Gungrave D.S.F.L   作:白黒モンブラン

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──全壊のカタルシス──


EP-Extra Grim reaper in a girl's tears 4

 

(何なんだよ、こいつは!?馬鹿みたいに重火器を振り回すだけの女じゃねぇのか!?)

 

断たれた部分から手で抑えつつ激痛に耐えながらもロキプラはソレを見据える。

アレの戦いぶりは遠くから見ていた。

その戦法は至ってシンプルであり、巨大な二丁拳銃と大量の武装を内蔵した棺桶で敵を殲滅する。

火力任せとも言える程の戦い方は、ロキプラからすれば驚異となる敵ではないと言う認識でしかなかった。

だからこそ下っ端どもを用いて集中砲火を浴びせ、止めの一撃を叩きつけた仕留めた。

残るは満身創痍のグレイのみ。自身を阻むものなどいない。

そう思っていたからこそ、今起きているこの状況が信じられずにいる。

 

「ふざけんな…!ふざけんな…ッ!ふざけんなああぁぁッ!!!!!」

 

その声は絶えもなく続く戦いの音と飛び交う銃弾と光線の中で木霊する。

ロキプラからすれば確かにふざけるなと言いたくなるだろう。

しかし──

 

「……!!」

 

この死神(アッシェ)は一ミリたりともふざけてなどいない。

ロキプラを守るようにして何処かに潜んでいた下っ端どもが次から次へと姿を現れ、その姿を一目見た瞬間その場に留まり、飛び跳ね、回転し、そして背面からの射撃と言った無駄と思える動きを織り交ぜながら踊っているかの様な嵐の銃撃をこれでもかと言わんばかりに浴びせる。

無音の死、砕け散る体、銃声と地を跳ねる薬莢、硝煙と土埃、銃弾と光弾。

美しさの欠片もない穢れだけで一曲を生み出す変わり種のオーケストラ。それが今の戦場を物語る。

 

「……」

 

自身の後ろには彼女(グレイ)が居る。

守ると決めた以上、アッシェに撤退という選択肢は存在しない。

ライトヘッドをホルスターに収め、デスホーラーへと手を伸ばすと装飾の髑髏の目が赤い輝きを放つ。

直後、デスホーラーを豪快に振るいアッシェは備え付けられた大口径の機関砲を展開。

棺桶の内部機構が作動する音が響き大口径の弾丸の雨をお見舞いしようとした瞬間、ストレツィが放った一射がアッシェの胸に直撃した。

 

「…!」

 

普通であれば即死。

だが──

 

「……!!」

 

死神は倒れなかった。

それどころか撃たれた箇所が数秒も経たない内に塞いでいき、完全に完治している。

その光景に目にし信じられないといった表情で驚きの声を上げるグレイ。

 

「ありえん…修復しただと…!?」

 

幾ら最上位ネイトでも傷付いた体を瞬時に修復する機能など持ち合わせてなどいない。

これまで見てきた中で一番の驚きを覚えるグレイ。

そんな驚愕を知る筈もなく、普段と変わらない沈黙を貫くアッシェ。

その代わり、構えた棺桶から地獄の猟犬(hell Hound)が飛び出した。

通常の弾丸で貫通する事すら不可能な偏光障壁をもろともせず、重々しく分厚い銃声は咆哮と変じ、立ち塞がる白き敵へと襲いかかった。

まるで硝子が砕けるような音と共にパラデウス兵達が木っ端微塵に破壊されていき、機関部から熱を持った薬莢が飛び出し、その音を立てながら地面を跳ねる。

人の頭ぐらいはありそうな大口径の弾丸が産み出す過剰とも言える火力、一発放つ度に発生する強烈な反動を彼女は容易く制御し巨大な弾丸を放ち続ける武装棺桶をゆっくりと右へと薙ぎ払い、迫りくる敵を一体と近づけさせない。

状況はアッシェへと傾き始める。だがそういう時に限り、流れというものは変えられてしまうものである。

 

「……!」

 

僅かに感じられた殺気。

デスホーラーに備えられた重機関砲を撃ち続けていたアッシェはソレに反応し、素早く身体を殺気が感じられた方向へと向けた。

戦斧を彷彿とさせる近接武器に、白い装甲。

アッシェが屠って来たパラデウス兵の中で一度たりともその姿を見た事の無い存在が死神の如く、戦斧へと目掛けて振り下ろすも、アッシェはデスホーラーを引き体を横へと向けるで凶刃の一撃を躱した。

 

「…」

 

「……!」

 

戦斧を持ったパラデウス兵『パニッシュ』とアッシェの間で生まれる一瞬の間。

青いバイザーがアッシェを睨み、虚ろな赤い瞳がパニッシュを捉える。

地に突き刺さった刃を引き抜き全身を動かし横への薙ぎ払いを見舞おうとし、左手に持った白い十字架を有した巨銃がその頭を捉えようと狙いを定める。

首へと迫る刃、命を奪おうとその頭へと狙い始める銃口。

全てがスローモーションになる。二人に躱すという選択肢はない。

今、あるのは──

 

「…!」

 

「…!」

 

こいつを殺すと言う確固たる殺意のみ。

その銃口に捉えられるよりも前にパニッシュの戦斧がアッシェへと襲い掛かる。

人一人の首を刎ねる事すら容易であろう刃。それが首に到達よりも早くアッシェは身を屈めて回避し手薄となっている脚部へと向かってレフトヘッドを三発発砲。

幾ら固い装甲とは言え15mm弾の前では歯が立たず白い装甲で覆われた脚は吹き飛びパニッシュの体は片膝から崩れ、二撃目として放っていた振り下ろしもアッシェの横を通り過ぎ、戦斧の刃が再び地面に突き刺さる形となる。

その瞬間を逃さなかったアッシェは片足を軸にしつつ体を翻しながらデスホーラーを掴み、パニッシュの後頭部を思い切り殴った。

その一撃にパニッシュを地面に叩きつけられ、同時にデスホーラーの重機関砲の砲口がその後頭部に当てられる。

 

「…」

 

命乞いも辞せの句も残す時間を与える事もなく、デスホーラーによって地面に倒れ伏すパニッシュに冷たい見つめながら零距離射撃による止めを刺すアッシェ。

重々しく響いた銃声と砕け散った頭の破片が周囲に散らばる中、未だに迫りくる敵を睨んだ時、せめての手助けと周囲を見ていたグレイがアッシェへと叫んだ。

 

「もう一体いるぞ!」

 

それは言われなくても気配で分かっていた事であった。

デスホーラーを背に背負い、ホルスターに収めたライトヘッドを引き抜きながら右から迫るパニッシュに向けるアッシェ。

狙いをその頭へと定めて引き金を引こうとした瞬間、パニッシュの真上から影が降り注いだ。

 

「!」

 

振り上げたソレはまさしくロングソードそのもの。

切っ先を突き立て、パニッシュの脳天を穿ち行動不能へと追いやるとブレードを引き抜き、離脱。

軽やかな動きでアッシェの隣に並び立ったその人物の名をグレイが口にした。

 

「グリク…!?」

 

グレイと同じ色をした髪に白を基調とした衣服。

左手に装備していた武装はあの光の雨によって破壊されてしまったものの、右手に持ったロングソードは今も尚、その鋭さを有していた。

だが体は傷つき、肩で呼吸している辺りを見るに万全ではない事が伺えた。

そして信頼している人物にその名を呼ばれた最上位ネイトであるグリクはロングソードをかつての味方であった存在へと切っ先を突きつけながら静かに告げる。

 

「…話は聞いている。手を貸してもらいたい」

 

戦う音に気付いて飛んできた訳ではない。

グリクもまたロキプラとグレイの話を聞き、そして"今まで誰を守ってきたのか?"という問いに混乱を引き起こし、暫く動けずにいた身だった。

それでも尚、動けたのは他ならないアッシェの行動が大きいのだが、実の所、グリクはグレイを救い出す為に密かにアッシェの後をつけていた。

そして、あの時彼女は聞いた。

敵である筈の自分たちを救おうとするアッシェの台詞を。

とは言え、その行いはパラデウスと敵対する行為である事は事実。

虚ろな赤い瞳がグリクの瞳を見つめ、問う。

本当にいいのか、と。

 

「…信頼する人(グレイ)を守らせてくれ」

 

神妙な表情を浮かべるグリクにアッシェは静かに頷き、ケルベロスを構える。

グレイに続き、グリクまでも裏切る形となった現状。

最上位ネイトらが敵に回ったという事実は、ロキプラからすれば好都合でしかない。

 

「ハッ…!グレイの忠犬のお出ましか!ああ、良いさ!テメェら纏めて葬ってやるよ!!!」

 

それで消えてくれるのであればお父様は他の誰でもない"自身"を信じてくれる。

激痛による痛みは何処へ行ったのやらか。

狂った笑みを浮かべながらも下っ端(パラデウス兵)を呼び寄せるロキプラ。

その数は先程とは比ではない程の量で、この場を切り抜けるのは困難と言える数であった。

だがグリクは退かない。そして敵を見据えたその横でアッシェが動く。

 

「…!」

 

身体を回転させると同時にデスホーラーを肩に担ぎながら曲げた右足で体重を支え、伸ばした左足でバランスを取る。

構えの態勢が取れるとデスホーラーの砲身部の先端から開かれるようにして展開。

砲身が内側から反転し、六連装ミサイルランチャーへと変形。

それを合図にパラデウス兵が動き出した瞬間、変形したデスホーラーからミサイルが上空へと向かって次へと発射された。

 

「…成る程」

 

わざと外している訳ではない。

上空へと飛んでいったミサイルが次に向かう先を見つめるグリク。

その間にもパラデウス兵の大群は二人へと向かってくる。そしてその距離が半分にまで迫った時、パラデウス兵の頭上から六発のミサイル(domms rain)が降り注いだ。

視覚外からの攻撃。真上から飛来したミサイルの爆発に巻き込まれるパラデウス兵たち。

四肢は吹き飛び、白き装甲が木端微塵に破壊され、成す術もなく鉄屑へと還っていく。

だがそれだけではパラデウス兵の波は止まらない。傷つきながらもミサイルの雨から抜け出した白き軍団が迫りくる。

 

「…前に出る。援護を頼んでいいか?」

 

そろそろ出るべきだと判断したグリクがロングソードを構え、突撃の姿勢を取る。

だがそこにアッシェがグリクの隣に立つ事で待ったをかけた。

六連装ミサイルランチャーから通常形態へと戻したデスホーラーを自身の横に構え棺桶の側面装甲を展開。

すると内部から髑髏の装飾を施したあの巨大なミサイルが飛び出し、アッシェはグリクへと視線を飛ばした。

赤い瞳が伝えようとしている事を理解したグリクはフッと笑みを零し動き出す。

片足を軸にしつつ右へと回転し、足を振り上げるグリク。その隣でアッシェが体を左へと回転し、デスホーラーを肩に担ぎ、砲身とグリップを展開すると流れる様に特徴的な構えを取った。

 

「ふっ…!」

 

「!!」

 

鋭い蹴りが巨大なミサイルを蹴り飛ばし、ランチャーへと変形した棺桶から砲弾が発射される。

鉄同士がぶつかった様な軽い音と爆発を思わせる砲撃の音。

放たれるは二乗された死の一撃(Death Blow square)。 ただひたすらに真っ直ぐと、愚直とも言える一直線の攻撃。

撃ち落とそうと迫る光弾の嵐の中を駆け抜け、目の前に立つ得物らへ着弾。

ルースキー島全体に広がる盛大な爆発音。

何もかも真っ黒に、敵の亡骸も、その遺灰すら一切残さない閃光が駆け抜け、熱と炎で帯びた火柱が高らかに空へと吼える。

これがお前らの墓標であると言わんばかりに。

そしてその爆発はアッシェを探しに戦いが発生している場所へと急行していた万能者にも見えていた。

 

「あの爆発…アッシェさんがやったものか…?」

 

戦いを彩る音は最初に聞いた時よりも激しさを増している。

そこにアッシェが戦っているのであれば、尚の事。

灰被りの死神の戦いはいつだって全壊が常なのだから。

 

「無事でいてくれよ、アッシェさん…!」

 

どこか放ってはおけない。

過去の事があったとは言え、アッシェからそんな感じが否めなかった万能者は駆け出す。

そして現場での戦いは激化の一方を辿っていた。

飛び散る火花、響き渡る銃声、崩れる白き兵士。

飛び交う銃弾と光弾の中を、二人は立ち回る。

 

「疾ッ!」

 

ロングソードの刃がロデレオの頭部を一閃。

頭を無くしたロデレオの背後からグラディエーターが飛び出すも二丁の巨銃が繰り出す驚異の早撃ちに瞬く間に鉄屑にへと変えられる。

 

「…!」

 

ライトヘッド、レフトヘッドを巧みに操りながらノールックショットがストレツィ、ガンナーを破壊していく。轟音にも似た銃声が止む事はなく、閃光と共に銃弾が飛び出す。

たった数発で受けただけで木端微塵に破壊される白き兵士たち。

死神を仕留めようと銃撃を浴びせるも傷付いた体はあっという間に修復してしまい、がら空きとなったその背後を彼女(グリク)が一閃し確実に仕留める。

たった二人を相手にここまで苦戦させられている。それどころか片方は手負いだと言うのにこのザマ。

積み上がった鉄くずの数は山が出来上がっておかしくない程に転がっていた。

そしてこの状況を面白く思わないのが一人。そう…ロキプラである。

その表情は苛立ちを隠しきれていないが、そこまで愚かではないのだろう。

アッシェとグリクが積み上げた鉄くずの山を利用して、その時を狙っていた。

 

「…!」

 

「はあっ!」

 

二人の攻撃が最後の一体であるグラディエーターを破壊。

四肢を失い、蜂の巣になった鉄屑が地面に崩れ、周囲に土埃を舞い上げた。

その瞬間を好機と見たのか、勢い良く飛び出してアッシェの背後から一気に迫った。

幾ら死なずと言えども首を絶たれたら生きている筈がない。

 

(死ね…!女ゾンビッ!!!)

 

己の内でそう叫び、手にした近接武器でアッシェの首目掛けて振るった瞬間──

 

「ッ!!?」

 

一発の銃声と共にロキプラの体が後方へと吹き飛んだ。

一瞬何が起きたのか分からないといった表情を浮かべるロキプラだったか、視界に映った巨銃に何が起きたのかを理解した。

 

(ク、ソッ…!!あの女、こっちに気付いてやがった!!ノールックでぶっ放しやがった…!)

 

15mm弾の直撃により腹部に開通してしまったトンネル。

直撃の反動で地面に叩きつけられ、赤黒い液体が噴き出しながらもロキプラは依然動けていた。

だが奇襲は失敗に終わってしまい、アッシェとグレイに悟られてしまった。

立ち塞がった二人を前にして、彼は思う。

何もかも自分が思った様には行かない。

これまでそんな事の連続だったせいか、ロキプラの感情が爆発した。

 

「どいつもこいつも…無手間取らせやがって!!!何でさっさとくたばらねぇんだよ!!!!」

 

「…」

 

まるで子供が癇癪を引き起こした様なその様にアッシェの赤い瞳は変わらず虚ろなまま見つめていた。

どこか哀れな目で見つめている様な気もしなくはないが、それはアッシェ本人ではなくては分からない。

 

「あぁ…うぜぇ…うぜぇ…うざってぇッ!!!ゴミ共が無駄に粋がりやがってぇッ!!!!」

 

血走った眼、身体の至る所からの流血。

それでも尚、戦おうとするロキプラは武器を手に取り地面を蹴ろうと構える。

が、それよりも早くアッシェは突進。

 

「死にぞこないがぁッ!!!」

 

「…」

 

一気に迫って来たアッシェに向かって苦し紛れの薙ぎ払い。

満身創痍の状態で繰り出された攻撃は驚異にはならない。

攻撃を受ける前にライトヘッドへで腹部に向かって発砲し、ステップを踏む様に背後へと回り込つつロキプラの背中を思い切り蹴り飛ばし態勢を崩すと、ライトヘッドを回転。

ガンスピンによる僅かな間。

そして素早く構えた瞬間、ライトヘッドの引き金が引かれたと同時に銃声が鳴った。

止めの一発と共に地へと落ちる薬莢。頭の後ろから一撃を貰い、ゆっくりと地面へと崩れゆくロキプラ。

そしてライトヘッドを構えたまま微動だにしないアッシェ。

アッシェの勝利、ロキプラの敗北。

今の状況を示すには十分とも言える光景がそこに広がっていた。

 

「アッシェさん、無事か!?」

 

そこに遅れて万能者が到達。

だが戦況は見ての通りであり、そこに広がった光景を前に万能者は──

 

「ああ…無事っぽいな…」

 

援護に入れなかったことに対してか、少しばかり残念そうな声を上げるのであった。




ロキプラさん、撃破でございます(倒したとはいえ、復活すると思うけど…)

またグレイに続き、グリクとも合流し万能者とも合流です。
次回は…シャマールさん辺りに合流しましょうかね。まぁ未定ですが…

今回出てきたデモリッションショットの紹介に関しては次回します。

では次回にノシ
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