スーパーロボット大戦 code-UR   作:そよ風ミキサー

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前書き

本編突入、なのですが色々と変わってきてます。

本文文字数:17859文字


第5話

 DC設立が大々的に公表されてから、世界は大きく動き始めた。

 

 何せ、その際異星人の存在が地球連邦政府から直々に公表され、しかもそれらがこちらに敵対姿勢を示している事を告げられたのだ。テクノロジーの進んだ昨今の地球でもSFの産物とみなされていた存在が、突然いると言われれば戸惑いもしよう。

 当然、当初は異星人の存在に懐疑的だった者達も多々いた。しかし、政府の方から公式にヒリュウが冥王星で襲撃を受けた際に撮った映像を公開し、後に起こったとある事態によって、世論も異星人の存在を信じざるを得なくなった。

 

 

 異星人が保有する戦力と目されている無人機動兵器、地球側のコードネームAGX-01〝バグス”が、地球の軍事施設へ突如攻撃を開始したのだ。

 しかも1度や2度ではない、まるで期間を設けて順繰りに襲撃を仕掛けているようかのような一定の動きを見せていたのだ。それによって世界は異星文明の存在を知り、以前からその存在を知る者達は、ついに彼の異星人達が地球へ直接手を出し始めた事を悟った。

 

 だが、地球側はそれを指を咥えて待っているつもりは無かった。

 

 兼ねてより開発していた対異星人用の人型機動兵器であるPTを本格的に導入する事が決定したのだ。

 それに伴う世界初の人型機動兵器であるPTゲシュペンストの量産を想定とされた後継機、〝ゲシュペンストMk-Ⅱ”が開発され、軍への配備が始まった。

 

 しかし、軍に配備されたのはゲシュペンストだけではなかった。

 最新鋭の戦闘機、F-32シュヴェールトを開発した事で注目された民間企業のイスルギ重工が、EOTI機関の技術提供を受けてゲシュペンストとは違った別の機動兵器を開発する事に成功したのだ。

 その機体の名は〝リオン”。航空機の様なフォルムを持つ胴体に、ゲシュペンストよりも非人間的な細長い手足を取り付けた形状をしており、その最大の特徴はEOTを取り入れて発展した高効率反動推進装置、〝テスラドライブ”によって空を飛ぶ事が出来るのが大きな強みである。

 これらテスラドライブを搭載された機動兵器はAM(アーマードモジュール)と呼称され、全く新しい新機軸の兵器として軍が新たに採用した。

 

 航空戦力の重要性は古来より重く認識されているため、リオンの登場は軍部から喝采を上げて迎えられた。

 そして何よりも、その機体は生産コストがゲシュペンストよりも決定的に安く、整備性においてもリオンの方が勝っていた事が大きかったらしい。

 

 イスルギ重工が選ばれたのは先の戦闘機の件だけでなく、PTを開発しているマオ社をも上回る極めて高い生産力に着目しての選択らしい。

 ゲシュペンストと比較して生産コストが安くて製造が容易なリオンを作る土台としては理想的な企業と言う訳だ。

 

 だが、だからと言ってゲシュペンストを代表とするPTの存在が蔑ろにされたと言う訳ではない。

 ゲシュペンストは確かに生産する際のコスト的な面でこそリオンには劣るが、それを上回る剛性と柔性を持ち、人間の様な動きを可能とした高い汎用性を持っている。これは、今のリオンにないものである。 

 つまりは、一長一短なのだ。そこを互いの苦手な部分をカバーし合う事で、より幅広い戦術展開がPTとAMには期待されている。それ故、PTとAMには大きな優劣が今の所は存在しなかった。

 

 更に、ゲシュペンストは今後の展開も想定して、拡張性に優れた構造をしているため、ゆくゆくはテスラドライブを搭載しての飛行運用も既に検討され始めている。

 AMもそれに負けじとリオン以上の性能を持つ機体の制作に着手していた。

 

 少しずつではあるが、地球圏は外宇宙に対する力を着々と備えつつある。

 地球連邦軍だけではなく、宇宙を領域に持つスペースコロニーの防衛組織であるコロニー統合軍も足並みを揃えようとしている。

 

 地球圏は今、同じ意思の元に活動を開始している。

 

 それが本来辿る筈だった歴史の形を逸脱している事を知る者は、此処にはいない。

 

 

 

 これは、1つの存在によって有様を変えた地球が辿る、これから続く長い歴史の大いなる一歩であった。

 

 

 

 

 新西暦186年11月。

 場所はDCの本拠地があるアイドネウス島。

 

 周囲にはPTやAMを中心とした多くの兵器群が隊を組んで警護活動を行い、小さな侵入も許さない厳重な警戒態勢が敷かれていた。

 

 その中に、他の機体とは明らかに姿形の違うロボットが4機、フォーメーションを組んで湾の近くを警備していた。

 

 

 1体目は、白と青を主体としたトリコロコールカラーの軽装のPT。

 2体目は、青いカラーリングの重厚な機体だ。両の腕には箱状の装備が取り付けられており、何かが射出出来るようだ。

 3体目は、女性の様なボディラインのPTで、背部に数基のバインダー状のパーツが羽のように取り付けられている。

 4体目は、2体目の機体よりも濃い青のカラーリングを基調とした機体で、他の3体よりも一回り大きく、両肩に刃上のウィングを備えていた。

 

 彼らは、特殊な実験機を運用する為に結成されたSRXチームと呼ばれる部隊だ。

 現在彼らが搭乗している機体は、まさしくその特殊な実験機として開発されたPTである。

 

 〝SRX計画”

 チーム名にでもあるその計画の目的は、異星人戦を想定したPTをより対異星人戦闘に特化させた機体を生み出す為である。

 

 近距離と格闘戦を得意とし、更に戦闘機形態への変形も可能としたR-1。

 

 重厚な装甲を身に纏い、射撃戦に特化したR-2。

 

 どこか女性的なフォルムを持ち、特殊なシステムによる遠隔操作兵器を持った指揮官機のR-3

 

 上記の3機を上回る性能を持ち、更には自身を巨大な大砲へと変形させて強力な砲撃を放つ事が出来るR-GUN。

 

 その特異なコンセプトを基に生み出された機体の為か、それらの機体は警備部隊のロボット達の中でも特に浮いていた。

 

 そんな中、R-1が周辺に配備された機動兵器達を見渡すようにツインアイを設けた頭部を動かしていた。

 

 

「ほぁー……ゲシュペンストがこんなに沢山来てるのか。お! あそこを飛んでいるのはリオン?……いや、ガーリオンじゃねーか! イスルギの最新型かよ! ゲシュペンストも良いけど、あの戦闘機みたいな流線型のデザインもイカしてるなあ……。でも、あそこの部隊は何で全員機体が黒いんだ?」

 

 

 R-1のコックピット内で若い男のはしゃぐ声が響く。

 男の名前はリュウセイ・ダテ。R-1の専属パイロットを務めている若者だ。

 

 リュウセイは今遊園地を見渡す子供の様な心地だった。

 根っからのロボットヲタクとして仲間内から有名なリュウセイにとって、この場はまさしくロボットの博覧会の様な様相を呈していた。

 

 

「おいリュウセイ、よそ見をしていないで警備に集中しろ。いつエアロゲイターの無人兵器が来るか分からないんだぞ」

 

 

 リュウセイを窘める声が通信で入った。R-2からの通信だ。

 機内の通信を常時ONにしていたので、先ほどの声が聞こえたのだろう。

 端正な若者の声だった。口調からするに、任務に忠実な人柄が感じられる。

 

 

「硬い事言うなって。見た所連中の反応は無いし、これだけ厳重な警備だぜ? 仮に奴らが来たってイチコロだぜ」

 

「……お前には軍人としての自覚が足りなさ過ぎる。そういう奴ほど真っ先に死ぬのがオチだぞ」

 

「ライの言う通りよ。いくら此処の警備が厳重でも、万が一に備えるのが私たちの任務なんだからね」

 

 

 更に女性の声リュウセイへが追い打ちをかけた。

 声の主はR-3からだ。まるで出来の悪い弟を叱る姉の様な物言いに、リュウセイは肩を落とす。

 

 

「とほほ。皆してそう言うのね……此処にゃ俺の味方は何処にもいないのかよ」

 

「少なくとも、任務を怠るような輩の肩を持つ奴はこの場にはいないな」

 

 

 そこへ新たな声が止めを刺した。

 通信先はR-GUN。このSRXチームの教官を務める男がパイロットを務めている。

 

 

 流石に教官に対してまで軽口を叩けるわけではない様で、リュウセイも「う、分かったよ。気を付けますよったく」と不貞腐れつつも従っていた。

 

 

 リュウセイは軍に籍を置いているが、所属するに至るまでが特殊だった。

 元々は只の学生だったリュウセイは、バーニングPTというPTと同じ操縦方法で操作が出来る対戦ゲームの大会で、PTの操縦技術ととある技能の適性が見出され、軍から直接スカウトされたのだ。

 そもそも、バーニングPTの大会自体がそういった適性の高い人物を探すために軍が極秘に仕組んだ事だったのだ。

 誘いを受けたリュウセイは当初軍への所属に難色を示していたが、母の医療費を肩代わりしてくれる事を約束してくれたため、意を決して入隊する決心をして今に至る。決して正義感に駆られて今の職場にいるわけではない。母親想いの至って普通の感性を持つ小市民の一人であった。

 

 そういった背景と、少しおちゃらけた所のあったリュウセイの性格上、軍に入りはしたが従来の軍人の様に折り目正しい態度には今一つ遠かった。

 その為生真面目な性格のR-2のパイロットとは度々衝突し、チームの隊長を務めるR-3のパイロットや教官からも叱りと修正を受けつつ現在も精進の真っ最中である。母親の今後の健康が掛かっているのだから否応なくやる気を起こさなければならない。

 

 そんな中、リュウセイ達SRXチームにある任務が下されたのだ。

 それが此度のアイドネウス島の警備に参加する事だった。

 指示が下った当初は、自分達の様な実験機の運営部隊まで出張る必要があるのだろうかとリュウセイは首をかしげたが、いろんなロボット達が見れるのなら不満は無いと、現金な思考に頭を回して期待に胸を膨らませた。

 

 何故なら、その当日にその場所で、DCが誇る最新のテクノロジーを結集して作り上げた新型の御披露目式典が行われるというのだから。

 

 

 

 リュウセイ達が警備任務に就いてから暫くすると、ようやっと式典が始まったらしい。幾人もの科学者や政治家達が祝辞を述べると、一人の男性が演台に立った。

 リュウセイはR-1の機内に設けられたディスプレイのテレビ回線を起動し、こっそりとその映像を見てみると、テレビで見覚えのある男性が映っていた。

 

 強い意志の秘められた眼差しを持つ、青い髪の偉丈夫。DCの総裁を務める稀代の天才科学者ビアン・ゾルダークその人だった。恐らく現在世界で最も話題に挙げられている男である。

 

 リュウセイは、本来の警備任務を行う為にR-1に設けられたカメラ越しに映る映像を見ながら周囲の確認をしつつ、ディスプレイの片隅で密かに映しているビアンの演説を何となく聞いていた。

 DCが作られた理由から現在の地球の情勢、目下最大の対象となっている異星人とのファーストコンタクト、そしてこれからの活動について語られていく。

 

 

 宇宙の彼方から現れた謎の侵略者。

 それらに狙われ、未曽有の危機に陥った地球。

 

 まるでアニメの世界によくあるシチュエーション。そう思いながらも、リュウセイはそれが現実に起きた事だと既にその身を以て体験している。

 

 初めてエアロゲイターに遭遇したのは、バーニングPTの大会が終わった夕暮れ時。

 幼馴染の少女と一緒に帰路に着こうとしていたその時、奴らは現れた。

 

 日が沈み始めた紺色の空から降り立った白い昆虫の如き機械の群れ、それらが無慈悲に攻撃を行い燃えていく見慣れた街並み。非現実的な光景に放り出されたリュウセイが現実に意識を戻したのは、瓦礫に巻き込まれて傷ついた幼馴染の少女の姿をその目に収めたからだった。

 そこから先はまさしくドラマチックの一言に尽きた。目の前に迫りくるエアロゲイターの兵器を、幼馴染の少女の入る建物から意識を逸らさせるためにリュウセイは目に映るもの全てを利用してやり過ごそうとした。

 

 その時に見つけたのが、PTを搬送するための大型トレーラーだった。

 リュウセイは藁にも縋る気持ちでトレーラーに駆け寄ると、中には白いゲシュペンストが積まれたままで、軍人は誰もいない。

 軍人に頼んでどうにかしてもらう心算だったリュウセイはヤケになり、自らゲシュペンストへと乗り込んだのだ。自分が何とかしなければ幼馴染の少女が、クスハが殺される。そんな脅迫概念に迫られたが故の選択だった。

 

 そしてコックピットへ潜り込むと驚愕する。自分がプレイしているバーニングPTと全く同じ構造をしており、起動の仕方まで瓜二つだったのだ。

 渡りに船とばかりにリュウセイはゲシュペンストを起動し、機動兵器達を辛くも追い払った。だが、事はそれで済むような話ではなかった。

 

 軍の所有物を、あろう事か機密事項の兵器を無断で使用したのだ。それが判明した軍からすれば、ご協力感謝しますの一言で済ませられるような簡単な事ではなかった。

 後に軍に拘束され、このままいけば銃殺刑もあり得るとまで言われたリュウセイは「だったらそんな御大層なものを見張りも付けずに放置するな」と反論するも、軍は機密事項を盾に全く取り合ってくれなかった。

 このままでは世の理不尽さを呪いながら病弱な母を残して先立ちかねないと絶望しかけたリュウセイだったが、そこに待ったをかけたのが今のSRXチームの教官だった。

 そこで今回のバーニングPTの大会の本来の目的と、適性が見出されたリュウセイには元々声をかけるつもりだった事が告げられ、教官はリュウセイに二つの選択肢を突きつけた。

 

 

〝このまま軍に入れば先の罪は不問とする。入らなければ君にはそれなりの措置を取らせてもらう事となる”

 

〝前者を選ぶのならば、君の母親の治療費をこちらで負担しよう。いくら働き盛りの若い身とは言え、二十歳にも満たない身で親を養うのは辛かろう”

 

〝後者を選んだらどうなるかは、賢い君なら予想がつくのではないか? ……碌な事にはならないと思うがね”

 

 

 小市民でしかないリュウセイは、国の権力を突きつけられれば首を縦に振る事しか選択肢は残されていなかった。

 あの時の教官の顔は今でもリュウセイは覚えている。ありゃ詐欺師の顔だ。天使みたいに微笑みながら近づいて、悪魔みたいに貪りつくして踏み潰す奴の顔に違いねえとはリュウセイ談。

 今でこそある程度は気楽に話せる仲になったが、当時のリュウセイは教官に対して常に反骨心を剥き出しにしてはトラブルを起こす問題児扱いだった。

 

 

 まさか自分がアニメの主人公と同じようなシチュエーションに陥る事になるだなどと誰が予想出来ただろうか。過去の事を思い出すと、リュウセイは複雑そうに顔を歪めた。

 少なくとも、現実はゲーム程気楽に出来てはいない。それ位は此処に来るまでそれなりに知ったつもりではあった。

 

 そうやって過去の記憶をぼんやりと遡っていたリュウセイの耳に、人々のざわめく声が聞こえた。

 音の発信源はモニターの隅でビアンの演説を映していたウィンドウからだ。

 

 不思議に思ったリュウセイは音量を上げてその声に耳を傾ける。

 どうやら長い演説が終わり、この式典のメインイベントへ移行する様だ。

 

 

『それでは、我らDCが開発した最新の機体をご紹介したい』

 

 

 あちらをご覧になってほしい。そうビアンが口で示した場所を皆が注目する。

 

 

 その先にはコンクリートで舗装された滑走路があるのだが、その一角の路面は大きな白い枠で四角く縁どられており、何かの発着場の様な表記が書かれていた。

 そこが音を立ててスライドし、縁どられた枠内の路面が消えた代わりに地下深くまで続く巨大なリフトが見えた。

 開いた空間の面積はかなり大きい。PTが十機以上並べられても余裕がありそうだ。縁や表記などから、恐らく何らかの発着場なのだろう。

 

 

 そして、そこから何かがせり上がってくる。

 

 

 姿を顕わにしたそれに参列者達は声を上げた。

 

 

 それは、特機に分類されるであろう全長57mにも達する巨大な機体。

 西洋の甲冑を彷彿させる曲線的なデザインのボディは、白銀・青・赤の3色を基調としたカラーリングが施されている。

 背面に設けられた巨大な2基のスラスターがまるで翼の様だ。

 

 重厚な装甲に身を包まれたその機体の姿は、さながら重騎士とでも呼べそうな外観をしており、何処かヒロイックなデザインをしつつも見る者に威圧感を与えていた。

 

 

『紹介しよう。DCが技術力の粋を集めて作り上げた地球防衛用の最新鋭機。外宇宙から来る侵略者達に対する我らの意思を体現する者。その名も――』

 

 

〝DCAM-01 ヴァルシオン”

 

 

 それがこの重騎士に名付けられた名前だった。

 

 

「あれがDCの最新型かぁ。かなりごついけど、まさに地球を守る正義のスーパーロボットって感じだな!」

 

 

 ヴァルシオンの姿を見たリュウセイは目が子供の様に輝いた。

 こんな状況でも、つい趣味に走ってしまうのはリュウセイが根っからのロボットマニアだからであろうか。

 重厚な鎧に身を纏った白い騎士と言えるその姿はリュウセイの目を以てしても中々にヒロイックな造形をしていた。

 

 だが、ヴァルシオンの全体的な雰囲気に、リュウセイはふと既視感を覚えた。

 

 

(そう言えば、なんか見た事ある気がするなあ。なんだったっけか?)

 

 

 少なくともここ最近ではない。自分がもっと子供だった頃に見た事があるような気がしたのだが、リュウセイは記憶の底からサルベージを試みるも、その成果は芳しくなかった。

 

 

 

『……願わくば、これがこの星を守る剣の一つとなってくれる事を私は切に願う―――む!?』

 

 

 ビアンが話している最中、アイドネウス島全体の基地から突如警報が鳴り響いた。

 それにリュウセイも慌てて周囲のレーダーを確認する。

 

 機体の識別が判明した。エアロゲイターの無人機動兵器群がこちらへ近づいて来ているのだ。

 彼らは空間を転移してやってくる。恐らくはアイドネウス島の近くに転移して近づいてきたのだろう。

 

 しかも、その数は3ケタの大群だった。

 それには流石にリュウセイも驚愕の声を上げたが、そんな中、乗機のR-1へ通信を送って来る者がいた。

 同じSRXチームのメンバー、R-2のパイロットを務めるライことライディース・V・ブランシュタインだ。

 

 

「リュウセイ!」

 

「エアロゲイターだろ! こっちでも確認済みだが、いくら何でも多すぎだろっ!? あいつらも新型を見に来たクチか!」

 

「……あり得ない話でもないが、とにかく応戦するしかないな」

 

「だな。アヤ、教官、俺たちはどうする!?」

 

 

 リュウセイの問いに答えたのは教官だった。

 

 

「フォーメーションを維持しつつ、担当エリア一帯に近づくバグスを中心に迎撃だ。海岸より島の内側への侵入は極力避けるようにしろ。今基地内には式典の参加者がいる。彼らに何かあれば損失を被るのは俺達だ。分かったな?」

 

 

 バグス、それがエアロゲイターの操る昆虫型機動兵器の軍内での呼称だ。

 リュウセイ達は教官の指示に了解と答え、各機を操りフォーメーションを形成。バグス達を迎え撃つ態勢に入った。

 

 

「リュウ、ライ、聞いたわね? リュウはRウィングで先行して空から迎撃、ライは私と援護に回って。確実に敵を叩いていくわよ」

 

「了解です、大尉」

 

 

 リュウ、ライとはそれぞれリュウセイとライディースの愛称だ。二人に指示を出したR-3を操縦する女性、アヤ・コバヤシはR-3に携帯させていた銃を構えさせ、いつでも迎撃できるように身構えた。R-2も同様にR-1のフォローに回れるようにいしている。

 

 

「よっしゃあ! チェーーンジ! アールウィング!!」

 

 

 リュウセイはR-1を全身のスラスターで浮かせると素早くコントロールを入力する。するとR-1の全身が変形を開始し、あっという間に戦闘機形態であるRウィングへと変形を完了させた。

 音声認識をしているわけではないので叫ぶ必要はない。要は趣味である。

 

 

「行くぜ虫野郎ども! 宇宙から遠路遥々御出席の所恐縮だが、とっとと帰りやが……んん!?」

 

 

 高度を上げ、バグス達に向かって攻撃を仕掛けようとしたリュウセイだった。

 

 

 

 しかし、巨大な赤と青の光の螺旋がそれよりも早くバグス達を飲み込み、一気に吹き飛ばした。

 

 

「んおわあっ!?」

 

 

 後方からの突然の大出力砲撃。リュウセイは慌てて機体を旋回してその光の濁流とも表現できそうなものの射線から退避した。

 

 

「な、なんだありゃぁ……」

 

 

 二色の光が渦巻きながらも遥か空の彼方へ突き進み、その伸び行くその先にいたバグス達を容赦なく消し飛ばして行っている。もしあんなものに巻き込まれていたら、R-1の装甲では、いや、たとえ戦艦だろうが特機であろうとも保ちはしないだろう。

 

 汗線から噴き上がる脂汗もそのままに、リュウセイは急いで先の砲撃の出元を探った。

 周りを見回していると、リュウセイと同じくバグス達へと攻撃を仕掛けようとした他の部隊も同様に慌てて回避行動に移っていた様だ。

 

 

 そして見つけた。先の攻撃を行った大本を。

 

 それが空へ掲げた右腕の手甲部分は左右に開き、そこから砲身が迫り出している。先の砲撃はそこから放たれたのだろう。

 

 この式典のメインであるヴァルシオン、その機体から放たれた砲撃だった。 

 

 

「さ、最新型ってのは聞いてたが、すげえ威力だ」

 

 

 さしずめ、DC脅威のメカニズムといった所だろうか。その凄まじいパワーにリュウセイは呆然とその光景を見つめてしまった。

 今まで見た事のないその破壊力は、従来の機動兵器とは比べられない程である。戦艦だってあんな威力の砲撃はおいそれと出来はしまい。

 

 異星文明に対抗するために造られたロボットは、その威力を遺憾無く発揮して見せたのだ。

 

 すると、教官から通信が来た。

 

 

『各機、DCから通達が入った。あのヴァルシオンと言う新型機も戦列に参加する事になった。威力は見ての通りだ、ヴァルシオンの砲撃が行われる前に警告が入る。その時は射線から退避しろ』

 

 

 突然の指示に教官以外のSRXチームのメンバーは皆驚きを隠せずにいたが、その間にもヴァルシオンは動き出し、エアロゲイターのバグス達の残りが攻撃をはじめ出している。

 しかし、そこで最初に元の調子を戻したのはリュウセイだった。

 

 

「要はあのヴァルシオンってのは、一緒に戦ってくれる心強い味方なんだろ? だったら話は早えじゃねえか」

 

 

 リュウセイは今の状況に不謹慎ながらも密かに心が熱く燃えていた。

 

 地球を守るために設立された防衛組織が作り上げたスーパーロボットが、今まさに外宇宙から襲い来る侵略者達と戦う為に立ち上がる。

 数多のロボットアニメ文化を嗜んで来た者として、この絶好のシチュエーションに燃えず、一体何に燃えろというのか。

 

 尤も、そんな思考は他のメンバー達にとって予測済みだったらしく特に反応のない教官はともかくとして、ライとアヤからは溜息の漏れる音が通信越しに聞こえた。

 

 

 既にヴァルシオンは動き出し、背面に設けられた翼の様なスタビライザーを広げてその巨体を大空へ飛び上がらせている。

 

 

 程なくして、アイドネウス島を襲撃してきたエアロゲイターの戦力は討滅された。

 そしてそれと同時に、DCという組織とその象徴となるヴァルシオンの存在が世界に知らしめられる事となる。

 人類が外宇宙勢力へ示す、反抗の第一歩であった。

 

 

 

 そうして世界は一つの転換期を迎え、新たなルートを辿って行く。

 

 

 

 

 

 光陰矢の如しと言う言葉が日本の諺にある。

 月日の流れが速くてあっという間に過ぎてしまう事を過去の誰かがそう表現したらしい。

 機械の体となってしまい、地に潜み続ける日々を続ける〝彼”からすればまさしくその表現が似合う様に年月が過ぎていった。

 

 〝彼”の視界いっぱいに広がる無数のウィンドウを眺め、何時もの日課として行っている情報収集をに勤しんでいた。

 

 そのウィンドウに並んでいるデータの中には、明らかに通常のネットワーク界隈では手に入らないような情報すら載せられている。

 

 

「君はどう思う?」

 

 

 〝彼”の聴覚機能に、聞きなれた男の問い掛けが響く。テスラ研で所長を務め、〝彼”に直接コンタクトが取れる男、ジョナサン・カザハラの声だ。

 

 

 「明らかに今までと動きが違うように思えます」 

 

 

 そう答える〝彼”が今見ているデータは、昨今のエアロゲイターによる襲撃内容が事細かく記載された物だった。 

 いつ、どこで、どれ程の規模が、どのような活動を行ってきたのか等、本来ならば政府や軍の機密事項に値するような情報までもが組み込まれた貴重な情報の数々を〝彼”は己に備わった演算機能を駆使して瞬時に分析し、過去のデータと比較してそう結論付けた。

 

 過去のエアロゲイターは昆虫型の偵察機動兵器、通称バグスを操り軍事施設・民間施設を無差別で攻撃していた。中には、その最中に民間人から軍の兵隊まで様々な人種を捕獲している個体までいた。

 しかし、地球側がPTとAMの戦力を整え始めたここ最近、バグス達はその攻撃対象を軍事施設に絞り始めて来たのだ。

 とはいえ、戦力が昔に比べて充実し始めてきた軍もそれに対する対応に慣れ始めてきたもので、被害自体は過去と比較すると極めて軽少に抑えられていた。

 それ自体は良い事だ。地球の防衛態勢の構築が極めて順調である事の証明である。今まで積み上げてきた物が、ようやく結果として見え始めてきたのだ。軍や政治家達は着実に自分達が外宇宙からの脅威へ抗う事が出来つつある事を実感し始めてきた。

 

 

 だが、〝彼”はエアロゲイターの戦力の可能性を知るが故に、ジョナサンへ警告を発した。

 

 

「そろそろエアロゲイター達も本格的に戦力を投入してくるかもしれません」

 

「やはり、バグスだけが彼らの戦力ではないか」

 

 

 ジョナサンの口から苦い声が漏れる。

 

 

「それはメテオ3からサルベージしたデータで予想は付いていましたでしょう?」

 

 

 そう言って〝彼”がジョナサン側のディスプレイに見せたのは、メテオ3内で発見された機動兵器のデータだ。その中には、明らかに人型と思しき姿の物が映っている。

 

 

「まあな、あれにはバグスとは違う人型の機動兵器のデータがいくつか入っていた。恐らくあれが向こう側の主戦力なのだろうさ」

 

「とは言え、あれ以上の上位機種の存在も頭に入れた方が良いでしょう」

 

「分かっている。その為に私達は今でも最新型の開発に勤しんでいるんだからな」

 

 

 流石に向こうも全ての情報を提供しているわけではないだろう。メテオ3に込められた情報は、エアロゲイター側の戦力の極一端に過ぎない事は想像に難くない。

 

 少しばかり、お互いの間に沈黙が生まれる。

 その中で、ふとジョナサンが口を開いた。 

 

 

「……君なら、彼らに勝てるか?」

 

「それに関して、私の口からは何とも」

 

 

 ジョナサンの問い掛けに対する〝彼”の返答は早かった。

 ジョナサンはそれに何かを悟ったのか、ふっと苦笑をこぼした。

 

 

「……そうか、すまないな。妙な事を聞いてしまった」

 

 

 では、また。

 そういってジョナサンからの通信が切れる。

 

 〝彼”のいる第99番格納庫内に、再び沈黙の時間が訪れた。

 

 

 (……ジョナサン博士を通じてとは言え、外の世界へ協力をしだすとは、数年前の自分からは想像もできないな)

 

 

 そんな〝彼”の心変わりの切っ掛けは、シュトレーゼマンが闇に葬られたあの事件であった。

 

 〝彼”は、シュトレーゼマン達が殺害された事件が起きてから数か月後、積極的に協力する姿勢を取り始めたのだ。

 

 

 もはや隠し立てをする必要はあるまい。

 

 新西暦184年に起きた謎の殺人事件の犯人は、〝彼”なのだ。

 勿論、〝彼”自身は巨体であるし、様々な社会情勢の都合で世に出る事は固く禁じられている。

 

 だが、それでも〝彼”はシュトレーゼマン達を亡き者にする事を可能とした。

 

 その要因は、〝彼”のボディを構築しているDG細胞にある。

 

 〝彼”はテスラ研の地下に潜んでから己を調べ続けた結果、DG細胞をある程度まで自在に操る事に成功したのだ。

 流石に何から何までと言う訳ではないが、これは〝彼”の今後を大きく左右する事だ。

 

 そしてこの金属細胞が誇る三大理論の内の一つ、自己増殖によって人間サイズの殺人アンドロイドを製造して、シュトレーゼマン達への暗殺指令を下したのだ。

 しかもこのアンドロイドは、DG細胞内に記録されていたとある隠密機動に特化した人間(?)の生体データを基に作成されており、既存の理論や技術では補足する事がまず不可能な恐るべき暗殺兼偵察アンドロイドと化したのだ。  

 このアンドロイドを直接操った際に〝彼”はこんな事を零した。

 

 ゲルマン忍法恐るべし、と。

 

 

 問題は、そのアンドロイドを嗾けて無事暗殺を完遂させた所で、はっと〝彼”は今の自分の有様を顧みて、酷い自己嫌悪と罪悪感に苛まれてしまったのだ。

 

 己の不利益だと思えば、強大な力を繰り出して他者をいとも容易く害し、モニターの向こう側で傍観者を気取っている。そんな自分が、酷く醜く見えてしまった。

 

 人間であった頃にも社会人として競争社会の中を生き抜く関係上、何らかの形で他者を蹴落とした事はあったが、明確に人命が掛かっていた事などは皆無だった。

 それが此処では力を手に入れた途端、選択肢の中に殺害が組み込まれているのだ。

 人とは、こうも簡単に他者の命を踏み躙れるのか。

 

 アンドロイドの映像記録を通して、殺した者達の最期の姿も克明に記憶している。

 

 人外の膂力が備わったアンドロイドの手で、いともたやすく人体を破壊されていくターゲット達。

 飛び散る血肉を見て、まるで映画のスクリーン越しにそれらを見ている感覚だった己に気が付き、〝彼”は自身に対して吐き気の様な気持ちの悪さを覚えた。

 

 シュトレーゼマンの死が無意味だったとは思わない。

 現に、ビアン・ゾルダークはシュトレーゼマンの横槍が無くなった事でDCの運用方法を大きく変え、地球を守るための防衛組織へと改変してくれた。

 DCが世界に牙を剥いた時の事を考えれば、流れていく血の量は大きく減らす事が出来たと、そう信じたい。 

 

 

 ……否、これも所詮は建前だ。

 〝彼”は世に謳われてきたヒーローの様に正義や世界平和の為に悪を討つ様な気高い精神を持ち合わせてはいない。

 全ては自分の為だった。

 元に戻れるかはどうかは保留にして、この世界で生きていく事を前提として、己の保身を万全にするためにやって来ただけに過ぎないのだ。

 

 

 そういったわが身への保身と従来持ち合わせていた〝彼”の持つ道徳概念の狭間で葛藤を繰り返していた後、一時は、シュトレーゼマンの一件に対して気に病むあまり、遂には一種のノイローゼ状態となり、全ての通信・物理的な接触経路をあらゆる手立てを駆使して遮断し、外界からのありとあらゆる接触を拒んだ時期があった。

 

 そんな状態になってしまった〝彼”にジョナサンを筆頭としたテスラ研は大慌てで通信を試み、様子が可笑しくなった〝彼”を心配したビアン博士までもが一時仕事を中断して出張る事態にまで至ってしまった。

 〝彼”を引きずり出すために彼是(あれこれ)と画策していく中で、最近改修作業が終わったグルンガスト零式と、これまた最近完成したばかりのグルンガストシリーズの最新型、〝壱式”を駆り出して第99番格納庫を破壊して無理やりにでも〝彼”ことUR-1を引きずり出すという強硬策から、UR-1が興味を持ったサブカルチャーをチラつかせてみようという馬鹿馬鹿しい案まで出ていたが、どれもが却下となったのは想像に難くない。

 結局のところ、ビアン博士達の懸命な説得が功を成し、心を閉ざしていた〝彼”もとうとう重い腰を上げてそれに応じ、この件は落着と相成った。

 

 後にその一連の騒動を研究所内の人々は日本神話に肖り〝天岩戸事件”などと口にするようになった。ちなみにその事件名を名付けた者とは、何を隠そう日本文化に造詣の深いビアン・ゾルダーク本人だったそうな。

 

 

 気を病んでいたとはいえ、多くの者達に迷惑をかけてしまった〝彼”は己が情けなく感じ、後悔した後に迷惑をかけた詫びとしてテスラ研へなるべく協力を申し出るようになった。相手に流血を強いさせておいて、己が傍観者になる事を嫌うが故に。

 これが、〝彼”が地上世界へ積極的に干渉し始める最初の出来事となった。

 

 

 〝そんなこんな”があって現在に至り、ジョナサンやビアン博士に限定しているが、彼らと情報交換を密に取り合い、世界のありとあらゆるネットワーク回線へハッキングを行って情報を入手し、時に彼らへサポートを行い、時にこっそりと己の知るロボット大戦の歴史と照らし合わせて確度の高い情報を助言と言う形で流してみたりとそれなりに忙しい日々を続けていた。

 

 今現在は情報提供等で協力しているが、〝彼”は確信している。きっと、いずれはこのヴァルシオンの力を本格的に使う事になるのだろうと。

 その時は、テスラ研とも別れなければならなくなるであろうことも。

 

 

 

 ジョナサンとの通信を終えた〝彼”は、昨今のエアロゲイター関連の情報とは別に、今地球圏内で起こっているもう一つの出来事について情報を整理していた。

 〝彼”がデータの山から引っ張り出したのは、複数の科学者達の写真と履歴情報である。

 それらの中から二つを更に拡大し、その科学者の顔と情報を再度まじまじと見た。

 

 二人の老いた科学者の名前はアードラー・コッホ、そしてアギラ・セトメと言う。

 

 前者は以前ビアン博士と一緒にEOTI機関へ所属し、EOTIの研究や、昨今の機動兵器達の基礎開発を行っていた高齢の科学者だ。 

 そして後者のアギラという老女の科学者は、アードラーを調べていく内に見つけた者で、〝特脳研”という特殊な研究機関から地球連邦軍のさる機関へと移った者だ。

 

 二人とも優秀な科学者だったらしいのだが、彼らの人格面に大きな問題があった。

 

 その最たるものが、人体改造に関わる分野である。アードラーは肉体方面を、アギラは精神面を担当し、二人の研究内容は非人道的な内容が大半であった。

 それの代表的なものが「スクール」と呼ばれる連邦軍に存在していた兵士養成機関だ。その施設に身寄りのない子供達を集め、強化措置を行って軍事的運用を試みる計画だ。

 

 当初はこの施設もそれなりに常識的な範囲で機能していたらしいのだが、先の二人の科学者が参加し始めてからその内容に怪しい陰りが見え始めた。

 場所も外部との接触が無い様にと設けられていた事が災いしたのか、情報が全く流れてくることは無く、この度のDC設立に伴う人材集めの一環として〝彼”がビアンの頼みで調べてみた所、どうにも怪しく感じたため、演算能力をフルに発揮したハッキングによって無理やりセキュリティをこじ開けて機密情報を見て見れば、世に知られれば糾弾されるに値する内容の数々が列挙されていた。

 

 それは口にするのも憚る、あまりにも壮絶なものだった。

 その内容の中には実験に耐え切れずに死んでいった者達の〝廃棄リスト”や、死に至るまでの経緯までもが網羅され、およそ人間の所業とは思えない人間への扱い方に、両名への異常性に恐怖を感じたほどであった。

 

 その筆舌に尽くしがたい内容を見かねた〝彼”はビアンと相談したのち、この情報を連邦軍上層部へ流した事で事態は露見。驚いた上層部の人間達は世へ露見する事を恐れ、慌てて一斉検挙を断行した。そして科学者達一同を纏めて捕え、実験体となっていた者達の保護を図ったのだ。

 その結果、多くの研究者達が逮捕される中でもスクールの生徒達を気にかけ、罪の軽かった者は軍へ残り、同様にスクールの生徒達もまた各々の意向の元、軍へ残る事を決断した。 

 

 そしてこの狂気の研究の発端たるアードラーとアギラの両名はその一斉検挙の最中、数名の研究者と共に何処かへと逃げおおせ、その足取りもとうとう掴めなくなってしまったのだ。

 

 〝彼”はこの時程自身のアンドロイドを繰り出さなかった事を後悔した。シュトレーゼマン暗殺の件を振り返り、今度は軍の人間達とこの世界の法に二人を委ねようと考えたのだ。

 ……もしかしたらそれは建前で、シュトレーゼマンを殺して見せたあの時の己に忌避感を抱いたが故に、それを避けたいがための選択だったのかもしれない。しかしその甘い選択が、二人の恐るべき科学者を野に放ってしまったのだ。

 

 強大な権力の庇護から抜け出した者達が選ぶ行動は大きく二つ。

 一つは白日の下に晒されないようにヒッソリと身を隠すか。それか、公の権力から抜け出した拍子に道徳観念すら捨て去る事で手段を選ばなくなり、とんでもない行動に移るかもしれないという事だ。

 

 

 後者になろうものなら何としてでも止めなければなるまい。

 その為にも、〝彼”はあの科学者達が研究をするにあたって都合の良い後ろ盾と資金源となり得る組織関係がないか洗ってみる事にした。

 

 

 身を隠し、自分達の研究をするのに都合の良い組織、場所、etc……。

 〝彼”は世界の裏と表のありとあらゆる公的、非公的関係なく全ての組織の情報を後ろめたく感じるも、ハッキングで全ての情報を見た。

 その際、〝彼”は地球連邦政府のサーバー内に記録されている機密情報の中であるものを見つけた。

 

 

(……プロジェクト・アーク?)

 

 

 どこかで聞いた事のある計画名に、己の記憶を漁り、そして断片的にだが思い出した。

 

 〝彼”が最後にプレイした作品である〝スーパーロボット大戦α外伝”に登場したプロジェクト名だ。

 地球全土が強大な危機に瀕した際、それから人類の種を守るための超巨大な地下冬眠施設を建造し、自律型コンピューターの管理の元で眠りについて種の延命を図るという計画だ。

 尤も、ゲーム内ではプロジェクトメンバー内で裏切りが起きた事で、本来の目的とは大きく異なる道を辿り、訳あって遥か未来の世界でプレイヤー達と敵対する事になってしまうのだが。

 

 今後どうなるのかは分からないが、プロジェクトの主要メンバーや冬眠施設等の名称などは〝彼”の知る物と同じであった。 

 しかも驚いた事に、この世界では月にも同様の冬眠施設が建造されており、プロジェクトの規模が大きくなっていた。

 α外伝の時にも一応ありはしたが、某マイクロウェーブ送信施設としての面が大きかったような覚えがあるので、こちらの世界ほど規模が大きくはなかったのは確かだ。

 

 

(……頼むから、月と地下からのアンセスター達の二重攻撃とか起きないでくれよ)

 

 

 アンセスター、それはプロジェクト・アークの暴走によって生まれた世界を脅かす敵勢力の一つ。パイロットや登場機体にDG細胞と似た性質を持つ金属〝マシンセル”が備わっており、人類の抹殺を目論む新人類を自称する者達だ。

 

 この世界には僅かながらエアロゲイターの〝ズフィルード・クリスタル”が地球側にサンプルとしてごく少数だが保管されている。近年PTやAMが登場した事でメギロートを倒すだけでなく、捕獲するケースが増え始めてきた為だ。

 マシンセルはズフィルードクリスタルを解析した結果生まれたため、このまま順調に年月が経てば誕生するのは時間の問題に思える。

 

 願わくばそれらが軍事利用されない事を祈るばかりであるが、〝彼”が現在懸念しているのはアンセスターの存在ではない。その大本であるプロジェクト・アークによって生み出された地下冬眠施設〝アースクレイドル”が問題なのだ。

 

 現在〝彼”が足取りを追っているアードラー・コッホとアギラ・セトメの両名率いる逃亡中の科学者達の逃げ場所に適していないだろうか? という懸念が生まれたのだ。

 

 現在アースクレイドルは既に完成しており、この世界の地下深くでコールドスリープの準備に入っているらしい。そんなクレイドルの中にはプロジェクト・アークの中心メンバー達が集まっていると言う。

 

 その中に、もしα外伝の時の様に反乱勢力がいるのだとしたら。

 

 もし、彼らとアードラーに何らかの繋がりがあって、アードラー達を密かに招き入れるような事があるのだとしたら。

 

 そんな事になろうものなら、こちらの世界版の地下勢力――ミケーネや恐竜帝国のような存在が生まれてしまうのではないか。しかも〝彼”に備わった優秀な演算機能はその可能性について肯定的な答え導き出してしまっていた。

 

 今後色々と調査を行う為に、アンドロイドの本格的な運用を検討しようと考えていた、その時だった。

 

 

 

 テスラ研の近くに、突如何かが転移する反応を〝彼”のセンサーがキャッチした。

 

 

 

 

「何? エアロゲイターだと!? しかし、あれは……」

 

 

 ジョナサン・カザハラは、テスラ研から離れた場所へ唐突に空間から姿を現した招かれざる客達の構成に目を剥いた。

 管制室で一緒に見ている職員達も同じ表情をしていた。中には、顔を青ざめている者すらいる。

 

 転移するものなどこの地球圏で確認されているのは一つしかいない。エアロゲイターの機動兵器だ。

 テスラ研へエアロゲイターが現れたのは、これが初めてではない。

 過去にも何度かバグスが攻めてきた事があったが、その際はテスラ研が常備しているPTやAMの部隊が対処を担当していた。

 

 しかし、今回は敵の毛並みが今までとは違っていた。

 

 今までと明らかにその部隊構成と規模が違うのだ。

 過去のエアロゲイターの部隊構成はバグス一種類のみであったのだが、今回は遂にそれ以外の機種が混ざっていた。

 ある機体はバグスと類似性を感じさせる蜘蛛のような外見をしており、またある機体は鳥のような形状をしている。

 更に尤も注目すべきなのは、その部隊の奥で構える十数機の〝人型”の機動兵器達だ。

 

 種類は2つ。

 片方は緑色の甲冑の様な装甲を纏い、銃を携帯している騎士のようなロボット。

 もう片方は、分厚い重装甲の黄色いボディをもつロボットだ。

 

 それらの機体数は優に40を超えている。

 

 ジョナサンはあの兵器群の姿に見覚えがあった。何せそれは、メテオ3内に封じられていたデータの機動兵器とそっくりだったのだから。

 

 ジョナサンはこめかみから流れ落ちる汗を拭いながら、現状を分析する。

 今の研究所の戦力で、あれらを撃退する事が出来るのだろうか? 今まで倒してきたのはバグスただ1種類のみだったが、別種の機体が相手となれば、過去の戦績が役に立つのか少々怪しくなってくる。

 それに、明らかに戦力比では今保有しているテスラ研の戦力よりも数が多い。ポジティブな要素が、何処にも見当たらないのだ。

 

 敵はまだ此方へ攻撃をする様子を見せない。

 その様子を不可解に思いながら、エアロゲイター達の動きを観察するジョナサンへ、他の職員が焦りの表情で更なる凶報を伝えてきた。

 

 

「大変です所長! たった今、世界各国の主要都市に此処と同じ部隊構成のエアロゲイターの大部隊が転移! 攻撃を仕掛けて来たと連絡がありました!」

 

「何だって!?」

 

 

 今までにないエアロゲイター達の行動に、ジョナサンは悟る。エアロゲイター達がついに本腰を上げて地球へ攻撃を開始したのだと。

 UR-1に言われた事が、とうとう現実となってしまったのだ。

 

 

(まずいぞ、ただでさえ不利な状況だというのに、外への応援要請すら出来ない状況だというのか。イルムでもいてくれたら状況が違うんだが……)

 

 

 ジョナサンは、今この場にいない己の息子の不在を悔やむ。

 ジョナサンの息子はグルンガスト壱式のパイロットとして地球連邦軍のとある部隊へと出張っている。

 もしくは零式でもと思うも、そちらはそれよりも昔にパイロットが決まり、同じく地球連邦軍の部隊に既に所属済みだ。

 

 

「……〝ハガネ”と〝ヒリュウ改”はどうなっている?」

 

「両部隊とも分散して迎撃に回っているそうですが……テスラ研へ来れるのは……」

 

「向こうも分散してくる分、時間がかかっているのか……」

 

 

 ジョナサンと職員が口にした部隊は、スペースノア級万能戦闘母艦弐番艦のハガネと、冥王星宙域でエアロゲイターとの戦闘で被害を受けたヒリュウを修理、大幅な改装を施した戦闘艦〝ヒリュウ改”を中枢とした特殊部隊だ。

 現在研究所の手から離れた2体のグルンガストシリーズは、そちらに所属しており、昨今のエアロゲイター達との戦闘では数々の勝利をおさめている。

 

 あの部隊から応援が来てくれればと思ってしまうが、向こうも手一杯で此方への対処に手が回らない状況らしい。

 

 

 エアロゲイターの機動兵器達がとうとう動き出した。

 緑色の人型ロボットが手に持つ銃を構えて全身を始め、重装甲のロボットがその背後へ回って追随する。

 

 蜘蛛型と鳥型の機動兵器は先の2体のロボット達よりも先行してテスラ研へと迫って来ていた。

 

 

「研究所内のPT・AM部隊の出撃状況はどうなっている!?」

 

「パイロット、既に搭乗を完了。いつでも出せます」

 

 

 ならば出撃を、と指示を出そうとした所で、他の通信他を担当していた別の職員から驚愕の声が上がった。

 

 

「え、こ……これは……しょ、所長!」

 

「今度は一体何だ!?」 

 

 

 続けざまに、しかも職員の狼狽ぶりから穏やかではない情報が来たであろうことに、ジョナサンも焦りが強くなった。

 

 その内容は、ジョナサンだけでなく、この管制室内にいた全員が予想だにしていない事であった。

 

 

 

「か、か、〝彼”が……地下第99番格納庫にいる〝彼”から! 緊急通信がはいっています!!」

 

 

 そして、世界は新たな局面を迎える。




 此方の世界のビアンが作ったヴァルシオンのデザインが、オリジナルとは違う形となりました。間違ってもアニバスター仕様ではございません。
 ああっ、グランゾンがタンク形態に……!(?


 次回は、最先端のニート生活を満喫していた主人公が、いい加減働けと親(テスラ研)から尻を蹴られてついに娑婆の空気を吸う為に外へと繰り出します(!


 此処から先は至極勝手な解釈です。


 今現在私達の世間一般に知られているヴァルシオンのデザインは、ビアン博士が世界に宣戦布告しようとした為にああいった凶暴なデザインになったのであって、
デザインの候補の中には、もっとヒロイックなデザインも考えていたのではないかなあとちょっと思ったりします。(OG等の設定では、敵を威圧するためにあえてあのような外見にしたとありますが)
 ロボットアニメ好きと言うのだから、ヒーローチックなデザイン案も色々とあった筈。
(まあ、ロボットアニメ好きの人が皆一様に正統派デザインを好んでいると言う訳ではないのですけれども……)

 そうしますと、αで出る予定だったヴァルシオンのデザインはもしかして……? 何て言う想像が膨らんでしまいますね。

 そのアイデアの名残がヴァルシオーネのデザインに受け継がれたとか、そんな事を勝手に考えた結果この様な姿になりました。
 イメージは皆さまのご想像にお任せしますという事で。

 主人公の憑り付いた機体のデザインが個人的に魔王めいていると思いますので、それの対比みたいになれば良いかなと思いました。





◆おまけNG(もし主人公の憑りついた先が別だったら……?)





 それは、まるで長い夢を見ていたかの様であった。

 暗黒の彼方へと沈み込んだ意識が、突如何者かの手で救い上げられたかのように、それは目覚めた。



 まるで数年間眠りつづけていたかのような、全身に重しを付けられているのではないかと思わせるほどの倦怠感が、〝彼”が最初に感じた物だった。



 重い瞼を開けようと試みた彼だったが、まるで機械に電源を入れ、モニターに映し出すかのような感覚で視界が突如映し出された。
 そんな思わぬ感覚に違和感を覚えるが、〝彼”を驚かせたのはそれだけではなかった。

 
 視界に映る光景に、〝彼”困惑した。

 そこは、見た事のない、とても広い建造物らしき巨大な部屋の中だった。
 
 宮殿、そう評しても良いくらいの厳かな雰囲気があるが、家具や調度品と言った物が一切見当たらず、人間味が全く感じられない。
 床は材質の分からない材料で一面鏡面張りに磨き上げられ、継ぎ目は一切見当たらず、周囲の壁面には、接地面は極めて細く、先へ行くにつれてラッパの様に広がるポール状の物体が床と天井から延び、ラッパ状の部分をやや隙間を開けて設置されている。
 ぎりぎり接地面から離れたその空間には光が漏れ、それが部屋の照明として機能しており、均等に部屋の中に並べられていた。

 しかし部屋は密室と言う訳ではない。壁も均等に床まで続く大きな窓をいくつも設けられており、外からの日の光も部屋の中へと差し込んできていた。

 そして〝彼”自身が座っている場所は、背が異様に高い椅子、否、もはや玉座と言っても良いそれの肘に手を置き、深く座り込んでいた。


 仕事から帰って、疲れた体を癒すためにベッドへとその身を放り込み、そのまま眠ってしまった事までは〝彼”は憶えている。

 だというのに、これはどういう事だろう?
 まるで城の玉座の様な場所に自分は腰かけているではないか。

 それを改めて自覚した〝彼”は、慌ててその玉座から立ち上がって離れた。

 そこで、〝彼”は自身の体をちらりと視界に収めた事で、自身にも異常がある事にようやく気が付いた。


 慌てて見下ろした〝彼”が自身の体を見回すと、其処には見慣れた己の体などどこにもなかった。

 硬い硬質の大きな襟を備えた、ワインレッドの上品な色をしたローブは手足を隠すほどもある。

 そしてその両の手は、赤い血の通わぬ金属で出来た機械の手だった。


 驚愕と恐怖に駆られた〝彼”がロープ越しに自身の体をまさぐってみるが、どこにも人間らしい柔らかさが見当たらない。
 ただ、鉄の様な硬い感触しか機械の手には感じる事が出来なかった。



 ……まだ、自分の顔を確認していない。
 それに気が付いた彼は、幸か不幸か鏡面磨きのかかった床があったので、それを鏡代わりにと恐る恐る覗き込んでみた。


「これが……俺…………え゛?」


 そのあまりにも自分の顔と違うそれに、〝彼”は呆然としてしまっていたのだが、何か既視感を覚えて妙な声を上げた。


 懐中電灯の様な両の目。
 人間と同じパーツを有してこそいるが、極めて簡素で頬のこけた鋼鉄の顔。耳に当たる部分から、何故か棘のような物が伸びている。
 そして何より特徴的で異様を放つその頭部には、金魚鉢の様なガラスに収められた剥き出しの脳があった。


「あれ、いやちょっと待て……でも、何で?」


 緊張がピークを超えて一周でもしてしまったのだろうか、〝彼”は驚きと恐怖を忘れ、何故と困惑気味に床に映る自身の顔をしげしげと見ていた。

 この顔、どこかで見た事があるのだ。
 まかり間違ってもご近所さんだとか友人だとか、親戚にいただなんてことは絶対にない。
 サブカルチャーの、アニメだったかゲームだったかでこの顔を見た事があったのだ。


「うーむ、何だったかなこの顔。火星○王? ハ○イダー? いや違うな……」


 立ち上がり、顎に手をやりうんうんと唸りながらその場をぐるぐると歩き回る〝彼”
 記憶の中から彼是とサルベージを試みているが、どうも合致した答えが出てこない。


 〝彼”が歩いた際の硬い足音と、ローブの擦れる音だけがその部屋を支配していたのだが、そこへ何者かが近づいてくるのが足音で分かった。

 その足音の主は最初は歩いていたのだろう。だが、突然足音が止まったかと思いきや、急にこの部屋目がけて走り出す音が聞こえてきたのだ。
 まるで焦っているかのような足音に〝彼”も伝染して焦り出し、どこかに隠れた方が良いのだろうか見回すが、この身を隠せるような場所がどこにも見当たらない。

 そうこうしている内に、足音の主がこの部屋へと飛び込んで来た。


「あ……」


 それは、とても美しい女性だった。
 スタイルの良いボディラインがはっきり分かるような黒いスーツの上から紫色の外套とスカートを纏っており、背中まで届きそうな赤い長髪は前髪を目元で揃え、後ろの方は途中からリングで纏めて首にマフラーの様に巻いている。
 顔の一つ一つのパーツは極めて美しく整っている。眉が無い事に違和感を感じるが、それが逆にミステリアスな雰囲気を醸し出し、その女性の美しさを損なわせる事は全くない。

 だが、普通の人間の女性ではないのだろう事は一目でわかった。
 肌は青に近い白色で、無機質な青い瞳に紫の唇。そして額には、円形の物体が取り付けられている。
 特殊メイクかと思うが、どうも自前のもののように見えた。


 そんな美女と目と目が合い、体を硬直させてどうしようと内心冷や汗が滝のように流れていた〝彼”だったが、女性の方から動きがあった。


「あ、ああ……」


 女性もまたその場で体を硬くしたかと思いきや、突如震えはじめたのだ。
 そして震える両手で口元を隠し、大きく見開いた目からは大粒の涙がボロボロと零れはじめる。


「ド……ドン……!」

「き、君は……」


 女性の口にした言葉に思う所があった〝彼”がぽつりと言葉を返すと、女性は堰を切ったように涙を流し、此方へ駆け出した。


「ドン……あなたぁっ!!」


 駆け出し、自身の胸へしがみ付く様に抱き着いた女性に、〝彼”は驚き言葉が出せず、その女性を倒さないように支える事しか出来なかった。
 

「ついに、ついにお目覚めになられたのですね……。ああ、ドン……良かった……本当に……うぅぅぅ」
 

 〝彼”のローブを強く握り締め、身を震わせてすすり泣く女性の有様は、危篤状態から回復した恋人へむけるものに似ていた。
 
 謎の美女がドンと呼ぶこの体、そしてそのドンへ向けるこの感情は、まさしく愛なのではないだろうか?

 
 そして〝彼”は、ようやく自身の体の正体に思い至った。
 しかし、それは馬鹿な、あり得ないと声を大にして叫びたくなるような事でもある。

 何故なら、この体は間違いなく日本の昔にロボットアニメに出てきた敵のボスの物なのだから。




 人類が宇宙へと進出し始めた近未来。宇宙開発の一環としてとあるサイボーグたちが生み出された。
 
 しかし、そのサイボーグたちは自分を人類よりも優れた、スーパー人間と次第に思い込み、暴走し、人類をサイボーグ化させるために地球人類へと反乱を起こしたのだ。

 だが、その反乱の根底には、サイボーグの力があれば人類は宇宙へ進出し、地球以外の星へ移り住む事で 資源を巡った殺し合いや争いが無くなり、人類が永遠に平和になるという願いがあったが故でもあった。

 その願いを持つ者はサイボーグ……その名も〝メガノイド”達の最高指導者であり、極めて初期の頃に生み出されたメガノイドだった。

 そのメガノイドを知るある者は称え、ある者は恐れ、ある者は憎しみを込めてこう呼んだ。〝ドン・ザウサー”と。



――――――――――――――――――――――――――――――
おまけの後書き


 と言う訳で、無敵鋼人ダイターン3よりドン・ザウサーの体に乗り移ってしまった場合、でした。
 個人的にボスキャラの中でも特に印象の強かったキャラクターです。

 正直、同じ世界に波乱万丈がいたら結構な確率で詰むんじゃないでしょうか。メガノイドへの憎しみであらゆる困難を突き進んできそうです。
 かといって、万丈に勝つとか、そういうのもなんか違う気がしますので。

 そんなわけで、あくまでおまけでのみの作品となりました。
 

 あと、他にもキャシャーンのブライキングボスとか、ザンボット3のコンピュータードールとかも候補であったとかないとか。

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