──だから私は墓場から這い出た──
──地獄の番犬を従え、棺桶を引っ提げて──
──君に纏わり憑く悪い夢を、全部壊す為に──
EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 0
───これはそう遠くない未来での物語───
───例え全ての流れが変わろうとも───
───例え倒すべき存在が別に変わろうとも───
───ただ、全てを破壊する───
───それが…───
───
夜の帳が落ち、空へと月が高く上る。
窓から入り込む一筋の月明かりだけが暗闇に包まれた室内を照らし出す。
沈黙に支配されたその部屋に彼女…アッシェ・ノーグレイヴの姿はあった。
自室と言うのは余りにも物が少なく、必要最低限の物しかない寂しい空間。
壁に備え付けられた時計の秒針が動く音だけが響く空間でアッシェの座るソファーの傍に立てかけられた武装棺桶【デスホーラー】と小さな机の上の置かれた巨大な二丁拳銃【ケルベロス】だけがひときわ異彩を放っていた。
普段であればこれらの装備は自室に置く事は無い。にも関わらず置いてあるのは何故か?
それはS13地区に存在する基地から発信された、とある作戦への応援要請が全ての始まり。
そしてその作戦へと参加する為にこうして準備をしている訳であり、迎えがやってくるその時までアッシェは静かに待機している訳であった。
「…」
沈黙の中、彼女の頭の中では応援要請の際に知らされた情報が流れていく。
今回の敵は鉄血でもマフィアでもない。パラデウスと言われる組織であった。
アッシェからすれば初めて聞く組織の名であり、今回の応援要請で初めて知ったとも言える。
だが、その行いは外道の極み…いや、この世の悪そのものと言っても過言ではなかった。
そして何よりも───
〈とある一人の少女…川崎和紗と呼ばれる少女が助けを求めている〉
それだけで、アッシェが戦いに赴くには十分過ぎていた。
「…」
ちらりと時計を見る。そろそろ迎えが来る頃合いの時刻。
ゆっくりと立ち上がり、アッシェは愛用のコートを羽織ると、いつもの装備品を纏い、机の上に置いた二丁の巨銃を太股に配置したホルスターに差し込むと傍に置いてあるデスホーラーを手に取って背負う。
デスホーラーの重さに引っ張られ鎖が軋む音が響いたと同時に部屋のドアが開く音がアッシェの耳に届く
扉へと視線を向ければ、そこにはG36cが立っていた。
「行くのですね…?」
その問いの意味をアッシェは知っている。
静かに頷き肯定の意を示す彼女にG36cの表情は一瞬だけ悲しみの表情へと変わった。
G36cはアッシェが特殊な力を有している事を知っている。その特殊な力は確かに戦いにおいては有利へと運び、大量の敵が来たとしても生き抜く可能性を大幅に上げる。
そうだとしてもG36cはアッシェが今回の作戦に赴くのに迎えが訪れるこの時まで納得できていなかった。
作戦である事は間違いない。それが指揮官の命令であればG36cら戦術人形はその命令に従うだろう。
戦場で破壊される可能性を考慮して、作戦前にバックアップを取って置き戦場へと赴く。
例え破壊されたとしても、事前に取っておいたバックアップと新たなボディで再び生き続ける。
戦術人形というのはそういうものなのだ。だがアッシェは違う。
その違いをG36cは知っているからこそ、納得出来ずにいた。
「…必ず帰る」
納得できない、行かないでほしいという思いが顔に出ていたのだろうか。
それに気づいたアッシェはG36cへとそう告げる。
小さな声であったが、その一言はG36cの不安を和らげるものとなっていた。
「…はい。必ず帰ってきてください」
約束ですよ…?と伝えてくるG36cにアッシェは頷き、部屋を後にする。
一歩踏み出す度に響くブーツの音と共に棺桶と鎖が軋む音が廊下に響かせながら、歩き去っていった。
アッシェが送迎の為の合流地点へとたどり着いた時には既に一機のヘリが待機していた。
それが今回の作戦の応援要請を出したS13地区基地から派遣されたものだと認識するとアッシェはそのヘリへと歩み寄る。
「…あれは」
ヘリへと歩み寄ってくるアッシェに気付いたのだろう。
一人の女性がヘリから降り立ち、アッシェを迎えた。
「アッシェ・ノーグレイヴだな?」
そう尋ねてきた女性にアッシェは静かに頷きながら気付く。
この人物こそS13地区基地の指揮官…シャマールであると。
「S13地区基地、指揮官のシャマールだ。応援要請を受けてもらい感謝する」
「…」
「無口だな。お喋りはあまり得意ではないか」
「…」
「…ほ、本当に無口なんだな」
極端なまでに無口なアッシェにシャマールは引き攣った笑みを浮かべる。
が、一方で彼女の頭はアッシェ・ノーグレイヴという謎が多すぎる人物に対して疑念を抱いていた。
それもその筈で今回の作戦に参加するにあたってアッシェの情報は最低限の事しか知らされていない。
その理由は複雑なものであるのだが、特にアッシェが■■■■と■■■■の混ぜ物である事が大きい。
そしてそれは人としての理を破り、ろくでなしとなった者達によって生み出された技術によるもの。
安易にこの情報を明かせば、それを狙う者と調べようとする者も確実に現れるという事から、情報は最高機密指定として扱われ、情報も本当に最低限のものしか知らされていない。
(まるで死体みたいだ)
情報に対する少なさもあるが、シャマールが一番に思ったのはアッシェに対する第一印象だった。
白色の髪に、虚ろな赤い瞳。そして冷たく生気を感じさせない白い肌。
そこから思う印象はまさしく死体と思ってもおかしくないであろう。
(いや…)
そう思った所でシャマールはアッシェに対する印象を変えた。
理由は彼女がホルスターに収めてある銃と鎖で繋いだ棺桶らしきものが、そして纏うコートに施された十字架の装飾、そして纏う雰囲気があるものを連想させたからだ。
(こいつは死体ではない…)
パラデウスという組織を、そしてある男を許さぬ者らが集い出す。
それは、最早決まりきった流れだったであろう。故にパラデウスもそれを想定出来ていたに違いない。
だが一つだけ想定できていなかったというのであれば…
(死神だ)
全てを破壊する灰被りの死神が現れた事であろう。
───助けを求める声に呼応して今、死神は墓場から地へと這い出る───
───一人の少女を助ける為───
───携えた地獄の番犬と棺桶で彼女は破壊する───
───悪い夢を、全てを───
という訳で少し未来の物語として、アーヴァレスト様作「チート指揮官の前線活動」のコラボ作戦にうちのアッシェ・ノーグレイヴが参加しますので、その作戦前…集結前の話を描かせて貰いました。
お迎えのシーンはこんな感じで良かったんやろうか…
また本編におけるアッシェの情報が少ないため、この後書きの方にアッシェの情報と使用する武器の一部を記載します。
(機会を見て、詳細欄を設けますので何卒ご了承くださいませ)
:アッシェ・ノーグレイヴ
背に施された十字架とベルトが備えた白いコートを羽織った謎多き女性。
大型二丁拳銃【ケルベロス】と大量の重火器を内蔵した武装棺桶【デスホーラー】を駆使し、重戦車の様なパワフルな戦い方をする。
無口な性格であるが、問われたら頷いたりなど、ある一定の受け答えは出来る。
髪は長く白く、同様に肌は白い。前髪で片目を隠しており、露わになっている赤い瞳は虚ろな一方でその瞳には確かな意思が存在している。
何処か熱いものを秘めた彼女だが多くの謎に包まれており、知る者もごくわずかである。
【挿絵表示】
※画像は貼ってありますが、一応イメージと思ってくれると幸いです
:ケルベロス
アッシェが持つ銃の名称であり総称。正式名称は「ケルベロスシリーズ」。
とある計画によって生み出された、とある者の専用武装として開発された。
地獄の番犬の三つの首の名が与えられており、【ライトヘッド】【レフトヘッド】【センターヘッド】と三丁存在する。その内、【ライトヘッド】と【レフトヘッド】はアッシェが使用している。
:ライトヘッド&レフトヘッド
アッシェが使用する銃。口径15mm、全長約60㎝、重量は普通ではない程あり、扱えるのはアッシェのみ。
十字架のパーツが赤色なのが右手用の【ライトヘッド】、十字架のパーツが白色なのが左手用の【レフトヘッド】。
※原作と同じもの。特に変わり無しです
:デスホーラー
両腕に巻き付けた鎖と繋がった棺桶であり、大量の重火器を内蔵した武装棺桶。
十字架と髑髏の装飾が施されており、アッシェのもう一つの武器と成り得るものである。
※イメージとしてはGungrave GOREにて全ステージを難易度ノーマルでクリアした際に貰えるEvoデスホーラーとGungrave over doseにて登場したデスホーラーのデザインを合体させた感じです。