スーパーロボット大戦 code-UR   作:そよ風ミキサー

11 / 11
お久しぶりです。
時を越えてをBGMにしながらせっせこ書き溜めて投稿と相成りました。
OG2編のさきっちょ部分ですが突入です。

文字数:約8000文字


第11話

「4体のアンノウン……か」

 

 此処はスペースノア級参番艦クロガネの一室。クロガネ隊の隊長を務めるエルザムは自室のディスプレイを使ってDC本部から送られてきたデータを閲覧していた。

 内容は、ここ最近になって地球の各地へ現れたエアロゲイターの残党と目されている4体の機動兵器達の情報である。 

 

 地球のオゾン層近くを飛び続ける巨大な怪鳥の如き機動兵器 AGX16“ハミングバード”

 

 アフリカ大陸北部のサハラ砂漠を主な活動範囲とする超大型の四肢動物――後に戦車の様な形状への変形が確認された機動兵器 AGX17“スフィンクス”

 

 太平洋の海底を泳ぎ回っている謎の海洋生物型機動兵器 AGX18“ノーティラス”

 

 そして、地球に降下してからはただ一度たりとも発見されず、ホワイトスターから飛び出した際に警備艦隊が記録した映像のみで存在が確認されている人型機動兵器 AGX19“ゴースト”

 

 いずれも各エリア内で極めて低い頻度ではあるが、その姿をそのエリアの警備を担当している機動部隊から確認されている。しかし発見したとしてもすぐに反応がロストしてしまい、今日まで4体の捕獲・撃破にまで至っていないのが現状だ。

 

 業を煮やした連邦軍上層部がDCへ指示を通達、そしてエルザム率いるクロガネ隊へ4体の捜索及び捕獲・破壊の任務が下ったのだ。

 元々クロガネ隊は別任務で地球圏内で活動していたのだが、その活動エリア内に今回の任務の内一体の活動範囲が重なった為、兼務する事となったのである。

 元々受けていた任務とは、L5戦役の最終決戦の最中に行方不明となったUR-1、そしてパイロットの回収であった。

 

 あの最終決戦終盤、エアロゲイターの首魁レビ・トーラーが駆る機動兵器、ジュデッカと戦いを繰り広げた後に、2機揃ってもみ合う様にして地球の大気圏へと燃えながら落ちて行ったのを、エルザムは見ていた。

 己の無力感をエルザムは痛感した。UR-1の介入が無ければホワイトスターへの突入の際に犠牲を被る可能性が高かったし、その後のエアロゲイターの幹部たちとの連戦、ホワイトスター内部でのイングラム・プリスケンとの戦闘の後に待ち受けていたジュデッカとの決戦でも壊滅に憂き目に遭っていただろう。

 その最大の功労者であるUR-1パイロットのアケミツ・サダは、機体と共に敵の首魁と相打ちとなり現在もMissing in Action、通称MIA(戦闘中行方不明)判定となっている。しかし大気圏突入後時のジュデッカの爆発の後にUR-1の識別信号も消えた為、あの大気圏への入射角の悪さも相まって生存は絶望的だ。

 

 部隊内では今回のアケミツのMIA判定については大分堪えていた。

 アケミツの人柄がクロガネ隊の隊員達に好かれていた事が大きかったのだろう。パイロットとして高い腕前を持っていても驕らず、職務に真面目に従事しつつ部隊内の人間との協調にも気を配ってくれていたのがエルザムを含め隊内で好感を持たれたのだ。

 クロガネ隊だけではない。あの時一緒に行動を共にしていたハガネ、ヒリュウ改の両部隊の隊員達も最終的にはアケミツとUR-1に全てを任せてしまう形となってしまった事もあり、一部の隊員達は今でもショックを受けている。

 あれから数か月の月日が経過し、皆持ち直して職務に従事しているが、それでもアケミツの件を引き摺っている。エルザムは早い内に気持ちを切り替えたが、あれほどの腕前の男を失った事の惜しさは今でも蘇る。大義の為ならば作戦遂行の為に私情を差し挟まないつもりではあるが、あの時無理やりにでも引き留め、残存戦力でかかればこの様な結果にはならなかったのではないかと今でも思う時があった。

 アケミツを紹介してくれたDC総帥ビアン・ゾルダークへも直接深謝した。ビアン総帥も彼が行方不明になった事について思う所はある様だが、エルザム達に非は無いと諭している。

 

 そして現在、DC本部を後にしてクロガネ隊は太平洋の中をクロガネの潜航機能を駆使して進んでいる。

 大気圏に落ちて行ったUR-1は機体の信号こそ消失したが、UR-1が地球に落下した時間帯と当時地球へ空から飛来した物体の時間帯とを合わせて計測したところ、太平洋のある海溝付近へ落ちているであろう事が大よそ確定した。

 

 そこで先の4体のアンノウンの内、AGX18“ノーティラス”が太平洋にいるのでそれの捜索も行わなければならないのだが、エルザムはある可能性を危惧している。

 

(どうも奴の動きが気になる。……まさかUR-1を狙っているとでもいうのか?)

 

 クロガネ隊の行き先は太平洋の北西部、マリアナ諸島を目指しているのだが、彼のアンノウンが現状最後に確認された場所と言うのがクロガネ隊が向かう先と同じマリアナ諸島なのだ。

 偶然なのか、それとも意図したものなのか。現在アンノウンがエアロゲイターに所属していると目されているため、その組織の行動パターンと照らし合わせるとアンノウンの狙いが海底に沈んでいるとされているUR-1なのではないのか、と言う可能性が挙がっている。

 実際、エアロゲイターの戦力の中には地球の機動兵器、パイロットを何らかの方法で攫い、“改造・加工”を行いこちらへ繰り出してきている。その中には、エルザムの嘗て所属していた特殊戦技教導隊隊長も含まれている。あの時の怒り、屈辱は今でも忘れてはいない。

 

 UR-1はホワイトスター攻略の最中、突如異常な戦闘力を発揮しエアロゲイターの部隊のこと如くを薙ぎ払っている。

 その件については戦後、地球連邦軍がその件についてUR-1の設計開発を行ったテスラ・ライヒ研究所へ追及が行われた。

 あの急激な戦闘力増加の現象については、当初発見したUR-1に残されていた動力炉の構造を基に、新しい理論を導入して開発した動力システムのリミッターを解除した結果起きた一時的なものだとテスラ・ライヒ研究所現所長ジョナサン・カザハラが回答していた。

 今となってはUR-1の資料についてはテスラ研に保管されているもののみしか現存せず、その当機が行方不明となっている為確認のしようがない。

 

 だが、単機でホワイトスターを半壊近くまで追い込んだ事はあの戦場にいた誰もが知っている。

 例え海底に没し、機能を停止していたとしても、UR-1をエアロゲイターの手に渡らせてしまう事は恐るべき結果を生み出す可能性がある事は想像に難くない。

 それに短い間ではあったが、ともに戦場を戦った仲間を辱めるような所業は、決して許してはならないのだ。

 

 エルザムは心に燻る可能性を胸の内にしまい込み、自室を出てクロガネのブリッジへと向かった。

 

 

 

 

 ブリッジのガラス面の先に映るものは、光の射さない暗闇が広がる深海ばかり。現在クロガネは深海3000を維持しつつ深い海の中を進んでいる。

 ブリッジへやって来たエルザムは、自分の代わりに指揮を執っていた副長へ労いの言葉をかけた。

 

「御苦労副長、状況に何か変化はあったか?」

 

「は、今の所怪しい機影は確認できていません。稀に深海魚がブリッジから見えるくらいでしょうかね。まぁ静かな物です」

 

「そう都合よく見つかりはしないか。……しかし、深海魚か……ふむ」

 

 副長はどこかとぼけたような答えをエルザムに返すが、エルザムは気を悪くするどころか顎に手を添えて小さく笑い返した。

 この副長――本名クルト・ビットナーという男はエルザムもそれなりに付き合いは長い。クロガネ以前に部隊を指揮していた戦艦の頃から艦長、副長の関係であり、エルザムが機動兵器を駆って戦場へ出る場合は副長が代理として戦艦の指揮を執っていた。

 副長というこの男、別に不真面目と言うわけでは無く、エルザムと軽口を叩き合いはするが場の雰囲気を和ませたり機転を利かせて部隊全体のサポートを行っていたりと、日本の諺で言う縁の下の力持ちのような存在でクロガネ隊になくてはならない存在である。

 

「もしや、献立に組み込まれるおつもりですか?」

 

「幸いな事に、今このクロガネには深海探査艇を載せている。捜査ついでに深海魚が“多少”引っかかったとしても、想定の範囲内だろう」

 

 しれっとエルザムも副長の話に同調するものだから、ブリッジ内のクルー達から笑いが漏れた。

 エルザム・V・ブランシュタインと言う男は、類稀なる機動兵器の操縦技術や指揮能力、他にもあらゆる面で突出した才能を発揮する事からDC内でも、ひいては連邦軍内で見ても優秀な軍人として知られているが、そんな彼には有名な特技があった。それは料理だ。

 元々は美食家から長じたものらしいのだが、今ではプロの料理人にも匹敵する程の腕前にまで上達し、趣味の一環として部隊の皆に振る舞う事で結果として部隊内の結束は固くなったと言う。

 いつの世も、兵站の優良な軍隊の士気は高い。

 

 

 

 ひとしきり笑いがこだました後、副長が真剣な表情を作り直した。

 

「間もなくマリアナ諸島近海へ到着しますが……アンノウンの方は見つかっておりませんね」

 

「奴らは此方への接触や敵対行動については消極的と報告を受けているが、遭遇してみない事には何とも分からんな」

 

 だからこそ不気味ではある、とエルザムは眉間に皺を寄せる。

 4体のアンノウンは連邦軍・DCの両部隊と遭遇した際、基本的に一目散で逃げ出し衛星からの追跡をも撒いてロストして見せる逃げ足の速さを持つと言われている。

 戦闘らしい戦闘も確認できず、此方へ仕掛けてきたとしても此方のレーダーを狂わせたり、トリモチのような粘着性の物体を弾丸の様に飛ばして動きを止めたりと、機械関係に多少の被害はあるが人的被害については死者は確認されていない。

 

 今までのエアロゲイターの機動兵器達の行動パターンとは明らかに違うこの4体に困惑するが、あのハガネの部隊も捕獲任務に駆り出されたのにまんまと逃げられた事からかなりの性能を有している事は確かだろう。ホワイトスターから出てきた事実と、あの4体が此方に攻撃をしてこない保証がないので警戒度合いが下がる事はない。むしろ性能の高さが加味されて危険性を唱える者が出ていた。

 故にこの近海にいるとされているアンノウンの動きが気になるのだが、そんな事を考えているエルザムの耳にオペレーターから報告があった。

 

「ソナーに感あり! 艦左舷方向に何かがいます! 距離6000!」

 

「アンノウンか?」

 

 副長が眼を鋭くさせてオペレーターに確認を取ると、オペレーターがコンソールを操作し間もなく回答が出た。

 

「データー照合……キラーホエール級が3隻! しかしどこの部隊にも所属されておりません!」

 

「未所属の艦? しかもキラーホエールとは……少佐」

 

「我がDCで開発された戦闘潜水艦だが、既に連邦軍内でも普及されている。身内を疑いたくはないが……不明艦へコンタクトを取れ。所属を質させてもらう」

 

 エルザムが副長経由でオペレーターへキラーホエール達へ通信を試みた所、程なくして返答は返って来た。それも悪い形で。

 

「キラーホエールから注水音を確認! この音は……魚雷発射管のものです!」

 

 ブリッジ内に緊張が走る。

 エルザムがクルーたちへ指示を飛ばした。

 

「総員、第1種戦闘配置! 機関、第1戦速! Eフィールドを左舷と前方に集中して展開、同時に艦体を左へ旋回させろ! 受け止めつつ此方も応戦する!」

 

 クロガネの艦体にエネルギーで構築された障壁が展開され、艦体が今の位置から90度左へ回りだした。

 

「魚雷発射確認、雷跡9!……来ます!」

 

 間もなくキラーホエール級たちから魚雷が発射され、クロガネへ殺到する。しかし、艦体へ直撃するはずだったものは全てクロガネのフィールドに阻まれ、爆風すら遮られてしまった。

 

「被害報告!」

 

「フィールド消耗率2パーセント! 艦体への損傷は皆無です!」

 

「……やれやれ、昨今の改修作業が功を奏しましたね」

 

「驚くべきはDCとテスラ研の開発スタッフといったところか。ビアン総帥たちに感謝せねば」

 

 “今のクロガネ”に搭載されているEフィールドの防御力ならば、キラーホエール級の魚雷が多数直撃したとしても問題なく防ぎきれる。そう確信したからこその指示だったが上手く言った様でエルザムと副長が今のクロガネの堅牢ぶりを改めて確認する。

 L5戦役後、クロガネを含めたスペースノア級、およびヒリュウ改はDCとテスラ・ライヒ研究所の共同のもと大規模な改修作業が行われていた。

 外見や武装などに変更はないのだが、艦体に用いられている装甲材や動力炉の見直し、使用されている兵器や設備類その他が更新された結果、竣工時に比べると中身が別物となったのだ。

 そのおかげで、部隊を出せない深海でも多数のキラーホエール級と相手取れるようになった事は幸いと言えよう。

 

「再びソナーに感あり! 未所属のキラーホエール級が艦前方に7隻!」

 

「何! 新手だと?」

 

「この近海にキラーホエール級が10隻……流石にこれはきな臭いですな」

 

 オペレーターからの増援の報告にエルザムと副長は眉をしかめた。

 此処まであからさまな艦隊の展開に、エルザムは彼らの思惑を嗅ぎ取った。

 そうであれば、あまり悠長にはしていられない様だ。

 

 反撃にと魚雷発射の指示を出そうとしたその時、オペレーターから増援の報告が出た。

 だが、オペレーターの様子が可笑しい。

 

「新たな反応をソナーが確認! ……ですが、これは!?」

 

「どうした? また増援か?」

 

 キラーホエールがこれ以上増えた所でクロガネならばやり様がある事はオペレーターも知っている。

 そのオペレーターが明らかに動揺しているのだ。その意味する所を薄らと感じつつも改めて副長が問い返した。

 

「いいえ、これは戦艦の動きじゃありません! データー照合…………か、確認出来ました! 識別コード、AGX18ノーティラスッ!!」

 

 艦橋内の緊張の度合いが一気に上がった。

 クロガネ隊に下された任務の一つである標的が、遭遇率が極めて少ないと言われていた存在が自ら姿を現したのだ。

 

「このタイミングだと……! 奴は何処にいる?」

 

「み、未所属のキラーホエール級と戦闘に入りました!」

 

「何だと!?」

 

 コードネーム“ノーティラス”を含め、4体のアンノウンは今まで戦闘らしい行為を確認された事が無かった。

 それが今になって自発的に攻撃を行って来たのは何故か。副長がオペレーターに再度訊く。

 

「確かなのか?」

 

「はい、間違いありません。……信じられないのですが、記録にあった通り700ノット近くの速度で水中を移動しています」

 

「……報告が偽りでは無い事は分かってはいるのだが、目の前で見たのに信じられんな。速度に換算したら音速の領域だぞ……」

 

 常識外の数字が出てきた事に流石に副長が困惑気味に唸る。エルザムもその数字を耳にして目を見開いている。

 ノーティラスの大きさは大型の特機クラスのサイズだと確認されている。

 そんな巨体が水中を700ノットの速度で泳ぎ回っているのだとしたら、それだけで恐るべき質量兵器となり得る。全ての報告が正しいとするのならば、ノーティラスの強度と速度でぶつかれば潜水艦なぞ水中でスクラップと化すのは間違いないだろう。

 深海をそんな速度で移動して機体の強度が保つのだろうか、という地球人類の知る物理法則に則った疑問を鼻で笑うような現実を目のあたりにしているクロガネを他所に、事態はますます加速していく。

 

「キラーホエール級10隻……全て撃沈されました」

 

「1分と経たずにか。10隻だけとは言え、水中での機動力と言い油断は出来ませんね」

 

「ああ、だが奴まで現れたとなれば、UR-1がこの近辺に沈んでいる可能性は高まったな」

 

「……一戦、交えますか?」

 

「向こうの態度次第だが、まだ此方から手を出すなよ。だがEフィールドをいつでも展開できるようにしておけ」

 

 何が原因でノーティラスがキラーホエール級に攻撃を仕掛けたのかは不明であるが、無暗に戦端を開くまねだけは避ける様にとクルーたちへ釘をさすエルザムは、ノーティラスがどのような行動に出るのか細心の注意を払っていた。

 

「ノーティラス、速度を落とさずそのまま離脱!」

 

 そうこうしている内にノーティラスがこの海域から逃げ出していった。

 副長が行き先の追跡は可能かと訊ねてみるが、あまりの速度で探知外へロストしてしまった。

 

「人工衛星とリンクして再度追跡を試みろ。あと、本部へ先程のノーティラスの情報を送信しておくように。……しかし、此方の行先とは真逆の方角へ行ってしまいましたね」

 

 てっきりUR-1が沈んでいると目されているマリアナ諸島へ向かわれるのではと危惧していたのだが、予想が外れてしまった事について安堵すべきか判断のつかない副長は、微妙な表情でエルザムを見た。

 

「いや、むしろ捜索途中で奴と出くわした時の事を考えればこれで良かったのかもしれん。我々はまずUR-1の捜索を優先しよう。クロガネの進路はこのままマリアナ諸島を目指す」

 

 もしノーティラスと深海で戦闘を行う場合、機動兵器部隊を展開できないクロガネでは改修を施したとはいえ容易には行かないだろう。ノーティラスの戦闘力は未だ未知数であり、片手間で対処していい相手ではないのだ。

 エルザムは己に課せられた指令の難しさを改めて確認した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 其処はインドネシア近辺の海洋に存在するジャワ海溝の中でも限りなく最深部に近い深度7000という海の谷底。

 息を殺すように動きを止め、あらゆる索敵の目を掻い潜る、今現在地球圏の軍関係者たちが血眼で探し回っている4体のアンノウン、エアロゲイターの残党と目されている機動兵器の1体、AGX18“ノーティラス”と呼ばれる存在がそこに音も立てずに鎮座していた。 

 

 その姿は海洋生物のオウムガイを思わせる、機械でありながら有機的な形状をしていた。

 直径およそ80m規模の巻貝のような暗緑色の外殻は限りなく球体に近い形状をしており、ボディの下部――オウムガイで言う所の外殻の出口からは大小さまざまな機械で構成された触手が海底を這うようにして伸ばされていた。

 

 

 

 

「――やっぱりあいつら“ファーザー”を狙っていたよ。どーも“ファーザー”の力が目当てらしいね」

 

 

 

「――“ファーザー”はどうしたって? ご安心を、もう見つけたよ。今は海底から更に奥の地盤近くに埋めて擬態をしているから、まず見つからないよ」

 

 

 

「――皆してそう怒るなよぉ、下手に今の“ファーザー”を陸に揚げるワケにいかないんだからしょうがないじゃんか」

 

 

 

「――それがさ、休眠状態に入っちゃっているみたいなんだ。こっちからの呼びかけに全然答えてくれないんだよ」

 

 

 

「――暴走の危険性は殆どないと思う。そこら辺はボクの得意分野だからね、念を入れて確認したし、今も子機を側において様子を見させている……いや、本当に良かったよ。本当に」

 

 

 

「――それともう一つ、新しい情報だ。さっきボクが沈めておいた“ファーザー”を探していた奴らだけどね、出所が掴めたよ」

 

 

 

「――あの潜水艦の連中、乗組員が全員アンドロイドだったんだよ。今の地球でアンドロイドを作る技術なんて地球連邦やDCでも無い筈なのにね。怪しいとは思わない? だからちょいと特性のウィルスを流し込んでハッキングをね、連中のおつむの中を覗かせてもらったのさ。上手い事プロテクトが掛かっていた様だけど、ボクの敵じゃあないね」

 

 

 

「――今からポイントも伝えておくよ、連中から引っこ抜いたデータもセットで送信しておこう。――――場所はアフリカ大陸にある人口冬眠施設アースクレイドル。アンドロイドたちに命令を与えている奴らは此処に居るらしい。……其処から先は“シャドー”の得意分野だろ? ちょっと調べてみてくれよ」

 

 

 

 全て無線通信で行われた発言だった。

 深海の奥底から、はるか遠くに離れた仲間達へとノーティラス――否、“ウォルター”は報告を終えると通信を切る。

 ホワイトスターから飛び出し地球の海の底で活動し続けた中で入手したデータを、ウォルターは自身に設けられた高度な演算処理能力で以て素早く纏めていた。

 

(此方を補足している勢力は未だなし。太平洋中にばら撒いた“アレ”も徐々に効果が出てきているな……よーしよし。 ……ファーザーの所に行って周りに気取られるのは面白くないなぁ、多分クロガネがあそこら辺調べ回ってる頃だろうし)

 

 自分達の造物主が世話になっていたDCやクロガネ隊には多少の手助けこそすれ、懇意にする気も素性を明かす気も今の所は無い。現在も地球圏の勢力から追われる身となっているが、そちらは予定通りなので問題ではない。

 何かと造物主が気に掛けていたビアン・ゾルダーク達については自分達のリーダーが対応する手はずなので、其処はすべて任せっきりになってしまっているが、まぁ大丈夫であろうとそれほど心配はしていない。

 

 それよりも気にするべきは、先ほど仲間達に伝えた造物主を狙う輩達だ。

 今後連邦軍やDC内、他にも造物主の力を狙う者達が増えるのであろうが、そうはいかない。

 造物主を脅かす者あらば、それらを払い除けるのが自分達の役目なのだから。

 

 

 そうして自分に課せられた現在の役目とその進捗状況を確認していると、本日の予定が全て完了している事に気が付いた。

 

(……とりあえず、ネットサーフィンしながらアニメでも見て暇を潰そ。溜まってるのが沢山あるし)

 

 造物主と同様に高度な演算機能を有し、処理容量に空きが出来た――すなわち暇を弄び始めてきたウォルターは、密かにネットワーク空間内からハッキングでちょろまかしてきたアニメの閲覧とネット内での情報収集に勤しむ事にした。




エルザム視点からのスタートになり、皆さんから怒られない事を祈るばかり(フラットフィッシュのコスプレしながら

クロガネ隊副長の設定は独自です。なんか女っ気少なめなショーン副長みたいな感じになりました。
原作で食通さんになったエルザム兄さん率いるクロガネ隊みたいなアクの強そうな部隊で副長やっているのなら、心臓に毛の1~2本でも生えている様な人なんじゃないのかなと思ってこんな人柄になりました。
名前はありません。トップをねらえ! の副長みたいなノリです。

ところで書きながら思っていたのですが、スペースノア級の耐圧深度はどれくらいなんでしょうね?
原作ではOG1のストーリー中に深度3000辺りで襲撃を受けて圧壊の危険にさらされていた為、その位かもう少し深めなのだろうかとあたりをつけて見ました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。