ブルーアーカイブRTA 称号「崇高」獲得まで   作:ノートン68

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お待たせいたしました。
すまん、やっぱ中編要るわ()

前回のあらすじ

ベア「先生はクソってはっきりわかんだね!!」
先生大好き倶楽部「「「『………』」」」
セイア「お前の苦労をずっと見てたぞ」

サオリ「もう、頼れるのは先生しか……」
先生「おかのした」

リーダー「なんかいい感じにやられてくれ」
チームⅢ「ぐえー、死んだンゴー!」
メンバー2「ご飯うめっ……うめっ……」



キリエ・エレイソン(中編)

 

アリウス自治区に侵入して半刻が過ぎた頃。

旧校舎の回廊を走る先生と、アリウススクワッドが居た。

確執があった彼らは《儀式》を行わんとするベアトリーチェの企みを阻止し、贄とされる秤アツコを救出する為に奔走している。

 

作戦は順調だった。

もとよりスクワッドは、アリウス分校内でも精鋭の寄せ集めチーム。

テロに参加しなかった予備戦力とは戦力が比べ物にならない。

それに加えて先生の指揮も合わされば鬼に金棒といった様相である。

 

しかし、快進撃もここまで。

回廊に入る前は疎らだった敵影も、奥に進む程ソイツ達(ユスティナ聖徒会)はより多く湧き出て戦闘は激化の一途を辿った。

それでも彼女達の歩みを止めるには至らない。

疲弊しようが、傷を負おうが、立ち止まれない理由がそこにあった。

 

 

だがそれも、普段通りであればの話。

唐突にサオリの体が倒れた。

完全に意識が途切れるような、急に糸が切れた操り人形のように。

 

 

「ぐっ……うっ……」

「うわあ!?大丈夫ですかサオリ姉さん!?」

【──ッすごい熱だ!!】

「こんなになるまで我慢してたなんて……」

 

 

サオリがテロ時に使用した《偽神のカケラ》。

ソレはとある大人が作ったオリジナルを、化学の鬼才が改悪した諸刃の剣だ。

 

使用者へ強力無比な力を与える代わりに、大きな代償を以て全てを台無しにする可能性も兼ね揃えた劇薬。

山海経では仙丹と呼ばれているらしい。

 

兎に角、サオリの体はその代償に侵されていた。

とても満足に戦える状態では無い。

むしろ、ここまでよく気取られる事無く進めたと言ったところだ。

 

 

「大丈夫だ先生、こ、れくらい、どうって、こと……」

【ゆっくりして、想定より早く進んでるから。これ、解熱剤。】

「だめ、だ。ベアトリーチェが、日の出まで待つ確証なんて……」

「えぇ、全くその通りです」

「「【!?】」」

 

 

呂律の上手く回らないサオリを、押し留めようとする先生達に掛けられる声に振り向いた。

目的地への道の方角、そこにサオリの姿を嘲笑うようにベアトリーチェが現れたのだ。

 

今度は通信越しではない、生身で先生達の目の前に現れた。

自分達を虐げていた大人が現れ、ミサキ達の空気が張り詰める。

 

否、彼女一人では無い。

 

 

「チームⅤ以外の総員準備完了、合図まで待機」

【(あれ?あの子達って確か……)】

「ユスティナ聖徒会に問題なし、《聖女・バルバラ》の顕現を確認」

()()を捕捉、いつでも戦闘開始できます」

 

 

先生達を取り囲む大量のアリウス生徒達とユスティナ聖徒会。

数は大凡だが総勢100人は居るだろう。

ベアトリーチェは確実にここでスクワッド共々、先生を潰すつもりだ。

 

 

「……終わった、完全に包囲されてる」

「ぜ、全部筒抜けだったんですか!?」

「ここはアリウス自治区、私の庭ですよ?貴方々の行動は初めから私の手のひらの上」

 

 

そして、と前置きしてサオリに視線を向ける。

 

 

「サオリ、貴方の言う通り既に儀式は始まっています」

「なぜ、儀式は日の出にと……!?」

「本来ならもう少し待った方が良かったのですが……何よりも先生、貴方の排除を優先しました」

 

 

無数の目は先生を睨んでいる。

先生を過小評価も、自身を過大評価もしない。

だから自分の持つ最大戦力をここに投入したのだ。

無論、《大人のカード》を使われようとも。

 

 

「見なさい。ロイヤルブラッドの神秘を搾取し、キヴォトス外からの力を利用して、私はより高位な存在と成りました」

 

 

ベアトリーチェに繋がれたパスが神秘を、力を送り込む。

尋常ならざる雰囲気だが、先生達はベアトリーチェを止められない。

アリウスチームとユスティナ聖徒会が睨みを効かせているからだ。

 

徐々にベアトリーチェの体に異変が起き始める。

ホモの作成した《神名のカケラ》は、所詮紛い物の力でしかない。

そこには何の神性も宿らないのだから。

 

だが、この儀式で手に入れる力は違う。

作り物では無い、全てが本物だ。

秤アツコの神秘、そしてキヴォトス外の()()の力。

 

故に肉体が変質していく、体が力に見合った作りに置きかわっていくのだ。

常人であれば正気が薄れそうな光景だが、ベアトリーチェは今にも高笑いしたい程に上機嫌であった。

 

 

「(私は、貴方々とは違うのですよ)」

 

 

先生に《契約》を台無しにされ、機会を失った黒服。

美学だのなんだのと余計なものを崇高に見出すマエストロ。

届きそうだった崇高から、自ら手を引いたホモ。

唯一計画は破綻していないが、冗長すぎるゴルコンダ。

何を考えてるのか分からないデカルコマニー。

 

そして《シッテムの箱》を有効に使えば、天下を取れたかもしれない先生。

 

彼らを出し抜いて自分が先頭に躍り出た、いやゴールしたのだ。

真実に近づいてる大人の中で自分が出し抜いた、そんな優越感が心を満たす。

 

 

「あ、あの姿は、本当にマダムなんですか……?」

「一緒な訳ないでしょ、あれはもう()じゃない」

 

 

ミサキの言う通り、元の彼女の面影は残っていない。

 

顔を覆っていた羽は全て花開き、

ドレスの裾と両肩から羽のように伸ばされた枝は、細く枝分かれ、

巨大化と反比例するように細くなった体躯。

極めつけは後光の様に光る()()()()()()()()

 

彼女は真性の怪物となった。

 

 

「お待たせ致しました、これが私の真の姿。もはや人の領域から逸脱した存在、私は《崇高》へと至ったのです」

「そんな、事は、どうでも……いい!!」

「おや?」

 

 

フラフラと高熱に魘される様に立ち上がるサオリ。

その目線はベアトリーチェへと向けられている。

 

 

「姫は、アツコはどうした!!」

「あぁ、彼女ですか?───死んだと言ったらどうします?」

「!?」

 

 

心臓が止まるような錯覚を覚えた。

冷や汗が溢れ動悸が高まる。

視界がグニャリと曲がって気分が最悪だ。

 

覚悟はしていた。

彼女はどんな悲劇にだって、耐えれるように訓練してきたから。

 

そんな事はなかった。

唯一の聖域が、秤アツコを失ってサオリは初めて気がついた。

 

これは天罰だ。

これがやりたいようにやった自分への罰だと。

全ては虚しい、だから仕方ない事なのだ。

 

 

そして──倒れそうになった体を誰かが支えた。

 

 

【嘘をつくなよベアトリーチェ、お前がアツコをみすみす殺すなんて事は有り得ない】

「……なぜ、そう言い切れるのですか?」

 

 

ベアトリーチェでは無い。

あくまでサオリ達を安心させる為に言い聞かせる先生。

 

 

【儀式は完全じゃないんだろう?なら完遂させる為にアツコは生かさなきゃいけない】

「……確かに聞かされてた予定よりずっと早かった」

「なら、姫ちゃんは!?」

【うん、()()()()()()!!】

「黙って聞いていれば、楽観的な予測を立てる貴方も私の事をとやかく言えませんよ?」

 

 

痺れを切らしたベアトリーチェが毒を吐くが、先生は気にもしない。

それどころか逆にベアトリーチェを煽り始めた。

 

 

【そうかもしれない。けど、お前は絶対にしない。()()()のお前は必ず保険を用意する】

「……先程から口が軽いのでは?貴方達は追い詰められているのですよ?」

【お前こそ、タダで済むと思っているのか?】

 

 

普段とは予想つかないドスの効いた声で、ベアトリーチェを脅す先生。

ベアトリーチェよりスクワッドの面々がビビってるくらいだ。

その手には既に《大人のカード》が握られていた。

 

《大人のカード》の事はベアトリーチェも知っている。

代償を払い奇跡を起こす不思議なカード。

黒服やホモでさえ解析の済んでいないオーパーツ。

 

真っ当に戦っても良いが、アリウスの戦力が削がれるのは痛い。

結局、巨大な力を手にしようがやる事は変わらない。

相手の嫌なところを全力で突く、それがベアトリーチェのやり方だから。

 

 

「錠前サオリを狙いなさい」

「ッ!?」

「卑怯と言って貰って結構、それだけ先生の《大人のカード》の力は脅威ですから」

【……もう、お前は喋るな】

 

 

生徒を人質に戦おうとするベアトリーチェに完全にキレた先生。

しかし、その思考は比較的クリーンだ。

ベアトリーチェに対する敵意しか無いから。

 

そして遂に激突の時がやってくる、先手を取ったのはアリウスチーム。

その銃口はある1点に集中している。

無数にある銃弾の嵐で先生は消える────筈であった。

 

 

「─────は?

 

 

弾丸の全てがベアトリーチェに放たれたのだ。

先生達を取り囲んでいたはずのアリウスチームが、全員銃口をこちらに向けている。

 

腐っても《崇高》、その体には傷1つない。

理解不能といった感じで固まっているベアトリーチェを他所に、1つの小隊が顔のガスマスクを外す。

ベアトリーチェはその顔を見てようやく合点がいった。

なぜ急に自分を裏切ったのか、なぜチーム全員が裏切る事になったのか。

なんせ彼女たちは……

 

 

「その様子だと本当に気付かなかったんだな」

「どういう事ですか!?チームⅤは捕らえられて牢屋に居る筈!!」

「牢屋には襲いかかってきた奴が代わりに入ってる」

【(気づいてなかったのか……)】

 

 

最初の違和感。

あの時確実にチームⅤは居たのに不在として扱っていた事。

ベアトリーチェはその違和感に気づけなかった、ただそれだけの話。

 

スクワッドでさえ捨て駒扱いだったのだ、その他の末端チームへの関心はほぼ皆無。

髪型を変え、ガスマスクを付けるだけで容易に騙す事が出来た。

 

 

「ベアトリーチェ、お前の敗因は2つ。

1つは、私たちの入れ替わりに気付かなかった事、

もう1つは、オーナーを侮辱した事だ。」

「いつか裏切ると予想はしていましたが、まさかこのタイミングとは……しかも敗因?この私をコケにして!!」

 

「味方って事でいいんだよね?」

「どうとでも捉えて結構、我々はオーナーの手足だ。だが今だけは───アリウスのチームⅤとしてコイツを倒す」

【これは頼もしい味方だね!】

 

 

この決着はアリウスが付けるべきだと、リーダーはずっと考えていた。

ホモの計画では、本来ならもっと早くにベアトリーチェを()()算段だったのだが……。

リーダーの懇願とあってはホモも無視できない。

結果、ベアトリーチェの状態を観察&記録する事で手をうった。

 

 

「ベアトリーチェ、貴様はオーナーの掌の上で転がされてただけに過ぎない」

黙りなさい!!

 

 

掌から赤黒い光線が放たれる。

回避したチームⅤ達だが、その威力はご覧の通り。

地面が抉れ、溶けている様からまともに受けてはいけない事が窺い知れる。

いくら小物臭くても彼女は崇高擬き、秘める力は絶大であった。

 

 

「もういいです、えぇ……ユスティナ聖徒会をトリニティとゲヘナに広げました。全て台無しにして差し上げます、先生も、ホモも、私が排除します。キヴォトス全体がどうなろうとも!!」

 

 

裏切ったアリウスチームの穴を補う様に、追加のユスティナ聖徒会が配置される。

恐らく今頃外でも戦闘が起こる頃合いだろう。

今度こそ本気だ。

 

 

「戦力は前回の比ではありませんよ?本物の不死の軍勢ですから──!!」

【彼女たちは負けないよ。そして、お前はここで終わりだベアトリーチェ!!】

 

 

大人のカードが眩く光った。

 

 


 

トリニティ自治区のとある区画。

そこには2人の生徒が居た。

 

 

「そろそろ出番だよミカ。緊張してるかい?」

「まっさかー☆傷だってとっくに癒えたし万全じゃんね!」

 

 

もう普通に出歩いてるセイアと、頬に絆創膏を貼ったミカだ。

彼女たち以外の戦力になりそうな生徒は全て所定の位置に着いている。

全てはこれから起こるであろう、大量のユスティナ聖徒会との戦いに備えるためだ。

 

 

「予知夢通りならここにも大量に現れる筈だ。相手の切り札的存在であるバルバラもね?」

「つまり全部殴り飛ばしたらいいって事ね、分かりやすくていいじゃん☆」

「脳筋過ぎないか?いや、その位気楽に考えてくれた方がいいか?」

「褒めてるの?貶してるの?」

「褒めてるよ」

 

 

当初こそ己の罪悪で押し潰されそうになっていたミカだが、こうして軽口を叩き合える程度には回復した。

未だに魔女呼ばわりする輩も居るが、彼女が屈することは無いだろう。

 

 

「魔女だった私だって救われたんだから、利用されただけのアリウスに救いがあっても良いよね?」

「ミカ……」

 

 

──私だけが助かるなんて、そんなの不公平じゃんね

 

口にこそ出さなかったが、それがミカの本心だ。

勿論恨んでだっている、勝手にセイアを殺そうとしたりしたのだから。

それ以上に彼女はお互いが公平に不幸になる結末よりも、幸運を迎える未来を望む。

 

 

「だから祈るね、アリウスの皆」

 

 

ミカは祈る。

いつかアリウス達の苦痛が癒えることを彼女達に未来が、次の機会がある事を──

 





次回こそキリエ・エレイソン(後編)
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