結構前の話になってしまいましたがこの小説が紹介されてたのに気づきました。
まさかこんな何も考えずに描き始めたせいでエタりまくってた小説を紹介してくれるとは思ってませんでした。
紹介してくれたappleさん、マジでありがとうございます。
そして待っててくれた皆様、マジでお待たせしました、最終話です。
ダクソ3が面白すぎるのが悪い、僕のせいじゃないんだ。(言い訳)
ふわふわ、ふわふわ。
まるで生まれる前みたいに、ずっと暖かい繭の中。
最初の頃は出ようと頑張っていたけれど、こんなに暖かいなら、ずっとこの中でもいいのかも。
体も痛くない、誰にも見られていない。こんなに幸せなら、ずっと、ここで……。
『……ナ』
怖かった。
それがずっと怖かった。だから部屋に閉じこもった。そこなら誰にも見られないと思ったから。
『……ティナ!』
でも部屋にいても時々視線は感じた。それも怖かった。
だからこうやって暖かい繭に
どうせ、誰にも見られていないんだし。
『ケイティナ!』
誰かに呼ばれている気がする。外に出ることを求められている気がする。
でもきっと嘘だ。だって誰も、私のこの手を引こうとなんてした事がなかったんだもの。
姉様も、兄様も、他のみんなも、結局誰も私を連れ出してくれなかった。
『ケイティナ!』
だから、こんな声、きっと……。
『…お前が、こんな繭の中にいていいわけがないだろう! ケイティナ!』
急に手が掴まれて、勢いよく引っ張られる。
驚いて私の手を掴んでいるその手を見ると、それは青くて人形みたいな手だった。
でもそこに秘められたルーンは見た事があった。
ずっとずっと昔、私を小さな部屋から連れ出してくれた手。
友達と一緒に過ごすことの楽しさを教えてくれた手。
唯一、私を引っ張って、引き上げてくれた手。
『そんな小さな繭に包まっていないで……っ、早く、出てこいっ!』
そうだ。私には引っ張ってくれる唯一の友達がいたんだった。
なんで忘れていたんだろう。
♢
王朝と呼ばれる場所に置かれた繭。
そこから唯一飛び出ている小さな腕を、月の王女と呼ばれた少女……ラニは、引っ張り続けた。
聞こえるかもわからない声を、繭の中にかけ続けながら、必死に。
当然だ。その中にいる少女…ケイティナは、彼女の唯一の友人とも呼べる少女なのだから。
1000年、あるいはそれ以上、ラニは彼女を探し続けた。
しかし彼女はどこかに消えてしまったかの様に見つからなかった。
だがそれは一人の褪せ人を仲間にしてから変わった。
彼は血の指と呼ばれる人物を通じて、隠された王朝の存在を知っていた。そして新たなる神の誕生を待っていた、とも。
ケイティナが神人としてと資格があるかもしれないと言うことを知っていたラニは、そのことを知らせてくれた褪せ人と共にその場所……モーグウィン王朝へと出向いた。
王朝の主人であるモーグは今、褪せ人と戦っている。彼が時間を稼いでいる間に、なんとしてもケイティナを救い出さなければならなかった。
ラニは繭から突き出た生きているとはとても思えないほど冷たくなってしまっているその腕を、懸命に引き続けた。
「そんな小さな繭に包まっていないで……っ、早く、出てこいっ!」
褪せ人も限界だった。これでダメならば諦める他ないとラニは思っていた。
そう思いながら引いた時、突然繭全体に亀裂が走り、それが割れたのだ。
そして中から現れたのは、ラニがずっと待ち侘びていた少女だった。
「っケイティナ!」
ケホケホと咳き込んでいる彼女に、ラニは思わず抱き付いた。
「わっ…ラニ……えと、久しぶりだね…?」
「っ…全くだ、どれだけ待たせるつもりだったんだ…」
「あはは、ごめんごめん…」
そう言いながらケイティナは自らに抱きついている少女の頭を撫でる。
ラニはそれは嫌がりもせずに受け入れていた。
「……でも、まだ終わりじゃないよね」
そう言ってケイティナは
その視線に気づいたのか、褪せ人を吹き飛ばしたモーグが驚いた様にそちらを見る。
「……まさか、繭が破られてしまうとは」
「私も破れるとは思わなかったかなぁ。兄様の特別製ぽかったからね、これ」
少し危なかったな、と呟きつつどこからか取り出した杖をいじる。
「でも繭のおかげで元気になったんだよね。やっぱり兄様の権能はすごいね」
だからさ、と、ケイティナはその杖の形状を鎌のように変化させ、その刃をモーグに向ける。
「少し準備運動に付き合ってくれないかな、モーグ」
「…あまり私を舐めるなよ、小娘」
♢
火蓋を切って落としたのはケイティナの方だった。
かつての虚弱さが嘘のように素早く踏み込むと彼女の身長ほどはあるであろう鎌を下から振り上げてモーグを切り裂こうと試みる。
だがそこは戦闘のエキスパートである血の指を下し配下につけたモーグ。その素早い攻撃をあっさりと捌き、血の祈祷を使って反撃する。
「…その動き、一夜漬けで身につけられるものではないな…貴様の権能か」
「っと、さすが祈祷使い、わかっちゃうんだ」
そう言った彼女は斬り合いながらも説明し始める。
「私の権能は相手を意のままに操る腐敗。だったら自分の体にそれを使ったらどうなるか。体を意のままに操れる…っ、てわけ」
「面白い。だが、貴様の体はいつまで持つかな?」
「っ…あはは、そこまでわかるんだ?」
ラニがそのモーグの言葉に驚いてケイティナの体を見る。
すると確かに、手足にひび割れたような傷がついており、そこから朱い腐敗の様な霧が漏れ出しているのが見える。
「だからっ…さっさと君を倒したいんだけどっ、倒されてくれるわけないよねっ!」
「貴様は我らの信仰する神となるべきだ、ここで逃すわけにはいかない」
「ですよねーっ!」
「…だが、繭にあるのは貴様の肉片だけでも事足りるだろう」
そう言いつつモーグは槍を掲げる様にして構える。
「故に貴様はここで殺す」
血授の儀と呼ばれるその技を、モーグは使ったのだ。
「…やばっ!」
その詠唱に気づいたケイティナは慌てて腐敗の権能で膜を作り、褪せ人とラニ、そして自分自身をを守ろうとした。
だがそれは姿なき母を直接突き刺す技。血の加護でさえないただの膜では防ぎ切ることはできない。
「…ほう。人としての形は残しているか」
「は、はは…これでも…っ、神人だからね…友達守ることくらいできなきゃ…っ」
無傷のラニに比べて、ケイティナは酷くボロボロだった。
どうやら三つでは膜を維持しきれないとして自らの膜を外し、他の二人を守った様だった。
「唯一私と渡り合った貴様がその様になってどうするというのだ」
「…ふ、ふふ」
「…何がおかしい?」
モーグの言葉に、ケイティナは突然笑い始める。その様子にモーグはそれを問い詰めると、彼女は答えた。
「…君、私が繭から出る前誰と戦っていたんだい?」
「なっ……がはっ!?」
モーグのその背中には、1本の月光の剣が突き刺さっていた。
褪せ人だ。
「な、ぜだ…!?」
「けほっ、ナイス、褪せ人くん…君を、守った甲斐は、あった…かな」
そう、褪せ人はモーグとケイティナが戦っている間、ずっとモーグを倒す隙を狙っていた。
それに気づいたケイティナは故に彼を血授の儀から守ってやったのだ。
「ばか、なっ、王朝はまだできていない…私が、死んでいいはずが…っ!」
「君の、敗因は…仲間がいないこと、じゃないかな…」
モーグウィンに栄光あれ。
そう言い残し、モーグは倒れたのだった。
その様子を見たケイティナは、疲れ果てた様にその場に座り込みつつも褪せ人に声をかけようとする。
「はー…いや、助かったよ褪せ人…君がいなかったら…げほっ、げほっ…」
「っ……ケイティナ、それ以上喋るな。傷が広がるだろう?」
ラニはそう言って彼女の口を塞ぐ。
ケイティナがその鬼気迫る様子に頷くと、ラニは安心した様に笑った。
「ああ、それでいい。…では帰ろうか、私たちの家に」
♢
x月y日 晴れ
ラニ様から新しく日記をもらったので、久しぶりに書いていこうと思う。
改めて。私の名前はケイティナ。この世界に何故か転生した元フロムゲー廃人です。
繭から出たあのあと、私はカーリア館にいつの間にか建てられてた私専用らしい魔術師塔に引っ越した。
ラニ様の3部下の一人のイジ爺さんに聞いて見たけどなんか体を人形に変える直前くらいに作ってたらしい。そういえば攫われる直前くらいになんかトンカン音がしてた様な気がする。
そんなわけで念願の一人部屋ができたわけですが、これほとんどラニ様と一緒に住んでる様な気がするんだよね。
なんか一番上の部屋に妙な転送門置いてあるし、そこからラニ様しょっちゅう来るし、寝る時だいたいいつも一緒のベッドだし。
まあでも嫌な気はしない、ラニ様と一緒に寝るの楽しいしね。毎晩毎晩首筋にキスするのはやめてほしいけどね。毎朝みんなからの目線がすごいから。特にセルブスからの。
褪せ人君とは結構仲良くなった。きっかけは帰る時にお姫様抱っこしてくれた事。
ぶっちゃけイケメンすぎて惚れそうだった。顔も普通にタイプなんだよね、この褪せ人君。
でも何故か褪せ人君からあんまりジロジロ見ないでって言われたんだよね。なんかラニ様云々って言ってたけど全然なんでか分からない。私何かしちゃったかなぁ。
ってことをらに様に相談してみたら、次の日からは仲良くなれた。なんかちょっと怖がられてる気がするけど気のせいかなぁ。
そうそう、あの繭に長いこといたから、実は腐敗の制御を上手くできる様になったのだ。おかげでみんなと一緒に出かけられる様になりました。
まあでもモーグ君と戦った時無理しすぎたからか、あの時みたいに権能使えばバリバリ戦えるってわけじゃないんだけどね。セルブスに2度とやるなってめっちゃ怒られた。
正直姉様みたいに活躍できる様になるんだって思ってたからすごく悲しかったなぁ。まあでも外に出られる様になっただけマシだよね。ありがとう兄様(多分)。
そんな感じで私の周りは色々変わっちゃいましたが私は元気です。ラニ様が毎晩すごい形相で襲ってくること以外は楽しく暮らしています。
END
ちょっと諦めかけてたけど、諦めなかったので化け物にはならずに済みました。
ちなみに繭についての設定は100%捏造です。永遠に幼いなんて言われてるし多分こんな感じでしょ。
ちなみにこれで完結と言いましたが、番外編としてもう一本くらい書こうかなと考えています。よかったらもう少しだけお付き合いください。(また数ヶ月単位で時間空いたら許して)