Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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─撃ち合え─


EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 6

辺りが静まり返る。

転がる亡骸に残骸。

それらが全てが森谷と呼ばれた男とシャマールによって生み出されたものであると誰かが告げれば、誰であろうと納得してしまうであろう。

それ程までにこの光景が出来上がるまでの時間は僅かなものであり、何よりそれは蹂躙そのものであった。

そんな蹂躙劇を披露した二人は既に研究所内へと消えており、今この場にいるのはアッシェのみ。

シャマール、森谷に続く様にアッシェも研究所内へと足を踏み入れるかと思えば、彼女は研究所の入り口前で静かに立ち尽くしていた。

まるで誰かを待っている様な。そんな雰囲気を感じさせる。

彼女は一体何を待っているのか。その答えは、緩やかな風が吹いた直後に明らかとなる。

 

──ジャリ…

 

吹いた風の中に紛れるようにして聞こえた地を踏みしめる音。

その音に反応してアッシェはゆっくりと振り向き、体を声の主の方へと向ける。

 

「……」

 

それは人の形をしていた。あれほどの蹂躙を受けたにも関わらず、まだ人の形を保っていた。

バイザーは破損し、焼け爛れた人工皮膚との間からは中身が剥き出たまま。

宿した瞳には虚ろであるが、足取りはしっかりとしたものであった。

そして奇跡的に生きていたラピスの体の一部は、何故か青白く変色し結晶化していた。

 

「……!」

 

ラピスの身に起きている変異にアッシェは覚えがあった。

それを確かめる為に左手に握ったレフトヘッドを素早く構えてラピスへと発砲。

銃声と共に放たれた弾丸が直撃しラピスの体が後ろへと仰け反る。

そして直撃を受けた右腕をゆっくりと上げると、手首から先がまるで鋭利なもので切られた様になくなっていた。

ただ断たれた部分から一滴も出血していない。それどころか──

 

「……」

 

不気味な音を立てながら何かが溢れ出し、やがて無くなった筈の右手が文字通り生えていた。

ラピスには無い筈の再生能力。どこでそんなものを得たのか、誰にも分からない。

だがアッシェには分かっていた。故にその瞳は鋭かった。

レフトヘッドを構えたまま動かないアッシェ。

対する変異型のラピスは足元に落ちていた二丁の拳銃を拾い上げた。

どれもパラデウス製のものではない。どちらとも新ソ連の兵士が持っていた実弾式の拳銃だ。

予備の弾倉も拾い上げ、ラピスはゆっくりと体を動かし両腕を交差させながら二丁の拳銃を構えた。

それが指し示すものなど一つしかない。持っていた十字架型の重火器を手放し、ホルスターからライトヘッドを引き抜くアッシェ。

片足を一歩後ろへを引き、右腕を手前に引きながら二丁の巨銃の銃口をラピスへと定めながら普段開かれない口を開いた。

 

「…来い」

 

「…ああ、行かせてもら、おう…」

 

言葉すら喋れるに至ったのか。アッシェの言葉に答えるラピス変異型。

直後に訪れる静寂。これから起きる事を見届ける様に、辺りが静まり返る。

ジリ…と地を踏みしめる音が微かに響く。そして次の瞬間──

 

「「ッ!」」

 

両者が動き出した。

片や変異型、片や生きる屍。

互いに携えた双銃が火を吹いたのは、ほぼ同時であった。

飛び交う弾丸。宙で連続で炸裂する火花は両者の銃から放たれた弾丸がぶつかった証拠。

円を描く様に駆けながら銃弾と薬莢が舞い、被弾しながらもその肉体は瞬く間に治癒していく。

そして次の瞬間、まるで指し示した様に両者は地面を蹴り、間合いを詰めると同時に接近戦へと持ち込んだ。

突き付けられる銃口。迫るソレを前に反撃に出る為に手にした銃で仕留めんと定める。

発砲。放たれた弾丸は両者の頬を掠めたのみに終わる。

伸ばした腕が交差し、二人の距離はほぼゼロに。

密着状態になるも、素早く振りほどき後方へと飛び退くアッシェとラピス変異型。

 

「…」

 

「…」

 

ここまではただの慣らし。

身体は十分に温まった。ここから始まるは───

 

「!!」

 

「…!」

 

本当の殺し合い。

地を砕かんと言わんばかりの脚力で地を蹴り、駆け出す二人。

再び響くは無数の銃声。二丁持ちの利点を生かし牽制と本命の弾丸を交え、飛び交う弾丸の嵐の中を掻い潜る。

両手に持ったケルベロスからマシンガンの様に15mmの弾丸が次々と吐き出され、ラピス変異型の体を削り、対するラピス変異型が両手に持った拳銃から放たれる弾丸がアッシェの体を削る。

だが二人の表情が歪む事は無い。淡々と相手が死ぬまで銃を撃ち続けていく。

するとアッシェが放った弾丸がラピス変異型が右手に持っていた拳銃に着弾、破壊。

直撃の反動で腕が明後日の方へと飛ぶも変異した影響かすぐに持ち直しながら、ある物が視界の端に映る。

 

(…軽機関銃。まだ使え、るかどう、か…)

 

地に倒れ伏す兵士に傍に転がる軽機関銃。

左手に持った拳銃と同じく、それは新ソ連兵が持ち出していたものだ。

拳銃を一丁失った今、圧倒に火力に欠ける。

ただまとも動くかどうかすら分からない。手にした所で撃てない可能性だってある。

だが──

 

(…)

 

迷う暇すら命取りになるのであれば、実行しない理由など存在しない。

 

「ッ!」

 

「……!」

 

直撃を狙った動き。

狙いを定める僅かなタイミングを突くようにラピス変異型は進行方向へと跳躍。

飛び出すような態勢で、しかしてその腕は地に転がった軽機関銃へと伸ばされる。

武器の補充。それに気づいたアッシェはケルベロスの狙いはラピス変異型から、軽機関銃へと向け発砲。

しかしそれよりも早くラピス変異型の手は軽機関銃を掴み取り、コッキングボルトを操作。

そのまま片腕を構え、軽機関銃の銃口をアッシェへと向けて連射。

二丁拳銃の連射よりも更に上を行く弾幕。

圧倒的な弾幕を前にアッシェは横へと飛びながら回避。宙でライトヘッドをホルスターに納めると彼女もまた武器の補充へと移行。

放り投げた十字架型重機関銃を手に取り、態勢を立て直すと同時に構えてすぐさま引き金を引いた。

お互いに作り上げる弾丸の嵐。横へ横へと移動しながら、二人は研究所内部へと侵入。

薄暗がりの中、発射時のマズルフラッシュだけが灯りを灯し、そして気配だけで敵の位置を把握する。

やがて銃弾での弾幕は榴弾を交えた弾幕へと変貌し始める。

銃声と爆発音だけ奏で上げるショーは、あろう事かアッシェよりも先に研究所内部へと突入していった森谷とシャマールがいる所まで近づいていっていた。

 

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

遠くからの音は彼の耳に聞こえていたのだろう。

研究所内部を移動していた森谷にその音に反応して足を止め、隣にいたシャマールが声をかける。

 

「いや…なんか聞こえねぇか?」

 

「ハッ、とうとう幻聴まで聞こえる様になったか。医者に診てもらえ」

 

「いや、マジでなんか聞こえんだよ!!お前も耳を澄ませてみろって!」

 

森谷に言われて耳を澄ませるシャマール。

意識を集中させ、僅かな音を聞き逃さない。

やがて、彼女の耳にその音は聞こえてきた。

そして気付く。その音が少しずつであるが大きくなってきている事に。

 

(これは……近づいてきている?)

 

「おい、ありゃあ…突出してドンパチかましてたネェちゃんじゃねぇか?」

 

「なに?」

 

森谷が向いている方向。

その方向へと視線を向けると通路の奥から見覚えがある人物二人が走ってきていた。

 

「あれは…アッシェさんか?それに彼女と撃ち合っているあれは、あの戦術人形もどきか!?」

 

「おいおい、全部仕留めたんじゃねぇのか?」

 

「そう思っていたんだがなぁ!」

 

そう返すも束の間。

アッシェとラピス変異型が作り上げる銃撃戦は二人の傍にまで来ていた。

巻き込まれまいと二人はその場から飛び退く。

直後、重火器で激しい撃ち合いを繰り広げていたアッシェとラピス変異型は持っていた得物を手放し、最初に戦った時の状況を再現するように二丁の拳銃を構え、その銃口を突きつける。

先ほどまでの銃撃戦が嘘の様に静まり返り、突きつけた銃と共に二人は睨み合う。

 

「さぁてどうするよ…。これじゃあ、援護も出来ねぇ。ガンカタでもおっぱじめるつもりかね」

 

「どちらにせよ…今は様子を見守るしかあるまい」

 

その様子を離れて見守っていた二人は静観を決め込む事にした。

静まり返ったこの場で、アッシェとラピス変異型は動かなかった。

その時が来るその瞬間まで…。




ご久しぶりです。

参加者様が登場させた敵の一体をお借りして、再登場させて頂きます。
身体の一部が青白く結晶化していますが…ガングレイヴを知っている方は多分、相手がどういう状態なのかを知ってるかも。
何故現れたのかは次回にて明らかにするつもりです。

では次回ノシ
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