Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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──守ると決めたから──


EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 3

突如として全てに降り注いだ光の雨。

その一瞬の出来事は事態を急変させるに十分過ぎる程であった。

先ほどまでの戦闘が嘘の様に静まり返り、ルースキー島は漂う硝煙と血の香りと共に静寂に包まれてしまう。

そんな中で万能者の咄嗟の行動のおかげで再度墓場に戻る事にならずに済んだアッシェは、身を呈して攻撃から庇ってくれた彼と共にゆっくりと起き上がっていた。

 

「……」

 

風の音だけが聞こえる。それだけしか聞こえないこの戦場は異界の様にも思える。

まだ終わってすらいない戦いが、死んでしまったかのような…。

そんな異様な雰囲気に支配されていた。

 

「…今の攻撃で、恐らくだがボリショイカーメニに通ずる道を潰された。ボリショイカーメニに行った向こうの連中とも連絡は取れない。…アッシェさん、言わなくても分かると思うが俺たちは今、完璧に分断されちまってる。さっきのアレのせいでな」

 

あの一瞬の出来事の後、素早く状況把握に努めていた万能者がアッシェの隣に立つと状況を伝えた。

彼の口から伝えられた今の状況は、最悪とも言える状況であった。

ただあの攻撃でパラデウス側にも影響が出ており、この状況下で攻勢に出ていないのが不幸中の幸いとも言えるだろう。

 

「……」

 

状況は最悪で、同時にボリショイカーメニにへと繋がる道は潰された。

このまま時が流れるの待つだけ…という訳には行かない。

万能者から聞かされた今の状況に対して、頷いたアッシェはデスホーラーを回収し背負い直すと、ある方向をジッと見つめた。

 

「アッシェさん?」

 

その様子に首を傾げながら名を呼ぶ万能者。

だがアッシェは反応する事もなく、戦場を見つめるのみ。

 

「……」

 

空へと向かって浮かび上がる幾つもの黒煙。燃え盛る炎と共に火の粉が辺りを漂い、朽ち果てた建物を黒く染め上げていく。

その様はまるでかつての繁栄は戦火によって穢される。

そんな雰囲気の中に潜むかのように敵意と殺意は消えていない。

 

「え、あ、アッシェさん!?」

 

突如として歩き出したアッシェに驚きながらもその名を叫ぶ万能者。

しかし彼女は何一つ反応せず、その場に万能者を置いて静まり返った戦場へと姿を消した。

 

 

ギシ…ギシ…と鎖と棺桶が軋む音が響く。

辺りを漂う硝煙と黒煙が、前へと歩くアッシェに戦場の凄まじさを物語っていた。

だが戦いとはいつものそういうもの。誰かが死に、誰かが生き、誰かが嘆き、誰かが嗤う。

死臭と血と臓物に塗れた戦場に美しさの欠片がある筈がない。あるのは狂気と殺意のみ。

戦場など何時だってそういうものでしかないのだから。

 

「……」

 

廃墟で並んだ道をただひたすらに歩き続けるアッシェ。

万能者にその理由を告げる事無く、再びルースキー島内へと足を踏み入れたのは何故か。

その理由は、道を抜けた先に存在していた朽ちた広場で明らかになった。

 

「……」

 

崩れた噴水に背を預けるようにして座り込む一人の女性。

気を失っているのか、或いは既に絶命してしまっているのか、その頭は下を俯いたままであった。

そんな状態の女性を見て、アッシェは彼女の元へと歩き出す。

そしてお互いの距離がすぐそこになった時、歩み寄って来たアッシェに気付いたのか女性の頭がゆっくりと上げられた。

その瞳が目の前に立つアッシェを捉えると、彼女は笑みを零した。

まるで諦めたような、そんな笑みを。

 

「…誰かと思えば、グリフィンの者か…。あの攻撃でよく生きたものだな」

 

いや、それはお互い様かと口にしつつ自身も先ほどの攻撃を生き残った身である事を再認識する女性。

再び笑みを零す女性を見つめるアッシェ。

白い髪に白い肌。白と黒で彩られた衣装に、纏う装備はサソリを彷彿とさせるが、あの攻撃を受けたのかその面影はなくなる程にボロボロであった。

そして彼女の名はグレイ。そう、あの最上位ネイトの一人であり、アッシェが探していたネイトである。

いや、彼女らを探していたと言うべきだろうか。

 

「……」

 

攻撃する様子を見せないグレイをただひたすらに見つめていたアッシェ。

そんな彼女にグレイは訝しげな様子を見せるが、そんな事は知った事ではないと言わんばかりに歩み寄り、アッシェはそのままグレイの肩に腕を回し担ぎ上げた。

 

「な!?お前、何のつもりだ!?」

 

アッシェの突然の行動に驚きながらも、問いかけるグレイ。

だがアッシェは答える事はせず、歩き出す。

突然の行動に戸惑うグレイ。だが何故か振り払おうとはしない。

それもその筈で、彼女の今の状態は立つだけでやっとと言うレベルだ。

無理を振り払った所で、無様に地面に倒れるだけでしかない。

とは言えだ。その行為に対して問う事は出来た。

 

「何を考えている…!?何がしたいんだ、お前は!?」

 

「……」

 

それでもアッシェは答えない。

ただひたすらにグレイを連れて、何処かへと歩くのみ。

その彼女の姿に苛立ちを募ったのか、グレイの感情は爆発。

破損していた筈の武装を動かし、壊れた先端部をアッシェの後頭部へと差し向けた。

 

「……!」

 

サソリの尾が自身の後頭部に向けられたのを感じるとアッシェはやっと足を止めた。

グレイを支えている以上、ホルスターに収めたケルベロスを即座に抜く事は出来ない。

一瞬を突いてケルベロスに手を伸ばしたとしても、それよりも先に壊れたサソリの尾は自身の頭を貫く。

分かっていたからこそ、アッシェはあえて反撃には出なかった。

だがそれで状況が良くなっていないのも事実と言える。

 

「…」

 

「…」

 

お互いに沈黙に包まれる。

そんな状態が暫く続くと思われた時、滅多に開かれることの無いアッシェの口が開かれた。

 

「…守る」

 

「守る…?」

 

その口から出た一言に聞き返す様に言葉を口にするグレイ。

どういう意味かと問う前に、アッシェの口が開く。

 

「…戦う為だけの存在にはさせない…。人として生きさせたい…。だから守る」

 

─都合が良く、使い勝手のいい存在にはさせない─

 

赤い瞳に宿った熱はそう物語り、グレイは理解する。

敵同士であったにも関わらず、救おうとするその姿はこの世界以上に歪んでいて、それであって儚い。

 

「…ふっ」

 

可笑しな存在だと思いながら笑みを零すグレイ。

抵抗する気力すら失われた今、彼女は只々アッシェと共に続くだけしかない。

彼女が何処に行くのかは分からない。

だが今だけは、この静けさの中で只々移動する他ないのも事実であった。




ご久しぶりです。

前回に続きコラボ編。
また主催者から『自由に書いてOK』とのことですので、自由に行かせてもらいます。

あの光の雨の影響でボリショイカーメニへと通ずる道を潰されてしまった為、移動できるまでの間は、うちのアッシェさんは最上位ネイトらの鹵獲という名の救助活動へと移行し、グレイと移動開始。

すげぇヤバそうな雨が降ったんだ。いくら最上位ネイトらと言えど無傷ってことはないでしょうさ…。

展開上、あまり進んでおらず次回も救助活動なるのでどうかご了承を。
さて…誰を探しに行くかな?

ではではノシ
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