思っている)
“先生”とはあまり絡んだ事は無く、遠目で何度か見た程度。
何故か寂しくなったので途中で飲み会に参加した。千束は爆笑していた。


・ホラースター&ウィドウ
ヤクザに拾われた漂流者。
元居た世界では殺人ゲームのスタッフとして活躍していた。
似たような連中もこの周回に流されている可能性がある。


・最後の大隊
病院を警護していたチーム。
終わった後は宗吾と打ち上げを行う。
美野里が途中参加した時はちゃんと2人きりになるよう距離を取った。


・tips “修羅に入る”
度々地の文で使っていた《ニヤリ》の隠語。
これ以外にももう1つあるらしいが……?

イメージは悪鬼スマイル。


―――――――――

これにて病院防衛戦は終了。
次は昔の話でもやろうかなと考えています。


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