Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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─戦い続ける歓びを─


EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 6.5

銃声だけが絶えもなく響き渡る。

転げ落ちる薬莢は幾多にも上り、壁に刻んだ弾痕の数もまた幾多にも上る。

駆け出した足は止まる事を知らず、引き金を引く指もまた止まる事を知らない。

何かの縁か、或いはそういう運命にあるのか。

灰被りの死神と変異した彼女との戦いはその激しさを増していく。

誰がどう見ても凄まじく感じさせる程に。

現在進行形で積み上がる空の薬莢と銃声と共に、命無き者達の命の取り合いは激化の一方を辿っていた。

 

「!」

 

「……!」

 

乾いた音と轟音が場を駆け抜ける。

放たれた弾丸が頬を掠め、次弾で放たれた弾丸が肩を抉り、まるで砕けた様な音をその体から響かせる。

流れる血はそこになく、止まることの無い脚と共に構えた銃は鉛弾を吐き出すのを止めない。

踊る様にステップを踏み、命を刈り取るだけの一撃を放ち、隙を与えぬように素早いリロードを繰り返す。

ただそれだけ。だがそれ故に二人は倒れない。ただただ銃を連射する。

どちらかが死ぬその瞬間まで。

 

(……強い)

 

元は自我を持たぬ存在で、今や変わり果てた存在。

飛び交う銃弾の中で、彼女は思う。

虚ろだというのに。灰被りだというのに。

にも関わらず、熱い意思を宿した死神の強さに。

 

(……惜しいな)

 

もっと違う形であれば、この戦いももっと長く続いていたであろう。

だがそれが長く続かない事を、彼女がよく分かっている。

身体の内側から蝕まれていく感覚。そうしない内に飲み込まれる感覚を分かっている。

無理やり与えられた命。たった僅かな時間しかない、そんな命。

だからこそ、惜しい。

何故なら───

 

「…楽しいのはこれからだと言うのになぁ…!」

 

これこそが何も成せなかった者の最後の愉しみなのだから。

戦い続ける歓びにいつまでも浸っていたい。それを叶えてくれる相手が居るのであれば尚の事。

 

「…!」

 

身体に奔る衝撃が意識を刈り取ろうとする。

直撃による被弾。だが膝は付かない。

今も尚、浸食し続ける体を動かしラピス変異型は駆け出す。

狙いもへったくれもない。只々相手に近づくためだけの銃撃を放つ。

対するアッシェもまた同じに駆け出し、ケルベロスを連射。

その距離が縮まる度に被弾する体。いつ死んだって可笑しくない程の被弾。

自身を顧みない行動。それでもお構いなしに二人は撃つ。

 

「!」

 

「…!」

 

近距離まで来た時。

互いに放った弾丸が、互いに持っていた銃を弾き飛ばす。

銃は空を舞い、片腕は上へと飛び態勢が崩れる。

生まれた一瞬の静寂。銃声が静かに消えていく。

だが二人は止まらない。

 

「「!!」」

 

握っていたもう片方の銃を素早く突きつけ、発砲。

ほぼ同時。狙いもほぼ同じ。

放った弾丸が手にしていた銃を吹き飛ばすも、二人は素早く切り返しに移行。

ラピス変異型は地面に転がっていた拳銃へと手を伸ばし、アッシェは腰の後ろに収めていた二丁のリボルバー『オルトロス』へと手を掛け、抜き放つ。

 

「!」

 

が、そこでアッシェの動きは止まった。

そしてその耳に、罅が走る様な音を聞いた。

 

「…グッ……ッ、こん、な時に、か…」

 

身体の半分が青く染まりながら、顔面に走った亀裂を手で抑えながら片膝をつくラピス変異型。

それでも地面に転がった銃へと手を伸ばす事を止めない。

だがその手は銃に中々に届かない。そうしている間にも、体の節々から亀裂が走る音が響き渡っていた。

 

(まだだ…!まだ…私は…!)

 

ガタが来た体に鞭を打ちながらラピス変異型は銃へと手を伸ばそうとする。

対して体は言うことを聞かない。

ここまでかと思われた時、ラピス変異型の視界に一丁のリボルバーが滑り込んでくる。

 

「!」

 

十字架の装飾が施され、銃身が異様に太いリボルバー。

そんな銃が滑り込んできた方へと重たくなった頭を向けるラピス変異型。

そこには銃を投げ飛ばしてきたであろうアッシェの姿があって、現に彼女の左手には銃が握られていない。

 

「…フッ」

 

自ら銃を投げ渡してきたアッシェの行動に笑みを浮かべながら、それを手に取るラピス変異型。

先ほどまで使っていた銃と比べると重いが使えない訳ではない。

一度シリンダーを取り出し、弾数を確認しながらラピス変異型はアッシェを伝える。

 

「…終わりにしようか」

 

「ああ…」

 

シリンダーを元の位置へと戻し、ゆっくりと立ち上がるラピス変異型。

身体は今以上に重たく、立つだけでもやっとの状況。

到底戦う事すらままならないにも関わらず、彼女は笑みを浮かべていた。

 

「すまんな…」

 

「……別に良い」

 

それが両者にとって終わりを告げる合図。

戦いの音も、誰かの話声も、その息遣いすら聞こえない静寂の戦場。

手にした銃の重みだけが感じられるその場で二人は静かに佇む。

最後の一発を放つその瞬間まで。

 

「ッ!」

 

「……!!」

 

同時に構えた銃、同時に突きつけられる銃口、同時に引かれる引き金。

起こされた撃鉄はシリンダー内に収められた弾丸の雷管を叩き───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───二つの銃声が同時に鳴った───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わり、か…」

 

そんな声が静かに響く。

額に開いた風穴から青い血を流しながら壁に凭れ座り込む少女は残念そうに呟く。

浮かべた表情はどこか不満げで、どこか満足そうでもあったが。

染まっていない肌が、顔の左半分程度しか残っていない中で少女は笑った。

 

「……俺の代わりに奴らを殺せ、か。訳の分からない薬を打っておきながら良く言う…」

 

脳裏に浮かぶは名も知らない男の姿。

何処か軍属を思わせる容貌から、新ソ連の兵士なのだろう。

まるで全てを恨んでいる様な表情で、死にかけの彼女に手にしていた注射器を打ち、投与した。

青く、この世のものとは言えない液体が入ったものを。

 

「その代償がこれとはな…。まぁ……何も出来ずに終わる、よりかは……ま、だ…マシか…」

 

動かすのもやっとの頭を、目の前に立つ死神(アッシェ)へと向ける。

無表情だというのに、虚ろな瞳の奥に明確な意思を宿した死神を見て彼女はフッと笑った。

 

「不思、議…だ、な……勝てなか、ったと言うの、に……満足、している…自分が、いる…」

 

身体が崩れる様な音がし始める。

 

(潮時か…)

 

浮かび上がる青い光。

感覚の一つ一つが失われていく。それでも尚、彼女の目は死神を見つめる。

しかしそれも束の間の事。瞼は重たくなり、力が抜け、体は冷たくなる。

意識すら保つ事もやっとの中、彼女は死神へと静かに告げた。

 

「礼を…言、う……」

 

何も出来ずに終わる事が無かった今を。

満足に死ねる事実に。

体が消失するその瞬間まで、彼女は笑みを浮かべていた。




この後、ダメージを負い過ぎたアッシェさんは森谷さんに輸送されるんですけどね。

はい、これでラピス変異型との戦闘は終わりです。
どうやら彼女、新ソ連兵が秘密裏に持って来ていた怪しい薬を投与された事により、再復活を果たしたそうです。
投与した本人は自分の代わりに敵を倒せと言ったらしいですが、ラピスからすれば何も出来ずにボッコボコにされたのが大きく影響していたらしく、せめて戦って死にたいという願いを叶える為に、本来の願いを無視して(一応叶える気ではあった)体が浸食されながらもアッシェとドンパチしていました。
因みに最後のシーンは、初代ガングレイヴ 九頭 文治戦で見れるムービーシーンを意識してみました。脳内bgmはもちろん「アレ」です。

では次回
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