アッシェがその光景を目撃したのは白ネイトと黒ネイトとの戦闘を終えた後の事であった。
立ち塞がるパラデウス兵や感染者を屠りつつ彼女は敵の行動パターンが完全破壊から足止めへと変わりつつあったのを感じ取っていた。
その証拠として、つい先ほど壊滅させたパラデウス兵の軍勢は過剰とも言える様な数で攻め偏向障壁を展開できる駒を前面に展開し後衛のストレツィやロデレオといった、ある一定の射撃戦を可能とする個体で攻撃を仕掛けてきていたのだから。
元よりパラデウスが保有する戦力は未知数。だが現状でのパラデウスの行動はこちらを足止めしているのではと思うだけの違和感を残しつつあった。
その違和感に一体どれだけの者達が気付いているかは分からない今、アッシェはいち早くソレに気付くと全体が見渡せる廃墟の屋上へと移動していた。
そして上空から熾烈な攻撃をパラデウスの群れに浴びせていた万能者の方へとアッシェが視線を向けた時であった。
「うぎゃああああ!?」
「……!?」
突如として空中で咲き誇った爆炎と叫び声。
その中から飛び出したのは、つい先ほどまで圧倒的な有利な状態でパラデウスの部隊と戦闘を繰り広げていた万能者の姿であった。
砲弾を放った直後を狙い撃ちされたのか手にしていた大砲の砲身は花が咲いたように破壊され、万能者もまた至近距離で爆発に巻き込まれたのか制御を失い、そのまま地表へと落下していた。
そして彼が隕石の様に廃墟に激突した直後。
「…!」
万能者と激突した廃墟が遠方からの狙撃によって崩れ出し、瓦礫の山へと化すとあろう事か万能者を飲み込む様子がアッシェの目に映った。
この時、彼女は今の狙撃はヘリを破壊してきた狙撃手によるものだと判断していた。
重火器を用いて上空からばら撒いていた万能者が現状、一番の脅威と判断され攻撃を受けた。
確かにあれだけの火力を用いて攻撃していたのだ。いの一番に狙い撃たれても可笑しくない。
だが同時にあの狙撃はアッシェの中で浮かび上がった予想を答えへと変化させるだけの物と成り得ていた。
「……」
それ故にかアッシェは例の狙撃手には目をくれず、万能者が埋もれているであろう瓦礫の山の方へと駆け出した。
この正体が間違いのないのものへと変化した今、万能者の早期復帰が戦況を左右すると判断した為である。
「……」
万能者が生き埋めにされているであろう地点にたどり着いたアッシェは、瓦礫で積み上がった山を前に静かに見上げていた。
この中に万能者がいるのは既に分かり切った事。
戦況が最悪な方へと流れしまう前にこの大量の瓦礫の山を時間をかけずに退けなくてはいけない。
だからこそ、この撤去作業に安全第一などは言っていられない。
物理と爆発を用いて瓦礫を撤去しようとデスホーラーと繋がった鎖へとアッシェが手を伸ばした時だった。
『瓦礫の山に向かったヤツ、気を付けろッ!!そっちに─』
誰かの声が通信越しから響き渡った。
そして次の瞬間。
「……!」
『
通信の台詞と共に"それ"はアッシェの目の前に飛来した。
その体を高らかと示し、地に立つアッシェを睨む。
カーブを描いた三脚はテュポーンの装甲すら貫く強靭で、機体下部に備えた不釣り合いなプラズマ砲はクラトスすら融解せしめる。
パラデウスが保有する兵器において特に危険とも言え、飛び上がりながら向かってくるその動きは生物を彷彿とさせ、生理的な嫌悪感を抱かせる。
ビル二階分の巨体を誇る白き兵器…その名は『パトローラ』。
生き埋めになってしまった万能者に確実な止めを刺しに来たのか、或いはあの狙撃手が差し向けてきたのか、はたまたはそれ以外か。
どちらにせよ、この状況での登場は余りよろしいものとは言い難いのは事実である。
「……」
だからと言ってアッシェが此処を離れる理由にはならない。
腕を交差させ両手に携えた
そんな彼女を物言わぬパトローラは嘲笑う様に見下げる。
たかが一人で倒せる筈がない。勝てる筈がない。
何も出来ずに無様に死ね。
巨体から発せられる圧がアッシェへと向けられる。
「…」
だが彼女は動じたり、狼狽える事は無かった。
この戦い以前にもパトローラの様に巨体を誇る奴など腐るほど屠ってきた。
何よりも──
「守る…」
守る為に戦う。
例えそれが会って間もない相手であったとしても、仲間である事は変わりない。
無駄にデカい虫の四肢を捥ぎ、そして徹底的に破壊した後に仲間を救い出す。
今回は短いですが、パトローラ戦の前を描かせて頂きました。
瓦礫の山に生き埋めになってしまった万能者を助け出すべくアッシェは行動します。
また何故万能者が生き埋めになってしまったのかはガンアーク弐式様作「MALE DOLLS外伝集」の「極東にて:2」を見ていただけると、より内容が分かるかと思います。
展開にこちらのオリジナルを含めた訳だけど…不都合(コラボ参加者様から言われたり等)があれば直すかも…。
次回は害虫駆除戦。ではノシ