Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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─戦いの前に現れるは二頭の番犬─


EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 0.5

合流地点からとある軍港へ。そしてシャマールが保有する潜水艦にアッシェや今回の応援要請に応じた者達が乗艦してからはというものの、潜水艦は海のの中を静かに進み、極東へと向かっている。

つい先ほど作戦会議が行われ、今は作戦領域に到達するまでの各自準備を進めている様な状況であり、アッシェも戦闘前の準備を整える為に、宛がわれた共同の部屋へと訪れていた。

その手には十字架の装飾が施された大型のアタッシュケースとコンテナ。

G36cが気を利かして事前に送ったものであり、中には戦いに必要なものが収められている。

準備をしている人形らの合間を縫ってアッシェは静かに部屋の端へと寄り、アタッシュケースとコンテナを置く。

ズシンと重々しい音を立て、アッシェはコンテナを開いた。

中にはあったのはケルベロス専用の特殊弾を装填した予備弾倉、そしてケルベロスとデスホーラーを損失した際の自衛手段として二丁のFN Five-seveNと予備弾倉、5.7mm弾を収めた弾薬ケース。

 

「…」

 

何時もの様に表情は変わらない。しかしその雰囲気は心なしか柔らかく感じさせるアッシェは背負ったデスホーラーを傍に立てかけるとコンテナの中にあったショルダーホルスターを取り出し装着。

そのまま二丁のFN Five-seveNと予備の弾倉を収め、上着の懐に特殊弾を装填したケルベロス専用の弾倉を幾らか収めていく。

するとアッシェの視界の端に、未開封のままで置かれたアタッシュケースの姿が映った。

そのアタッシュケースに何処か見覚えがありながらも、アッシェは開けようとはせず立てかけたデスホーラーへと手を伸ばしただった。

 

「開けなくていいのかい?」

 

後ろから声がかかった。

 

「…」

 

ゆっくりと声の主の方へとアッシェが体を動かすと、そこにいたのはS13地区基地にいるAR小隊の一人、M16だった。

 

「おっと、いきなり声をかけて悪いね。AR小隊のM16だ。えっと、アッシェ・ノーグレイヴで良いんだよな?」

 

名を尋ねられ、アッシェは頷き肯定を示す。

が、そこで会話が途切れてしまいM16にとっては気まずい状況になってしまう。

さて、どうしたものかと頭の中で思考した時、アッシェの手がそっと差し出された。

彼女の行いが示す理由など言わなくても分かる。M16はふっと笑みを零し、差し出された手を握った。

 

「今回は宜しく頼むよ、アッシェ・ノーグレイヴ…いや、アッシェと呼ばせてもらうよ」

 

「…」

 

「にしても相当無口なんだな。指揮官から聞いていた通りだ」

 

「…」

 

「ま、良いさ。色々理由があるんだろ?無理に聞こうとはしないよ。で…こいつは開けなくていいのかい?」

 

M16の視線がアタッシュケースへと向けられ、続く様にアッシェの視線もそれを向けられる。

施された装飾が十字架を彷彿とさせるが、何が入っているかは分からない。

しかしG36cが送って来たものであるのは事実。一瞬悩みはしたもののアッシェはアタッシュケースへ歩み寄り、手をかけた。

するとロックを解除する音と空気の抜ける音と共にアタッシュケースが開き、中身が露わとなる。

 

「こりゃまた…ゴツイ銃だな。あんたが腰のホルスターに収めてるソレと似てる気がするが」

 

「…」

 

そこにあったのは銀と黒、灰と銀、互いに反するように彩られた二丁の銃。

異様に太い銃身と十字架のパーツと言った特徴はケルベロスと同じ。

しかしその銃はケルベロスと違って回転弾倉を備えており、湾曲したグリップが存在も相まってそれがリボルバーであると認識させるには十分と言えた。

しかしだ。何故ケルベロスに似た銃がこのアタッシュケースに収められてあるのか?

そしてこの銃は何なのか?

その二つの疑問は相対しているアッシェだけが知っている。

 

【オルトロス】

 

それがこの銃の名であり総称、正式名称はオルトロスシリーズ。

ケルベロスシリーズとほぼ同時期に製作された銃であり、全長はケルベロスに対して多少短いが口径は同じく15mmであり、第二のケルベロスと言える銃。

しかしこの銃は製作されてから数日も経たない内に廃棄されており、その理由は未だに判明していない。

アッシェと同じぐらいに謎に包まれた銃であるそれが、何故かここに存在している。

まるでホラーの様な展開であるが、アッシェが驚きを見せたのはそれが理由ではない。

 

(…ドクター…)

 

脳裏に浮かぶは眼鏡をかけた白衣を着た老人。

その者は何者なのかを知るのはここに居るアッシェだけであり、彼女はアタッシュケースに収められたオルトロスを手に取った。

重量は若干の差があるが大して問題にはならない。

手にすんなりと収まるようにして模ったグリップが自然とアッシェの手に馴染んだ。

まるで主の元へと戻って来た様な、そんな感覚をアッシェは覚える。

手慣れた動作で銃の状態を確認し、弾倉に弾を装填し軽々とオルトロスを回転させた後、後ろ腰に配置した専用のホルスターにへと納めコンテナからある物を取り出す。

それはフルムーンクリップを納める為のホルダー。それもすぐに装填できるように加工された特注品でありつつも、一部をカートリッジベルトとして機能させている一品である。

専用のフルムーンクリップと15mm弾を収めたケースを取り出し、アッシェは黙々を作業を開始した。

 

「手伝いは必要か?」

 

「…」

 

時間はあるだろうが、手伝ってくれるのであれば有り難い。

その申し出にアッシェは頷き、M16は彼女の隣に座り込むと同様の作業を行い始めた。

お互いに黙々と作業を続ける中、ふとM16はアッシェを見る。

そして電脳の識別はアッシェを見て識別不能を指し示している。M16がアッシェに話しかけた時から、それは変わらずじまいであった。

 

(…やはりか)

 

M16がアッシェに声をかけたのは、単に作戦前の挨拶に来た訳ではない。

アッシェという謎が多い人物を調べる為に近づいたのだ。

敵ではないのは事実。だがやはりと言うべきか、それだけでは安心できないのも事実。

 

(それに…)

 

作業の手を止め、彼女は自身の手を見つめる。

M16はアッシェの事を人間だと認識している。

電脳がそうではないと否定しても、自身の直感がそう告げるのだから、そう判断している。

だが彼女がアッシェの手を触れた時、その胸の内は驚きで満ちていた。

 

(冷たすぎる。これじゃまるで…)

 

死体の様だ。

M16はそう判断せざるを得なかった。

一体彼女は何者なのか?そんな疑問がM16の中で次第に大きくなっていく。

そして自身の手からアッシェへと再び視線を向けた時だった。

 

「!?」

 

一瞬、本当に一瞬の出来事だった。

電脳が出したアッシェに対する答えが変わったのを彼女は見逃さなかった。

 

(おいおい…冗談だろ…?あり得るのか、そんな事…?)

 

一瞬だけ電脳が導き出した別の答え。

それは───

 

(死んでいるのか、アッシェは…?)

 

Dead(死亡)。即ちアッシェ・ノーグレイヴは死人である、と指し示したのだ。

 

 

 

作業を終えたタイミングでM16はM4に呼ばれ、その場を離れていった。

一人残されるアッシェだったが、作業は既に終えている為か大して問題にはならなかった。

やる事と言えば、壁に立てかけたデスホーラーを背負うだけ。

装備は整え終えている。デスホーラーと繋がった鎖を握るとアッシェは豪快に背負う。

棺桶に引っ張られ、鎖が軋む音が響き渡る。その光景を見ていた一部の者達は思う。

 

─どんだけ力があるんだ…?─

 

言わなくても分かる事であるがアッシェは女性であり、男性と比べると細身である。

にも関わらず巨大な銃を携行し、そこに加えるように重火器を内蔵した棺桶を平然と背負っている。

その異常性は口にしなくても分かる事であろう。するとアッシェが背負うデスホーラーに何らかの興味を示したのか、とある人物が彼女へと声をかけた。

 

「ほほう…複合火器か。私が持つレパリーレン・コネクションとは違う所が作ったと見るべきか」

 

「…」

 

「おっと、失礼した。リヴァイル・ウィッカーマンだ。今回は宜しく頼むよ、アッシェ・ノーグレイヴ」

 

リヴァイルからの挨拶を受け、頷くアッシェ。

そしてリヴァイルへと向けられる視線はこう告げていた。

『今の話を聞かせろ』、と。

それを理解したリヴァイルは静かに話し始めた。

 

「レパリーレン・コネクションは"とある地区に存在する基地に所属する後方幕僚"が作ってくれたものなのさ。君のソレを見て、ついつい"あの基地"が力を貸したのだろうかと思ってね」

 

「…」

 

「ふむ…その様子を見る限りでは違う感じか。何、少々気になったまでの話。気を悪くしたのであれば申し訳ない」

 

リヴァイルからの謝罪に首を横に振り、気にしてないと伝えるアッシェ。

それを見て、リヴァイルは一言礼を告げると言葉を続けた。

 

「今回の作戦では宜しく頼む。君への挨拶を済ませる様に他の面々にも伝えておくとしよう」

 

「…」

 

「無口なのは知っているとも。それを踏まえた上で挨拶をさせておくよ」

 

そう伝えるとリヴァイルはその場から去っていく。

残されたアッシェは去っていく彼の姿を見届けると、その場に静かに腰を下ろし戦いの時が訪れるのを待つことにした。

物音と喋り声。久しく聞いていなかった今の環境音に耳を澄ませながらアッシェは静かにその場で待機するのであった。




はい。以前に続き、コラボ編。
アーヴァレスト様作「チート指揮官の前線活動」の極東動乱(移動編)にて作戦会議後を描かせて頂きました。
勝手にコラボ主催者様と参加者様の所に絡みに行ってますが、何卒お許しを。
うちのアッシェに対しても自由に絡んでくださいませ(無口ですけど…)

またこの後書きにて本編で出てきた武器の詳細を記載しておきます。

・FN Five-seveN
ケルベロスとデスホーラーを損失してしまった時に備えて、G36cが気を利かしてアッシェの為に用意した銃。
二丁装備しており、特に大きな改良は加えられていない。

・オルトロス
G36cが送って来た銃であり、ケルベロスとほぼ同時期に製作された銃であり、製作されて間もない内に廃棄された銃。何故廃棄されたかは明らかになっていない。
太い銃身、十字架のパーツはケルベロスと同じだが、オルトロスはリボルバーである事と色が違うなど違いは存在する。
(原作には登場しない、こちらでのオリジナルです。最初この作品を描く際、アッシェの装備はケルベロスではなくオルトロスのつもりでした。けどあの銃を無くすのは…と思い、ケルベロスをメイン武器にさせた次第です。また本編でもオルトロスは登場させるつもりです)
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