Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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EP02 破壊者

轟音の様な無数の銃声が、放たれた最後の一発によって静かに止む。

熱を帯びた空の薬莢が地面を転がり、周囲に散らばった生体パーツの前を通り過ぎる。

硝煙と土埃が舞う。スケアクロウの視線はその中からゆらりと現れた一体の人形へと向けられる。

十字架の装飾とベルトが施された白いコート、腰に装備したカートリッジベルト。

真っ白な髪に白い肌、前髪で片目を隠し、スケアクロウを見据える赤い瞳は虚ろだが、確かな意思が存在していた。

何よりも彼女が放つ雰囲気がこの異様さを顕著に示していると言えた。

 

(この感覚は一体…。それにこの人形は何者?)

 

地面から現れたその人形にスケアクロウは今まで感じたことの無い感覚を覚え、同時に目の前にいる人形に対して電脳が導き出した答えに困惑していた。

 

(識別できない…?そんなこと、あり得る筈が…)

 

そう否定としても電脳は目の前にいる敵を人形か人間かを判断出来ずにいる。

どうしてなのかと思いたくなるが、それすらも後回しにしたくなる程にスケアクロウは相手が持つ武器とそれを扱えることの出来る敵…アッシェに対して警戒心を最大にまで強めていた。

 

(一発であの威力…)

 

両手に持つ二丁の巨銃。

異様なまでに銃身が太く、十字架が施された巨大な銃。

右手と左手、それぞれ色が違うのか備えた十字架の色は赤と白を異なっている。

そしてその威力は、自身の目の前で無残にも破壊された人形らしき亡骸がそれを物語っていた。

 

(ほんの僅かに反応が遅れていたら今頃、私がこうなっていたでしょうね…)

 

地面からあの人形が飛び出してきた時、スケアクロウは咄嗟の判断で傍にいたリッパーを前へと押し飛ばす事で大口径の弾丸の嵐から逃れていた。

そしてその目に映ったのはたった一発で頭が木端微塵に吹き飛んだリッパーの姿であり、その直後に起きたのはあの嵐。

その嵐が過ぎ去った後に残ったのは地面に転がった無数の薬莢とその中に混ざるようにして、跡形もなく破壊されたリッパーの亡骸という光景。

リッパーでこれであるのであれば、ハイエンドモデルでも同じ事。

不用意に真正面に立とうものなら、この亡骸と同じ末路を辿る事になるであろう。

 

(そしてあの鉄の箱…)

 

腕に巻きつけた鎖と繋がった鉄の箱。一見すれば重機関砲にも見える。

しかし重機関砲にしては余りにも大きすぎる。

何処か棺桶の様な形をしている事も相まって、ソレは余りにも不気味な雰囲気を漂わせていた。

 

(仕方ありません。不本意ですが一旦退きましょう)

 

スケアクロウの目的が敵の戦力を少しでも削ぐこと。

しかしこの人形と一対一で戦うのは不利と判断したのか、撤退する事を選んだ。

幸いにもこの教会の外をリッパーやヴェスピドと言った下級モデルらが囲んでいる。

後ろへと下がりつつ不気味な敵をピットによる一斉射撃で足止めして、離脱する。

その後は教会へと向かって集中砲火を浴びせればいい。

そう目論んだスケアクロウは沈黙を破るようにして、後ろへと飛び下がった。

 

「!」

 

スケアクロウが後退した事に反応して、アッシェは手にした二丁の巨銃…ケルベロスの引き金を引こうとする。だがそれよりも先にスケアクロウの周囲を飛ぶ三基のピットから無数の光線が放たれ、アッシェへと襲い掛かった。

あれだけの攻撃を一度に浴びれば助かる術など存在しない。

動けずにいたG36cとMP5は助けてくれた女性の無残な姿を想像してしまい、スケアクロウがニヤリと笑みを浮かべる。

その直後…轟音の様な銃声が鳴り響き、二発の大口径の弾丸が駆け抜けた。

一発はスケアクロウの頬を掠め、もう一発は彼女の特徴とも言えるガスマスクを弾き飛ばす。

 

「…!?」

 

この状況を覆す様にして駆け抜けた銃声にその場にいた誰しもが驚きを覚えた。

あの攻撃を受けて生きていた戦術人形など存在しない。

しかし目の前にいる彼女は平然とした様子で立ち尽くして、巨銃の銃口をスケアクロウへと向けていた。

 

「な、何故生きて…!?」

 

自身が想定していた状況とは違う事と虚ろな赤い瞳で睨むアッシェにスケアクロウは狼狽え、つい攻撃の手を止めてしまう。

そしてそれがアッシェにこの状況を把握するだけの時間を与える事となった。

 

──囲まれている

 

それも教会の周囲を外から囲むように。

 

──狙われている

 

全ての銃口がこの教会へと。

内部に居る自身と、その後ろで動けなくなっている少女と近くの柱で身を隠している少女へと。

 

──ではどうする?

 

決まっている。

全方位へと向かって弾をバラまけば良い。

神経を最大にまで尖らせながら両腕をだらりとぶら下げ、少し前屈みの状態から腰を落とすアッシェ。

一瞬の内に全方位へと弾を乱射するのであれば、この棺桶は素早い動きの妨げになる。

そして何よりも──

 

「…伏せろ」

 

柱に隠れている少女を巻き込んでしまう恐れがある。

 

「ッ!!」

 

その声は小さなものであった。

だが自身へと向かって言われた言葉なのだと一瞬にして理解したMP5は襲って来た悪寒とこれから起きる事に反応して地面へと飛び込むようにして伏せると同時にアッシェが動いた。

跳躍と同時に背負っていた棺桶を上へと放り投げ着地と同時に腕を交差させケルベロスの引き金を引く。

次の瞬間、爆発音の連鎖の様な銃撃と共に全方位へと向かって壮絶な早撃ちが始まった。

先ほどとは比較にはならない程の連射。口径15mmという巨大な銃弾がこれでも言わんばかりに放たれ、壁を貫通し教会の外で待ち構える鉄血の下級モデルへと襲い掛かった。

それが中からの銃撃だと気づく事もなく下級モデル達が次々と破壊され、アッシェは交差した腕を流れるように広げながらケルベロスを乱射。引き金を引く指は止める事無く、まるでそこで踊っているかのような動きで撃ち続けていく。

硝煙と血煙が舞い、無数の薬莢が飛び交い、破壊された家具の破片と埃が舞い上がる中後ろにいる少女と柱から離れ伏せている少女に当てぬように細心の注意を払いつつ、乱舞は最終局面を迎える。

前後左右へと弾をバラまき、片足を軸にしてその場で回転して連射。そのまま跳躍して体を上下反転させつつ回転し腕を広げてケルベロスを再び乱射。

そして着地と同時に片膝をつき、両腕を交差し決めポーズを披露したところに踊りの終わりを告げるように先ほど投げ飛ばした棺桶が彼女の背後に降り注ぎ重々しく音をその場で響かせる。

すると嘘の様に辺りが静寂へと包まれた。

つい先ほどまであったはずの長椅子は木端微塵に破壊され、ステンドグラスは完全に砕け散ったのか窓からは沈みゆく夕日の陽光が差し込む。

本当に一瞬の出来事。嘘だと思いたくなる様な一幕にG36cもMP5も、そして壮絶な早撃ちによる全方位乱射に巻き込まれたスケアクロウは驚きを隠せない。

 

(あり得ない…。この人形は…この化け物は何なのです!?)

 

状況を一瞬にして覆す程の戦力を持ち、被弾しても無傷で居られる存在。

グリフィンの人形にそんなのは存在しない。だが、その常識を覆す様に現れた謎の人形。

 

(こいつを放置しておくのは不味い…!)

 

体中から人工血液が流れていて満身創痍。ピットも一基破壊され、出力は落ちてしまっているがまだ二基残っている。

相手に負傷者がいる以上、無理に追ってくる事は無い。後退しながら攻撃しつつ離脱すれば、この情報を持ち帰る事が出来る。

そう踏んだスケアクロウは全身の力を振り絞り、後ろへと飛び退いた。運がいい事に教会の出入口の傍に居た為、アッシェに追撃される前にスケアクロウは外へと飛び出る事が出来た。

残ったピットをアッシェへと放ちつつ下がっていき、アッシェはケルベロスを退いていくスケアクロウを向けるも距離があると感じたのだろう。持っていたケルベロスをホルスターへと納め、武装棺桶【デスホーラー】を掴んだ。

それを肩に担ぎ、態勢を低くしながら曲げた右足で体重を支え、伸ばした左足でバランスを取る。

機関銃が装備された方とは反対側…砲身を思わせる方をスケアクロウへと向けた時、デスホーラーが変形。砲身が前へスライドし、砲身下部からグリップが展開。

 

「えっ…!?」

 

「機関銃だけじゃ…ない…!?」

 

MP5もG36cもスケアクロウと同じ事を思っていたのだろう。

棺桶の形をした重機関砲と思えば、ランチャーになるなど誰が思うか。

当然それはスケアクロウも同じ事であり、驚きを覚えていた。

そしてアッシェに隙を与える事となり、彼女は動きを止まったスケアクロウへ目掛けて発射。

砲撃音と共に巨大な薬莢が後ろへと飛び出し、砲弾が突進する。

抵抗も回避する間もない。次の瞬間、スケアクロウへと死の一撃(Death Blow)が着弾、そして爆ぜた。

跡形も残さない爆発と爆風が咲き誇り、小さなキノコ雲が浮かび上がる。

 

「…ハイエンドモデルをたった一人で…」

 

咲き誇った爆炎と前に静かに佇む一人の人形。

その背を見つめながらG36cはそう口にしつつもこう思わずにいられなかった。

何かも破壊し尽くすその姿。敵に恐怖を与え、そして死を与える。

まるでそれは───死神の様であると。




はい。こちらの方も投稿でございます。

蘇って早々、暴れるアッシェちゃん。

さてはて、この先どうなる事やらか。

ではノシ
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